東方蒼血鬼~蒼き最弱の吸血鬼~   作:黒白の暗殺者

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忌み子の人狼

私は影の中に人狼族の子供を隠して家に帰ってきた。

私は部屋に戻ると影の中に入った。

人狼族の子を見つけると治療を開始する。

治療といっても簡単な物で、妖力を分け与えながら傷を塞いで行くだけだ。

……改めて見ると傷が酷い。一体どれだけ暴力を受ければこんなことになるのか。

傷は頭が凹み、青アザができ、全身の打撲傷、それに内臓も2つほど壊れている。

しかしこれ程の傷を人間がつける事が出来るのか?いくら子供とはいえ人狼族だ。並みの人間ではここまではできないはず。

……そう言えば人間達は元から弱っていたと言っていた。

それに森で最初に感じた巨大な妖力。

もしや何者かの妖怪がやったのか?それも一瞬で?

どれ程強大な力があればそんな芸当が……。

私が考え事をしてた時、うぅ……と呻き声が聞こえた。

慌てて人狼族の子供の方を向くと、薄らと目を開けていた。

どうやら気がついたようだ。

 

「うぅ……暗い……ここ……は?」

 

「ここは私の影の中よ」

 

「影……?お姉ちゃん……誰……?」

 

「私はレイリス。吸血鬼よ。」

そう私が言うと人狼族の子供は怯えて震えだす。

そして震えた声で小さく声を呟く。

 

「吸血鬼……?……僕は……死ぬの?……」

人狼族の子供は震えながら嫌だ……嫌だ……と呟く。

 

殺されると思うのは当たり前だろう。

吸血鬼と人狼族は互いにとって天敵だ。

今は互いに牽制し合っている状態だ。

そんな中、吸血鬼に囚われたのだから殺されるか拷問されるか人質にされるかのどれかだと思うのも当然だろう。

 

私は怯えて震えている人狼族の子供の頭に手をやる。

人狼族の子供は頭に触れられた瞬間、ビクッとなっていたが頭を撫でると目を細めていた。

「別に拷問も殺しもしないわ。私はただ何があったのか聞きたいだけなの。だから話してくれない?」

私が頭を撫でながらいうと人狼族の子供は少しづつ話したした。

「僕も何があったのかはっきりと覚えてない……森を歩いてたらいきなり目の前が真っ暗になって、少し意識が戻ったら全身が痛くて……人間に殴られたり蹴られたりしてた……」

どうやら人間以外の何者かが関わっているのは間違いないようだ。私が感じた巨大な妖力と人狼族に感ずかれずに攻撃できる技術。こんなことが出来るほどの妖怪なんてここら辺に居ただろうか……。

 

「なるほど……ありがとうね。とりあえず今日はここで休んでてね。結構傷が酷かったから。大丈夫。明日になれば皆の所に帰れるから。」

私が撫でながらお礼を言うと少し嬉しそうにした。

けど、明日に皆の所に帰れると言った瞬間、人狼族の子供は暗い表情で俯いてしまった。

「どうしたの?」

私がそう聞くと

「帰りたくない……」

「帰りたくない?なんで?」

「戻ったらまた殴るられる……」

事情を聞くとどうやらこの人狼族の子供は忌み子のようだった。

人狼族では銀の毛を持つ者は忌み子とされ、子供からは近づかずに石等を投げられ、大人からは暴力を振るわれると言う。少し前まではそんなことは少なかったが、先代の長が亡くなり、長が変わってからは殴られる蹴られるどころか酷い時には拷問をされたと言う。

「だから集落に戻ってもまたそんな毎日が来るだけなんだ……。」

 

「……なら、家に来る?」

私がそんな提案をすると人狼族の子供は驚いた顔をして顔をあげた。

「……良いの?僕は……人狼族だよ?敵、なんだよ?」

「別に私は構わないわよ?お父様とお母様も説得して見せるわ。私は簡単にやられるほど柔でもないもの。それに……そんな話を聞いて何もしないほど私は酷くないわ。」

人狼族の子供は嬉しそうに涙を流しながら、ありがとう、と一言小さく呟いた。

 

ヘイシスside

レイリスが人狼族の子供を家に迎え入れたいと言い出した。

最初は子供といえ、人狼族だ。家に迎え入れるわけにはいかないと反対しようとしたが、レイリスから話を聞いて少し考え方を変えた。

忌み子の習慣は人狼族だけでなく吸血鬼にもそういった習慣がある。人間でもそうだ。吸血鬼や人間は異端なものを排除しようする。レイリスも私が死ねばそんな扱いを受けるかもしれない。忌み子の人狼族に異翼の吸血鬼、か。

互いに守り合える者が必要なのかもしれんな。

人狼族から忌み子の人狼族の子供をレイリスが守り、私が居なくなった後、レイリスが狙われた時に人狼族の子供が守ってくれれば……。

そう思い、結論を出した。

 

「分かった。認めよう。ただし、3日後から訓練を積んでもらう。レイリス、お前が教えてやりなさい。それと、その人狼族の子供はお前の執事とする。」

 

「ありがとう、お父様!」

レイリスは無邪気な笑顔を向けて早歩きで部屋から出ていった。

 

レイリスside

お父様から許可を貰った。

これで正式に家の一員として迎え入れられた。

 

「お父様から許可を貰ってきたわ。これであなたは正式に家の一員よ。それと今日からあなたは私の執事よ。」

「ありがとう……お姉ちゃん。」

「さて、改めて自己紹介としましょう?私はレイリス。レイリス・スカーレット。この館、紅魔館の現当主の娘。」

 

「僕はアルバス・レスト。よろしく!」

 

「よろしく、レスト。さ、今日は休みましょう。3日後から訓練もして貰わなきゃならないし、身体も休めなきゃね。」

 

レストside

僕は今まで一人だった。銀の毛を持つというだけで皆からは避けられ、蔑んだ目を向けられた。唯一、僕に優しくしてくれた長も寿命で亡くなり、本当に一人になった。

長が変わってからは毎日誰かに蹴られたし殴られた。

アザが出来るのが日常になっていたくらいだ。

もうこんな毎日は嫌だと思いながらも、言ったら余計にひどくなりそうで怖かったから何も言えずにいた。

そんな毎日で夜に森を散歩していたら急に目の前が真っ暗になって、気がついたら全身が痛くて、人間に殴られたり蹴られたりしてた。

ただ怖かった。ただ恐ろしかった。

もう嫌だと思いながら目の前がまた、真っ暗になった。

そして、目の前が完全に真っ暗になる前に一瞬だけ見えたのは此方に向かってくる蒼い翼と綺麗な群青色の髪を持つ少女だった。

 

再び気がつくと、目の前には蒼い髪を持つ少女が此方を見ていた。少女から説明を受け、少女が吸血鬼だと知り、怯えていたら少女が頭を撫でてきた。

頭を撫でられて、きっと姉がいたらこんな感じ何だろうと思ってお姉ちゃんと言ってしまった。

少女が戻れると言ったのを聞いた瞬間に反射的に嫌だと言ってしまった。

少女が事情を聞き、家族になろうと言ってきた時は驚いた。

こうして僕は少女、レイリス・スカーレットの執事となった。

レイリスお姉ちゃんは僕を救ってくれた。

あの地獄の日々から抜け出させてくれた。

レイリスお姉ちゃんは僕に優しくしてくれた。

僕を拒絶しないでくれた。

もしレイリスお姉ちゃんになにかあれば絶対に守ろう。

それが今の僕に出来る恩返しだから。




遅すぎではありますが、アルバス・レストの基本情報を。

アルバス・レスト

種族:人狼

容姿:光を反射して輝く銀色の毛と透明感のある澄んだ青い眼を持つのが特徴。
後ろ髪の長い銀色の髪をしており、普段は髪紐で纏めている。臆病で何事にも不安を持ちやすい。そのため事前に不安要素、不確定要素に対処するための策を全て張り巡らし、出来うる限り不安要素、不確定要素をゼロにしてから行動に移す。ただし咄嗟の判断に弱く、突発的な事態に滅法弱い。
よく拷問や虐めにあっていたため、全身に無数の傷がついている。
そのせいか、回復能力、身体能力、危機察知能力、観察眼が高く、危険や相手の考えなどに気付きやすい。
戦闘能力も高く、素の身体能力だけでも普通の吸血鬼にも引けをとらない。
戦闘時には全身の毛を逆立たせ、腕を人狼化させる。
本気を出すと全身を人狼化させてる。この状態になるとスカーレット家の者以外で勝てる者は限られる。

能力は「圧縮させる程度の能力」

文字通り、圧縮させる。
範囲は自身を中心に10メートル。範囲内にいれば障害や概念など関係なく問答無用で能力を作用させられる。空中、水中、地中すら関係ない。範囲内でさえあれば時間であろうが、空間であろうが、次元であろうが、理であろうが問答無用で圧縮する。
この能力の副作用として、自身の身体から10センチほど空気の層を纏っている。身体に近ければ近いほど能力が強力になるためだ。

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