夜中、私は談話室に出てきていた。ハリーたちを待っている。
深夜十一時五十分ごろ、ハリーたちが透明マントで下りてきた。
「リーナ、行くよ」
夜の校舎の中は混み合っていた。先生や監督生、ゴーストが二人一組で見張りに当たっていたのだ。
「……ドラコ拾える?」
「たぶん平気じゃない?」
なんやかんやあってドラコと合流し、ハグリッドの小屋へ向かった。
「ハグリッド、居る?」
戸を叩くと、すぐにハグリッドが出てきた。石弓を持って。
「なんじゃ、お前さんたちか。こんなところで何しとる?」
「なんで石弓を持ってるんだい?」
「なんでもねぇ。茶、淹れるわい」
石弓について、ドラコが聞いたが、何も答えてくれなかった。でも、何かに怯えているようだ。ヤカンからお湯をこぼしたり、ポットを粉々に割ったりしてる。
「ハーマイオニーのこと、聞いた?」
「あぁ、聞いた。たしかに」
……ハグリッドが気にしてるのは窓の外のようだ。何か、嫌なものでも来るのかな?
「ハグリッド、お茶は要らないから、何に怯えてるのか、教えてくれるかい?」
「……ああ。リーナ、お前さんにも関係があるだろうしな……」
ドンドン
扉を叩く大きな音がした。
「隠れるよ」
ハリーの声で、私たちは部屋の隅に隠れた。もちろん、透明マントをかぶっている。
ハグリッドはもう一度伊集院を掴み、扉を開けた。
「こんばんは、ハグリッド」
そこにいたのはダンブルドアだった。深刻そうな顔をしている。もう一人後ろにいる。背の低い恰幅のいい体で白髪頭……何処かで見たような……あっ、
「パパのボスだ!コーネリウス・ファッジ、魔法大臣だ!」
ロンが囁く。ドラコも頷いてるし、本当みたいだ。あの時の一人が、こんなにも力をつけてるなんてね。冤罪を起こしてるのに。
「状況はよくない。ハグリッド。すこぶるよくない。来ざるをえなかった。マグル出身が三人もやられた。もう始末に負えん。本省が何かしなくては」
「俺は、けっして」
ファッジに対して、ハグリッドが抗議し、ダンブルドアにすがる。
「ダンブルドア先生さま、知ってなさるでしょう。俺は、けっして……」
「コーネリウス、これだけはわかってほしい。わしはハグリッドに全幅の信頼を置いておる」
「しかし、アルバス、ハグリッドには不利な前科がある。魔法省としても、何かしなければならんーー学校の理事たちがうるさい」
「主に父上だな。ダンブルドアを嫌ってる」
ドラコが囁いた。私は、ファッジに対して怒りが浮かんだ。状況証拠だけで考え、それ以外の証拠を見ない。口を開けば体面のことばかり。心の中も自己保身だらけだ。なんでこんな奴が魔法大臣やってるんだ?
「コーネリウス、もう一度言う。ハグリッドを連れていったところで、何の役にも立たんじゃろう」
ダンブルドアの瞳にも、怒りが浮かんでいた。
「私の身にもなってくれ。プレッシャーをかけられている。何か手を打ったという印象を与えないと。ハグリッドではないとわかれば、かれはここに戻り、何のとがめもない。ハグリッドは連行せねば、どうしても。私にも立場というものがある」
ハリーが私の肩を抑える。それで気がついたが、私は前に飛び出そうとしていた。ファッジに襲いかかろうと。正直、殺したいとか思ってる。いや、ただ殺すだけじゃなく、操ることで彼への信頼をゼロにして、拷問して、最大限の苦しみを味わってもらってから、できる限りの痛みを伴う方法で死んで欲しい。
「リーナ、今手を出しちゃダメ。もし手を出したら、ハグリッドが余計不利になる」
「うん……わかってる」
ハグリッドは、アズカバン島の一時留置所に送られることになった。そして、それが告げられたタイミングで、また戸を叩く音がした。
ダンブルドアが開くと、そこにはルシウス・マルフォイがいた。
「父上……?一体何をしに……?」
全員が警戒する。ファングも唸っている。
「もう来ていたのか。ファッジ」
「何の用があるんだ?」
「君には関係ないさ。ただ学校に立ち寄っただけなのだが、校長がここだと聞いたものでね」
「では、わしに何の用があるというのかね?ルシウス?」
「ああ、実にひどいことだがね、ダンブルドア。理事たちは、あなたが退くときが来たと感じたようだ。ここに『停職命令』があるーー十二人の理事が全員署名している。残念ながら、私ども理事は、あなたが現状を掌握できていないと感じておりましてな。これまでいったい何回襲われたというのかね?今日の午後にはまた二人。この調子では、ホグワーツにはマグル出身者は一人もいなくなりますぞ?」
「父上が他の理事を脅したんだ。父上は他の理事よりも権力を持っている」
「ルシウスよ、理事たちが真にわしの退陣を求めるなら、わしはもちろん退こう。しかし、覚えておくがよい。わしが本当にこの学校を離れるのは、わしに忠実な者が、ここに一人もいなくなったときだけじゃ。覚えておくがよい。ホグワーツでは助けを求める者には、かならずそれが与えられる」
最後の一文は、私たちに向けて言ったものだろう。こちらの方を、一瞬だけとはいえ、何かの核心を持った目で見た。
「あっぱれなご心境で」
マルフォイ氏は扉に向けて歩きだし、ダンブルドアと共に外に出た。ファッジはハグリッドを先に出そうとしたが、ハグリッドは足を踏ん張った。
「誰か何かを見つけたかったら、クモの跡を追っかけて行けばええ。そうすりゃちゃんと糸口がわかる。俺が言いてえのはそれだけだ。それから、誰か、俺のいねえ間、ファングに餌をやってくれ」
ハグリッドはそう言うと、外に出て行った。まあ、私の家族のことだ。ハグリッドに乱暴をするやつはいないだろう。実験台とにしそうなやつはいるけど。
戸が閉まる。ファングが扉に駆け寄り、悲しげな声で鳴き始めた。
「大変だ。ダンブルドアはいない。今夜にも学校を閉鎖したほうがいい。ダンブルドアがいなけりゃ、一日一人は襲われるぜ」
ロンが言って、みんなが頷いた。
アンケート
東方キャラを出すか否か。また、出すとしたらどのキャラが良いか。秘密の部屋編終了までにお願いします。