最後の生徒の組分けが終わり、マクゴナガル先生が帽子と丸椅子を片付ける。ロンはすでにナイフとフォークを持ち、金の皿をじーっと見つめていた。もちろん、私もだ。
ダンブルドアが立ち上がる。さて、何を言うのか──
「さて、組分けも無事に終わったし、わしから今、君たちに言う言葉は二言だけじゃ。──思いっきり、かっ込め!」
「「さすがダンブルドア!!」」
私とロンがダンブルドアに応えて、皿に現れたばかりの食べ物をどんどん小皿に取り分けていく。ハリーやハーマイオニー、ネビルもだ。あ、このマッシュポテト美味しそう。
「今晩はご馳走が出ただけでも運が良かった」
真上から声がした。見上げると、ほとんど首無しニックが漂っていた。
「先ほど、厨房でピーブズが暴れましてね。祝宴に参加したいと言っていたのですが、『ゴースト評議会』──ホグワーツのピーブズを除くゴーストによる評議会です──で議論したのですよ。『太った修道士』はチャンスを与えようとしましたが、『血みどろ男爵』は参加させるべきではないとテコでも動かない。私は男爵に賛成ですがね。
結果、ピーブズは厨房でいつもの通りに。何もかもひっくり返し、鍋や釜を投げては床をスープの海にして。屋敷しもべ妖精たちがどれほど怖がったと──」
ガチャン、と何かが落ちる音がした。ハーマイオニーがかぼちゃジュースの入ったゴブレットをひっくり返したようだ。
「ニック、屋敷しもべ妖精が、ホグワーツにもいるって言うの?」
「もちろん。イギリス中のどの屋敷よりも多く、そして洗練されてるでしょう。百人以上はいるかと」
「私、一人も見たことないわ!」
「彼らは日中は滅多に厨房を離れません。夜になると出てきて掃除をしたり、火の始末をしたり。存在を気付かれないのはいい屋敷しもべ妖精の証拠です」
「……お給料は、お給料はもらってるのよね?お休みももらってるわよね?それに、病欠とか、年金とかも!」
ハーマイオニーの言葉を聞いて、ニックが高笑いする。
「病欠に年金ですって?屋敷しもべは病欠や年金、給料も何も、仕事で得られる報酬を望んでないのです!彼らの栄誉とは魔法使いに仕え、魔法使いを支えること。彼らにとっては報酬は侮辱に等しい。最高の報酬は、主人からのお褒めの言葉なのです」
ハーマイオニーはそれを聞くと、すぐに食器をテーブルに置き、皿を遠くに押しやった。絶食するのかな?
「ハーマイオニー、絶食したって意味ないよ。ニックの言葉の方が正しいんだ」
「奴隷労働でしょう。休みはない、病気でも休めない、お給料ももらえない!奴隷労働以外の何だって言うのかしら?」
「……今度、厨房に聞きに言ってみれば?自分たちの境遇をどう思ってるのかって」
私はそれだけ言うと、再び食べる作業に戻った。時々、ハリーと食べさせあいしたりしたけど。
中身がほとんど無くなった皿が一度綺麗になり、デザートが出てくる。ロンが糖蜜パイの匂いをハーマイオニーに嗅がせてたけど、ハーマイオニーの絶食の決心は強いようだ。あ、ロンをひと睨みで黙らせた。