吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

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パーセルマウス

「「〈武器よ去れ(エクスペリアームス)〉!」」

 

合図と同時に、武装解除術を放つ。それはルーナも同じで、二つの呪文は私とルーナの間で衝突し、私の呪文が競り勝った。

 

さすがに吹っ飛びはしなかったが、ルーナは少しよろめいて、彼女の杖は私が持っていた。

 

「強いね。あたしが負けた理由って、なんだろう?」

 

「魔法に込めた気持ちの量じゃない?もう一回やる?」

 

「ううん。平気。あたしは寮に帰るね」

 

「もういいの?」

 

「うん。面白い人に会えたから。パパにフクロウ便を送って、記事にしてもらうんだモン」

 

「記事?」

 

「『ザ・クィブラー』だよ。あたしのパパが編集長なんだ」

 

「そうなんだ。今度読んでみるよ」

 

「よろしくね。また今度」

 

ルーナは大広間を出て行った。うん。色々と不思議な子だね。何かやらかしそうな気がするけど。

 

周りを見てみると、ずいぶんと悲惨な様子になっていた。鼻血を出している者や踊っている者、ハーマイオニーがブルストロードにヘッドロックをかけられていたり、何の呪文をくらったのか、うつ伏せで寝ている者もいた。

 

「これは、非友好的な術の防ぎ方をお教えするほうがいいようですね」

 

スネイプがロックハートに向けて言う。ほんと、その通りだ。盾の呪文は役に立つ。

 

「さて、誰か進んでモデルになってくれる組はありますか?ーーおや、ミス・ディメント。お相手はどうしましたか?」

 

「帰りました。あと、あなたと組になるつもりはないと言っておきます」

 

こいつと組んだら面倒なことになる。主に周りのロックハートファン共からの視線とか。嫉妬の感情も刺激的で美味しいけどね。

 

「ではーーマルフォイ君とポッター君、お願いいたしますよ?真ん中へ来てください」

 

ハリーとドラコのペアだ。この二人なら、心配はいらないね。

 

「さあ、ハリー。ドラコが君に杖を向けたら「結構です。さっさと合図をお願いします」ーーわかりました」

 

ハリーがロックハートの指導を無視した。ドラコはスネイプに耳打ちされている。何か秘策でもあるのかな?

 

「それでは、一、二、三ーーそれ!」

 

号令。同時に、ドラコが呪文を放った。

 

「〈石になれ(ペトリフィカス・トタルス)〉!」

 

武装解除どこいった。ハリーは盾の呪文で術を防ぐ。

 

「〈縛れ(インカーセラス)〉!」

 

「〈裂けよ(ディフィンド)〉、〈燃えよ(インセンディオ)〉!」

 

「〈防火せよ(インパービアス)〉!」

 

攻撃を防御して、反撃するを繰り返している。さて、どこで終わるかな?

 

「〈蛇出よ(サーペンソーティア)〉!」

 

あ、ドラコが蛇を出した。毒蛇ではないようだけど、大きい。噛まれたら大怪我を負うかも。

 

ハリーはどうしようって顔をして、ドラコはやってしまったって顔をしている。

 

「私にお任せあれ!」

 

しゃしゃり出るロックハート。嫌な予感が。

 

「〈蛇よ、去れ(ヴォラーリ・アセンデリ)〉!」

 

やっぱり。ロックハートの呪文は蛇を吹き飛ばしただけで、蛇を怒らせる結果となってしまった。それを見たハリーは、無意識だろうか、蛇の方へ進み、言った。

 

「■■■■■。■■!」

 

何を言ったのかはわからない。けど、蛇語だってことだけはわかった。蛇はハリーの足元でおとなしく丸くなっている。私はハリーの元へ向かった。

 

「ハリー、何してんの!人前で蛇語を使うなって何度注意したと思ってるのかな?」

 

「ご、ごめん。けど、今使ってなかったら誰かが襲われてた」

 

「そうだけどさ?パーセルマウスは闇の魔法使いの証とされてるんだよ?継承者と間違えられるでしょ」

 

「あ、スリザリンもパーセルマウスだったんだっけ?」

 

「そうだよ。あーもう!〈響け(ソノーラス)〉、『みんな、このことは気にしないこと!ハリーが継承者じゃないのは私が保証するから!』〈静まれ(クワイエタス)〉」

 

とりあえずここにいた全員に聞かせたけど、何人が信じたことか。

 

「〈蛇よ、消えよ(ヴィペラ・イヴァネスカ)〉。ポッター、付いて来い。他の者は寮へ帰るように!ふむ、君はどうするかね?ミス・ディメント」

 

スネイプは蛇を燃やすような形で消し去った。彼はハリーがなぜパーセルタングを使えるか、なぜ私がそれを知っていたかを聞きたいのだろう。

 

「ついていきますよ」

 

「そうか。なら来い」

 

私とハリーはスネイプについていく。行き先は地下。スネイプの研究室のようだ。

 

スネイプの部屋に入り、椅子に座る。

 

「さて、我輩が聞きたいことはわかっているのだろう?リーナ・ディメント」

 

「ええ。ハリーが蛇語を使えた理由と、なぜ私がそれを知っていたかですよね?」

 

「その通りだ。しかし、君が知っている理由はわかるのだよ。おおかた、昔ポッターが使ったところを見たのだろう?問題は、なぜそれがパーセルタングだとわかったかだ。君が人ではないという事はダンブルドア校長よりうかがっておる。だが、詳しいことは聞いていないのでね、教えていただけるとありがたいのだが?」

 

スネイプが目を合わせてくる。開心術を使おうとしているのだろう。いや、使っている。心の中に入られた感触がある。

 

「ふむ、吸魂鬼か。なるほど、今まであの者どもは忌まわしき存在だと思っておったが、実に面白い連中らしい。君は能力で、ポッターが蛇と話せることを知ったのか」

 

「ええ。でも、生徒に開心術をかけても良かったんですか?」

 

「非常事態なのだよ。生徒がパーセルタングを使ったというね。しかし、ミス・ディメントでも、なぜポッターがパーセルマウスなのかを知らないらしい。ポッター、君はわかるかね?」

 

「わかりません、先生」

 

「本当に?」

 

「ええ。でも、僕がスリザリンの子孫ではないと言う確証もありません。隔世遺伝の可能性もあります」

 

「……なぜ、パーセルマウスが闇の魔法使いの印なのか、わかるかね?スリザリンも蛇語が使え、そして、かの闇の帝王も蛇と話せたからだ。ミス・ディメント、君なら、ポッターの心の奥底に入れるだろう?見てくるがよい」

 

「なぜ?」

 

「おそらくだが、そこに答えがある。さあ、とっとと見るんだ」

 

しぶしぶ、ハリーと向き合う。そして、ハリーの心の奥底へと沈んでいった。

 

 

 

今までの記憶。ハリーがダーズリー家に預けられ、私たちと出会い、ホグワーツに入学した記憶。それよりも奥。

 

自分でも覚えていない記憶。ハグリッドの乗るオートバイ、ダンブルドアとマクゴナガル先生、それにシリウス・ブラック(お父さん)。そして、ハリーの両親と、リリー・ポッターを貫く緑の光線。霧散する闇の帝王と、リリーの亡骸を抱きしめるスネイプ。

 

その奥ーー

 

 

「っ!?」

 

 

異物。本来ここにはないモノ。私が幾度も見てきたモノ。ハリーのモノとは違う、誰かの魂。そのカケラ。

 

 

 

意識を浮上させる。あれがハリーが蛇語を話せる原因だろう。

 

「見えたかね?」

 

「ええ。ハリー、よく聞いて。君の中には、君以外に誰かの魂のカケラが入っている。私はとある禁術を聞いたことがある。おそらくそれの効果だ」

 

「誰かの……魂のカケラ?一体誰の?」

 

「予想を出ないけど、ヴォルデーー」

 

「そこまでだ。二人とも、もう寮へ帰れ。このことは、我輩からダンブルドア校長に伝えておこう」

 

話をスネイプに遮られる。彼に追い立てられ、私たちは寮へ帰った。

 

「……それで?さっきの続きは?」

 

「ああ。君の中のもう一つの魂の持ち主は、おそらく、

 

 

ヴォルデモートだ」


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