「チッチッチーー私の好きな色はライラック色だということを、ほとんど誰も覚えていないようだね。『雪男とのゆっくり一年』の中でそう言っているのに。『狼男との大いなる山歩き』をもう少ししっかり読まなければならない子も何人かいるようだーー第十二章ではっきり書いているように、私の誕生日の理想的な贈り物は、魔法界と、非魔法界のハーモニーですね。もっとも、オグデンのオールド・ファイア・ウィスキーの大瓶でもお断りはいたしませんよ!」
誰か、こいつを止められないか?さっさとこいつがペテン師だって証拠を出して、監獄へ放り込みたいんだけど。
「……ところが、ミス・ハーマイオニー・グレンジャーは、私のひそかな大望を知っていましたね。この世界から悪を追い払い、ロックハート・ブランドの整髪剤を売り出すことだとねーーよくできました!それにーー」
答案用紙を裏返す
「満点です!ミス・ハーマイオニー・グレンジャーはどこにいますか?」
ハーマイオニーが手を挙げる。
「すばらしい!まったくすばらしい!グリフィンドールに十点あげましょう!では、授業ですが……」
机の後ろにかがみ込んで、覆いのかかった大きな籠を持ち上げる岩心。
「さあーー気をつけて!魔法界の中で最も汚れた生き物と戦う術を授けるのが、私の役目なのです!この教室で君たちは、これまでにない恐ろしい目にあうことになるでしょう。ただし、私がここにいるかぎり、何ものも君たちに危害を加えることはないと思いたまえ。落ち着いているよう、それだけをお願いしておきましょう」
えーと、魔法界で最も汚れた生き物?その籠の中には
「どうか、叫ばないようお願いしたい。連中を挑発してしまうかもしれないのでね」
覆いを取り払うロックハート。
「さあ、どうだ。捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小妖精」
予想大当たり。みんな呆れてポカーンとしているし、フィネガンは笑いをこらえきれなかった。
「どうかしたかね?」
「あの、こいつらがーーあの、そんなにーー危険、なんですか?」
案外。悪戯の度合いによっては死人が出るからね。岩を頭の上に落っことされるとか、崖の上に持って行かれてぽいっとされるとか。まあ、ホグワーツを卒業できるぐらいの実力があるなら対処は簡単だけど。近づけなければどうということはない。
「さあ、それでは!」
声を張り上げる岩心。まさか……?
「君たちがピクシーをどうあつかうかやってみましょう!」
籠の戸を開けた。つまるところ、ピクシーを教室中にばらまいた。
もちろん大混乱。うん、さすがに幻想郷の妖精でもここまではしないかな。幻想郷行ったことないけど。日本のどこかに本当に在ったりするのだろうか。あ、ネビルがシャンデリアにぶら下がってる。ご愁傷様。
「さあ、さあ、捕まえなさい。捕まえなさいよ。たかがピクシーでしょう……」
私とハリーは近づいてくるピクシーを叩き落としてるけど?教科書を一冊持って、近づいてくるピクシーに振り下ろす。ね?簡単でしょ?上からのやつには〈盾の呪文〉で対応。後ろからは壁際なので被害なし。遠くから何か投げつけようとしてくるやつは教科書もしくは気絶したピクシー妖精などを投擲して対処する。杖の出番はありません。
「〈
ロックハートが杖を構えて呪文を唱える。が、効果なし。しかも、杖を取り上げられて外に放り投げられた。ロックハートが机の下に潜る。そのタイミングで、シャンデリアとともにネビルが落っこちてきた。ちょうど、岩心の居た位置に。もう少し逃げるのが遅ければ清々したのに。
終業のベルが鳴ると、みんなが出口へ押しかけ、あっという間に消えていった。さて、私たちもーー
「さあ、そこの四人にお願いしよう。その辺に残っているピクシーをつまんで、かごに戻しておきなさい」
おい
「耳を疑うぜ」
耳を噛まれているロン。取り敢えず、ロンに当たらないように〈失神呪文〉を放つ。
「私たちに体験学習をさせたかっただけなのよ」
「体験だって?ハーマイオニー、ロックハートなんて、自分のやっていることが自分で全然わかっていなかったんだよ」
「ちがうわ。彼の本、読んだでしょーー」
以下、不毛な言い合いなのでカット。あと、フクロウ便で、ウィル爺にロックハートの経歴の調査を依頼しておいた。遅くとも一年以内に結果を出してくれるだろう。返事として、なぜかホグワーツでも使えるように改造されたボイスレコーダーが三つきたけど。