「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」
なんとなく威張った話し方をする女の子が立っていた。ネビルを連れて。すでに新品のホグワーツのローブに着替えている。
「見なかったって、さっきそう言ったよ」
女の子は聞いてないね。杖に気を取られている。
「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」
女の子が座り込む。名前ぐらい言おうよ。
「あー……いいよ」
咳払いするロン。緊張してるのかな?
「〈お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ〉」
杖を振るロン。でも何も起こらない。
「その呪文、間違ってない?」
「色を変えるのは変身術の一部だね。変身術の呪文は定義されてないのが多いから、間違ってるわけじゃないよ。定義するとなると、どれほどの数定義しなくちゃいけないのやら。イメージが足りなかったんでしょ」
女の子が言い、私が言い返す。
「あら、言うじゃない。私も練習のつもりで簡単な呪文を幾つか試したけれど、全部成功したわ。あなた、やってみたら?」
「ああ、いいだろう。〈お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ〉」
黄色に変わるスキャバーズ。どうせなら、このまま悪戯してやろうか。
「へぇ、さすがね。私はハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」
「僕、ロン・ウィーズリー」
「ハリー・ポッター」
「リーナ・ディメントだよ」
「ほんとに?私、あなたのこと知ってるわ。『近代魔法史』『闇の魔術の興亡』『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ。それに、ほとんどにディメント家が出てくるの」
「僕が?」
呆然とするハリー。まあ、英雄だって言われても謙遜してたハリーらしいと言えばハリーらしいが。
「私があなただったらできるだけ全部調べるけど。三人とも、どの寮に入るかわかってる?」
「ネビルがショボーンってなってるからかまってあげなよ」
「あら。ならもう行くわ。三人とも着替えたほうがいいわよ。もうすぐ着くはずだから」
ネビルを引き連れて出て行くハーマイオニー。
「どの寮でもいいけど、あの子のいないところがいいな」
杖をトランクに投げ入れながら、ロンが言う。
「ヘボ呪文だと思ったんだけどな。まさか、ジョージが教えた呪文が成功するなんて」
「ジョージェ……」
ちょっとは信用してやれよ。
「君のお兄さんたちはどの寮なの?」
「ママとパパを含めて、全員グリフィンドール。レイブンクローならまだしも、もし、スリザリンに入ることになったらどうしよう!」
「そんなにスリザリンが嫌なの?」
スリザリンかぁ。ウィル爺の話だと、伝わる話がだいぶねじ曲がってるらしいけど。
「……あ、スキャバーズの色、戻さなくちゃ」