新学期が始まってから、クィディッチの練習はさらに厳しくなった。そして、練習しての最中に、ウッドがとあることをカミングアウトした。
「みんな、今度の試合では絶対にふざけるのはやめろ。次の試合の審判はスネイプだ。すきあらばグリフィンドールを減点しようとしてくるだろう」
みんなが驚く。スネイプがクィディッチの審判をやることはこれまでまったくなかったんだろう。……ハリーが心配なのかな?
談話室に帰っても、みんなのスネイプが審判をやることに対しての心配は収まらなかった。悪い人じゃないんだけどね。
その時、談話室にネビルが入ってきた。いや、倒れこんできたって方が正しいか。
「誰にやられたの?」
ネビルの両足はぴったりくっついていた。呪いだろう。
「マルフォイにやられたんだ。誰かに試してみたかったって……」
ハーマイオニーが呪いを解く。まったく。またマルフォイか。面倒事を持ってくるね。
「やられるのが嫌ならやり返しなよ。君なら出来るだろう?」
「僕はグリフィンドールにふさわしくないんだ。勇気がない。マルフォイがさっきそう言ってた」
ネビルがうなだれる。はぁ……。
「ネビル。マルフォイなんかの言うことを、私たちが言うことより信用するのかい?君なら、マルフォイに勝てるよ。絶対に、マルフォイには無い何かを持っている。絶対にね」
ネビルが顔をあげて、少しほほえんだ。
「ありがとう、リーナ。うん……次、マルフォイにあったら頑張ってみるよ」
そう言って、ネビルは男子寮に入っていった。これで、ウジウジしなくなるといいけど。
○
翌朝、校長室に変な物体が忍び込んでいたと知らされた。確認すると、雷と電だった。そう言えば校内探検に行ってから帰ってきてなかったね。フィルチの部屋に回収されるっぽいから、後で取りに行こう。いや、勝手に帰ってくるかもね。
ハリーは昨日からクィディッチに出るかどうか悩んでいたらしい。けど、出ることに決めたようだ。スネイプが苦手らしいけど、スリザリンに目にもの見せてやるって息巻いてた。ロンとハーマイオニーは、もしもの時のために、『足縛りの呪い』の練習をしている。もし、スネイプがハリーの箒に呪いをかけた犯人だったら、と考えているようだ。スネイプって誤解されやすいよね。
そんなこんなで試合当日。外を見てみると、ダンブルドアも観戦に来ていることがわかった。これなら、クィレルも何もできない。スネイプの頑張りは無駄だったようだね。
ピッチに出て、箒で飛び上がる。試合が始まった。少しだけ観客席を見てみると、ロンとハーマイオニー、ネビルがいるところにマルフォイたちが近づいて行くのが見えた。っと、危ない危ない。間一髪でブラッジャーを避けて、クアッフルを持っている、名も知らぬハッフルパフ選手の元へ向かう。ちっ。気づかれたか。別の選手にパスされた。相手がゴールにたどり着く方が早いね。追いつけない。
ロンたちの方を確認すると、ロンとネビルがマルフォイ、クラッブ、ゴイルと乱闘していた。ハーマイオニーはハリーを応援している。何があった。後で教えてもらおう。
ハリーをみると、スネイプの真横をかすめてスニッチを取っていた。まだどちらのチームもゴールしていない。試合が始まってから終了するまで五分も経っていない。さすがハリー。これまでで最高のシーカーなんじゃないかな?
箒置き場に箒を戻しに行くために更衣室から出たところで、ロンと出会った。
「ロン、取っ組み合いの喧嘩してたけど、何があったの?」
「マルフォイが君たちのことをバカにしたのさ。もっとも、リーナのことはなにも言えなかったみたいだけどね」
「ふうん。そっかー、マルフォイがねぇ……私をバカにしなくても、ハリーをバカにしたんでしょ?ふふふ……後で悪夢でも見せてやろうかなぁ?」
目の前でロンの顔が青ざめているけど気にしない。さて、どんな手を使って、マルフォイに後悔させてやろうか。
そんなことを考えていると、ハリーが戻ってきた。先に箒を戻しに行っていたのだ。でも、少し慌てている。
「ハリー、どうしたの?箒を戻しに行っただけでしょ?」
「スネイプがクィレルを脅してたんだよ。フラッフィーを出し抜く手段は見つかったのかって。まだ、クィレルは知らないみたいだけど、いつ、フラッフィーの弱点がバレることか……」
「ハリー、君、クィレルが犯人だって決めつけてるけどさ、スネイプが犯人のように思えるんだ」
ハリーの説明に対してロンが反論する。確かに、スネイプがクィレルを脅していると、スネイプが悪者に見える。
「スネイプだったら、クィレルに聞くよりは自分で見つけ出すんじゃない?『生ける屍の水薬』を飲ませるとかして」
そうなんだよね。ハリーの言った通り、スネイプなら魔法薬でなんとかするんだろう。ともかく、クィレルがまだ、フラッフィーをなんとかする方法を知らないのなら、賢者の石は安全だね。