秋の日のヴィオロンの...もう一つの物語   作:メトロポリスパパ

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プラウダではクラーラとノンナが聖グロからのメッセージに気付いた。


【プラウダ・ウォー】

プラウダ高校学園艦

 

夜の張が下りた中、副隊長のノンナは一人執務室でパソコンに向かっていた。

そこへ扉をノックする音が。

 

コンコン

 

「失礼します。同志ノンナ、クラーラです」

 

「どうぞ」

 

クラーラは扉を開け中に入り、メモを一枚ポケットから出して報告する。

 

「※KBPが聖グロリアーナからの電信を受信、解読致しました」

 

※プラウダ高校保安委員会 Комитет по безопасности Правда средняя школа

 

ノンナはクラーラの瞳を見ながら淡々と答える。

 

「それは・・・ヒガシノカゼ・・・から始まる文ではなかったですか?」

 

クラーラは少し驚いた表情をしながら尋ねる。

 

「なぜ、ご存知なのですか?」

 

ノンナは軽く微笑み答える。

 

「今、パソコンで見ていますから」

 

ノンナは執務室のパソコンにも隊長宛にサンダースからメールが届いている事を説明した。

そして隊長宛のメールを、何故ノンナが開けているのか。

それを指摘する者はこの学校には居なかった。

ノンナが話し出す。

 

「恐らく、大洗の件で何か進展したのでしょう」

 

クラーラも頷き答える。

 

「はい、でも、良い方向に進んだ訳では無さそうです」

 

ノンナは何かを考えた後

 

「カチューシャは今はお休みになっていますか?」

 

「はい、既に自室でお休みになっておられます」

 

「そうですか・・・」

 

ノンナは椅子から立ち上がりクラーラに言う。

 

「急を要する事態ですので、今から私がお知らせに行ってきます」

 

退室しようとするノンナ。

だが、クラーラはノンナを引き止める。

 

「お待ちください。同志ノンナが行かずともわたくしが」

 

ノンナはクラーラの顔を見た後、視線を逸らし言う。

 

「いえ、これは副隊長である私の役目。ここは私が・・・」

 

クラーラは食いさがる。

 

「同志ノンナ。どうかわたくしにお任せ下さい。副隊長に雑務をして頂くわけにはまいりません」

 

二人は視線を合わせたまま沈黙する。

 

「・・・」

 

ノンナが根負し

 

「・・・二人で行きましょう」

 

二人は高級生徒の居る寮に向かった。

カチューシャの部屋の前に到着すると、クラーラは呼び鈴を一回押す。

応答は無い。

ノンナは携帯電話でカチューシャに電話を掛けてワンコールで切る。

勿論応答は無い。

ノンナは真剣な顔で。

 

「応答が有りませんね。特別な事態なのでこれを使用します」

 

ポケットからカードを取り出すと躊躇無くカードを扉のカードキー入れに差し込んだ。

 

カチャン。

 

扉のキーが空き、二人は玄関に入る。

靴を脱ぎ、音を立てずに、まるで自宅かのように一直線に寝室に向かった。

ノンナが寝室の扉をそっと開ける。

寝室ではカチューシャが黄色い熊の顔が付いたパーカーのパジャマを着て掛布団を抱いてスヤスヤと眠っていた。

カーテンの隙間から月明かりが差し込む中、二人はベッドの左右に陣取り、ただカチューシャを眺めていた。

なにをするでもなく・・・ただ眺めていた。

15分か・・・20分か眺めていたであろうか。

クラーラがそろそろ・・・とノンナに目配せする。

ノンナは頷くと、カチューシャの肩を軽くさすり。

 

「カチューシャ、起きてください」

 

カチューシャは、う~ん・・・と呻きながら目を擦る。

 

「カチューシャ、起きてください。大洗の件で報告したいことがあります。」

 

カチューシャは薄っすらと目を開けて見回す。

目が慣れていなくぼんやりとしているが左右に人影が見えた。

 

「うぎゃーーーーー!」

 

悲鳴を上げて飛び起きるカチューシャにノンナは人差し指を口元に持っていき、しー・・・、とする。

カチューシャは動悸と呼吸が荒くなっていたが、二人を認識したのか落ち着いたようだ。

だが・・・。

 

「な、な、なんであんた達がここに居るのよ!どういう事なのよ!説明しなさい!」

 

ノンナとクラーラは顔を見合わせ、まずはクラーラが初めに説明する。

 

「KBPが聖グロリアーナからの電信を受信、解析しました。大洗に進展が有った物と思われます」

 

「日本語で話しなさいよ!」

 

カチューシャは両腕をバタバタさせて怒っている。

ノンナが補足に入る。

 

「KBPが聖グロリアーナからの電信を受信、解析しました。同時にサンダースからもカチューシャ宛に同じ内容のメールが届いています。こちらには、周波数と多分秘匿コードと思われる数字が記載されております」

 

カチューシャはワナワナしながら喚き散らす。

 

「そうじゃなくて!なんであんた達が私の部屋の寝室に居るのよ!どうやって入ったのよー!」

 

ノンナは淡々と答える。

 

「はい、報告する為に何度も連絡していたのですが、カチューシャに気付いてもらえず、特別な事態でしたので苦渋の選択でマスターキーを使わせていただきました」

 

カチューシャはぐぬぬ・・・という顔をし、納得していない様子であるがノンナは意に介さず話を続ける。

 

「ですので、今から一緒に無線室に行って頂きたいのですが・・・」

 

「いやよ!あんた達で処理しときなさい。私は寝るんだから」

 

カチューシャは掛布団を被って丸まりながら横になる。

ノンナは言う。

 

「仕方ありませんね。クラーラ、持って来てくれませんか?」

 

「はい」

 

クラーラは部屋を出ていく。

しばらくすると、クラーラは箱状の何かに配線等が巻いてある物を抱えて戻ってきた。

ノンナとクラーラは配線を繋ぎ、机にマイクを置きベランダにアンテナを立てる。

無線機のようである。

 

ノンナは無線機のスイッチを入れ、少し待ってから周波数を合わせ話し出す。

 

「こちらプラウダ高校です。応答願います」

 

「こちら、聖グロリアーナ女学院無線室です、どうぞ」

 

「了解、こちらプラウダ高校戦車道 副隊長ノンナです。電信を受信いたしました」

 

「了解、ノンナ様ですね。オレンジペコ様にお繋ぎ致します」

 

「了解しました」

 

暫くするとかわいらしい声が聞こえてきた。

 

「こちら、オレンジペコです。夜分のご連絡ありがとうございます」

 

「いえ、大洗の件だと思いましたので早急にご連絡させて頂きました。何か進展があったのですか?」

 

オレンジペコが経緯を説明していると、ノンナの後ろでカチューシャが飛び起きて無線機のマイクを奪い取り話し出す。

 

「ペコーシャ!それは本当なの?!」

 

オレンジペコは突然のカチューシャの声にビックリしながら話し出す。

 

「ペコーシャ・・・カチューシャ様!?はい本当です」

 

「ふ~ん、そうなんだ。ま、別に私は大洗が廃校になっても構わないんだけどね。そしたらうちが隊員を引き取るつもりでいたから・・・でも・・・」

 

「・・・でも?」

 

「大洗が無くなったらシベリアが食べられなくなっちゃうもんね!マコーシャとも約束したし。いいわ!行ってあげる」

 

ノンナが突っこむ。

 

「本当は助けたいって言えばいいのに、後、シベリアは無くなりません」

 

「うるさいわね!私達が大学選抜なんかギッタンギッタンにしてやるんだから!」

 

オレンジペコがお礼を言う。

 

「ありがとうございます!絶対勝ちましょう!」

 

カチューシャも言う。

 

「当ったり前じゃない!それで?どうしたらいい?」

 

「はい、明日の正午にダージリン様から詳細に関するブリーフィングを実施しますので、この周波数で待機願います。それと、この作戦は極秘でお願い致します。」

 

カチューシャは聞く。

 

「わかったわ。で、そのダージリンは今何をしているの?」

 

「はい、アッサム様と作戦計画の打合せをしています。北海道上陸のタイミングや車両の編成だと思うのですが・・・」

 

カチューシャは少し不満そうに答える。

 

「ふ~ん、そうなんだ・・・まあいいわ。明日のブリーフィングでどんな作戦か聞かせてもらうわ」

 

「はい、ではよろしくお願いいたします」

 

「了解」

 

カチューシャはマイクから手を放し、ノンナ、クラーラに向かって言う。

 

「ノンナ!クラーラ!大学選抜をギッタンギッタンにするわよ!」

 

「はい」

 

「да」

 

「それと・・・」

 

カチューシャはモジモジしながら言う。

 

「呼び出し・・・気付かなくて悪かったわね・・・」

 

二人は・・・優しく微笑んだ・・・。




次回
【知破単・ウォー】
よろしくお願いします。

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