秋の日のヴィオロンの...もう一つの物語   作:メトロポリスパパ

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サンダース副隊長のアリサは聖グロからの電信を受信する。



【サンダース・ウォー】

聖グロリアーナ女学院学園艦

 

オレンジペコは無線室に居た。

電信機に向かいカタカタと電鍵を叩いている

そこへ、アッサムが帰還し無線室に入ってきた。

 

「ペコ、ご苦労様です。先程ダージリン様より話しはお聞きしました。今の状況を教えて頂けますか?」

 

オレンジペコが振り返り答える。

 

「アッサム様、今送信している所ですが、ただ、日も落ちていますので気付いて頂けるのかどうかといった所です」

 

「分かりました。大洗は明後日の晩に、サンフラワーにて苫小牧に向けて出航すると情報が入っています」

 

オレンジペコは少し難しい顔をして言う。

 

「時間との勝負ですね。しかし・・・普通に電話とかメールでは駄目なのでしょうか?」

 

アッサムはゆっくりと目をそらし、何も言わなかった。

オレンジペコは、あー・・・、と理解しそれ以上は聞かないでおくことにした。

 

 

サンダース大学付属高校学園艦

 

アリサは自室でパソコンに向かっていた。

机の左側に棚があり、無線機が幾つか置かれている。

アリサは何気なく棚を見ると自作の電信機のランプがチカチカと光っているのが確認出来た。

アリサは直ぐにイヤホンをジャックに刺し、メモを取りながら傍受に入る。

 

「この乱数・・・聖グロ」

 

アリサは電卓をパチパチ打つ。

 

「ヒガシノカゼアメオオアライノテンキセイロウナレドモナミタカシ」

 

これは・・・。

アリサは携帯電話でケイに電話を掛けた。

 

「ケイよ、アリサどうしたの?」

 

「聖グロからの電信を傍受したのですが・・・恐らく大洗に関わる事かと」

 

「わかったわ、部屋にいるの?直ぐ行くわ」

 

「はい」

 

程なくアリサの自室の扉をノックする音が聞こえた。

 

コンコン

 

「アリサ、入るわよ」

 

「どうぞ」

 

アリサはケイを部屋に招き入れ、メモを見せた。

 

「大洗に関してなのは間違いないわね。多分、何かが決まったけど困難という事かな?」

 

頷きながらアリサが聞く。

 

「東の風、雨は、アメリカと開戦した時の日本の短波ラジオでの暗号ではなかったですか?」

 

「私たちの事、ではないわよね。東・・・東京?・・・大洗・・・」

 

アリサがボソッと言う。

 

「文科省・・・」

 

ケイとアリサは目を合わせる。

 

「それだ!」

 

ケイが指示を出す。

 

「アリサ、ここから無線は飛ばせる?」

 

「はい!例の周波数回線でいいですか?」

 

「OK」

 

アリサが無線機とスタンドマイクを用意する。

 

「どうぞ」

 

ケイは呼吸を整え、マイクを握りPTTボタンを押した。

 

「ブレイク、こちらサンダース大学付属高校 戦車道隊長のケイ 応答願います」

 

「ブレイク了解、こちら聖グロリアーナ女学院無線室です。ケイ様ですね、オレンジペコ様に代わりますので少々お待ちください」

 

「了解」

 

「代わりました、オレンジペコです。応答願います」

 

「ハァーイ!ペッキー、電信見たわ、大洗の件よね?」

 

「ぺ・・・は、はい、大洗の試合が決定致しました!この試合に勝てば、廃校は撤回されます!」

 

ケイはアリサとハイタッチをした。

直ぐにアリサは携帯で何処かに電話を掛ける。

 

「ペッキーそれホント?!やったわね!それで?何処とやるの?」

 

少し間を置きオレンジペコは答える。

 

「大学選抜です。車両数は・・・30両」

 

「!!・・・shit!」

 

ケイは一気に不機嫌になり、アリサも眉間にしわを寄せ爪を噛む。

ケイがオレンジペコに尋ねる。

 

「大洗は大学選抜30両に8両で挑めっていうの?!」

 

そこへナオミも部屋に来たのでアリサから説明を受ける。

説明を聞いたナオミは露骨に舌打ちをする。

オレンジペコは答える。

 

「はい、ですので我々高校側からも増援を出す事に致しました。既に黒森峰と聖グロリアーナは参戦を決定しています」

 

ケイは間髪入れずに言った。

 

「OK!もちろん私達も参戦するわ!それで呼び掛けたんでしょ?」

 

「ありがとうございます!・・・ただ・・・」

 

濁すオレンジペコにケイが尋ねる。

 

「何?ペッキー」

 

「ダージリン様からの伝言なのですが、負ければ大洗は廃校になってしまいます。それを背負う覚悟はありますか?と・・・」

 

ケイはアリサとナオミを見る。

二人がこくっと頷いたのを見て、ケイもニヤッとして頷く。

 

「覚悟を決めたわ!背負ってやろうじゃない。絶対勝つわよ!」

 

「あ、ありがとうございます!絶対勝ちま・・・うぅ・・・うぇ・・・」

 

オレンジペコは泣き出しそうになるが、堪えて続ける。

 

「す、すいません。必要な書類等はメールで送らせて頂きます。それと明日の正午よりブリーフィングを行いますので、この周波数でお待ちください。それと、お願いがあるのですが宜しいですか?」

 

ケイが答える。

 

「なに?何でも言って」

 

「この参戦は極秘作戦なので他言無用でお願いしたいのと、この無線の周波数と秘匿コードを各校戦車道部にこっそりとお知らせ願えないでしょうか?出来ればこの回線を使いたいなと思いまして」

 

ケイはアリサをチラッと見て。

 

「いいわよ、わかったわ、ペッキーも大変ね〜」

 

「ははは・・・では、よろしくお願い致します。out」

 

「了解、for out」

 

ケイは椅子から立ち上がりアリサを見て言う。

 

「聞いての通りよ、じゃ、アリサよろしくね」

 

え!という顔をするアリサ。

ナオミもアリサの肩を軽く叩き、ケイと共にアリサの部屋から退室した。

はあ、と肩を落とし、ブツクサ言いながらアリサはパソコンの前に座る。

「聖グロはいつも外連味盛り過ぎなのよ、今時モールスなんか誰も使わないわよ。私だから分かったようなもんよ。ホント面倒くさいわね」

 

パソコンのキーボードををカタカタ打ちエンターキーをターン!と決める。

アリサは各校隊長宛に電信文と周波数と秘匿コードだけを書いたメールを送った。




次回
【プラウダ・ウォー】
よろしくお願いします。

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