空き地から離れた後で、ハーマイオニーがウィンキーの処遇について怒り狂った。うん、かわいそうって気持ちはわかるけどね、ハーマイオニー。あれは当人たちの問題で、私たちが口を挟めることじゃないんだ。
森の外れまで歩いた時、大勢の人がアーサーさんに詰め寄ってきた。向こうで何があったのか、印を創り出したのは誰なのか、『あの人』が帰ってきたのか。
「『あの人』は帰ってきていない。それだけは断言しておくよ」
アーサーさんは魔法使いたちの間を掻き分け、私たちはその後ろを歩いて行った。
テントまでたどり着いて、フレッド、ジョージ、ジニー、ドラコの無事とビルたちの怪我を確認する。ビルは腕からかなり血を出していて、パーシーは鼻血を流していた。チャーリーは傷一つついていないけど、シャツが大きく裂けている。
「
「あの印を見た途端逃げて行ったよ。そういえば一人、僕らばかり狙ってきたのがいたな」
「まったく、連中は本気で同窓会気分でこの事件を起こしたのかもしれないな。さ、早く寝て早朝の移動キーでここを離れよう」
数時間後、私たちはアーサーさんに叩き起こされた。急いで片付けをして、キャンプ場を離れる。救い出されたロバーツさんは記憶修正の影響でまだとぼけているようだ。
移動キーが置いてある広場に行くと、移動キーを管理しているバージルさんに何人もの魔法使いたちが詰め寄っていた。アーサーさんは魔法使いたちを掻き分けてバージルさんと話をつけ、みんなで列に並んだ。行きは古い長靴だったけど、帰りは古タイヤだ。
ストーツヘッド・ヒルに戻り、オッタリー・セント・キャッチポールを通り抜けてしばらく進むと、隠れ穴が見えてきた。まだ三日四日ぐらいしか離れてないのに、随分と久々に見たような気がする。
「アーサー!ああ良かった、本当に良かったわ!」
隠れ穴から勢い良く誰かが走ってきてアーサーさんに抱きつく。ウィーズリー夫人だ。抱きついた拍子に手から取り落とされた新聞には昨夜のことが書かれている。
「えーと……魔法省のへま……犯人を取り逃がす……警備の甘さ……なぜディメント家は犯人を捜そうとしないのか……著者、リータ・スキーター」
「リータ・スキーターだって!?」
新聞を読んでいると、私が口にした名前にパーシーが反応した。確かスキーターって、何でもかんでもこき下ろす嫌われ新聞記者だったはず。ただ、魔法界では情報を得る手段が日刊予言者新聞ぐらいだから、みんな信じてしまうんだよね。
「リーナ、ちょっと新聞を見せてくれるかい?……やれやれ、モリー、すまない。これから役所に行って善後策を講じてくる。暖かい紅茶を用意していてくれ」
「父さん、僕も行きます」
アーサーさんとパーシーが〈姿くらまし〉を使いこの場から消える。
「ハリー、果樹園でクィディッチでもしようよ。いい気分転換になるはずだ」
「だめよ、ロン。ハリーはクィディッチをする元気もないはずよ」
「私は賛成だけどね。ハリーってクィディッチ狂の気があるから」
「リーナまで!あなたがそう言っちゃったらハリーは無理してでもクィディッチしちゃうじゃない!」
「ハーマイオニー、君はハリー自身の意見を聞くべきだと思うんだが?」
「ドラコまで……ええ、説得はもう諦めるわ」
ハーマイオニーの努力むなしく、私たちは果樹園でクィディッチをした。箒に乗ってる時のハリーはとても生き生きしていた。どんどん新しい技を試して、成功するたびに笑顔になっていく。うん、いい笑顔だ。
一週間後、次の日にはホグワーツへ向かうという日曜の夜に、ようやくパーシーが戻ってきた。より正確に言うなら、これまでより長い時間の休みを取れたと言うべきか。帰ってきても二時間いれば長い方で、ひどい時は三十分もしないでもう一度魔法省まで向かうなんてことにもなってた。もちろん、アーサーさんも。
スキーターは相変わらず魔法省をこき下ろしてるらしい。一番最近の彼女の記事はこうだったね。『なぜディメント家は『闇の印』を打ち上げた犯人を捜索せずに、バーサ・ジョーキンズを捜しているのか』。表立って捜すと勘付かれて国外逃亡されるかもしれないから気づかれないように捜してるんだけどね、ジョンとかが。
「そういえば、このドレスローブって何に使うのかしら?」
ハーマイオニーが唐突に声を出す。今年のホグワーツの必需品には正装用のドレスローブを用意することって書いてあった。私のは真っ黒なドレスで、ハリーのは深緑色の、制服に似たローブだった。
「ドレスローブなんだから、うーん……パーティとか?」
「パーティならハロウィンとかでやってるじゃない。ドレスは社交パーティとか、ダンスパーティの時に着る物よ」
その後もしばらく悩んでいたけど、結局答えは出なかった。……コリンにハリーのドレスローブ姿の写真撮ってもらわなきゃ。
ジョン
ジョン・ディメント。71話で登場。ジョン・メイトリックスといえばわかるだろうか。そう、筋肉モリモリマッチョマンの変態である。彼に隠密行動などできるのだろうか。いや、できるできないじゃない、やるんだ。