吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

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開催宣言

デザートも皿から消え去り、食器類が元のようにピカピカになると、もう一度ダンブルドアが立ち上がり広間が静かになった。

 

「さて、みんなよく食べ、よく飲んだことじゃろう。いくつかお知らせがある。もう一度、しっかりと耳を傾けてくだされ。

管理人のフィルチさんから、城内持ち込み禁止の物の追加のお知らせじゃ。『叫びヨーヨー』、『噛みつきフリスビー』、『殴り続けのブーメラン』。禁止品は全部で四百三十七項目あるが、知りたい者はフィルチさんの事務所に行くがよい。

いつもの通り、校庭内にある森には許可証を持つ者以外は立ち入り禁止。ホグズミードも三年生までは禁止じゃ。

次のお知らせなんじゃが……一部の生徒にとっては、大きすぎるショックじゃろう。しかし、わしはこの辛さを乗り越えてこれを伝えなければならない。すまぬのう、今年のクィディッチ対抗杯は取りやめなんじゃ」

 

……え。うそ、なんで?……ああ、三大魔法学校対抗試合があるからか。今年の最上級生はクィディッチできないのね。代わりに対抗試合に出られるかもだけれど。

ハリーやフレッジョ、ロンは口をパクパクさせて、ウッドの次にグリフィンドールチームのキャプテンになったアンジェリーナは抗議しようと何やらブツブツ言い始めていた。

 

「これは、十月から今学年いっぱいまでの期間行われるとあるイベントのためじゃ。先生方もほとんどの時間とエネルギーをこのイベントに費やすことになる。しかしじゃ、わしは、こと行事がみなにとって大いに楽しめるものになると確信しておる。なので、ここに大いなる喜びをもって発表しよう。今年、ホグワーツで──」

 

ダンブルドアがそこまで言った時、全ての音をかき消すかのような雷鳴とともに大広間の扉が開き、誰かが入ってきた。長いステッキを持ち、旅行マントとフードを身につけている。

フードを脱いだ男はみんなに注目される中、教員席に向かって歩き始めた。そこで気がついたけど、片方の足が義足のようだ。踏み出すと硬いもの同士がぶつかる音がする。

雷で照らし出された男の顔は、恐ろしいものだった。そして、ギョロギョロと蠢く左目の義眼。もしかして、彼は──

 

「では、先に紹介するとしよう。今年から闇の魔術に対する防衛術を担当してくださる、アラスター・ムーディ先生じゃ。マッド-アイ・ムーディと言えば分かりやすいかのう」

 

──やっぱり。アラスター・マッド-アイ・ムーディ。最高クラスの闇祓いだ。用心深いのか、かぼちゃジュースには手をつけないで自前の酒瓶で飲み物を飲んでる。

 

「えー、オホン。みな、落ち着いたかのう。先ほど言いかけたことの続きを言わせてもらいますぞ。

これから数ヶ月に渡り、我が校は、まことに心踊るイベントを主催することになっておる。この催しはここ百年以上行われず、厳正なる審議を経て、ようやく開催が決定した。この開催を発表するのは、わしとしても大いに嬉しい出来事じゃ。ホグワーツ魔法魔術学校校長、アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアは、今年、ホグワーツで、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を行うことを発表しよう」

 

「ご冗談でしょう、校長!」

 

「耄碌しましたか、校長!」

 

双子がダンブルドアに声をかける。張り詰めた空気が一気に霧散した。

 

「残念ながら、冗談ではないしわしはまだ耄碌しとらんよ、ミスター・ウィーズリーズ。

三大魔法学校対抗試合についての歴史は、まあ、各自で調べてみるがよい。図書室を探し回るのもいい経験になるじゃろう。マダム・ピンスに怒られないようにならのう。

さて、百年以上前におびただしい量の死者を出したことで中止となったこの競技じゃが、今回、様々な規則や安全策を設けることで選手に死の危険が及ばぬようにし、ようやく再開されることとなった。

十月にボーバトンとダームストラングの校長が、代表選手の最終候補生を連れて来校する。ハロウィンの日に、三校から一人ずつ選手が選ばれるのじゃ。公平で正大な審査員によってのう。そして、優勝杯、学校の栄誉、そして選手個人に与えられる賞金一千ガリオンを賭けて戦うこととなる」

 

「俺は立候補するぞ!お前は座って見てろよ、フレッド!」

 

「お前こそ!選手になるのは僕に決まってるさ、ジョージ!」

 

フレッドとジョージは立候補すると言っている。他のテーブルでも、立候補すると言っている人が大勢いる。ハリーはどうするんだろう。あ、出られないんだった。

 

「話は最後まで聞いて欲しいんじゃがのう。諸君らがホグワーツに優勝杯をもたらそうという熱意に満ちていることは非常によく伝わったが、残念ながら、代表候補として名乗りを上げられるのは十七歳以上のみじゃ。これは最終決定で変更されることはない。年少の者はくれぐれも時間を無駄にしないように。わし自ら、不正なきように魔法をかけるのじゃから。

一ヶ月後にはボーバトンとダームストラングの生徒たちが到着し、今年度のほぼ全てをこの学校で諸君らとともに過ごすことになる。みな、礼儀と厚情を尽くしてくれると信じておるし、たとえ誰がホグワーツの代表選手として選ばれようと、心から応援すると信じておる。

では、早速で悪いのじゃが、すぐに就寝するがよい。明日の授業に寝坊しても知りませんぞ?」

 

ダンブルドアが席に座ると、みんなが入れ替わりで立ち上がり、玄関ホールへと向かい始めた。フレッジョは是が非でもエントリーしてやると言っているけど、多分無理だろう。あの狸じじ……ダンブルドアが信用する審査員なんだ。老け薬でも騙しきれないだろうし、もしかしたら一度騙しきれたと思わせた後に反撃するぐらいのことはするんじゃないかな?騙しきるのなら強力な錯乱呪文か、それこそ服従の呪文を使うしかないだろう。そして、双子にそこまでの能力はないはずだ。

 

 

広間から出るときに見たムーディは不気味な笑いを浮かべてるような気がした。


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