夕暮れが近づくにつれて、キャンプ場の興奮度合いはさらに高まってきた。あちこちで魔法火やら何やらが発生し、魔法省のスタッフは対応を諦め放り投げた。
行商人たちも登場し、様々な珍しいグッズを売り始めた。ファイアボルトのミニ模型とか光るロゼットとか。ロンは色々と買っていた。ドラコもこっそりとだけどビクトール・クラムの人形を買っていた。
一番気に入ったのは
テントに戻ると、全員が緑色のロゼット──アイルランドの物だ──を付けていた。
少し雑談をしていたら、森の向こうから鐘の音が聞こえてきて、木々の間に赤と緑のランタンが灯り、競技場への道を照らした。
「いよいよだ!さあ、行こう!」
アーサーさんの掛け声で道を歩き出す。ランタンは赤と緑が交互についていて、綺麗だった。緑がアイルランドで、赤がブルガリアだったかな?
二十分ほど歩いて、森を抜ける。そこは巨大なスタジアムの足元だった。周りには何千人もの魔法使いがいる。凄い熱気だ。
「このスタジアムには十万人が入れる。魔法省の特務隊五百人が一年がかりで準備したんだ。〈マグル避け呪文〉で一分の隙もない」
アーサーさんについて行って入り口に向かう。私たちが座るのは最上階の貴賓席だそうだ。よくこんなチケットを手に入れられたね、お父さんとウィル爺は。
階段を上り続けて、なんとか階段のてっぺんにたどり着く。そこは小さなボックス席で、両サイドのゴールポストの中間にあった。
ウィーズリー家と共に最前列に座ると向かい側に黒板が見えた。内容は……広告か。
このボックス席には後でマルフォイ家も来るそうだが、今は私たちの他には誰も居な──いや、一人居た。女の子の屋敷しもべ妖精が一体と、バーテミウス・クラウチ・ジュニア。かつてアズカバンからこっそりと脱走した死喰い人。なんでこんなところにいるのかはわからないけど、観戦の邪魔をしないのなら放っておこう。透明マントを被ってるみたいだから、他の人にはわからないだろうし。
三十分ほどの間に貴賓席はどんどん埋まっていった。アーサーさんは続けざまに握手をして、パーシーは誰か来るたびにピンと直立不動になるので座らないで居たらどうだろうと助言しておいた。
ファッジもこの席に座るようだ。隣には金の縁取りをした黒ビロードのローブを着た魔法使いが立っている。ブルガリアの大臣のようだ。
ルシウス・マルフォイ氏と奥さんのナルシッサさんも到着した。マルフォイ氏はアーサーさんに何か嫌味を言おうとして居たけど、ナルシッサさんが睨んで止めた。ドラコの一件で尻に敷かれ始めたようだ。当のナルシッサさんはこちらに手を振ってくれている。ドラコと仲良くしてやってくれ、と。
少ししてバグマンさんが走ってきた。そろそろ開始らしい。
「さあ皆々様、心の準備はよろしいですかな?大臣、ご準備は?」
「君さえよければ平気だろう、ルード。いつでも始めてくれ」
バグマンさんは杖を取り出して〈拡声呪文〉を使う。そして、大きく息を吸った。