吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

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チェスと論理パズル

私たちは黒の駒の方に立っていた。向こうには白い駒と扉が見える。

 

「チェスをしなくちゃいけないみたいだ」

 

ロンが言う。私たち四人の中で、ロンが一番チェスが上手い。ここはロンに任せるのがいいだろう。

 

「僕たち一人一人が黒の駒の役目をしなくちゃいけないんだ。ちょっと待って……よし。ハリー、君はビショップと、ハーマイオニーはその隣のルーク、リーナはクイーンとかわるんだ」

 

「ロンはどうするの?」

 

「僕はナイトとかわる。大丈夫、絶対に勝てるさ」

 

話を聞いていたのか、黒のナイト、ビショップ、ルーク、クイーンがチェス盤を下り、場所を譲ってくれた。

 

「白駒が先手なんだ」

 

ロンが言う。見ると、白のポーンが二つ前に進んだ。

 

そこからは、駒を取ったり取られたりの繰り返し。ロンの采配はすごかった。

 

「詰めが近い」

 

ロンが急につぶやく。白のクイーンがロンの方を向いた。

 

「やっぱり……これしか手はない……僕が取られるしか」

 

『だめ!』

 

ハリーとハーマイオニーが同時に叫んだ。

 

「これがチェスなんだ!」

 

ロンはきっぱりと言った。

 

「ハリー、ハーマイオニー。チェスは擬似戦争みたいなものなんだ。犠牲を払わずに戦争を止めることは、奇跡でも起きない限り無理なんだよ。戦争を止めるために、犠牲という対価を払う。等価交換なんだ」

 

私はロンに加勢した。

 

「ハリー、僕が取られたら君が動けるようになる。それで、キングにチェックメイトをかけるんだ!」

 

ハリーはまだ渋っているが、ロンの覚悟を悟ったのか、頷いた。

 

ロンが前に出た。白のクイーンが飛びかかり、ロンの頭を石の腕で殴りつける。ハーマイオニーは動きかけたがなんとか持ち場に踏みとどまった。白のクイーンはロンを片隅へと引きずっていく。気絶しているようだ。

 

ハリーは三つ、左へ進み、

 

「チェックメイト」

 

と言った。

 

白のキングは王冠をハリーの足元に投げ出し、残っていた全ての駒が二つに分かれ、前方の扉への道を作り、お辞儀した。

 

「少し待ってて」

 

私はロンの元へ向かう。

 

「〈癒えよ(エピスキー)〉」

 

応急手当てをして、扉へ向かう。さすがに起こすことはしない。今は休ませてあげなくちゃ。

 

「次は何だと思う?」

 

ハリーが聞く。

 

「スプラウトはすんだわ。『悪魔の罠』だった……鍵に魔法をかけたのはフリットウィックに違いない……チェスの駒を変身させて命を吹き込んだのはマクゴナガルだし……とすると、残るはクィレルの呪文とスネイプの魔法薬ね」

 

次の扉にたどり着く。

 

「いいかい?」

 

ハリーが扉を開ける。そこには、テーブルがあり、その上に七つの形の違う瓶が一列に並んでた。

 

「スネイプだ」

 

ハリーが言う。

 

「でも、何をすればいいんだろう」

 

そう言いつつ、三人とも中に入る。その途端、入り口に紫色の炎が燃え上がった。前方のドアには黒い炎。一瞬厨二病かと思った。漆黒の炎なんて、厨二病以外の何者でもない。

 

瓶の横には巻紙があった。

 

『前は危険 後ろは安全

君が見つけさえすれば 二つが君を救うだろう

七つのうちの一つだけ 君を前進させるだろう

一つの瓶で退却の 道が開ける その人に

二つの瓶は イラクサ酒

残る三つは殺人者 列にまぎれて隠れてる

長々居たくないならば どれかを選んでみるがいい

君が選ぶのに役に立つ 四つのヒントを差し上げよう

 

まず第一のヒントだが どんなにずるく隠れても

イラクサ酒の左は いつも毒

第二のヒントは両端の 二つの瓶は種類が違う

君が前進したいなら 二つのどちらも友ではない

第三のヒントは見たとおり 七つの瓶は大きさが違う

小人も巨人もどちらにも 死の毒薬は入ってない

第四のヒントは双子の薬 ちょっと見た目はちがっても

左端から二番目と 右の端から二番目の 瓶の中身は同じ味』

 

要約すると、一つが前進用、一つが後退用、二つが酒で残りが毒。酒の左には毒があり、両端は種類が違い、どちらも前進用ではない。一番大きい瓶と一番小さい瓶のどちらにも毒はなく、両端から二番目の瓶は毒か酒。

 

「すごいわ!」

 

ハーマイオニーが叫ぶ。

 

「これは魔法じゃなくて論理よ。パズルだわ。大魔法使いと言われるような人って、論理のかけらもない人がたくさんいるの。そういう人はここで永久に行き止まりだわ」

 

「ハーマイオニー、解けるんだね?」

 

「もっちろん!ちょっとだけ待ってて……」

 

そう言って、ハーマイオニーは紙を何回か読み直し、瓶の列に沿って行ったり来たりした。そしてついにパチンと手を打った。

 

「わかったわ。一番小さな瓶が、黒い炎を抜けて先へ進ませてくれるわ」

 

一番小さな瓶を見ると、ギリギリ二口分あった。

 

「ハーマイオニー、戻る薬もわかってるんだろう?戻ってロンと合流して、鍵の部屋で箒に乗る。それで仕掛け扉もフラッフィーも飛び越えられる。まっすぐにふくろう小屋へ行って、ヘドウィグをダンブルドアへ送ってくれ。頼む」

 

「でも、もし『例のあの人』がいたらどうするの?」

 

「私が守るさ。絶対に」

 

「リーナ……わかったわ。二人とも、頑張って!」

 

そう言って、ハーマイオニーはいきなり抱きついてきて、頬にキスをしてくれた。

 

「「行ってきます」」

 

まずハリーが、そして私が薬を飲む。次の試練はクィレルだろう。でも、大丈夫なはずだ。私たちは黒い炎の中を進む。

 

通路を進み、扉を開ける。……臭い。よく見ると、ハロウィンの時よりも大きなトロールが横たわっていた。頭から血を流して気絶している。

 

「よかった、戦わずにすんだね」

 

ハリー、それフラグ。

 

反対側の扉にたどり着いた時、物音がした。振り返ると、やはりトロールが起き上がっていた。




試練の順番の変更と、なぞなぞの問題文の訂正。

しばらく更新できないかも。

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