黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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5話 集会の時間

俺はカルマ、渚、杉野と4人で一緒に帰っていた。この4人でよく一緒に帰るし、話もする。

 

カルマと渚は旧友だったし、杉野とはすぐに馴染めた。

 

杉野は人の輪に簡単には入っていけるからな。

 

さて。

 

「ねえ、釣りしない?」

 

「この季節は何が釣れるの?」

 

「この季節はヤンキーが旬なんだよ。釣り場はコンビニの前とか?

 

渚くんエサにしてたっぷり金を巻き上げよう♪」

 

カルマは悪魔の様な顔でそう言う。いつもゲスい事しか考えない、この友人は。

 

「釣るってそっち?ていうか僕はエサなの?」

 

俺はどうしてこんな悪魔と友達なんだろうか。時々考える。

 

「そういえばさー、黒崎変わったよねー。」

 

「どこが?」

 

「昔はさ、もっとぶっきらぼうで、人当たりも悪かったじゃん。

 

なんか変。」

 

俺は暗殺のお陰で変われたのかもな。けれど、

 

「変とか言うな。どーせ俺はぶっきらぼうで人当たりも悪かったよ。」

 

黒崎翔太の弱点その1

 

けなされると卑屈になる

 

「まあそう拗ねないの。」

 

「そうさせたのはお前だろ。」

 

赤羽カルマいや赤羽のアクマとの会話はいつもこんな感じだ。

 

そして翌日

 

1時間目は理科だった。爽やか学級委員コンビが殺せんせーと実験の準備をしていた。

 

「今日の実験は、お菓子から着色料を取り出す実験です。」

 

先生の指示通り実験を進める。この先生は、9教科全部教えられるらしい。

 

そして、

 

「今日の実験はここまで。残ったお菓子は先生が食べます。」

 

「自分で食うんかい。」

 

みんなそうツッコミを入れた。

 

すると、一人の女子が前に出てきた。小柄でメガネをかけた三つ編みの女子だ。

 

確か奥田さんだっけ。この手の女子は理科が得意で毒薬とか作れそうなんだけど…

 

「毒です、飲んで下さい!」

 

……え?

 

こんなにもストレートに、毒を飲め、と言われて飲む人間がいるのだろうか。

 

「いや、ストレートすぎるだろ。」

 

「毒ですって言われて飲む人間がいるか?」

 

皆も同じ感想を持った様だ。

 

「私、口下手で、上手く毒とか盛る事できないんです。だからこうして渡すしかなくて。」

 

予想的中。でも、殺せんせーがわざわざ飲むとは思えない……

 

「ごくごく」

 

「飲んだ!」

 

飲み干すと、先生の色が変わった。

 

「これは水酸化ナトリウムですか、先生には効きません。」

 

「そ、そうですか…」

 

だが、毒はもう2つほどあるらしい。

 

「ごくごく。」

 

今度は、先生の顔の形が変化する。

 

「王水ですね。金をも溶かす様な液体ですが、やはり先生には効きません。」

 

「奥田さん、生徒一人で毒を作るのは危険です。

 

先生と一緒に、先生を殺す毒薬を研究しましょう。」

 

「ターゲットと毒薬を研究してどうすんのさ。」

 

「何はともあれ、殺せんせーのことだ。そう簡単には行かないでしょ。」

 

次の日、奥田さんが作った毒薬を飲むと、先生は液体になった。

 

「どんな隙間にも入り込めます。これぞ先生の液状化。」

 

速くてヌルヌル。誰も暗殺出来ない。

 

「奥田さん、ターゲットを騙す国語力も必要です。今回のように正直に渡しても、

 

ターゲットに利用されるだけですから。」

 

「やっぱり、みんな暗殺以前の問題だね。」

 

その日は全校集会。E組にとっては地獄だ。

 

なぜなら…

 

「いきなり、おしえて、くぬどーん!」

 

「やあみんな、くぬどんだよ。今日は月に一度の全校集会。クズ代表クラスのE組は、

 

他のクラスより先に整列する決まりなんだ。

 

とっとと走れゴミども!返事はサー、イエッサーだ!」

 

裏山を下るのは大変だ。途中で蛇が出て、岩が転がる。

 

「やばいよ、こんなの間に合うの?」

 

「安心しろ、まだ時間に余裕はある。落ち着いていこう。」

 

俺が皆を元気づける様に言い、進み出す。

 

「ぎゃああああ!」

 

岩が転がってくる。蛇が追いかける。蜂が攻撃を仕掛ける。

 

ほとんど岡島が身代わりになってくれたが。

 

岡島、いい奴だった。

 

「勝手に殺すな!」

 

そうして辛くも本校舎体育館にたどり着いた。

 

ビッチ先生などハイヒールを履いたもんだから大変だ。

 

「はあ、はあ、待ちなさいよ。あんた達…、ぐはあ。」

 

ビッチ…、見栄を張るとこうなるんだ。ハイヒールなど山道を下るのに履くんじゃない。

 

すると、

 

「おやあ渚君、山奥から大変だったねえ。」

 

「ほんと落ちこぼれは大変だねえ。」

 

メガネノッポとニキビデブのモブキャラ2人が渚に絡む。

 

俺はそれに嫌気が刺したのでこう言った。

 

「ああ退屈だ。こんなモブキャラ見るために集会に行ったわけじゃないのに。」

 

するとモブ共は歯噛みした。いい気味だ。

 

「あれ、カルマは?」

 

「サボり。罰食らっても平気だってよ。成績良くて素行不良だからタチが悪い。」

 

「それお前も…」

 

そうか?ちゃんと集会に来てるじゃないか。

 

E組は集会で差別待遇を受ける。俺らはそれに長々と耐えねばならない。

 

俺にとっては平気だが。

 

「えー、君たちは全国から選ばれしエリートです。それはこの校長が保証します。

 

ですが、努力を怠ると、どうしようもない誰かさん達みたいになっちゃいますよ。」

 

校長の話は聞き流した。

 

「この手はいつも効果的ですね理事長。これのお陰で3-E以外の一流大学進学率は非常に高い。」

 

校長が理事長を褒め称える。すると、理事長は黙ってモニターを見つめていたが、やがてこう言った。

 

「いわばこれは大人社会の予習です。落ちこぼれまいとする意識を今の内から強く育てる。

 

悲しいかな…、人間は、差別する対象があった方がよく伸びる。」

 

それが理事長の教育論。見せしめの弱者を作り上げ、残りの全員にこうはなるまいと言う意識を植え付け、

 

学業成績を向上させる。確かに、大人社会の予習と言う言葉は間違っていない。

 

だが、それを中学生の内にやらせるとは、随分と嫌な世の中になったものだ。

 

その後宿泊行事の説明があった。が、E組のプリントが無かった。

 

「すみません、プリント無いんですが。」

 

磯貝が言うと、司会者の男は悪びれもせずこう言う。

 

「すみません、足りなかったみたい。それにホラ、E組は記憶力を鍛えたほうがいいんじゃ無いですか?」

 

そう言うとあたりは笑う。こんなものは陰湿なイジメと何の変わりも無い。

 

しかし、E組全員に突然プリントが配られる。

 

「おやおや、全員分のコピーがあった様ですねえ。」

 

関節の曖昧な巨漢教師が現れた。

 

「誰だ、笑いどころ潰した奴!」

 

さっきの奴が悔しがっていた。

 

しかし、殺せんせーは馬鹿なのか?こんな場所に姿を現わすとは。

 

「おい、人前に出るなと言っただろう!」

 

烏間先生が咎めるも意味は無い。

 

「大丈夫、変装も完璧ですから。」

 

…どこがだ。

 

そして、

 

ビッチ先生が堂々と現れる。さっきの哀れな姿はどこへ行った?

 

「な、なんだあの物凄い体の外人は?」

 

当然皆驚く。

 

「…何しに来た?」

 

烏間先生が問う。するとビッチは当然だと言わんばかりにこう言った。

 

「私もここの教師なんだから、来て当然でしょう?」

 

「ねえ渚、あのタコの情報、教えなさいよー。まだまだ隠してるんでしょ?」

 

「何言ってんのビッチ先生、全部教えたよ。」

 

渚が慌ててそれを否定する。しかし、

 

「嘘つけー、そうやって肝心な情報隠す気ね。お姉さんお仕置きするぞ〜。」

 

なんとビッチは胸で渚の頭を挟む。ビッチというかハレンチだ。

 

「胸はやめてビッチ先生…」

 

それを見た本校舎のモブ二人が羨ましがってる。

 

一方

 

「烏間先生、ナイフケースデコったんだ〜!」

 

中村と倉橋がナイフケースを取り出す。

 

「頼むから、。ここでは出さないでくれ!周囲の目もある。暗殺の事はあくまで内密にしてくれ!」

 

「は〜い。」

 

2人は渋々ナイフケースをしまう。

 

「あの人カッコいいな。いいなあ〜、仲よさげで。うちの男子、先生も生徒もブスばっかり。」

 

本校舎の女子がそう言ったが、壮大なブーメランだ。

 

お前らもブスだぞ。

 

とこの様に、なんだかんだE組はいつもの調子だった。

 

そして集会終了後。

 

「渚、お前ら調子乗ってない?集会中に騒いで。」

 

「E組のくせに生意気なんだよ。どうせ人生詰んでんだから、下向いてろよ。」

 

モブ二人だ。本当に嫌な奴だな。お前らだって笑ってただろう?

 

「なんとか言えよ、殺すぞ!」

 

俺も烏間先生も割って入ろうとするが、殺せんせーに止められる。

 

「まあ、見ていて下さい。」

 

すると、

 

「笑ってたの君達もだよね。それに、殺すとか言ったっけ?本気で殺そうとしたことなんて、ないくせに。」

 

渚は強烈な殺気を出し、モブ二人は怯んだ。

 

「うちの生徒達は、殺る気が違いますから。」

 

俺は唖然とした。

 

「渚、こんな殺気を隠していたのか…」

 

 


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