吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

14 / 119
変身術の呪文って、明確なのが一つも出てない気が。


お陽さま、雛菊、溶ろけたバター

「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」

 

なんとなく威張った話し方をする女の子が立っていた。ネビルを連れて。すでに新品のホグワーツのローブに着替えている。

 

「見なかったって、さっきそう言ったよ」

 

女の子は聞いてないね。杖に気を取られている。

 

「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」

 

女の子が座り込む。名前ぐらい言おうよ。

 

「あー……いいよ」

 

咳払いするロン。緊張してるのかな?

 

「〈お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ〉」

 

杖を振るロン。でも何も起こらない。

 

「その呪文、間違ってない?」

 

「色を変えるのは変身術の一部だね。変身術の呪文は定義されてないのが多いから、間違ってるわけじゃないよ。定義するとなると、どれほどの数定義しなくちゃいけないのやら。イメージが足りなかったんでしょ」

 

女の子が言い、私が言い返す。

 

「あら、言うじゃない。私も練習のつもりで簡単な呪文を幾つか試したけれど、全部成功したわ。あなた、やってみたら?」

 

「ああ、いいだろう。〈お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ〉」

 

黄色に変わるスキャバーズ。どうせなら、このまま悪戯してやろうか。

 

「へぇ、さすがね。私はハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

 

「僕、ロン・ウィーズリー」

 

「ハリー・ポッター」

 

「リーナ・ディメントだよ」

 

「ほんとに?私、あなたのこと知ってるわ。『近代魔法史』『闇の魔術の興亡』『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ。それに、ほとんどにディメント家が出てくるの」

 

「僕が?」

 

呆然とするハリー。まあ、英雄だって言われても謙遜してたハリーらしいと言えばハリーらしいが。

 

「私があなただったらできるだけ全部調べるけど。三人とも、どの寮に入るかわかってる?」

 

「ネビルがショボーンってなってるからかまってあげなよ」

 

「あら。ならもう行くわ。三人とも着替えたほうがいいわよ。もうすぐ着くはずだから」

 

ネビルを引き連れて出て行くハーマイオニー。

 

「どの寮でもいいけど、あの子のいないところがいいな」

 

杖をトランクに投げ入れながら、ロンが言う。

 

「ヘボ呪文だと思ったんだけどな。まさか、ジョージが教えた呪文が成功するなんて」

 

「ジョージェ……」

 

ちょっとは信用してやれよ。

 

「君のお兄さんたちはどの寮なの?」

 

「ママとパパを含めて、全員グリフィンドール。レイブンクローならまだしも、もし、スリザリンに入ることになったらどうしよう!」

 

「そんなにスリザリンが嫌なの?」

 

スリザリンかぁ。ウィル爺の話だと、伝わる話がだいぶねじ曲がってるらしいけど。

 

「……あ、スキャバーズの色、戻さなくちゃ」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。