インスタント・HERO ~180秒で世界を救え!~   作:トクサン

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あの日の約束を僕は

 

 壁を打ち抜いた衝撃で、殆どの捜査官は地べたに横たわっていた。(つぶて)を額に受けて血を流す者、腹を抑えて(うずくま)る者、比較的軽傷だが突然の事に目を白黒させる者。

足元に散乱する瓦礫を踏み砕きながら室内を見渡す。目の前にはうつ伏せに倒れながら僕を見上げる女性が一人、首には(カラード)が見える、恐らく彼女が例の脱走者だろう。そしてもう一人、壁に寄り掛かって気を失っている女性が居た。彼女も(カラード)を付けている。

 立ち上がろうとした捜査官の男を蹴り飛ばし、壁に叩き付けた後、呆然と僕を見上げる女性に問うた。

 

『秋というのは、貴女か?』

 

 僕の言葉に女性はハッと表情を改め、「そ、そうだ」と頷く。どうやら彼女が電話の相手だった『秋』という女性らしい。その男勝りな話し方も一致している。

 

『此処を出る、その壁際の女性も仲間だな? 連れて逃げるぞ、時間が無い』

 

 横たわった彼女を抱え上げ、戸惑っている秋を他所に壁際の女性も回収する。二人を一度に抱える為、多少乱暴な持ち方になってしまうがそこは我慢して貰うしかない。床に横たわっている連中が起きてくる前に立ち去ろう。そうして部屋から飛び出そうとすると、秋が「ちょ、ちょっと待ってくれ!」と叫んだ。

 

『何だ? さっきも言ったけれど、本当に時間が――』

「もう一人居るんだ! 私達の仲間っ、榊由愛(さかきゆめ)、電話で言った怪我人だ!」

 

 その言葉に飛び出そうとした足が止まる、確かに電話では三人だと言われた。見た限りでは秋ともう一人、二人だけだ。この中に榊由愛とやらが見当たらない。

 

『ソイツは何処に?』

「追い詰められて、由愛だけ【跳躍】(ジャンプ)で逃げ出せた、今は何処にいるか分からない、けれどあの子は動けないんだ、見つかったら研究所に再収容されてしまう!」

 

 悲痛な声でそう口にする秋は、それだけ由愛とやらの身を案じているのだと分かる。出来る事なら助け出したい、彼女の口ぶりからその由愛が研究所にとって重要な人物であるとも理解出来た、恐らく時間が経てば経つほど救出は困難になる。

 僕は頭の中で幾つかの考えを巡らせ、それからゆっくり頷いた。

 

『分かった、けれどまずは二人の救出が先だ、安全地帯に送り届けてから僕が探し出す』

「……助かる」

 

 秋は思いのほか決断力のある女性だった、僅かな逡巡の後に頷く。

 それだけ言って僕は跳躍の為に腰を落とす、相手側には探知能力を持った奴もいる、出来れば一瞬で離脱し二人を安全地帯に送り届けたかった。「跳ぶぞ」と一言告げ、秋が何かを察したのか慌てて腕にしがみ付く。

 遠慮はしない、全力全開で跳び上がる。

 踏み込んだ足が床を砕き、足が床から離れる瞬間に地面が崩落する。跳躍の反動に耐えられなかったコンクリートは粉々になり、僕の体は宙へ打ち上げられた。空気の壁を突き破り、このまま空へ――

 しかし、それは直前で阻止される。

 

【四方封鎖】(ボックス)ッ!」

 

 建物の外、地上に立っていた捜査官の一人、ソイツが叫び、目前で手を強く叩き合わせる。

 途端、僕の跳び上がろうとした真上に透明な壁が出来上がった。突然の事に驚きながらも、僕は素早く周囲に目を這わせる。見ればかなり大きな四角い箱が周辺を囲んでいた、能力だという事は分かったが、何の能力かは皆目見当もつかない。

 

『ッ、おぉォオ!』

 

 跳び上がっていた僕は途中で勢いを殺す事が出来ず、そのまま壁に衝突する。しかしそのまま衝突しては勢いを殺されてしまう、だから僕は衝突の寸前に壁へ頭突きを繰り出した。首の力だけで額を透明な壁に叩きつけ、轟音が鳴り響く。

 全力で叩き付けた額は、しかし痛み一つ訴える事が無く、僕の頭突きは容易く壁を突き破った。

 

「ぐッ、マジかよ!?」

 

 下で捜査官が叫ぶ、だが勢いは結果として落ち、僕は回転しながら百メートル程跳んだ先の六階建てビルの屋上に着地した。思ったより距離は稼げなかった、けれど戦闘による被害を受けない程度の距離はあるだろう。着地と同時に秋ともう一人の女性を丁寧に下ろし、変身を解除する。

タイミング良く腕時計が『pipipipi』と甲高い電子音を鳴らした。

 ボタンを押し、電子音を解除する。

 

「……残り二分」

 

 電子音は一分毎に鳴るよう設定されている。

表示されるのは、僕の制限時間。

 

「お前……さっきの姿は」

 

 変身を解除した僕を凝視し、秋が呟く。

 

「僕の能力は【変身】、まぁ途轍もなく強くなれる能力だとでも思っていてくれ、時間制限付きだけどね」

 

 そう言って立ち上がり、ビルの屋上から捜査官達を探す。かなり遠方だが、ちゃんと視認できた。研究所の連中は見当たらず、青い制服を纏った捜査官が一人、二人、三人――

 

「六人か」

 

 多いか少ないか分からないけれど、あの屋内に居た連中に含めれば十人以上。超能力者であるという点を踏まえれば十二分な数だろう、まぁやる事に変わりはない。

本当ならばこのまま逃走して隠れ家へと逃げ込みたいが、思った以上に数が多い。この中に何らかの形で追尾する能力、或はそれに類する力を持っている奴が居たら最悪だ。僕らの隠れ家が露呈し、幸奈や澪奈も危険に晒す羽目になる。

本当なら捕捉される前に離脱、即撤退が理想だった。けれど連中は既に僕の姿を捉えているし、何らかの能力が発動されているという可能性もゼロではない。

ならば殲滅するのみ。

 

警察は研究所とは関係ないだろう、殺せるのか?

うるさい、此処にいる時点で同罪だ。

 

 振り返れば、何か意味ありげな視線を向ける秋、僕は彼女に視線を向けながら未だ目を開けない女性を指差す。

 

「その女性は大丈夫?」

「えっ、あぁ、朱音っ」

 

 僕が問いかければ、秋は朱音と呼ばれた女性に駆け寄って頬を叩く。ペチペチと頬を叩かれる朱音は、しかし全く起きる様子が無かった。けれど胸は上下しているし、血色も悪くない、恐らく気絶しているだけだろう。

 

「アンタ、超能力は?」

 

 僕がそう秋に問いかけると、僕を見上げた彼女は「わ、私か?」と顔を(しか)める。その手は休まず朱音の頬を叩いていた。

 

「私の能力は【迷彩】(クローク)と言って、能力探知の妨害や透明化にしか使えない、悪いが戦闘には……」

「いや、十分だ」

 

 それだけ言って片足をビルの外に踏み出す。背後から上がる戸惑いの気配には、気付かないフリをした。

 

「能力を使って隠れていてくれ、連中を残らず叩き伏せる」

 

―― 変身

 

 時計のタイマーをオンにし、ビルの(ふち)を蹴り砕いて加速する。背後の秋が瞬く間に小さくなって、大空に跳躍した僕の目の前に捜査官達の姿が迫った。皆一様に僕を見上げ、何かを叫んでいる。

その表情は驚愕と、しかし恐怖に打ち勝とうとする勇敢さを現わしていた。

 

「戻ってきやがったッ、【四方封鎖】(ボックス)っ!」

 

 先程僕を檻に閉じ込めようとした男が、再び超能力を行使する。何か肌がピリピリと刺激され、本能の赴くまま通過するビルの壁に拳を突き立てた。

易々とコンクリートを砕き、突き刺さった腕は僕の体を空中で急停止させる。

 

「何ッ!?」

 

 そして次の瞬間、僕の数メートル先に小さな四角形が閃光と共に生み出される。半透明のそれは人間一人が入るかどうかという大きさで、恐らく閉じ込める気だったのだろう。先程よりコンパクトな為か、強度も上がっている様に感じた。

 折角だ、足場に利用させて貰おう。

 ビルの壁を蹴って加速し、そのまま【四方封鎖】(ボックス)を蹴り飛ばして更に加速する。本気で蹴り飛ばしても全壊しなかった四角形は、僕の加速を最高のモノにしてくれた。

 空気を裂き、風を抜き、音すら置き去りにする。

 一秒先の未来で、僕は既に移動を終えていた。

 

 ズンッ、と僕がアスファルトを砕いて着地した時、皆はまだ空を見上げている。

 

『二撃』

 

 並んで仲良く空を見上げていた男二人、僕の踏み砕いたアスファルト破片が宙を舞う中、その顔がゆっくりと僕に向けられる。

その瞳が僕を捉える前に、勢い良く肩を突き飛ばした。

突き飛ばすと言っても、その威力は掌打に近い。肩を思い切り打ち据えられた二人は弾き跳び、磁石の様に真反対へと吹き飛んだ。

 顔面をアスファルトに殴打し、何度も縦回転しながらガードレールに突っ込む。爆音と砂煙が舞い上がって、ベコリと凹んだガードレールに逆立ちして突っ込んだ男はそのまま脱力する。逆方向の男は路駐されていた車のフロントガラスに突っ込み、激しく痙攣していた。

 盗難防止用のアラームが街中に響き渡る。

 

「隆敏っ、結城ッ!?」

「皆下がってッ、【守護盾】(アイギス)

 

 突き飛ばした二人の姿を確認し、僕は次の行動を起こす。僕に出来る事は単純にして単調だ。

『近付いて、殴って倒す』

 それしか出来ない。

 それで十分なのだ。

 僕の能力は自身の想像(イメージ)に左右される、だから僕が強いと思い込めば強いし、弱いと思えば弱くなる。言ってしまえば僕の想像力(創造力)によって強くもなるし弱くもなる、非常に不安定な能力。

 そして、そんな僕の根本にあるのは『ヒーロー(僕の正義)は絶対に負けない』と言う精神。

 

強烈な踏み込みによって一番近くに居た男の前に加速する、そんな僕の道を塞ぐようにして一枚の壁が姿を現した。空間に巨大な物質が出現し、風が隙間を埋め周囲の砂を巻き上げる。

 能力による防御、発動したのは二十メートル程離れた場所に居る女性捜査官、現れたのは神々しい光を放つ盾。透明なボックスとは違い、神話を象った様な形だ。恐らく僕と同じ幻想を現実に持ち込む超能力だろう、つまりそれは精神力に依存する力。

 加速をそのままに、ぐっと拳を強く握る。

 振り上げた僕の腕が、唸りを上げて放たれた。

 

―― 僕の正義(ヒーロー)が、こんな薄っぺらい(正義)に負ける訳ないだろ

 

握った拳から全身に至るまでの筋肉が躍動する、拳の先が空気を裂く感覚、爪先から頭の天辺に至るまでその一撃に注がれる。無駄な力など一切なく、拳は幻想の盾(アイギス)に叩き付けられた。

ビキリッ、と盾が割れる。

矛盾、最強の盾と矛。

どちらも最強だと思っていて、ならば最終的に測れるのは『想いの強さ』

なら、僕の方が強い。

 振り抜かれた拳は盾を砕き、男の頬に突き刺さった。粉々に砕けた盾が虚空に消えて、同時に男の顔面が弾け飛ぶ。「がふッ」と歯と血を吐き出しながら吹き飛んだ男は、後方にあった服屋にガードレール諸共突っ込んでいった。展示用のガラスをぶち破って、店内にダイナミックな入店を果たす。

 

「わ、私の【守護盾】(アイギス)が……」

 

 自身の能力を破られた捜査官は、呆然と男の突っ込んだ店の方に顔を向けながら顔を蒼褪めさせた。能力を破られたのは初めてだったのか、その衝撃はかなり大きいらしい、立ち直る気配がない。

 

「美智子っ、何やっているのッ!? 突っ立ってないで早く逃げてっ、【神風】(カミカゼ)っ!」

「クソッ、何なんだコイツの能力はっ!? 【土砂結合】(コネクト・アース)!」

 

 残ったのは三人、未だ呆然と突っ立っている盾の使い手と、男女の捜査官が各一名ずつ。男が地面に手を叩きつけると、道路を覆っていたコンクリートを突き抜けた土砂が僕を覆う様にドーム状に広がった。それは一瞬の出来事で、目の前に土砂の壁が現れたと思ったら瞬く間に僕と世界を隔離してしまう。これだけ大規模な能力、恐らく優位能力者だろう、それも研究所に収容されてもおかしくないレベルの。

 

『っ!』

 

 まぁ、壊してしまえば一緒だと腕を振り上げた所で、ふらりと足元が覚束なくなる。何か体が重くなって、耳に届く音が遠く感じた。

 一体何だと疑問に思い、そして気付く。

 封鎖されたドーム内の気圧が凄まじい速度で低下していた。

 恐らくもう一人の捜査官、【風】の能力者だろう、たしか【神風】と叫んでいたか。男が土砂で牢を作り、女が空気や風を利用してソレをより堅牢なモノとする。成程、相手を束縛する事に重点を置いた能力者達だ。

 拳を引き、土砂の壁に打ち付ける。

 轟音と共に容易く壁を吹き飛ばした拳は、しかしすぐ様再生する壁に拒まれた。殴った傍から再生する土砂の壁、硬くも無い、耐久性も無い、けれど修復力がとんでもない。このまま増援を待つハラだろうか、思わず舌打ちを零す。

 動きにくい環境下で両腕の連撃を叩き付ける、しかし壊れた傍から再生する壁は全壊する素振りを見せない。まるで水面を殴っている感覚、殴れど殴れど際限なく湧き出る土砂。しかも時間が経つ度に僅かにだけれど、強度が増している様にも感じる。

 そして不意に手元から電子音が鳴り響いた。

 変身中には時計を視認する事が出来ないが、音だけは耳に届く。

 

―― 残り一分

 

 最後のアラームだ。

 本格的に時間が無い、このままでは二人を抱えて帰れるかも怪しい、もう一人一人倒していく時間すら惜しかった。

町の被害や手加減を考えている暇は無い。

 

『諸共吹き飛ばす』

 

 思考する時間はなし。

 ならば単純な話だ、この土砂全てを一度に全て吹き飛ばせば良い。

 技も策も必要ない、今求めるのは圧倒的な力のみ。

 変身体型はそのまま、しかし想像(イメージ)を変える。万能型(オールマイティ)ではない、あらゆるモノを一撃で破壊し得る一点突破の力、想像するのはソレを行うに最適化された形。

 右腕が輝き、その構造が瞬く間に全て変わる。

 外装は分厚く、機械的で無骨なモノに、人造人間(サイボーグ)も真っ青な機械化。何層にも重ねられた鋼が緩慢な動作で稼働を始める、ヒーロー本人と言うよりは搭乗するロボットに備え付けられた腕と言っても良い。

 ぎゅっと拳を握れば呼応する様に全体から蒸気が噴き出した。

 

 古来より存在するヒーロー、その大型化に伴う絶対的な必殺技。

 決して外さず、躱されず、一撃で葬る拳。

 僕は人間だ、だから飛ばす事は出来ないけれど。

 

【超噴射】(ロケット)

 

 引いた腕の外装が畳まれ、中から剥き出しの噴出口が現れ火を噴く。緋色から青色へ、圧倒的な推進力を得た腕を無理矢理抑えながら、ぐっと上体を逸らす。まだだ、まだ全て出しきっていない。

 推進力は尚増す、炎は更に激しく燃え上がり、右腕の鋼鉄がうっすらと赤みを帯びた。じゃじゃ馬の様にガタガタと震え、今にも飛び出しそうな腕を抑える。まだ時では無い。

 そして最後の点火が終わり、長い長い尾を引いた炎が、僕の腕を撃ち出した。

ボンッ! と空気が弾ける。

初速で空気の壁を打ち抜き、拳は風を超える。

燃料は想像力、僕の信じるヒーローが放つ一撃。

 何よりも速く、何よりも鋭く、何よりも強く。

音を置き去りにし、時間すら置き去りにし、ロケット砲の如く放たれた一撃は赤い軌跡と共に土砂をぶち抜き、世界をぶち抜いた。

 

 

【剛掌】(パンチ)

 

 

 拳に押し出された大気が前方に集中・圧縮、音速の壁が出来上がる。それを突き破った瞬間、衝撃波(ソニックブーム)が放たれた。

 足元のアスファルトが跳ね上がり、周囲の景色が消し飛ぶ。

 ただの真空膜(風圧)が破壊の風に。硝子が割れてアスファルトが欠ける、ガードレールが舞い上がって人間が塵の様に宙を舞った。土砂の壁が霧となって霧散、風は既に僕の拳によって振り解かれた。

 路駐されていた車が百メートル先の銀行に突っ込み、捜査官が地面にグシャリと着地を決めた所で、僕は拳を引く。

後に残ったのは、津波に晒されたかの様な惨状。

衝撃波が空間を削りながら直進し、進路上の障害全てを薙ぎ払った。

 

【ロケットパンチ】

 

 ヒーローならば誰しもが持つ必殺技、その中の一つ。

 僕が再現したソレは単純そのもの。

 僕は腕を飛ばす事が出来ない、だから。

 途轍もなく速く殴って、衝撃波を飛ばし、ソレで殴る。

 

 変身を解き、犯罪者の恰好に戻った僕は振るった腕を(さす)る。奪った命が僕の拳に纏わりついている様な気がしたから。

 また殺した。

 目の前に落下した捜査官の死体、首が折れ曲がって服はズタズタ、露出した肌からは無数の切り傷と血が見えていた。顔面は血に塗れて誰かも分からない、徐々に広がる血の池が僕の足元を濡らす。

 ヒーローの技が治安を守るための警察に振るわれた事に、僕は少しだけ、引き攣る様な笑みを浮かべてしまった。

 変身時間は残り四十秒、余り猶予は無い。

 増援が来る前に秋達を連れて撤退しよう。

 引き攣った笑みをそのままに、僕は歩き出そうとする。

 

「おい」

 

 動き出した僕の背後から声が掛かった。

 生き残りがいたのか、もしくは隠れていたのか。

 もう何人も殺したんだ、今更もう一人増えたって。

 そう思いながら振り返った僕の目に飛び込んだのは――

 

【炎熱】(エンネツ)

 

 変身しようとして、僕はその動きを止めた。

 

 短く切り揃えられた短髪、あの時から変わらない顔立ち、約束を結んだ時からずっと輝き続ける瞳。

着込んだ制服は見慣れないモノ、だけど何でも着こなす彼には酷く似合っていた。

その腕には炎を纏い、爛々と周囲を照らすそれに校舎裏の光景が脳裏に浮かぶ。小さい頃よりもずっと大きな炎は、彼の顔をハッキリ映し出していて。

その凛々しく整った顔立ちは憤怒の色に。

 

 久しく合っていなかった。

 忘れた日などなかった。

 だって彼は――

 

 

「かっちゃ――」

 

 

「【爆砕】ッ!」

 

 ズンッ、と重い拳が生身の僕を貫き。

 

 炎が皮膚を焼き尽くした。

 

 







前回書いたヤンデレは時間があったら書き上げます……(´・ω・`)
ちょっとまた大学の方が忙しくなりそうで……。

因みに次回はヤンデレ回です。

主人公の身を案じた幸奈が内緒で現地に向かい、そこで見た光景とは‥‥。

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