黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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7話 修学旅行の時間 前編

修学旅行の季節だ。三年生も始まったばかりのこの時期に修学旅行とはこれいかに。

 

ともかく、三年生の一大イベントである事は確かだ。皆楽しそうに準備を始めていた。

 

「先生、三年生も始まったばかりのこの時期に修学旅行とは、乗り気がしません。」

 

舞妓姿でノリノリじゃねーか。

 

「バレましたか、先生、旅行が楽しみで仕方ないです。」

 

テストの次は修学旅行

 

暗殺教室でも行事の予定は目白押しだ

 

「知っての通り来週から京都2泊3日の修学旅行だ。

 

君等の楽しみを極力邪魔はしたくないがこれも任務だ。」

 

「・・・てことはあっちでも暗殺?」

 

「その通りだ岡野さん。

 

京都の街は学校内とは段違いに広く複雑。しかも・・・君達は回るコースを班ごとに決め奴は

 

それに付き添う予定だ。

 

狙撃手を配置するには絶好の場所。既に国は狙撃のプロ達を手配したそうだ。

 

成功した場合貢献度に応じて百億円の中から分配される。

 

暗殺向けのコース選びをよろしく頼む。」

 

まるで暗殺旅行だ。

 

すると、渚が話しかけてきた。

 

「黒崎、うちの班に入らない?」

 

「いいよ、他誰がいるの?」

 

「僕と、カルマ君と、杉野。女子は…」

 

「私と奥田さん!」

 

茅野が奥田さんを誘ったらしい。でも杉野が…

 

「おいおい大丈夫か?カルマと黒崎、旅先で喧嘩しそう…」

 

「大丈夫、旅先の喧嘩は当事者の口を封じればいいんだー」

 

「誰かに言ったらたたじゃおかねえって脅し、結構効くぜ。」

 

「やめよう、やっぱあいつら誘うの止めよう渚!」

 

「でも杉野、カルマ君も黒崎も気心知れてるし。」

 

「ウチは7人班だから、女子あと一人入れる必要があるけど?」

 

そういえばそうだった、さて誰を誘うんだろう。

 

「この日の為に誘っておいた、クラスのマドンナ、神崎さんでどうでしょう!」

 

「おおー!」

 

神崎さんは大人しいけど、真面目でおしとやかで美人、一緒の班で嫌な人なんていない。

 

杉野やるなあ。

 

「よろしく、黒崎君。」

 

「ああ、よろしく。」

 

そんな風に笑顔でに話しかけられると、流石の俺でも照れるな。

 

「よし、どこへ行くか決めようぜ!」

 

「フン、ガキねえ。世界中を股にかけた私にとって、旅行なんて今更だわ。」

 

「じゃあ留守番して〜」

 

「花壇に水やっといて〜」

 

ビッチ先生、スルーされた。

 

「ねー2日目どこいく?」

 

「やっぱ東山からじゃない?」

 

「暗殺との兼ね合いを考えると・・・」

 

「でもこっちの方が楽しそう~・・・」

 

と皆楽しそうに決めている。

 

「何よ!!私抜きで楽しそうな話してんじゃないわよ!!」

 

ついにビッチ先生がキレる。気が短いな。

 

「あーもー!行きたいのか行きたくないのかどっちなんだよ!」

 

殺せんせーが教室に入ってくる。

 

「ひとり1冊です」

 

「重っ・・・」

 

「何これ殺せんせー?」

 

「修学旅行のしおりです」

 

「辞書だろこれ!」

 

「初回特典は、組み立て金閣寺です!」

 

無駄に凝ってやがる。何はともあれ、みんな楽しそうにルートを決めている。

 

「ここの和菓子屋行こう!」

 

「このわらび餅、美味しそうです!」

 

「いいじゃん奥田さん。後はここなんかどう?」

 

「わー!プリンだ、食べたいー!」

 

なんか話がズレてる。いや、俺だってスイーツは好きだ。だけど暗殺の方を先に決めようぜ?

 

「おいおい、本題は暗殺だろう?」

 

カルマ「そうだった。黒崎。」

 

「でだ、ここなんかいいんじゃないか?」

 

「そうだね。」

 

「私はここがいいと思う。人気も少ないし、狙撃ポイントとしては絶好よ。」

 

神崎さん、さすが。しっかりしている。

 

そんな感じで、修正を繰り返しながら、ルートは決まっていった。

 

***

 

そして当日、集合場所の東京駅にて。

 

「いつもの感じだねー。A組からD組までグリーン車、ウチらだけ普通車なんて。」

 

中村の言う通りだ。

 

「学費の用途は成績優秀者に優先される。忘れたか?」

 

「君達からは貧乏の臭いがするねえ。」

 

「へえー、じゃあ俺はグリーン車に行けるんじゃないか?少なくとも君らより成績上だし。

 

ま、こんな性根の腐った奴らと一緒のグリーン車より普通車の方がいいか。」

 

そう言うとモブ共は悔しそうな顔をしていた。

 

新幹線に乗ると、

 

「あれ、殺せんせーは?」

 

「乗り遅れて窓に張り付いてる。」

 

それまずい気がするが。

 

「透明化で服だけ張り付いているから大丈夫だって。」

 

余計怪しい。

 

「ふう、駅前のスイーツ店にいたらつい乗り遅れてしまいました。」

 

「殺せんせー、その付け鼻変えよう、こっちの方がフィットするし違和感ないよ。」

 

菅谷が付け鼻を作ったらしい。へえー、意外な特技だ。

 

「旅行に行くと、みんなの隠れた一面が分かるね。 」

 

「ああ、良いものだな、旅行も。」

 

そんな俺たちはトランプをしている。のだが…

 

「あがり」

 

「私も」

 

「俺もあがり」

 

みんなどんどんあがっていく。

 

結局、何回やっても、何をやっても俺が負けた。

 

みんなは気づいた。

 

(こいつ、トランプ弱すぎ…)

 

黒崎の弱点

 

カードゲームが苦手

 

というか運ゲーは基本苦手なのだ。仕方がない。

 

「そうだ、飲み物買いに行こうよ。みんな何買う?」

 

「イチゴ煮オレ」

 

「スポドリ」

 

「お茶」

 

「オランジーナ」

 

誰がどれか分かるか?俺はオランジーナだ。

 

炭酸とオレンジがうまく噛み合っている。あれほど美味しい飲み物はないね。

 

そして通路で。

 

ドンと音がした。神崎さんが誰かとぶつかったようだ。

 

「す、すみません」

 

しかも、そのぶつかった相手は不良だった。

 

「あの子ら可愛いじゃねーか。」

 

「椚ヶ丘の生徒だろ?」

 

「あのエリート校か。」

 

「俺らが京都でお勉強教えてやろうぜ。」

 

そう会話していた不良が持っていたのは、神崎さんの日程表だった。

 

***

 

2日目は暗殺のために設定したルートを回る。そこで成功すれば、後の旅行は自由だ。

 

まずは旅館に荷物を置く。いつも通り、E組だけ大部屋、他は高級ホテルで一人一部屋だ。

 

ま、大勢の方が楽しいか。

 

そして班行動にて。

 

「修学旅行くらい暗殺忘れたかったぜ。この暗殺と縁のない場所で。」

 

「いや杉野、京都では暗殺がたくさん行われてる。ほら、」

 

俺らが来たのは坂本龍馬が暗殺された近江屋の跡地だ。

 

「古くから政治と文化の中心地だった京都では、様々な暗殺が行われてきた。

 

本能寺の変なんかもその一種さ。そして、暗殺対象は世界に重大な影響を与えるものばかり。

 

地球を滅ぼす殺せんせーは、典型的な暗殺対象さ。」

 

「そうか、じゃあ俺たちが殺せんせーを暗殺してまた新たな歴史を刻もうじゃないか。」

 

「いうねえ黒崎。」

 

そして俺たちは祇園に向かう。

 

「へえー、祇園て、奥に入るとこんなに人気がないんだね。」

 

と茅野が言う。

 

「ええ、一見さん御断りのお店ばかりだから、観光客も少ないし、フラッとくる人もいない。

 

暗殺にはぴったりだと思ったの。」

 

神崎さんの意見には舌を巻いた。だが、

 

「ほんと、なんでこんなに拉致りやすい場所選ぶかねえ。」

 

不良らしき男が数人現れる。しまった、取り囲まれたか。

 

「何、あんたら。少なくとも、観光が目的じゃなさそうだけど?」

 

カルマが問いかける。

 

「男に用はねえ。女置いてお家に帰んな。」

 

ボゴッ

 

そう言った不良はカルマに殴られる

 

「あんたらの方こそお家に帰んな。」

 

そう言ってカルマは二人目を片付けようとする。

 

「危ない!」

 

一人が茅野と神崎さんを攫おうとしていた。

 

俺はその不良を殴る。

 

「ふざけんじゃねえ!」

 

襲いかかってきたが、足を払い、膝蹴りを決める。

 

「ふざけんじゃない?それはこっちのセリフだ。俺のクラスメイトに手を出すな。」

 

しかし、突然目の前が真っ暗になった。俺もカルマも、リーダー格の男に鉄パイプで殴り倒された。

 

目がさめると、

 

「渚君、杉野君、カルマ君、黒崎君、大丈夫ですか?」

 

「良かった、奥田さん無事だったのか。」

 

「すみません、思いっきり隠れてました…」

 

「いや、それが正しいよ奥田。。」

 

「それより、どうするの?殺せんせーに相談する?」

 

「そうだね渚君、けど、俺に直接処刑させてくんない?あいつら。」

 

「ああ、あいつら、俺らのクラスメイトに手を出しやがった。」

 

俺もカルマも、珍しくキレていた。

 

「みんな、二人を助けよう。」

 

渚の手に、しおりが開かれていた。

 

そこにはこう書かれていた。

 

「旅先で誘拐された時の対処法」

 

そんなのしおりには書かないが、

 

殺せんせーのしおりははどこまでも手厚いのだった。

 


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