吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

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PrologueⅢ

「はい、これが貴女の箒。私のお手製よ」

 

黒髪の女性ーーーリゼは黒、と言うか闇と言った方がしっくり来るような箒を渡してきた。

 

「箒無しで空を飛ぶ人間は今の所死喰い人ぐらいだから、箒で飛ばなきゃ誤解されるの。あ……貴女、人間の姿に変身出来る?」

 

〔教えてください〕

 

「はぁ……エドの奴、教えずに、こっちに寄越したのか。んーと、感覚で頑張れ」

 

〔酷い!〕

 

「私は感覚派だ!」

 

 

 

 

数分後、ようやく人間体になれた。動物擬き(アニメーガス)って、こんな感じなのかな?

 

「へぇ、可愛いじゃない。見事なロリっ子」

 

「元々は日本人だったの?」

 

「うんにゃ。一度ウィルーー二番目に生まれた吸魂鬼に、日本に連れてかれた事があるの。以来、日本文化の虜なのよー」

 

「……日本ェ……」

 

あ、箒忘れてた。

 

「あー、箒?はいこれ。乗り方解る?」

 

「感覚で行けるかな、と」

 

「うん。頑張れ。私は教えるのは無理だ」

 

えーと、まずは箒を地面に置いて、

 

「上がれ!」

 

ヒュンッ

 

「おー、一発成功か。流石」

 

手に箒が収まった。次は、箒を跨いで、両足で地面を蹴る!

 

「お、おおお!浮いてるー!」

 

「……私達の移動方法って、基本浮いてるけどねー?」

 

これまた一発成功。てか、浮いてるのはわかるけど、箒に乗ってるって感覚が殆ど無い!

 

「その箒は私のオリジナル品でね。銘を《シャドウスネーク》と言う。他のどの箒よりも隠密性に優れてるよ。スニッチやブラッジャーにも気付かれることが無いほどに、ね」

 

なんと言うチート性能。クィディッチ出たら大活躍だね。

 

「……あれ?オリジナル品?」

 

「おう。私は箒作りに特化していてね、吸魂鬼が持ってる箒の殆どは私が作った!しかも、一つとして同じ性能の箒は無いのさ!」

 

吸魂鬼ってスゲー。

 

 

 

 

「戻ったよ」

 

〔おう、おかえり。……あ、人間体になる方法言うの忘れてたな〕

 

「リゼに言われて、感覚でなんとかしたよ。で、この後は?」

 

〔まずは勉強。同時並行で魔法の練習だな。アズカバンの案内はウィルがアズカバンに戻ってきてる筈だからそいつに案内してもらえ〕

 

「二番目に生まれた吸魂鬼だっけ?」

 

〔ああ。ウィル・ディメント・ウィスプ。ジャックと同じ様な事をした第二の馬鹿。まあ、物凄くしぶといってだけで消滅はするけどな〕

 

アズカバンの案内か。どんな施設があるんだろう。

 

 

 

 

数時間後。そこには色々学んでパンクしかけた私がいた。にしても、ディメント家って、魔法界のお目付役って呼ばれる純血一族と認識されているとは。しかも、吸魂鬼だと知っている者は少ないし。

 

あと、吸魂鬼が持つ能力についても教えて貰った。曰く、眼球は無くとも目は見えるし、だいたいの感情が色として見えるらしい。また、視覚に関係する能力を持っている者もいるとか。名前や誕生日や寿命が見える人とか、嘘を判別出来る人とか、物体の最も弱い場所が見える人とか、未来が見える人とか。私は、人の心を読み、記憶を観る事が出来る。完全に、原作の吸魂鬼とは違う存在になってるね。

 

魔法の方は、うん。スパルタだったよ。浮遊呪文に始まり、あとは幾つかの難しい闇の魔術ーー許されざる呪文とか悪霊の火とかーーと、守護霊の呪文とかの、聖属性を持っているであろう呪文がまだ使えない程度にまで練習させられた。人間体の吸魂鬼には守護霊の呪文は反応しないとの事。……聖属性の呪文使ったら即消滅とか無いよね?

 

さて、息抜きにアズカバンの探検でもしてみよう。もちろん、ウィルに頼んでね。




聖属性の呪文→守護霊の呪文、悪霊の火の反対呪文など、闇に対して効果を持つとされる呪文。因みに、悪霊の火の反対呪文は「聖者の大河」。オリジナルの魔法で、悪霊の火をそのまま大量の水に置き換えた様な呪文。熟練者なら意図的に動かせる事が出来る。

追記設定
吸魂鬼はセストラルが見える。元々魂だし。ウィル・D・ウィスプさんはウィル・オー・ウィスプが元ネタ。因みに、ウィル・オー・ウィスプの元ネタはジャックと同じ人。伝わった国が違ったため、人物も、成れの果ても、似て非なるものになった。

吸魂鬼は原作では闇の魔法生物となっている。この作品でも、大半の人間の認識は変わらない。実際には、限り無く闇に近い魔法生物。闇の魔法生物とは違う。ヴォルデモート側にも、騎士団側にも付く可能性はあるし、どっちつかずの可能性もある。どの可能性も、同様に確からしい確率で平等。

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