転生者多スギィ!   作:ヘイ!ゼエン!

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今回も戦闘回。




3話

午前の授業を終えた俺は珍しく織斑から昼飯を誘われていた。

どうにもクラス代表者決定戦についていろいろと聞きたいらしかった。

 

「そういえばこの前の試合見たぜ。あんなふうにISを使いこなすなんていつ練習したんだ?」

 

そりゃあ会社で、とは言えなかった。俺が乗っていた時期はニュースで発表される二年近く前なので矛盾がいろいろと起きてしまう。

眼帯の女の子から教えて貰った、ということにしておいた。

 

「あのさ、頼みがあるんだ。俺にISの乗り方を教えてくれないか?」

 

そういえばこいつは一般人だったな。

周りの人間がほとんど転生者だからISに乗るのなんて当たり前だと思っていたがそうではない。織斑は特典どころか転生者ですらないのだ。

力もなく新しい環境に慣れてないその姿は昔の俺に似ていたので、手伝ってやることにした。昔は俺も金髪君に助けられたものだ。

 

とは言え俺は教えられる様な技術がない。なので…

 

 

 

 

私、いや俺、キンケドゥはちょうどクラスメイトと話ながら昼飯を食べていた所だった。

いきなり[今すぐこっちに来てくれ]というメールがレーンから届いた。

昼飯を投げ出して急いで来てみたら織斑にISの乗り方を教えてやってくれと言ってきやがった。

 

「ふざけてんのか!?」

「あはは、やっぱり駄目か」

「いや、織斑に言ったんじゃなくてな…。ったくよ、こういうのはちゃんと言ってくれ」

 

心配したじゃねぇかよ。すぐ来てくれなんて言われちゃ何かあったかと思うじゃねえか。

 

「…はぁ、貸一だからな。ちゃんと返せよ」

「あ、ありがとうな。ちゃんと返せるように頑張るよ」

「いや、織斑は返さなくてもいい。この男にキッチリ返してもらうからな」

 

レーンには買い物の1つや2つ付き合って貰わなければ対価に合わないからな。何が何でも買い物には付き合って貰うぞ。

 

 

 

 

貸一つということでキンケドゥに織斑にISの指導を約束してもらった。

貸一というのは昔から何かを奢るというのが俺と金髪君と眼帯の女の子の間では定番だった。まぁ、布仏から教えて貰った裏メニューのスイーツでも奢れば充分だろう。

 

「あのさ、本当に良かったのか?キンケドゥさん結構怒ってる風に見えたけど」

 

織斑がオロオロしながら聞いてきた。別に何の問題もない。眼帯の女の子も金髪君も俺のことをぞんざいに扱ってくるのはいつものことだ。気にすることではない。

 

それよりも自分のことを考えた方がいいだろう。今週には試合があるのだ、例え織斑でも手を抜く気はないぞ。

 

「おう!それはこっちもだぜ!」

 

意気込みは充分だった。あとはキンケドゥに任せておけばきっと強くなれるだろう。

 

ちなみに話をしていたら午後の授業は遅刻した。

 

 

 

 

いよいよ明日はクラス代表決定戦だ。

体調を整える為にも早く寝ようとしていた夜に突然来客がきた。

その来客は転生者だが今まで関わった覚えもない。一体何のようだろうか。

 

「あんたがレーン・エイムか?俺はロックオン ストラトス。ロックオンとでも呼んでくれ」

 

はぁ、これはどうもご丁寧に。

挨拶をするならもっと早い時間にして欲しかったものだ。

それで何か用件があるのか?

 

「おっと、それは悪かったな。そうだな、単刀直入に言わせてもらうか。……刹那・F・セイエイの情報は欲しくないか?」

 

セイエイの情報…?そんなもの一体どうやって手に入れたんだ。それにわざわざなんで俺に教えてくれる。

 

「刹那は昔からの知り合いでな。ああ、勘違いするなよ。別に友達な訳じゃない。それとあんたに教える理由だが……まぁぶっちゃけていうと情報を渡す代わりに仲間になって欲しいってとこだ」

 

なるほどセイエイの昔を知っているということか。なら特典のことを知っていてもおかしくはない。

しかし仲間になれ、か。

別に仲間になることに問題があるわけじゃない。だがセイエイの情報をそう簡単に渡すような奴が仲間になれば俺の情報を他の転生者に流されてもおかしくない。

何よりもそんな奴を信じる気にはならない。

 

「…っ!ハハ、信じるか。いたんだな、こんな転生者も。……さっきの言葉は訂正させてくれ。レーン、お前を男と見込んだ。俺を仲間にしてくれ!」

 

さっきまで喋っていたロックオンとは違っていた。何かに吹っ切れたような雰囲気だった。

そこにいる男は信じられる、理屈ではなく心でそう思った。

俺はロックオンに右手を差し出した。

 

「ロックオンってのはコードネームみたいなもんだ。本当の名前はライル・ディランディ、ライルって呼んでくれ」

 

ロックオンもといライルは俺の右手を握り返してくれた。

 

「改めてよろしく頼むぜ、レーン!」

 

こちらこそよろしく頼む、ライル。

 

 

 

 

そしていよいよクラス代表決定戦の日。

前回エミヤと戦ったときに来た以来だが観客席はこの前の二倍近く埋まっていた。日曜とはいえみんな暇なのだろうか?

 

セイエイやオルコット、織斑も既に来ていたようだ。俺が来てから少しして担任がやってきた。

 

「全員集まってるな。今回のクラス代表決定戦だがトーナメント方式で行う。

1回戦はセイエイとオルコット、2回戦は織斑とレーンだ。分かったらさっさと準備をしろ。」

 

どうやら俺の対戦相手は織斑のようだ。

生憎手加減をするつもりはないと言ったし、織斑もキンケドゥに指導してもらっている。全力で戦わせてもらおう。

 

 

 

 

公平性を保つために試合に出ない間では更衣室に残りモニターを見ることも禁止された。

セイエイの情報だけはライルから受け取った、いや受け取ってしまった。ライルから半ば押し付けられてしまったのだが、情報を聞いた後で聞いて良かったと思ってしまった。

 

それだけセイエイのISは強力なのだ。

もし織斑に勝てたなら、その次に当たるのは確実にセイエイだ。オルコットのISが何であれセイエイに勝てる確率はゼロに近い。

 

[ビィィィィ]

 

どうやら試合を始めるアラームが鳴ったみたいだ。俺もISスーツに着替えて準備をしよう。

 

 

 

 

我が世の春がきたああああああああ!

おっと、テンションがつい上がっちまったぜ。なんたって待ちに待ったセシリアの攻略だからな。

1組に入って、原作通りに口喧嘩もした。そしてクラス代表決定戦だ!完璧なまでに進んでいる。あとはセシリアをボコボコにして外まで運んでくれればオールOKだ!

 

「あら、逃げずに来ましたのね。今謝れば許して差し上げますわ」

「謝る理由などない。オレは男の意地を通すだけだ」

「それなら------ ここでお別れですわ!」

 

[ビィィィィ]

 

戦いの始まりを告げるアラームと同時にセシリアはレーザーライフルを構え、俺に向かってビームを撃ってきた。

俺は直ぐに壁に沿うようにアリーナを旋回して回避する。

 

(ここまでは原作通り、こっからはオレとこの“クアンタフルセイバー”のステージだ!)

 

方向をセシリアに向けて瞬時加速を使って一気に接近。完全に意表を突いた攻撃にセシリアは驚愕している。

 

「捨て身の攻撃ですか!?…ならこれは避けられませんわね!」

 

セシリアのISの非固定装備(アンロックユニット)からミサイルが放たれる。瞬時加速したこの状態では避けることが出来ない。

セシリアは勝ちを確信し、笑みを零していた。

(ところがぎっちょん!)

 

刹那のIS、クアンタフルセイバーは一瞬だけ青白く光る煙に包まれ姿をくらます。煙が晴れるとそこに刹那は存在せず消えてしまっていた。

セシリアの放ったミサイルは空を切り、そのままどこかに飛んでいってしまう。

 

「そんなっ!一体何処に……きゃあ!」

 

姿をくらましていたクアンタフルセイバーはセシリアを背後から斬りつける。よろけたセシリアに更に容赦なくGNソードIVの斬撃がぶつけられていく。

 

「くっ、インターセプター!」

 

苦肉の策としてナイフ型のブレードを取り出すも一瞬で切り裂かれてしまう。

もはやセシリアになす術はなく、クアンタフルセイバーによってシールドは幾度となく斬り付けられ地面に叩き付けられた。

それと同時にセシリアのシールドエネルギーが0になり試合が終了する。

 

[ビィィィィ]

 

今度は試合終了のアラームが鳴る。刹那の一方的な攻撃によって試合の幕は閉じた。

 

(クククっ、これでセシリアはオレに惚れるはず!オレのハーレムの始まりだ!)

 

 

 

 

「はああぁ!」

 

織斑のISが再び、こちらに向かって瞬時加速をかけてくる。敢えて回避をせずに、こちらからも瞬時加速をかけて体当たりで迎えうつ。

 

「うおっ!」

 

織斑は体を無理やり捻り回避をするが、普通のISの3倍近くあるペーネロペーの装甲を避けきれずシールドが発生してしまう。

 

試合が始まってから既に15分以上は過ぎていた。

最初の5分で決着は付くと思っていたが織斑のISが一次移行(ファーストシフト)をしてからは一気に形勢が逆転した。

 

織斑の覚悟によってか、動きはそれまでとは全く変わり、ペーネロペーを速さで圧倒していた。

ファンネルミサイルやビームライフル、ビームサーベルの噴出口までもがすべて切り裂かれてしまったのだ。メガ粒子砲の発射口は残っているが牽制をする武器がない以上当てるのは困難。

 

ここまで見ると織斑の勝利が確定されたようなものだった。しかしペーネロペーの持つ装甲を織斑の雪片弐型では完全に切り裂くことが出来ず、シールドエネルギーを消滅させる零落白夜を活かすことができない。

 

その結果、織斑は何とかしてペーネロペーの装甲を削りとろうとし、レーンは装甲が無くなる前に織斑のシールドエネルギーをなくそうとする泥仕合になってしまったのだ。

 

(不味いな、このままじゃこっちのシールドエネルギーが無くなる)

 

装甲を持たない織斑のISは少しずつだが削られていた。無論レーンの方が無傷な訳ではない、しかし分厚く固められた装甲を切り裂くのは困難だった。

 

(なら、この一撃にかける!)

 

織斑はさっきからある一点だけに集中して攻撃をしていた。その部分は僅かながらも装甲を削りとっていった。そしてあと一撃で装甲を貫通しそうだ。

 

次の攻撃を通し零落白夜を発動すること。織斑の勝ち筋はこれしか残ってなかった。

気合いを入れ、レーンと向かい合う。

 

「いくぜ、レーン!」

 

織斑は瞬時加速をかけてレーンへと向かっていく。さっきとは違いレーンはどっしりと構えこちらを待っているようにも見えた。

 

「いっけぇえええ!!」

 

レーンに突っ込む形で急接近した織斑は狙っていた一点に雪片弐型を突き刺すことができた。

 

「零落ゥ白夜ぁああ!」

 

突き刺した雪片弐型の零落白夜を発動させ、ペーネロペーのシールドエネルギーを消滅させようとした。

 

しかし、織斑の攻撃は当たることはなかった。

ペーネロペーは身に纏う全ての装甲を切り離して織斑の攻撃を避けたのだ。結果として織斑の攻撃は不発となり無駄にシールドエネルギーを消費しただけだった。

 

装甲をパージしたペーネロペー、もといオデュッセウスが織斑の目の前に現れる。

そのままの勢いでオデュッセウスは織斑を殴り飛ばし、シールドエネルギーが0になる。

 

[ビィィィィ]

 

試合は誰も予想していない形で終わった。

誰もがレーンによる一方的な攻撃で織斑は負ける、みなそう考えていた。

しかし織斑が番狂わせを起こしたのだ。転生者が誰も考えなかった織斑の逆襲に皆こう思った。

 

((やはりラノベ主人公は伊達じゃない…!))

 

 

 

 

想像以上の激戦に俺は疲れていた。まさか織斑がここまでやるとは思っていなかった。

キンケドゥに指導させれば少なくとも戦える程度にはなると思ったが冗談ではない。キンケドゥの動きを完全にコピーして戦っている。

 

初心者のような不慣れな部分は一切見えなかった、ということはキンケドゥが無理矢理に詰め込んだのだろう。しかしあれは一週間やそこらでは身に付く動きとは思えない。それだけ織斑は力を持っていた。

 

やはり世界最強の弟だけあって血をしっかり継いでいるようだ。

 

ベンチに横たわり、体を冷やすもののなかなか熱が離れない。

ひやり、頭に冷たいタオルが乗っけられる。一体誰だと思い重たい体を起こすとそこには生徒会長と布仏先輩がいた。

 

「レーン君、体は大丈夫?」

 

試合終了後、次の試合が控えているというのに俺のISは中破していた。そこで先輩達が整備室を貸し切り、メカニックとしてペーネロペーを修理してくれたのだ。

本当に頭が上がらない。先輩達がいなかったら次の試合に出ることすら怪しかったところだった。

 

立ち上がってお礼を言おうとするが、急に立ち上がったせいで体がふらつき倒れそうになる。布仏先輩に支えてもらいベンチに座らされる。

 

「今はゆっくり休んでください。私達が整備をしておきましたから」

 

本当に先輩達には頭が上がらなかった。

 

申し訳ないと理解した上で先輩達に頼み事があった。

次の試合でセイエイに勝つためには今のペーネロペーでは勝てない。ライルから教えて貰った情報だけでは足りないのだ。

そこである“秘策”が浮かんだ。先輩達にはその準備をして欲しいのだ。

 

「レーン君、悪いことは言わないわ。そんなことは辞めなさい」

 

生徒会長からストップをかけられてしまう。

しかしそれでは勝てないのだ。セイエイに勝つためにも俺は…

 

「なら聞くわ。あなたはどうしてそこまで勝ちに拘るの?」

 

理由ならある。

俺を信じてくれたライルのため。

負けた織斑に恥ずかしい姿を見せないため。

そして、こんな俺に力を貸してくれた先輩達の行動を無駄にしないためだ。

 

俺は1人で戦ってるわけじゃない。

色んな人が支えてくれたおかげで戦えるんだ。

だから俺は勝ちたいんです。みんなの為に。

 

「はぁ、全く。こんな風に言われたら断れないじゃない。うつほちゃん、お願いしてもいい?」

「正気ですか?下手をしたら大怪我では済まないんですよ?」

「構わないわ。責任なら私が取るわ」

「…分かりました。レーンさん、決して無理をしないでください。」

 

無茶ならしてもいいのだろう?

 

「駄目に決まってます!…もう一度言いますけど決して無理も無茶もしないでください!」

 

分かっていますよ、俺だって大怪我するつもりはありませんから。

 

それよりもさっき言ったことの準備をお願いします。

 

「…分かったわ。けど準備している間くらいはレーンさんも休んでいなさい」

 

先輩達の言葉に甘えて再びベンチに寝転がる。やはりまだ疲れが残っているせいで俺は直ぐに寝てしまった。

 

 

 

 

セシリアを倒して攻略が終わった俺にとって残りの試合は消化試合に過ぎなかった。

織斑とあのレーンとかいう転生者のどっちが勝とうとどうでもよかった。どちらもこのクアンタフルセイバーに適うはずも無く、オレが勝つと決まっているのだから。

 

(しかしエミヤを倒すくらい強いと聞いたが、どうやら織斑に苦戦していたとは。原作キャラに苦戦するとか本当に転生者かよ)

 

苦戦したというのは山田先生に聞いた話だった。織斑千冬から釘を刺されたが、どうせ俺が勝つのだから相手の事を知ってるも知ってないも変わらないだろうに。一々うるさい奴だ。

 

俺はピットから出撃し、アリーナに出た。

既にレーンもアリーナにいてどっしりと構えていた。織斑が傷つけた装甲も新しいものに整備されていた。

こちらのクアンタフルセイバーも調子は万全だ。むしろセシリアの戦いで体が慣れて来たところだ。

 

改めて戦闘態勢になり、レーンを睨みつける。

 

[ビィィィィ]

 

試合開始のアラームと同時に瞬時加速を使って敵のISまで急接近する。

 

(どうせ転生者だ!容赦はしない!)

 

レーンは迎え撃つようにビームライフルをクアンタフルセイバーに向けて撃ち続けるも、刹那の非固定装備(アンロックユニット)であるソードビットによってビームは防がれていた。

 

しかし度重なるビームライフルの攻撃によりソードビットは全て壊れた。

そして刹那のISに向かってビームが撃たれる。

このままでは直撃する所を、セシリアとの闘いと同じように青白い煙と共に姿を消してしまう。

 

急に敵が消えたことによってペーネロペーは慌て初め、警戒し始めた。

 

(ハン!ただの弱え転生者か。さっさと終わらせてやるよ!)

 

刹那が現れたのはレーンの真後ろだった。

手にはGNソードIVが握られ、今にも斬りかかろうとしていた瞬間、ペーネロペーがいきなり後ろを振り向きこちらを見つけた。

 

(なっ!馬鹿なそんな簡単に見つけられるわけが)

 

ペーネロぺーの腕からは異常なまでに出力を上げられたビームサーベルが噴出していた。

振り返ると同時に薙ぎ払われたビームサーベルによってGNソードIV諸共切り裂かれ、クアンタフルセイバーのシールドエネルギーが一瞬で削られた。

 

(こいつ、俺の動きを読んだのか!?)

 

 

 

 

「それで刹那の情報だが」

 

時間は昨日の夜、俺はライルから刹那のことを聞かされていた。正直なところ、この時は情報を受け取りたくないと思っていた。

 

「アイツのISは接近戦に特化されたタイプで、射撃武装はあってもアイツが使いこなせることはないな」

 

随分と酷いことを言うんだな。知り合いじゃなかったのか?

 

「知ってるだけだって言ったろ。それに俺はああいう奴が大嫌いなんでな。…話しを戻すが、アイツは必ず近接攻撃を仕掛けてくる。絶対にだ」

 

何故そこまで確信できるのか。フェイントをかけてくる可能性だってあるはずだ。

 

「理由ならある。アイツの特典だ」

 

特典?セイエイの特典が一体どう関わってくるのだ。

 

「アイツの特典は------『量子化』だ」

 

量子化だと?確かにISには武器を量子化することで機体を軽くする技術はあるが、人を量子化なんて出来るわけがない。

 

「そうだ、普通ならありえないことをする。それが特典なんだよ」

 

羨ましいものだ。俺やキンケドゥには特典なんて持っていないというのに。

 

「…え?今特典が無いって………まぁ今は置いとくが、刹那の特典『量子化』のせいであらゆる攻撃はすり抜けちまう。だから簡単に近寄れるし、接近戦も出来る」

 

じゃあ俺のペーネロペーじゃ歯が立たないじゃないか。

 

「まぁ聞けよ。刹那の特典は強い、だが刹那自身は決して強いわけじゃない。特典を使ってくるなら刹那は必ずこちらの“死角”を狙ってくるはずだ。初心者が一番考える方法だからな」

 

なるほど、逆に近寄らせてカウンターを決めるということか。刹那もカウンターされるとは思ってもいないだろう。

 

「だがこの戦法は1回限り、よくて2回出来たらいい方だ。それ以降は警戒されて何をして来るかさっぱりわからん。もう一度量子化するのか、それとも射撃をしてくるのか、こればっかりは予想ができねぇ」

 

流石に同じ手を使えば怪しまれるか。

しかし確実に攻撃が出来るならこっちのほうが圧倒的な有利になれる。

 

ならセイエイに対して攻撃するならビームサーベルか?範囲が広いメガ粒子砲か?

ビームサーベルでは出力が足りないし、1回の攻撃程度ではシールドエネルギーを削ることも難しい。

メガ粒子砲では出力が高くても発射までに時間がかかる。それでは攻撃のチャンスが潰される。

間をとってビームライフルならと思ったが、そもそも出力が足りない。ミサイルも同じだ。

 

せっかく攻撃のチャンスがあるというのに、俺のペーネロペーではどうしても短期決戦に向かない。何かいい案はないかとライルに聞いてみる。

 

「そうだな、俺なら------

 

 

 

 

「----シールドエネルギーをビームサーベルに回して無理矢理出力を引き上げる?」

 

ライルの出した“秘策”とはこれだった。

出力が足りないなら補えばいい。こちらもシールドエネルギーを消費することにはなるが、総合的に見れば相手のほうが消費量は大きい。

、総合的に見れば相手のほうが消費量は大きい。

 

「一応出来ることは出来るけど…すごく危険よ。本来のビームサーベルより出力を上げたら武装が自壊してしまうし、それのダメージを間近で食らうことになるのよ」

 

だが1回程度なら平気なはずだ。昨日のうちに社長に聞いて確認済みだからな。

その程度で壊れるような物は作って無いってな。

 

「レーン君、悪いことは言わないわ。そんなことは辞めなさい」

 

生徒会長からストップがかかる。

先ほどのやり取りのようにこの後、俺は先輩達を説得しビームサーベルの出力を変えてもらった。

 

ここまで来るともはや意地だった。

 

 

 

 

作戦は完全に成功した。目論見通り高出力ビームサーベルで刹那のシールドエネルギーを大幅に削ることができた。

セイエイのシールドエネルギーは残り4割、俺は残り7割と言ったところだろう。

 

カウンターからさらに追撃をかけるようにビームライフルを撃ち抜く。回避行動が遅れたセイエイは何発かカスり、さらにシールドエネルギーを削る。

 

逃げることも許さず、更にファンネルミサイルで追撃をするも、『量子化』によってミサイルをすり抜けてしまう。

 

俺は再び死角からの攻撃を待ち、ビームサーベルを構えた。

 

 

 

 

(間違いねぇ、コイツはオレの特典をわかってやがる)

 

どこで知ったかはどうでもいい。

今はコイツをどうやって倒すかだ。

オレがこいつの死角から攻撃したのを待っていやがった。今もコイツは構えて、カウンターを狙っている。

だが同じ手をわざわざ使うわけがない。

 

(さっきは死角からだがな、今回は真正面からだ!)

 

敢えて死角から一瞬だけ『量子化』を解き、レーンの真後ろに現れる。刹那は肩にかけていたフルセイバーを取り出し斬りかかろうとし、レーンは突然現れた刹那に驚くことなくビームサーベルを振ってくる。

 

(ところがどっこい!)

 

刹那は再び『量子化』を使い、今度はレーンをすり抜けてペーネロペーの真後ろに回り込む。

 

(おらおらおら!逝っちまいな!)

 

無防備になったペーネロペーにフルセイバーを振り下ろす。シールドエネルギーは削ることはできなかったが装甲は完全に切り裂かれた。

 

更に切り裂かれた装甲の隙間にフルセイバーを突き刺さそうとした瞬間、クアンタフルセイバーは爆撃された。

 

(なっ!まさかさっきのミサイルがここまで追いかけてきたのか!?)

 

容赦なく刹那の体にファンネルミサイルがぶつけられ、その度に爆発していく。

残り少ない刹那のシールドエネルギーを削り切るには充分な攻撃だった。

 

[ビィィィィ]

 

試合は完全にレーンの作戦勝ちだった。

刹那は策にはまり、全ての行動は裏目に出てしまったのだ。

 

 

 

 

ライルから教えられた『量子化』は想像以上に恐ろしかった。いくら撃とうとも全て通り抜けてこちらに向かってくるのだ。

対策を練ることが出来たのはライルのおかげだ。もし知らなかったら確実に負けていた。

 

こうして刹那はレーンの中で二度と闘いたくない相手の1人となった。ちなみにギルガメッシュもその1人だった。

 

「お疲れ〜。優勝おめでとう、レーン君」

「おめでとうございます」

 

ピットに戻すと先輩達が出迎えてくれた。

今回の戦いは先輩達がいなかったら勝つことは出来なかった。本当に頭が上がらない。

 

「もう、気にしすぎよ」

「そうですよ。私達は先輩なんですから頼っていいんですよ」

 

しかし事実だ。ビームサーベルの出力が低ければ短期決戦に持ち込めないし、俺だけではペーネロペーの整備も出来なかった。

この恩はかならず返させてもらうと言った。

 

「おっ、じゃあ楽しみに待ってるからね〜」

 

先輩達はそう言うと部屋から出ていった。

自分が着替えることを予想して気遣ってくれたのだろう。連続で試合をしたせいで汗まみれになっていて早く脱ぎたかったので助かる。

 

その後、俺は更衣室でISスーツを脱いだ。しかし更衣室のシャワーは壊れていたので、わざわざ寮まで戻り自分の部屋のシャワーを使った。

 

どうせ誰もまだ戻らないと思い、下着姿にタオル一枚羽織るような形で休んでいたところをキンケドゥに見られた。

別に何も問題ないはずなのに顔面を蹴られた。痛くはないが、そうやってハイキックをするとスカートがはだけてパンツが見えるからやめたほうがいいと忠告した。

 

今度は脚を蹴飛ばされた。解せぬ。

 

 

 

 

「クラス代表決定戦お疲れ様ー!!」

「お疲れさまー」

「お疲れ様ですわ」

「……お疲れさま」

 

お疲れ様です。

試合が終わったその日の夜、1組でちょっとした打ち上げをやることになった。

というのも元々親睦会をしようという時にちょうどクラス代表決定戦があったのでその打ち上げも兼ねようという趣旨だった。

 

「お疲れ様、レーン君!恰好よかったよ〜」

 

振り返るとそこには相川がいて、後ろには女子が何人か居て、こちらの顔色を伺っている。

とりあえずありがとうと返しておく。

 

「レーン君結構強かったけど、どこでIS習ったの?」

 

そりぁ会社で、とは言えないのでキンケドゥが専用機持ちなので教えて貰ったと言った。嘘は言っていない。

 

「え!キンケドゥさんってそんな凄い人だったんだ!」

 

俺なんかよりもキンケドゥの方が強いよ。シミュレーションでも7対3で俺が負けていたからね。

それよりも織斑の方に聞いたらどうだ?あいつも同じキンケドゥに習ったパイロットなんだからな。

 

「織斑君にまで教えてるなんてキンケドゥさんは凄いねぇ…でもそれならどうしてクラス代表に手を挙げなかったんだろう?」

 

昔からキンケドゥは人前に立つのが苦手なんだよ。だから人見知りなんだけどな。

 

「昔から?レーン君ってキンケドゥさんと幼なじみなの?」

 

ああ、そういえば小学生の頃から中学の時もずっとだな。キンケドゥとギルガメッシュが隣にいるのが当たり前な毎日だったのが懐かしい。

 

「へぇ〜。いやぁ実はね、レーン君って女子から人気高いんだよね。見た目だったら刹那君とか織斑君の方が良いって言う人が多いけど、今日の試合見てやっぱりレーン君の方が〜って子が結構いるんだよね〜」

 

単純に物珍しさだけじゃないのか?織斑やセイエイが恰好いいとはなんとなくわかるが。

ISが強いだけで人気だなんてまるでパンダみたいだな。

そして相川さんは何故キンケドゥを横目にニヤニヤしているのだ。

 

「別に〜?まぁ頑張ってね!」

 

そう言って何処かに行ってしまう。まるで猫みたいな気分屋な人だ。

 

 

 

 

打ち上げはかなり盛り上がってきた。途中から新聞部などがインタビューや写真などを撮られて少し疲れた。

気晴らしにベランダに出て星を眺めていた。

 

「よぉ」

 

声をかけてきた方向を見るとライルが缶コーヒーを2つ持ってきていた。

 

「お疲れさん。これやるよ」

 

缶コーヒーがこちらに投げられる。顔面にぶつかる前になんとか手の中に収めた。

プシュッ、と小気味いい音を鳴らせて缶を開け喉に流す。さっきまでケーキを食べていたのでブラックの苦味が丁度いい。

 

「しかしよく勝てたな。あの刹那に」

 

なんだ、負けると思ってたのか?

 

「半分くらいはな。だけどお前は勝ったんだからそれくらいは許してくれよ」

 

別に怒ってはいない。だが俺の仲間なのだから勝つと信じて欲しいものだ。

 

「…悪かったよ。今度は絶対に勝てるくらいに作戦を練ってやるよ」

 

その頃には頼らないでも勝てるくらいには強くなってるだろうさ。ニヤリと笑ってやるとライルも笑い返してくれた。

 

()()()!」

 

後ろを振り返るとオルコットがいた。さっきの誰か呼んだのはオルコットの声だろう。

 

セシリアはライルに向かって急に走り出し、そして抱きついた。

 

「…今日の試合は申し訳ありませんでした。あなたの前であんな醜態を…」

 

ニール?そこにいる男はライルのはずたが、一体どういうことだろうか。気になるものの当の本人がこうイチャついていては聞けない。

 

「何言ってるんだよ。セシリアは何時だって綺麗じゃないか」

「ニール…次こそは必ずこの手に勝利を収めます。だから見ていてください」

 

2人だけの空間が出来上がってしまってる。どうやら俺はお邪魔虫のようだ、みんなの所に戻ろう。

 

「レーン・エイム、あなたを侮辱するような事を言ってしまったこと。この場で謝罪させてください」

 

戻ろうと背を向けた所をオルコットに呼び止められる。

俺はそんなことを言われた覚えがないので何のことだと聞き返した。

 

「…お優しいのですね。分かりました、あなたの好意に甘えさせていただきます」

 

だから何の事だか説明して欲しかった。聞き返そうと思ったが既にライルの方を向いてイチャつき始めた。

ライルがこちらを向いて「後で話す」と口を動かした。

とりあえず今は2人の邪魔をしないようにみんなの所に戻るか。

 

ベランダから部屋に戻るとセイエイがベランダを見ていたようで、オルコットとライルがイチャついているのが見えたみたいだ。

 

セイエイの目が白目になっていた気がするがどうでもいいので無視してみんなの所に戻った。

 

 

 




解説

刹那・F・セイエイ
原作を知ってるのでハーレムを目指すが()
見た目はメタル刹那だが機体はクアンタフルセイバー

特典 量子化
格闘から特射派生で発動。オーバーヒート中でも使えるこの作品では何時でも発動可能な上に何時でも無敵状態になれる珍しくチート特典。

専用機 クアンタフルセイバー
第三世代機 近接攻撃に特化されたIS。対話を拒絶し、相手を倒すことだけを目的としたISだが乗り手までもが人の話を聞かなくなるデメリットが存在する。

《後書き》
日刊ランキングに入ってお茶吹き出しました。評価してくれたみなさんありがとうございます!

テスト期間が終わるまで投稿出来ないので次回まで時間がかかるかもしれません。少々お待ちください。

-追伸
活動報告にてアンケートを取っています。どうか協力お願いします。m(_ _)m


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