東方蒼血鬼~蒼き最弱の吸血鬼~   作:黒白の暗殺者

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始まりの契約

魔人には二種類パターンが存在する。

一つは人間が魔法により存在を変質させ、魔人と成ったもの。

もう一つは元から魔人という種族として生まれたもの。

前者は魔法を極めた先に存在する魔法「変在の魔法」で成ることができ、魔法を極めた者でしか辿り着けない。ただし、この魔法を誰かにかけてもらう事でも成る事ができる。

後者は「魔界」と呼ばれる異世界に存在し、強大な力を秘めている。悪魔や魔物などが犇めく魔界の生物の中でも頂点に近い力を持つ。

 

レイリスは眼を細める。

人間から魔人と成ったのならば恐らく前者だ。

魔人と成った者は魔人と成ったその瞬間から時の流れが変わる。

魔力のみで生きれるようになり、魔人と成った歳から姿が変わらない。

このノワールドという青年は見た目から察するに長い時を生きたわけでもなく、話からするとつい最近魔人と成ったはずだ。

しかし、ノワールドから感じる魔力は明らかに異常。そもそも、魔力を扱いこなすのに通常ならば30年は掛かる。どんな天才でも人間ならば早くて10年は掛かる筈だ。そして魔力を扱いこなし、魔力枯渇と補充を繰り返して魔力量は増える。

いくら魔人と成って魔力量が増えたり扱えるようになったからといっても、このノワールドから感じる魔力はそれこそ本物の魔人に近い質を誇り、その量は吸血鬼に匹敵する。短期間で魔力を鍛え上げ、魔人に出来る者は……。

「まさかとは思いますが……ノワールド・レストラム、貴方を魔人にした者は……。」

そう言いかけた時、ノワールドはゆっくりと頷き、答えを話し始めた。

「恐らく貴女の想像通りですよ。私を魔人に変え、魔力を鍛え上げた者は……魔女の一族『ノーレッジ家』の現当主にして歴代の頂点に立つ者「アペックス・ノーレッジ」。」

「やはりでしたか……。因みにお聞きしますが、魔人になって何年経ちます?」

するとノワールドは少し考える素振りした後

「ラヴァルが家を出てすぐですから……大体5年ですか。」

5年。なるほど、5年もあればあの者なら出来るだろう。

ただし、掛かる負担やリスクを度外視で、だが。

「なるほど……事情は分かりました。この依頼、契約として受け入れましょう。」

「ありがとう。それで、対価は何を渡せば良いかな?吸血鬼は悪魔でもある種族。まさか、対価が無いとは言わないでしょう?」

対価か……確かに契約ならば対価は必要……かといってこの依頼は命を貰うほどの契約でもない……というか私としては余り命を貰いたくはない……。

「対価は……そうですね。契約が終了してから考えましょうか。仮にも契約主が魔人ならばいつ終わるか分かりませんからね。」

私はそう言って魔法で羊皮紙を呼び寄せ、軽く指を切り、血で文字を書き記す。そして書いた羊皮紙を提出する。

「これが私との契約書。了承するならば契約書に血でサインをした後、血判を。」

「分かりました。それと、私の事はノワールドと呼んでください。」

ノワールドは契約書にサインし、笑いながらそう言った。

「分かりました。では、あとは契約の証を刻みましょうか。体の何処でも良いですが、リクエストはありますか?心臓に近ければ近いほど、力を扱えますからね。先に補足しときますが、私と契約すると、ある程度貴方に私の力を扱える様になります。と言っても、私の種族はあくまでも吸血鬼であり、貴方は既に強大な力を持つ魔人。吸血鬼としての力の一部と私の扱う魔剣や魔具の一部を召喚、招来する力だけですし、余り意味は無いと思いますが。」

笑いながら私もそう言う。

「ならそうですね……左手の甲にお願いします。右手は埋まってますからね。」

「分かりました。では……。」

レイリスがノワールドの左手の甲に指でなぞる様に動かしながら魔力と血を混ぜ合わせて契約の証である紋様を描いていく。

そして1分経つ頃に漸く出来上がった。

ノワールドの左手の甲には、六芒星の中心に十字架の入った盾、そしてその盾から包み込む様に翼を広げる蝙蝠と梟の翼の入った紋様が、いや、紋章が出来ていた。

 

「これで契約が終わりました。直ぐに行動しますか?」

「いえ、彼の魔女から聞いたのですが、ラヴァルは現在、馴らしの期間に入ってるらしいのです。5年前、悪魔と契約したラヴァルは力が不安定になっていた可能性があると。それで都市より外れた森の深くにある廃屋で慣らしているとのことです。期間はあと5年。」

たしかに、唯の人間が悪魔と契約をしても制御できるものではない。たが、暴走状態に陥った中、昏睡の魔法を使えたということは適性が高い可能性もある。早めに行動した方がいいかも知れない。

「わかりました。しかし、早めに行動した方が良いでしょうね。完全に馴らし終わられてからでは遅い。しかし、情報収集や対策も必要ですから……こうしましょう。2年と半年、情報を集め、それと同時に力を鍛えましょう。そして半年で可能な限りの対策を済まし、ラヴァルの所へ向かいましょう。戦闘は避けれないでしょうし、どれだけの力を持つか気になりますからね。それに……契約した悪魔についても少し気になります……。」

話を聞く限り、相当力を持つみたいですし……最悪なら魔界からきた上級悪魔か……それとも魔神クラスか……。何れにせよ対策をしておくに限るわね。

 

「分かりました。それと……これは出来ればで良いのですがね……。」

「?なんでしょう?」

ノワールドは少しだけ黙った後

「貴女の力を知りたいのと、今の自分でどこまで通用するのか知りたいので……手合わせ願えますか?」

「私も貴方の力が知りたかったので大丈夫ですよ。」

そして私たちは一度手合わせをする事になった。

新しく編み出した魔法も試してみたいですね。


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