牙狼 〈GARO〉 -戦国ノ希望-   作:鳳凰白蓮

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この小説の光璃ちゃんは原作より色々と強い存在になってきました(笑)
恋愛面でも戦闘面でも、牙狼要素を加えた結果がこれです(笑)


『虎 〜Hikari〜』

轟天を無事に復活し、流牙の……黄金騎士ガロの力になったのも束の間、光璃が何と流牙に夫婦になろうと告白して来た。

 

流牙たちは評定の間に集められ、光璃はみんなに向けてある宣言をする。

 

「光璃は御旗、楯無に誓い、流牙と祝言を挙げる」

 

祝言を挙げる宣言に春日たち家臣や結菜たちは困惑する。

 

ひとまず冷静さを取り戻した流牙は落ち着いて光璃に質問する。

 

「つまり……一緒に鬼を倒す同盟に組むと言うことか?」

 

「うん……織田信長、尾張は弱卒だけど、流牙が信頼する者なら信用する……」

 

「じゃあ、美空は?わざわざ越後を脅さなくても良かったのに」

 

「ダメ……美空は信用出来ない」

 

「あ、そうですか……」

 

光璃は美空とは色々ありすぎていくら流牙が美空を信用してもなかなか無理な話だった。

 

少し拗ねたように言う光璃に流牙は「美空は何したんだよ……」と呟いた。

 

「流牙、祝言を挙げよ」

 

「いや、別に祝言を挙げなくても、人々を守るために、それに同じ守りし者の一族の末裔同士だし一緒に鬼と戦えば良いじゃないか」

 

「ダメ、覚悟を見せた相手には相応の覚悟を見せるのが礼儀」

 

「……ねえ、光璃。もしかして、国やみんなのために俺と結婚するのか?」

 

流牙は目を細くして鋭くし、静かな声で光璃にそう尋ねた。

 

一瞬だけ光璃は国の為、民の為に流牙と結婚した美空の姿が重なった。

 

もちろん、美空はそれだけのために結婚した訳ではない。

 

流牙に好意を抱いているからこそ妻になった。

 

すると、光璃は首を左右に振って頰を赤く染めながら口を開く。

 

「確かにそう聞こえるかもしれないけど、それは違う……」

 

そして、光璃は武田の棟梁ではなく、一人の少女として流牙に想いを打ち明ける。

 

「私、流牙の事……好きだから」

 

「えっ……?」

 

光璃からの突然の告白に流牙は目を丸くした。

 

「巫女たちにあなたの事を調べてもらって、どんな人なのか聞いて来た。光瑠の記憶に残る魔戒騎士たちとは異なり、人にとても優しく、慈しみの心を持っている。だけど、一度鬼を相手にすれば人を守るため、修羅の如く剣を振るう……」

 

流牙は波奏の愛情と約束、そして流牙自身が持つ物に込められた声を聴く事が出来る能力から誰よりも優しく、寄り添える心を持っている。

 

光璃はそんな流牙に出会う前から心が惹かれていた。

 

「ずっと会いたいと思っていた。あなたと言葉を交わしたいと思っていた……それから、この地に来たあなたと同じ時を過ごし、戦いの勇姿をこの目に焼き付けた。そして、時を重ねるごとにあなたに惹かれて行った」

 

「光璃……」

 

「流牙、私は……あなたの事が好き、ううん。大好きだよ」

 

光璃の少女としての強い想いに何も言えなくなった流牙は困ったように笑う。

 

「もう……ずるいよ、光璃。そんな事を言われたら何も言えなくなるよ。分かった……こんな俺だけど、夫婦になろうか?」

 

「うん……!」

 

「御旗・楯無も御照覧あれ。今宵より武田太郎光璃晴信、道外流牙の妻となることを誓う……」

 

「楯無……?」

 

先ほどから何度も聞いている楯無と言う名、最初は誰かの名前かと思ったが人の名前ではなかった。

 

「御旗、楯無は武田の家祖・新羅三郎義光から受け継がれている武田家伝来の家具。御旗、楯無に対して誓約したことは何人であろうとも覆ることは叶わない。流牙も自分に誓いを立てて」

 

「俺が誓うのはもちろん、この剣と鎧だ!」

 

流牙は牙狼剣を抜いて光の輪を描いてガロの鎧を召喚する。

 

召喚された鎧は流牙が纏うことなく飾られるように流牙と光璃の背後に置かれる。

 

鎧は黄金の粒子が溢れ、二人を祝福するように放たれる。

 

「ガロ……」

 

「牙狼剣とガロの鎧……俺たちの世界とこの世界の希望の光となる黄金の輝きだ。この剣と鎧に誓う……俺は光璃の夫として力を尽くす」

 

流牙と光璃の誓いの言葉の後、祝言の杯を手に取り、薫が御神酒を注いだ。

 

そして、三回に分けて飲み干す三段の杯……それを終えて御神酒を飲み干すと春日が代表して言葉を発し、皆が唱和と同時に一斉に頭を下げた。

 

「武田家、家臣一同、武田太郎光璃晴信さまと、道外流牙さまの祝言、言祝ぎもうしあげまする」

 

「……大義。流牙、これで夫婦だよ」

 

「ああ……」

 

流牙と光璃はこうして夫婦になり、久遠、一葉、美空に続く四人目の正妻となった。

 

しかし、まだ道は交わることなく分かれている。

 

その道が交わる時はもう少し先となる……。

 

 

祝言から間も無く流牙は光璃の部屋に案内されたが……。

 

「あ、あの、光璃……ちゃん?ちょっと落ち着こうか?」

 

流牙は今までにない大ピンチに陥っていた。

 

光璃の部屋には布団が一つでその上には寝間着姿の光璃、つまり……。

 

「流牙……夫婦の初めての夜にやる事は一つだよ……?」

 

光璃は寝間着の着物姿で今にも胸元がはだけて素肌が露わになりそうで流牙は今すぐにでも脱走したかった。

 

しかし、光璃の近くには魔導筆が内蔵されている軍配があり、流牙が逃走するものなら容赦無く法術を使うというものだった。

 

そして、光璃の口からとんでもない爆弾発言が放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初夜だよ……子供、作ろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何となく予想していた言葉だったが、光璃の本気が伝わり、流牙は顔を赤く染めて首を左右に激しく振る。

 

「ま、待ってよ!俺には早いし!!」

 

「でも、遅かれ早かれ魔戒騎士は男子に鎧を継がせるのは使命だし……流牙は何より黄金騎士だからね」

 

莉杏たちのように長い修行を積んだ純粋な魔戒法師ではないが、魔戒の知識を持つ光璃の言葉はもっともであり、流牙はだんだん心で追い詰められていく。

 

光璃は久遠たちに負けず劣らずの綺麗な赤い髪と目と可愛らしい童顔を持つ美少女で、体が小柄ながらも胸はかなりあり、スタイルもすらっとしている。

 

普通の男ならクラッとなるが、流牙は不屈の精神で何とか耐えているが、光璃は更なる追い討ちをかける。

 

「それに……流牙と私の赤ちゃんなら、きっと最強だよ?」

 

(ボルシティで莉杏に言われた台詞と同じなんだけど!?ちょっとちょっと、ジンケイの女ってみんな好きな男に対して大胆になれるものなの!?そういう血筋なのか!!?)

 

追い詰められて冷静に判断できなくなって絶賛大混乱な流牙だった。

 

「大丈夫、頑張って元気な男の子を産むから……」

 

「光璃ちゃん!年頃の女の子なんだから、お願いだからもっと自分を大切にして!!」

 

「私は大丈夫、痛いのも激しいのも耐えるから……でも、少しは優しくしてほしいな……」

 

(ダメだ!全然話を聞いてくれない!ってか、光璃の目がなんか怖い!?正気を失っているというか発情してる!!?)

 

念願だった流牙と夫婦になった光璃が暴走しかけているのには大きな理由があった。

 

光璃は話してないが、先祖・光瑠は実は先代の黄金騎士に好意を抱いていた。

 

しかし、結局その想いを打ち明けることなくこと世界に来てしまった。

 

後に結婚した夫のことはもちろん愛していたが、やはりその黄金騎士の事は忘れられず、その忘れられない恋心が光瑠の記憶に受け継いでいる。

 

光璃の流牙への純粋な恋心と合わさり、結果として二人分の乙女の恋心が光璃の中で爆発して暴走しているのだ。

 

「流牙……」

 

目がトロンとしており、頬を赤く染めながら今にも流牙に襲いかかろうとしている。

 

流牙は逃げようとしたが、予想通りと言うべきか光璃が軍配を持って振るうと金縛りの法術をかけて流牙の体が動かなくなる。

 

「うぐっ……う、動けない……!?」

 

気合を入れれば何とか解除出来そうだったが、光璃に攻められてそれどころではなかった。

 

流牙の貞操の危機が迫る中……光璃の背後に黄金の粒子が現れた。

 

「流牙、今回だけ助けてあげるわ」

 

「ふぁ……?」

 

次の瞬間、光璃の体が粒子に包まれて一瞬で睡魔に襲われて眠りについてしまった。

 

「ひ、光璃?」

 

流牙は眠ってしまった光璃を受け止めてそのまま布団に眠らせると流牙の前に黄金の粒子が一つに集まって形となった。

 

「母さん……」

 

それはガロの鎧に宿っていた波奏の魂の欠片だった。

 

「どうして……?」

 

「流牙がさっき鎧を召喚した時にちょっとね?まさか祝言に立ち会うとは思わなかったわ」

 

「あ、あはは……」

 

流牙がガロの鎧を召喚した際に波奏の魂が出て来て影から流牙と光璃の祝言を見ていたのだ。

 

波奏は眠っている光璃の顔を撫でて母の表情を浮かべた。

 

「光璃さん、とても良い子ね……流牙、夫婦になったんだから幸せにしてあげなさい」

 

「は、はい……」

 

「さて、私は今のうちに会いたい人がいるから行くわ。流牙、お休みなさい」

 

波奏は流牙が幼い頃、二人で暮らしていた時のように優しく頭を撫でる。

 

「うん……お休み、母さん」

 

流牙も今だけは母に甘える子供に戻り、波奏はその場から静かに消えた。

 

一息をついた流牙は眠っている光璃に掛け布団を掛け、交わることは出来ないがせめて添い寝だけはしようと思い、隣で静かに眠る。

 

「お休み、光璃……」

 

光璃の髪に触れながら流牙は目を閉じた。

 

 

 

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母と子の永遠の愛。

漆黒から金色へ導く無限の輝き。

次回『波 〜Hakana〜』

希望と約束、それが二人の愛の証。



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