吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

107 / 119
ハーマイオニーの癇癪

最後の生徒の組分けが終わり、マクゴナガル先生が帽子と丸椅子を片付ける。ロンはすでにナイフとフォークを持ち、金の皿をじーっと見つめていた。もちろん、私もだ。

ダンブルドアが立ち上がる。さて、何を言うのか──

 

「さて、組分けも無事に終わったし、わしから今、君たちに言う言葉は二言だけじゃ。──思いっきり、かっ込め!」

 

「「さすがダンブルドア!!」」

 

私とロンがダンブルドアに応えて、皿に現れたばかりの食べ物をどんどん小皿に取り分けていく。ハリーやハーマイオニー、ネビルもだ。あ、このマッシュポテト美味しそう。

 

「今晩はご馳走が出ただけでも運が良かった」

 

真上から声がした。見上げると、ほとんど首無しニックが漂っていた。

 

「先ほど、厨房でピーブズが暴れましてね。祝宴に参加したいと言っていたのですが、『ゴースト評議会』──ホグワーツのピーブズを除くゴーストによる評議会です──で議論したのですよ。『太った修道士』はチャンスを与えようとしましたが、『血みどろ男爵』は参加させるべきではないとテコでも動かない。私は男爵に賛成ですがね。

結果、ピーブズは厨房でいつもの通りに。何もかもひっくり返し、鍋や釜を投げては床をスープの海にして。屋敷しもべ妖精たちがどれほど怖がったと──」

 

ガチャン、と何かが落ちる音がした。ハーマイオニーがかぼちゃジュースの入ったゴブレットをひっくり返したようだ。

 

「ニック、屋敷しもべ妖精が、ホグワーツにもいるって言うの?」

 

「もちろん。イギリス中のどの屋敷よりも多く、そして洗練されてるでしょう。百人以上はいるかと」

 

「私、一人も見たことないわ!」

 

「彼らは日中は滅多に厨房を離れません。夜になると出てきて掃除をしたり、火の始末をしたり。存在を気付かれないのはいい屋敷しもべ妖精の証拠です」

 

「……お給料は、お給料はもらってるのよね?お休みももらってるわよね?それに、病欠とか、年金とかも!」

 

ハーマイオニーの言葉を聞いて、ニックが高笑いする。

 

「病欠に年金ですって?屋敷しもべは病欠や年金、給料も何も、仕事で得られる報酬を望んでないのです!彼らの栄誉とは魔法使いに仕え、魔法使いを支えること。彼らにとっては報酬は侮辱に等しい。最高の報酬は、主人からのお褒めの言葉なのです」

 

ハーマイオニーはそれを聞くと、すぐに食器をテーブルに置き、皿を遠くに押しやった。絶食するのかな?

 

「ハーマイオニー、絶食したって意味ないよ。ニックの言葉の方が正しいんだ」

 

「奴隷労働でしょう。休みはない、病気でも休めない、お給料ももらえない!奴隷労働以外の何だって言うのかしら?」

 

「……今度、厨房に聞きに言ってみれば?自分たちの境遇をどう思ってるのかって」

 

私はそれだけ言うと、再び食べる作業に戻った。時々、ハリーと食べさせあいしたりしたけど。

中身がほとんど無くなった皿が一度綺麗になり、デザートが出てくる。ロンが糖蜜パイの匂いをハーマイオニーに嗅がせてたけど、ハーマイオニーの絶食の決心は強いようだ。あ、ロンをひと睨みで黙らせた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。