不安しかないけどね、私に対する。
ブラックの言葉に、僕は何も言えなくなった。スキャバーズがピーター・ペティグリューだって?
「ありえないよ。だって、スキャバーズはずっと僕らと暮らしてきたんだぜ?もしスキャバーズがピーター・ペティグリューだったとして、十年も暮らしてきて、一度も人間に戻ったことがないなんてあり得るのか?」
「あり得る。あいつは結構忍耐強い。それこそ、私たち悪戯仕掛け人に加われるほどな。ホグズミード休暇の時に、スキャバーズを持ってきてくれ。証拠を見せてやろう。口先だけでいいのなら、一つ言えるがな」
「……証拠?」
「ああ、証拠だ。ワームテール……ピーターは逃げる前に指を一本、切り離したと言っただろう?その指の位置と、スキャバーズの欠けた指の位置は、ぴったり重なるんだ。私はそれで、スキャバーズがワームテールだと気付いた」
確かに、スキャバーズの指は一本欠けてる。でも、偶然かもしれない。ネズミ同士の喧嘩で欠けただけかもしれない。でも、リーナやハリーがブラックのことを信用している。僕は、何を信じればいいのかわからなくなってきた。
「自分が信じたいことを信じるのがいいんだよ」
声をかけたのは、リーナだった。
「何を信じればいいのかわからないのなら、信じたいことを信じればいい。自分の道を進むのがいいんだよ」
それを聞いて、僕は心の中が晴れていくのを感じた。もやもやが次第に消え失せていく。後に残ったのは、ハリーとリーナへの信頼だった。
「僕はまだ、ブラックのことを疑ってる。でも、ハリーやリーナのことも信頼してる。だから、ホグズミード休暇にスキャバーズを連れて行く」
リーナは笑っていた。
……あれ?
「……ところでリーナ、僕、もしかして声に出してた?」
「いや?無言だったよ?」
……あれぇ?
「僕の心の声にリーナが応えてくれたように思えるんだけど?」
「その通りだけど?」
……わっつ?
「……マーリンの髭!」
「思考を放棄するなよ、ロン。リーナ、さっさと答え合わせ」
「わかってるよ。
去年、私は動物の声が聞こえる能力があるって言ったよね?」
僕らは頷く。ハリーが蛇語使いだってことがわかった時、ネビルが質問していたから。
「訂正しよう。私のはそんな優しい能力じゃない。
『心を読む程度の能力』って言うのが一番近い。心の声を聞き、思考を感じ取り、過去を読み取る。それが私の能力。もちろん、任意発動だから普段は聞こえないけどね」
……そういえば、心当たりが何度かある。飲み物が欲しかった時にタイミング良く持ってきてくれたり、チェスの時に、未来でも見てるんじゃないかと思えるぐらい、僕の次の次の手を封じてきたり。
「あと私は吸魂鬼です」
……拝啓、パパ。僕は何が何だかわかりません。マーリンの髭。
ハニー・ポッターも面白いですよね。マーリンの髭はどこかで出そうかと思っていました。