吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

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文才が欲しい……


グリンゴッツとロックハート

夜の闇(ノクターン)横丁から出て、グリンゴッツへ向かう。あと、ハリーに手紙を出しておく。この手紙はブライトが作ったもので、日本の式神を参考にしているらしい。簡単に言うと、ヒトガタにメッセージを書いて、ヒトガタの頭の部分に血を垂らして、相手を思い浮かべる。すると、ヒトガタが相手のところへ飛んでいくと言うもの。知らない人が見ると、何かの呪いかと思うだろうね。

 

 

 

 

どうしよう、リーナとはぐれた。……まあ、リーナだし、心配はいらないだろうけど。

 

「うん?どうしたんだい、って、リーナはどこへ行ったんだい!?まさか、別の火格子へ?」

 

「あー、多分そうですね。うっかり間違えたのかと」

 

「早く探さないと!もし夜の闇(ノクターン)横丁へ入っていたら!」

 

「心配はいらないと思います。もしリーナに手を出す奴がいたら、ダンブルドア並みに恐ろしい人が報復に行くと思うので」

 

もちろん、ウィル爺のことだ。あの人、前、ダンブルドアと引き分けたって言ってたんだよなぁ。吸魂鬼としてではなく、魔法使いとして。吸魂鬼状態でも引き分けるかな?だとしたらダンブルドアは化け物か。

 

「それでも捜したほうが良いだろう?……なんだあれは。何かの呪いか?」

 

ウィーズリーおじさんの視線の先には、人のカタチをした紙がふよふよと浮かんでいた。こっちへ向かっている。リーナの式神かな?

 

「多分、リーナからのメッセージです。確かあれは、魔法ではなく東洋の呪術の類なので、匂いに引っかかることはないかと」

 

「そ、そうか。それで?メッセージにはなんと?」

 

「えーと、グリンゴッツで待っているそうです。それじゃあ、行きましょう」

 

「そうだな」

 

 

 

 

グリンゴッツにはハーマイオニーがいた。私が式神を飛ばすところも見ていたらしく、あれについて根掘り葉掘り聞かれた。ちなみにブライトは最近、SCPのアベルやカインを作ろうと、東洋の呪術を研究しているらしい。式神やら付喪神やら。最近、人工的に付喪神を作る方法を編み出したとか言ってた。あ、万能薬は完成させたそうです。

 

「あ、ハリー!ロン!こっちよ!」

 

あ、ハリーが来たみたい。見回すと、やっぱりという感情と、ホッとした感情が入り混じったような顔をしたハリーが歩いていた。

 

「リーナ、良かった、無事だったか。モリーは半狂乱だったよ。どこから出たんだい?」

 

話しかけてきたのはウィーズリーさんだ。

 

夜の闇(ノクターン)横丁だったよ。『ボージン・アンド・バークス』っていう店。ルシウス・マルフォイが物を売っていたよ。毒薬やら闇の物品やら。あとでうちの家にも教えておく。あ、これ戦利品」

 

常時持っている吸魂鬼のマントの中に収納していた『輝きの手』を出しながら言った。

 

「ルシウス・マルフォイが?まあ、君の家に任せれば平気か。ああ、私があいつのしっぽを掴みたかったが……」

 

グリンゴッツの中では、ハーマイオニーの両親が不安気に佇んでいた。それを見つけたウィーズリーさんはそっちに気をとられた。

 

「なんと、マグルのお二人がここに!」

 

おお、なんとも楽しそうな声。少し感情の味見を。……うーん、日本で食べたわたパチみたいな感じだ。なんというか、飛び跳ねてる。

 

「一緒に一杯いかがですか!そこに持っていらっしゃるのは何ですか?ああ、マグルのお金を換えていらっしゃるのですか。モリー、見てごらん!」

 

ウィーズリーさん、はしゃぎ過ぎ。

 

「あとで、ここで会おう」

 

ロンがハーマイオニーに言い、私たちは地下の金庫へと向かった。

 

 

ウィーズリー家の金庫を見たとき、なんというか、悲壮感が漂った。シックル銀貨一握りと、ガリオン金貨一枚。……『輝きの手』を買ったとき、値切る前は百ガリオンだったはずだ。少し申し訳ない。

 

ハリーの金庫へ来た時、ハリーはなるべく外から見えないようにお金を袋に入れた。さて、あとは私の金庫か。

 

 

「ここは本当にグリンゴッツなのかい?こんなところ、見たこともない」

 

「ディメント家専用の金庫群だよ。私は1999番金庫だ」

 

ディメント家の金庫群にたどり着いた私たちは、坂を下っていた。魔法で中を拡張しているので、扉は一センチごとにあるが、だいぶ降ることになる。せめて、エレベーターを付けたい。

 

「っと、ここだここだ」

 

目当ての、1999番金庫の前に立つ。興味しんしんなウィーズリー家の視線を受けながら、私は杖を取り出して、扉の穴にはめた。すると、扉は横に逸れて、中が見えるようになった。……ハリーの金庫並みにお金があるかも。だとすると、1000番金庫ーーアズカバン全体の金庫はどのくらいの金額が入っているんだろう?そう思いながら、私は金を袋に詰め、外に出た。

 

 

グリンゴッツの入り口まで来ると、みんなは別行動を取り始めた。パーシーは新しい羽根ペンを買いに、双子はリー・ジョーダンとどこかへ、ウィーズリー夫人は末っ子のジニーとともに中古の制服を買いに行き、ウィーズリーさんはグレンジャー夫妻とともに漏れ鍋へ向かった。

 

「一時間後にみんなフローリッシュ・アンド・ブロッツ書店で会いましょう。教科書を買わなくちゃ」

 

ウィーズリー夫人はそう言うと、双子に夜の闇(ノクターン)横丁に行くなと忠告した。

 

私たちはダイアゴン横丁を散策した。途中でアイスクリームを買って食べたりとか。味はイチゴとチョコバナナ。ロンはクィディッチ店でチャドリー・キャノンズのユニフォームや箒を食い入るように見つめていた。あともう少しで君用の箒が完成するから我慢しなって。

 

一時間後、フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店へ向かうと、黒山の人だかりができていた。人がゴミのようだ。……あ、上の窓に何か横断幕が。なになに?

 

『サイン会

 

ギルデロイ・ロックハート著

自伝『私はマジックだ』

本日午後十二時三十分〜十六時三十分』

 

現在時刻、十三時ほど。ちょうどサイン会にぶち当たったか。……まさかウィーズリー夫人、これを狙ったんじゃ?

 

「本物の彼に会えるわ!だって、彼って、リストにある教科書をほとんど全部書いてるじゃない!」

 

ハーマイオニーが黄色い声を上げる。彼女もファンだったかー。中に無理やり入って、『泣き妖怪バンシーとのナウな休日』を手に取り、ウィーズリー・グレンジャー両一家の並んでいるところに割り込む。

 

「まあ、よかった。来たのね。もう少しで彼に会えるわ……」

 

誰かこいつら何とかして。さすがにこの感情は不味い。なんというか、ドリンクバーの飲み物全種類を混ぜたような感じだ。もちろんコーヒーも。あ、ロンが日刊予言者新聞の記者に足を踏まれた。

 

「それがどうしたってんだ」

 

記者にどけと言われたロンが文句を言う。それを聞いたのか、ロックハートが顔を上げた。ロンを見て、ハリーをジーっと見つめる。それから勢いよく立ち上がり、叫んだ。

 

「もしや、ハリー・ポッターでは?」

 

人垣が割れて、道が出来る。ロックハート(もう次から岩心でいいや)が列に飛び込み、ハリーの腕を掴んだ。同時に、私も岩心の腕を掴む。

 

「何です?離していただけますか?」

 

「それは貴方にも言えることでは?先に人の腕を掴んだのはそちらでしょう?」

 

「ええ。ですが彼は私と一緒に写る権利があります。貴女にはそれがありますか?」

 

「なら、貴方にはハリーを勝手に連れて行く権利があるんですか?勝手に連れて行くのは私が許しませんが」

 

「君は彼の何なのです?」

 

「彼氏彼女の関係ですが何か?」

 

周りがどよめく。なんでだろう。

 

「ふむ、お名前を」

 

「ディメントとだけ。今後このような行為を見かけたら家の者に知らせて補導させていただきます♪」

 

ディメントと聞いた岩心は笑顔を引きつらせ、少し後退した。

 

「なら、ここで言いましょうーーみなさん!なんと記念すべき瞬間でしょう!私がここしばらく伏せていたことを発表するのに、これほどふさわしい瞬間はまたとありますまい!ハリー君が、フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店に本日足を踏み入れたとき、この若者は私の自伝を買うことだけを欲していたわけであります。それを今、喜んで彼にプレゼントいたします。無料でーー」

 

それからも、岩心の演説は続いた。うん、正直ぶん殴りたい。私のハリーにそんな手で触れやがって。

 

「まもなく彼は、私の本『私はマジックだ』ばかりでなく、もっともっとよいものをもらえることでしょう。彼もそのクラスメートも、実は、『私はマジックだ』の実物を手にすることになるのです。みなさん、ここに、大いなる喜びと、誇りを持って発表いたします。この九月から、私はホグワーツ魔法魔術学校にて、『闇の魔術に対する防衛術』の担当教授職をお引き受けすることになりました!」

 

周りは大きな拍手と歓声を上げる。私とハリーは一つ悟った。今年のホグワーツは面倒なことになりそうだ、と。




ロックハート→ロック=岩、ハート=心→岩心

なんか語呂がいいんですよね、岩心。

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