秋の日のヴィオロンの...もう一つの物語 作:メトロポリスパパ
そして夜が明け、各校が見たものとは?
(最終話です。ワタクシの感想はまた後日・・・)
午前3時前・・・。
黒森峰、プラウダ、継続は聖グロからの荷物を受領した。
サンダースは上陸前に受領している。
西住まほは大洗女子学園の制服の上着をあてがってエリカに感想を聞く。
「どうだ?似合っているか?」
「は・・・はい、とても・・・お似合いです」
若干興奮を覚えるエリカ。
エリカの横に居た赤星も言う。
「かわいいですよ、隊長。これで、私達も大洗の生徒ですね」
「そ、そうか・・・そうだな」
まほも頬を赤らめながら言った。
プラウダでも、カチューシャが就寝している中、制服を受領していた。
ノンナはカチューシャの制服を代わりに受け取り、首元のタグを確認した。
「フフ・・・・」
クラーラも不思議に思いタグを見る・・・。
「これは・・・フフ・・・」
それを遠巻きに見ていたニーナとアリーナは・・・。
「ノンナ副隊長、チビッコ隊長の制服さ見で、笑ったべや・・・」
「んだっきゃな、クラーラさんと二人でしゃがみ込んで、カズーシャ隊長の制服さ見て笑ってら・・・」
ノンナが視線を感じて振り返る。
「なにか?」
「いんえ!なんでもありまっせん!」
継続高校では・・・。
「うわー!セーラー服かわいいー!」
アキがすでに着用し小躍りしていた。
「なんでも着れば良いって物じゃ、ないんじゃないかな?」
ポロローン♪
「一番初めに着てたのミカじゃん!」
「なんか、お腹の辺りがスースーするな~・・・」
おもむろにジャージを履くミッコ。
全員既に着用済であった。
午前4時30分
知波単学園は降車地点に到着。
平貨車より車両をプラットホームに降ろしている所である。
メイプル高校の隊員達も降車の手伝いをしている。
最後の車両、福田が車長を務める九五式軽戦車がプラットフォームから降りて隊に加わる。
駅前広場には西の隊長車を先頭に、玉田、細見、名倉、池田の中隊長車が後ろに横一列に並び。
そして中隊長車の後ろには隊員の車両が列を作り並んでいた。
玉田が西に駆け寄り報告する。
「西隊長!降車作業完了いたしました!」
「わかった。御苦労だったな玉田、それと、メイプル高校の方々、お陰様で間に合いそうです。感謝いたします!」
西は降車を手伝ってくれたメイプルの隊員に深々と頭を下げる。
西の腰の低い態度にメイプルの隊員もたじろぎながら
「い、いえ、こちらこそお役に立てて光栄です。それと、聖グロより大洗の制服を預かっていますのでお渡ししたいのですが・・・」
「おお!そうでありますか、了解いたしました!玉田、各隊員に通達!メイプルの方々より大洗の制服を受け取るように!」
「かしこまりました!」
メイプルのトラックの後ろに知波単の隊員が並びテキパキと制服を受け取っていく。
その横で、制服を受け取った福田は上着を広げ、目をキラキラさせている。
制服を渡し終えた所で、メイプルの隊員同士が不思議そうに話しをしていた。
「なあ・・・さっきから気になってたんだけどよ、なまら車両多くないかい?22両も居るべ・・・」
「多分予備車両っしょ?作戦に支障をきたさないように22両準備したんっしょ」
「聖グロと言い、知波単と言い・・・さすが・・・お嬢様学校だな・・・」
この後、ダージリンをキレさせた「鉄獅子22両事件」が発生する事は・・・まだ誰も知らない・・・。
「夜明けが近いぞ、時間が無い!全員乗車!」
玉田の号令で隊員が各車両に搭乗し、エンジンを始動、待機している。
西も搭乗しキューポラから顔を出している。玉田が西に無線で報告する。
「出立の準備整いました!西隊長、御命令を!」
「わかった。これよりYB地点へ進軍する!戦車前進!!」
各中隊長も復唱する。
「戦車前進!!」
メイプルの隊員に見送られ、勇敢なる鉄獅子22両が咆哮上げて走り出す。
まだ暗い中であるが、戦車22両の移動は迫力が有り、カブに乗った新聞配達の人も呆気にとられていた。
まったく闇に紛れてはいないが・・・。
午前6時前・・・。
YB地点の各校待機場所は小高い山の上である、試合会場のスタート地点からは稜線の奥側で丁度死角になって見えない。
聖グロではモーニングティーを嗜んでいた。
各戦車の横にテーブルが置かれ、その上にはティーセット。
大洗の制服を着た隊員達がテーブルに着き各々が朝食をとっている。
チャーチルの横でもダージリンを含め乗員が紅茶を飲んでいる。
オレンジペコは無線機が置いてあるテーブルに座り交信を始めた。
「CQ、CQ、おはようございます。こちら聖グロリアーナ、オレンジペコです。午前6時になりました。各校の状況をお知らせください」
「こちら黒森峰、予定どおり待機している。報告すべき問題も今の所無し」
「グーーーーッドモーニーーーーング北海道!こちらサンダース。うちも問題無しよ」
「おはようございます。プラウダですが当方も問題無く待機しています」
「継続のアキです。オレンジペコさんおはようございます。今から朝ごはんを取りにいってきます」
「おはよぉーございます!お待たせいたしました!知波単学園は只今YB地点に到着いたしました!これより補給等準備を致しまして指示が有るまで待機致します!」
アンツィオからの報告が無い・・・。
再びオレンジペコは通信する。
「こちら聖グロリアーナ。アンツィオ高校応答願います」
「こちらドゥーチェ、応答願う」
「あ、よかった・・・オレンジペコです。そちらはどうなっていますか?」
「すまない!今全開で移動中だ!試合開始は8時だったな?どうだぺパロ二?・・・そうか、なんとしても間に合わせる!」
「了解いたしました!どうか御移動後安全に、お待ちしております。それと、各校の皆さん。これよりこの無線は閉鎖致します。合流開始時より戦車無線での運用になりますのでご注意ください。以上」
各校「了解」
午前7時30分・・・。
黒森峰の西住まほ、逸見エリカは稜線に隠れ双眼鏡を覗いていた。
視線の先には試合会場が見える。
大きなスクリーンに観客席、物見櫓・・・そして・・・二人は絶句していた・・・。
大洗と大学選抜の陣営・・・大学側は隊員百数十人と27両のパーシングとチャーフィー、1両のセンチュリオン。
大洗は8両の戦車と32人の隊員・・・。
双眼鏡を持つエリカの手が震えている・・・。
「隊長・・・」
まほがゆっくりと双眼鏡を降ろす。そこには試合の時に見せる、いや、それ以上の眼光鋭い隊長が居た。
「戻るぞエリカ・・・」
「・・・はい」
聖グロリアーナ、サンダース、プラウダ、知波単、も偵察を行っている。
ダージリンはその圧倒的な戦力差を目の当たりにして言った。
「あなた達は・・・これに立ち向かおうとしているの・・・?」
オレンジペコ、アッサム、ローズヒップ、ルクリリも言葉が出ないでいた。
サンダースのケイは双眼鏡を降ろしポツリと言う。
「WTF・・・OMG・・・」
アリサもこの異常な状況に驚きを隠せない。
「これは・・・あまりにも・・・」
ナオミは大洗の制服の上に羽織ったジャケットのポケットに手を突っ込みガムを噛みながら眼光鋭く黙って見ている。
プラウダのノンナとクラーラ、ニーナ、アリーナ。
ノンナが双眼鏡を覗いていた。
「・・・」
「同志ノンナ・・・」
「ひぇー・・・こっただ試合になるんだべか・・・?」
ノンナが双眼鏡を降ろしてクラーラに言う。
「カチューシャは、まだお休みになっていますか?」
「Да・・起こして差し上げますか?」
「・・・いえ・・・合流開始まで起こさないでください・・・」
「・・・Да」
知波単、西、玉田、寺本、福田。
30対8のの現実を目の当たりにした西が言う。
「なんという戦力差だ・・・」
「大洗はこんな戦力差の試合をしようとしていたのですね・・・なんという覚悟!あと少し、あと少し待っていて下され大洗の方々・・・」
寺本はカメラのシャッターが切れないでいる・・・。
福田は下唇を噛み締めている。
そして、朝日に反射した眼鏡の下からは涙が零れている。
「・・・アヒル殿!・・・」
継続のミカはBTの砲塔の上で心地よい風に吹かれながらカンテレを奏でている。
そこへ走ってくるアキとミッコ。
「ふぅ~・・・ミカ!なんかすごい事になってるよ!」
「なにが・・・すごいんだい?」
「大学選抜の数が多すぎ!そして大洗の数が少なすぎ!こんなんじゃ試合になんないよ!」
ミカはフフ・・と微笑み言った。
「嵐の中にボートを出すばかりが・・・勇気じゃないんだよ」
ポロローン♪
「そりゃあ・・・そうだけど・・・」
「本当の勇気とは自分の弱い心に打ち勝つことだよ。包み隠さず本当のことを正々堂々と言える者こそ本当の勇気のある強い者なんだ」
「そう・・だね!でも・・あれを見ちゃうと、ちょっと怖いかも・・・」
「怖いかどうかは、やはりアキ自身が経験しなけりゃならないんじゃないかな」
ポロローン♪
アキとミッコは顔を見合わせて言う。
「じゃあやっぱり助けてあげるんだね!」
「違う、助けたりはしないよ、勝手に助かるだけ。風が流れた方に・・・行くだけさ・・・」
ポロローン♪
「もう!この天邪鬼!」
プンスカするアキであった。
アンツィオは全力で待機地点に向かっていた。
「あと何分だ?!」
「ドゥーチェ!後30分です!」
「間に合うか?!ぺパロ二!」
「任せてくださいドゥーチェ!絶対に間に合わせます!」
7時50分過ぎ・・・。
アンツィオを除く各校は戦車に搭乗し指示を待っている。
アッサムが懐中時計を見ながらダージリンに言う。
「ダージリン・・・そろそろ・・・」
「わかったわアッサム・・・」
ダージリンはマイクを持ち、PTTボタンを押して話し出した。
「皆さん、ごきげんよう。そろそろ時間ですわ。準備はよろしいかしら?」
アンツィオはCV33をトラックより降ろし終えた所である。
CV33の無線機からダージリンの声が聞こえてきた。
「ドゥーチェ!そろそろ時間だそうです!」
「マジか!急いで着替えて搭乗だ!」
プラウダではノンナがカチューシャを起こす。
「カチューシャ起きて着替えてください。そろそろ時間です」
「う、う~ん、もうそんな時間なの?」
「早くしないと一番乗りできませんよ」
「ほあ~~い」
続けてダージリンが話す。
「では・・・まほさん、指示を」
「ダージリン?・・・」
まほは若干困惑する・・・が。
「・・・・・・了解した」
まほが深呼吸して咽頭マイクのPTTボタンを握りなおす。
「我々はこれより、大洗対大学選抜の試合に参戦する為、大洗本隊と合流する!」
まほはもう一度息を吸い・・・。
『大洗連合全車Panzer vor!』
ティーガーⅠ、Ⅱ、パンターが唸りを上げて加速し稜線を超える。
サンダース、ケイが言う。
「フフ・・・やるじゃないダージリン!じゃ、私達も行くわよ!Panzer vor!!」
M4、M4A1、M4ファイヤフライが稜線を超える。
「ダージリン様・・・」
オレンジペコは少し笑顔になった。
アッサムも目を瞑り微笑んでいる。
「では・・・わたくし達も行きましょうか。せ・・・Panzer vor」
「パンツァーフォーでございますのよー!」
チャーチル、クルセイダー、マチルダⅡが稜線を超える。
知波単、西が呼応する。
「指示が出た!我々も行くぞ!戦車パンツアホー!」
「お?大洗流ですな!パンツアホー!」
「中隊長殿!パンツアホーとはなんでありますか?!」
「戦車前進という意味だ!パンツアホー!」
「了解であります!パンツアホー!」
鉄獅子22両が森を抜けて前進する。
継続、ミカが言う。
「行こうか・・・風の集まる場所へ・・・」
ポロローン♪
プラウダではカチューシャがブー垂れていた。
「なんでもっと早く起こさないのよ!それで、なんで私の制服だけブカブカなのよ!スカートはピッタリなのに!」
「指示が出る前に起こしましたよ、後、制服は多分発注ミスでしょうカチューシャ」
「もう!後で粛清してやるんだから!とにかく一番乗りするのよ!行くわよ!Panzer vor!」
「Ураааааааа!!」
T-34/85が稜線をジャンプしながら超える。
その後ろをJS-2 KV-2が付いて行く。
「あいてて!姐さん足踏んでます!」
「うるさい!狭いんだから我慢しろ!我々も行くぞ!Panzer vor!」
「よっしゃー!」
「たかちゃん・・・待っててね」
CV33が小さな丘をジャンプし、ドリフトながら走り抜けていく・・・。
まほはキューポラから顔を出している。
ティーガーⅠが小さい丘を越えると大洗、大学選抜が向かい合い対峙している。
中央には審判団と蝶野亜美。
すかさず双眼鏡で確認するまほ。
そこには、俯き加減で居る西住みほが見える。
「みほ・・・通信手!マイクを外部スピーカーへ!」
「了解!」
すぅ・・・・。
「待ったーーーーー!」
fin
D「という映画を作ろうと思っているのだけれども・・・どうかしら?これが20億越えのヒットをすればブラックプリンス、いや、スーパーチャーチルが買えますわよ。マチルダ会、クルセイダー会のお偉い方々も黙らせられますわ!おほほほ」
OP「・・・怒られますよ」