その日のグリフィンドール寮は、歓喜と悲壮に満ちていた。
まずは歓喜。彼らグリフィンドールが大好きな、ハグリッドが魔法生物飼育学の担当教師になったのだ。怪物好きでトラブルメイカーの感じもするが、それでも、生徒思いで面白い生物を連れて来てくれるだろう。
悲壮。これまで、ハリーやハーマイオニーとともに点数を稼いでくれて、クィディッチでチェイサーを務めてくれているリーナ・ディメントが一年間、休学するという報告だ。理由は、シリウス・ブラックの捕獲のためにディメント家の仕事を手伝うから。事情を知っているハリーは苦笑いで済ませているが、他の面々、特にウッドが嘆きすぎて放心していた。
「ねぇ、ハリー」
本を読み始めていたハリーに話しかけてきたのはロンだった。
「シリウス・ブラックって極悪人なんだろ?いっくらリーナとはいえ、さすがに危ないんじゃ……」
「大丈夫だよ。保証する」
「でもハリー、ロンの言う通りよ。もし彼女がブラックと会ってしまったら?ブラックに殺されてしまったら?あなたはきっと、一生後悔することになるわ」
「ハーマイオニー、大丈夫なんだ。色々と事情があって、詳しくは話せないんだけど、シリウスに殺される危険はないよ」
ハリーの言葉に眉をひそめる二人。彼は、大量殺人犯の捜索に駆り出されている恋人のことを、一切心配していないと言うのだ。
「もういいわ。ハリー、あなたがそんな薄っぺらい人だとは思っていなかった。いくら吸魂鬼に守られているとはいえ、いくらディメント家とはいえ、彼女一人でブラックに会ったら。断言するわ、絶対に死んじゃう」
「ハリー、考え直してよ。リーナがディメント家で教育を受けていて、僕らよりもとっても強くても、ブラックとは年季が違うんだぜ。彼女のことを信頼してるのはわかってるよ。それでも、信頼と実力は別なんだ!」
ハリーに冷たい視線を浴びせるハーマイオニーと、必死にハリーに言い聞かせるロン。
二人に挟まれたハリーは一言、
「じゃ、ホグズミードに行くときに会ってみようか」
と、軽く言ってのけた。
「……ホグズミードに行くのって、ハロウィンよりも後よ?」
「それまで待て、か。ハリー、なんで心配せずに居られるのか、理由だけでも話してくれないかい?じゃないと、僕たちは君の精神を疑ってしまうよ」
「そうだね……じゃあ、僕はシリウスと知り合いで、彼が僕の名付け親で、彼がリーナの義父だからってことで」
「「ちゃんと説明して!」」
いい笑顔で説明したハリーを二人は思いっきり揺さぶった。
「いや、そうとしか説明できないんだ。これ以上話すとリーナに小言言われるかもだし……」
「尻にしかれてるなぁ……じゃなくて、ブラックが君の名付け親で、リーナの義父ってどういうこと?」
「そうよ!リーナはディメント家でしょう?それに、ブラックは最近までアズカバンに投獄されていたのよ?なんで、彼がリーナの義父になるの?」
「そのあたりの説明も、リーナにしてもらおうか。明日手紙を出すから、そのうち会えるよ」
ハリーは二人の手を解くと、自室に戻っていった。
残された二人の間に漂うのは、困惑ばかりだった。
そろそろリーナについて、他のメンバーにネタばらしかな?