吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

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三つの試練

夕食の後、談話室でみんなが寝静まるのを待ち、ハリーが透明マントを取ってきた。

 

「誰かマントに拡大呪文をかけれる?さすがに四人はきついかも」

 

「無理。魔法を全てレジストするみたい。でもギリギリ四人で入れると思うよ?」

 

「ほんとだ。四人で入っても足は出ないね。……リーナ、夏休みの間に、マントに入った人に合わせてマントの大きさが変わるようにできない?」

 

「……ブライト(あいつ)に頼むことになるのか。変な機能がつかないように見張っとこう」

 

「あー、そうだね。それでさ、リーナ。帰ってきたら、大事な話があるんだ。とっても、大事な」

 

「……奇遇だね、ハリー。私もだ。大丈夫、無事に帰ってこれるさ」

 

私は一つの決心をしている。賢者の石を守ると言う一つの節目を越えたのなら、ハリーにーー。

 

「時間だ。行こう」

 

肖像画を開き、外に出る。幸い、四階への階段の下まではフィルチにもピーブズにも会わなかった。

 

つまり、四階への階段でピーブズに出会ってしまったと言うことだ。

 

「そこにいるのはだーれだ?見えなくったって、そこにいるのはわかってるんだ。だーれだ。幽霊っ子、亡霊っ子、それとも生徒の悪戯っ子か?見えないものが忍び歩きしてる。フィルチを呼ーぼう。呼ばなくちゃ」

 

どうしよう……ん?あれは……

 

「ピーブズ、そこで何をしている」

 

「ち、血みどろ閣下!?い、いえ、生徒の悪戯っ子がそこにいるので……」

 

「そうか。私にはどこにいるのか見えんがな。さあ、さっさと行け。ここに今夜いっぱい近寄るでない」

 

「はい、閣下。仰せのとおりにいたします」

 

……行ったか。でも、何故血みどろ男爵が?

 

「そこの生徒たち。感謝するのだな。我が寮の、貴様らの友が私に頼んできたからこそ、私はここにいるのだから。何か目的があるのだろう?さっさと行くがいい。ああ、友からの伝言だ。成功を祈ってると言っていたぞ」

 

「ありがとう、男爵。お礼はまた今度」

 

「気にするな」

 

マルフォイが血みどろ男爵を送ってくれたみたいだ。

 

すぐに、私たちは四階の廊下にたどり着いた。扉はすでに少し開いている。

 

「やっぱりだ。もうフラッフィーは突破されてる」

 

「どうする?戻りたかったら戻ってもいいよ?」

 

私は改めて、ロンとハーマイオニーへ問う。

 

「バカ言うな」

 

「一緒に行くに決まってるでしょ」

 

即答。頼もしいね。

 

中へ入ると、フラッフィーは起きていた。

 

「フラッフィー。誰か来た?」

 

(ターバン巻いた人。たしか、クィレルって呼ばれてた人が)

 

「ありがとう。まずいかもしれないからね。通らせてもらうよ」

 

(……危ないよ?)

 

「大丈夫さ」

 

しぶしぶだが、フラッフィーは道を開けてくれた。

 

仕掛け扉を開け、中を覗き込む。何も見えない。

 

「私から行くよ」

 

「ダメだ。僕から行く」

 

そう言って、ハリーは私を押しのけて扉の向こうに消えていった。

 

少しして、

 

「オーケーだよ!」

 

と聞こえてきたので飛び込んだ。

 

どんどん下へ落ちていく。

 

ドシン。

 

「痛っ!」

 

ハリーの上に落ちちゃった。

 

「ごめん」

 

「うん」

 

すぐにロンとハーマイオニーも落ちてくる。途端、ハーマイオニーが慌て始める。

 

「まずいわ!これ、『悪魔の罠』よ!」

 

着地したのは床ではなく、植物だったのだ。

 

「『悪魔の罠』、『悪魔の罠』……暗闇と湿気を好む!誰か、火をつけて!」

 

ハリーが杖を出して、リンドウ色の火を植物に向けて発射する。すると、すぐに足に絡みついていた植物は解け、私たちは下に落ちた。

 

「ハーマイオニーが『薬草学』をちゃんと勉強してくれていて助かったよ」

 

「ハリーが冷静だったのもね」

 

横を見ると、奥へと続く一本道があった。

 

しばらく進んでいると、何か音が聞こえてきた。

 

「羽の音みたいだ」

 

「そろそろ出口だ。正体がわかるよ」

 

通路の終点は、天井が高いドームのような場所だった。上には鳥が飛んでいる。さっきの音はあの子たちの羽の音だったみたいだ。前には分厚い木の扉。

 

「とりあえず、扉まで進んでみましょう。鳥たちが襲ってくるかもしれないけど……」

 

ハーマイオニーの言葉で、走って扉まで向かう。扉には鍵がかかっており、アロホモラを使っても開けられなかった。

 

「鍵開け呪文でも無理……なんでここに鳥がいるのかしら?そうか、鳥よ!あの鳥をよく見て!鍵が鳥みたいに飛んでるのよ!」

 

部屋を見渡すと、箒が一本だけ浮いていた。本物の鍵をあれで捕まえろってことだろう。

 

「ここにクィレルがいないってことは先に進んだはず。なら、一度捕まってるから羽が傷ついてるかも」

 

「わかった」

 

ハリーが箒に乗り、鍵の群れに突っ込む。少しして、ハリーがひときわ大きな鍵を掴んだ。その途端、それ以外の鍵がハリーに襲いかかった!

 

「ハリー!」

 

「そこを……どいてぇぇぇ!」

 

ハリーが扉に突っ込んだ。

 

「〈守れ(プロテゴ)〉!」

 

盾の呪文を使い、鍵の突進を防ぐ。その間に、ハリーは鍵を開け、扉を開いていた。

 

ハリーが鍵を逃すと、そのあとは鍵は襲ってこなくなった。

 

次の部屋は真っ暗だった。けど、少し進んだところで明かりがついた。……目に映ったのは大きなチェス盤と、大きなチェスの駒だった。




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