牙狼 〈GARO〉 -戦国ノ希望-   作:鳳凰白蓮

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いやー、遂に牙狼HDも最終回ですね。
やはり初代は偉大だと改めて感じますね。
そして、来年からは零の新たな物語が始まるのでまだまた牙狼が楽しみで仕方ないです。


『竜 〜Dragon〜』

戦場に鬼が近づく気配をザルバが感じ取り、流牙は名月の元へ行き、これからどうすべきかを考えさせてからザルバの案内の元、戦場を駆け抜けて鬼の気配がする方へ向かった。

 

到着したのは関川と呼ばれる大きな川だった。

 

そして……到着してから数分もしないうちに『それ』は現れた。

 

「グォオオオオオッ!!!」

 

鬼は何と海から関川を登って現れ、次々と越後の地に上陸をして来た。

 

その数は数百を越え、流牙の後ろにいた兵士たちは恐怖で逃げ出す。

 

「来たか……!」

 

『流牙、気を引き締めていけ!』

 

「ああ!」

 

流牙は右手に牙狼剣、左手には既に鞘から抜いた牙狼刀を構えて鬼の群れに突入する。

 

牙狼刀は鬼を対峙してその刃から輝きが放たれ、牙狼剣と同等の鋭さを持ち、次々と鬼を切り裂いていく。

 

すると、青空に暗雲が覆われ、大雨が降り出して来た。

 

「ちっ、こんな時に雨か……」

 

越後では雨が多いとは聞いていたが、これほどの大雨が来るとは予想外だった。

 

雨は視界を悪くし、体温を奪っていくが、鬼はそれを物ともせずに流牙に襲いかかる。

 

「三千世界!!!」

 

凛とした気迫のこもった声と共に無数の刀が飛来し、鬼たちを滅多斬りにする。

 

「この刀は……一葉!」

 

無数の刀の後に走りながらやって来たのは今まで戦の中で沈黙を守って来た一葉だった。

 

一葉は将軍であるため、流牙隊の一員といえどもこの戦にはまともに参加することは出来ない。

 

「待たせたな、流牙!余が来たからには千人力じゃぞ!」

 

しかし、鬼の出現にやっと戦えると一葉は意気揚々となり、刀を手に鬼の群れに突撃したのだ。

 

「ははっ、相変わらず暴れ好きだな。だけど、油断するなよ?」

 

「分かっておる。さぁ……鬼狩りと行こうかの!」

 

流牙と一葉は背中を合わせ、互いに笑みを浮かべてアイコンタクトをすると再び鬼の群れに突撃するが……。

 

「喰らえ、鬼ども!三千世界っ!三千世界っ!ふふっ、三千世界ーっ!!」

 

今までの鬱憤を晴らすかのように一葉は楽しそうに大笑いをしながら三千世界を連続で発動をし、鬼を蹴散らしていく。

 

その光景に流牙は内心驚愕し、ザルバも口をあんぐりと開けるほど珍しく驚いていた。

 

(あ、あれ……?一葉の三千世界って一日数回しか使えないんじゃなかったっけ……?)

 

(末恐ろしいお嬢ちゃんだな……味方で本当に良かったぜ……)

 

「ふはははははははっ!三千世界ーーっ!」

 

一葉の鬱憤を晴らす怒涛の三千世界に蹂躙されていく鬼たちを見て戦慄する流牙とザルバだった。

 

 

「ヨナヨナノ……ナグサメナリシ……」

 

「ツキダニモ……」

 

「ぐるるるるぅ……」

 

関川の近くの森で控えている大量の鬼とそれを従えている謎の少年。

 

「詠えや詠え。喰らえや喰らえ。可愛い子たちよ、たんと遊んで大きくおなり。天よ、朕の子らを祝福せよ!蔵王の君よ。朕は所望する!この日の元の全てを!そして朕による済世を!扉は既に目星はつけておる。器よ、早う鍵となれ。鍵となって、朕の願いを叶えてみせい」

 

この状況を楽しんでいるように言葉を紡ぎ、その視線の遙か先には流牙の姿がある。

 

「ミヤコへ……ミヤコへ……」

 

「もうすぐじゃ。もうすぐ、京に戻れるのじゃ。そのためにも、子らよ。たんと食べ、たんと遊び、朕の願いを叶えておくれ」

 

少年の叶えたい願い……それを成すために少年は更に鬼を戦場へと送り込む。

 

 

一方、空と名月は鬼の出現に一つの決断を下した。

 

それは戦を止め、共に手を携え、越後を守るために奮戦することだった。

 

名月は流牙の想い、そして名月の共に戦おうと言う想いを胸に秘めた。

 

北条の血が流れていても今は美空の娘、越後を愛し、越後を守る者として朧の元から離れて空と合流し、共に越後を守る為に戦うことを誓った。

 

空と名月は合流し、共に鬼を倒そうとした矢先にザルバの予想通り越前の時と同じく地面から鬼が出現し、次々と襲い掛かって来る。

 

越前の幼星達が最大の危機を迎えたその時だった。

 

 

 

 

 

 

「私の娘たちに手を出しているんじゃないわよ、このケダモノどもーーっ!!!」

 

 

 

 

 

 

雨の音をかき消すかのような怒号と共に白刃の一閃と五つの光が空と名月に襲いかかって来た鬼を切り裂いた。

 

五つの光から現れたのは日の本の法を守りし神々、帝釈天たち護法五神だった。

 

「空!名月!大丈夫!?」

 

「「美空お姉様!!」」

 

美空と護法五神が空と名月たちを守る為に参上した。

 

しかも美空だけではない。

 

「おらおらっ!空様と名月様に手を出すケダモノ、死にたい奴から前に出るッスよ!」

 

「越後の未来を担う希望……失わせない!」

 

「私の大切な愛娘に手を出すなんて許さないわ!!!」

 

「我らの幼星を狙う化け物どもめ、成敗してくれる!」

 

柘榴、松葉、秋子、貞子……更には越後の勇敢な兵士たちが馬に乗って駆けつけて来た。

 

秋子は馬から降りるとすぐに愛菜の元へ向かった。

 

「愛菜!」

 

「母上!」

 

「よく頑張ったわね」

 

「どやっ!母上、共に越後を守る為に戦いましょう!どーん!」

 

愛菜の頼もしい言葉に秋子は一瞬目を見開いて驚いた。

 

「愛菜……ええ!」

 

男子三日会わざれば刮目して見よと言われるが、本当に少し会わないうちに頼もしく成長していることに母として嬉しく思うのだった。

 

美空たちが援軍としてやって来たことで状況は一気に有利となり、軍師である詩乃は美空に進言する。

 

「美空様。鬼は流牙様と一葉様を筆頭に数を減らして来ています。ここで一気に攻めましょう」

 

「そうね。これ以上、鬼たちに好き勝手をやらせないわ。一気に決めましょう!!」

 

美空たち越後衆は流牙隊と空と名月の兵と共に連携を取り、越後を守るために鬼狩りを開始する。

 

詩乃たちが考えた刀、槍、弓の三種の兵を一組とした基本にした陣形で鬼を倒していき、美空も護法五神を駆使して鬼を次々と倒して行く。

 

そして……この戦いの中心人物とも言える、鬼の群れに単騎で突撃した流牙は……。

 

「ふっ、はぁっ!!!」

 

その流牙は牙狼剣と牙狼刀を振るい、鬼を切り裂いていく。

 

すると、越前のときのように牙狼刀に光が灯され、鬼が流牙を優先して近づいていく。

 

流牙は牙狼剣で円を描いてガロの鎧を召喚してその身に纏い、大剣と大刀へと変化した牙狼剣と牙狼刀を構える。

 

越前の時は大量の鬼によって身動きが取れず、鎧を解除出来ずに心滅獣身へと堕ちてしまった。

 

もう二度とそのような事が起こさないよう流牙もあれから考えて対策を練っていた。

 

魔導火ライターを取り出して翡翠色の魔導火を付けて頭上へ投げ飛ばし、揺らめく魔導火を交差させた牙狼剣と牙狼刀の刃に灯した。

 

「はぁっ……うぉおおおおおおおっ!!!」

 

そこから落ちていく魔導火ライターの魔導火はガロの鎧に触れると、一気に鎧にも魔導火が灯され、流牙の気合いと共に膨大な翡翠色の炎が火山の噴火のように燃え上がった。

 

「喰らえっ!!!」

 

そして、魔導火が灯された牙狼剣と牙狼刀を地面に突き刺さすと流牙を中心に地面がひび割れ、地中から大量の魔導火が吹き荒れた。

 

吹き荒れた魔導火は流牙を中心に半径数十メートルにいる鬼を全て焼き尽くした。

 

地獄の業火を操るかの如く敵を焼き尽くす大技……地中を潜る鬼にも大打撃を与える大技で、一旦鎧を解除した流牙に大量の汗が流れる。

 

すると魔導火の攻撃から逃れた鬼達が口を開いた。

 

「ナゼ、キサマハタタカウ?」

 

「何……?」

 

鬼達は流牙に襲いかかりながら次々と問いの言葉を繋げていく。

 

「ヨワキソンザイヲマモッテナンノイミガアル」

 

「ドウセキエユクイノチヲマモッテナニニナル?」

 

「キサマモヤミノソンザイ、ワレラトヒトツニナレ」

 

「断る!!!」

 

流牙は鬼の言葉を全て否定し、牙狼剣で問答無用に切り裂く。

 

「生きとし生けるものはいつかは死ぬ。だけど、心や願いが次の世代に紡がれ、それが永遠の想いとなる!その想いが未来を生きる人々の希望になるんだ!」

 

流牙はこの越後で空、愛菜、名月の三人の心に宿る未来への希望の光を見た。

 

この子達なら美空達の後を継ぎ、越後を……やがてこの日の本を支える大きな存在になると信じている。

 

「俺はこの力で、この剣で、邪悪なる闇であるお前達からその希望の光を守る!!」

 

だからこそ、その想いを繋ぎ、小さな光を消させないために守っていかなければならない。

 

流牙は三度目の鎧を召喚し、鎧のパーツが周囲の鬼に激突してぶっ飛ばしながら流牙の周りを舞う。

 

「それが、黄金騎士ガロの称号を継ぐ、俺の役目だ!!」

 

そして、ガロの鎧が流牙に装着され、流牙の強い想いが反応して鎧の金色の輝きが眩い光を放つ。

 

流牙の未来への希望を守ろうとする想い、そして……美空達、越後に住む全ての者たちの強い想いが重なる。

 

すると突然、護法五神たちは何かに導かれるように美空の命令なく勝手に動き、一直線に流牙の元へ飛んだ。

 

「帝釈!?みんな!?」

 

そして、鬼に囲まれている流牙に暗雲の隙間から差し込まれた一筋の光が優しく包み込んで鬼を弾き飛ばした。

 

「何だ!?」

 

『こいつは……今まで感じたことのない、大きな存在の力を感じるぜ』

 

光はガロの鎧の金色の輝きを更に強めていく。

 

「毘沙門天……?あなたが流牙に力を……?」

 

流牙を覆う聖なる光、それは美空が契約している仏教の神・毘沙門天、その力の一端が放つ光だった。

 

護法五神は流牙の周りに集まるとそれぞれが小さな光の玉となり、ガロの鎧の中に入り込み、眩き強い黄金の光を放った。

 

流牙を……ガロを包み込んでいた光は大きな玉となり、ヒビが割れると何かが生まれるように弾け飛んでその姿を現した。

 

「黄金の……竜!?」

 

それは百メートル以上にもなる黄金に輝く巨大な竜だった。

 

美空たちは突然の黄金の竜の出現に驚き、瞬きをすることも忘れるほどだった。

 

黄金の竜は縦横無尽に飛び回り、大きな烈風を吹かせて鬼たちを空中に投げ飛ばすように吹き飛ばした。

 

更には空に覆った暗雲をも全て吹き飛ばし、綺麗な青空が一気に広がった。

 

黄金の竜が天に昇り、その大きさが一瞬で小さく収縮する。

 

黄金の竜は真の姿である希望……黄金騎士の新たな姿を現した。

 

牙狼・翔の鎧の形に大きな変化が現れていた。

 

両手両足の甲には巨大な鉤爪のような鋭い爪、背中には漆黒の翼と酷似した大きな金色の翼、そして蛇のように長い尻尾。

 

それは狼を模して作られているガロの鎧がまるで竜人のような姿を模した形へと大きく変化していた。

 

更には美空たちの衣装にも描かれている雪の結晶のような煌びやかな装飾が飾られていた。

 

越後に住む全ての人たちの想い、そして毘沙門天と護法五神の力が一つに重なり、ガロの鎧に新たな奇跡を生み出した。

 

闇を討ち払い、希望の光を守り、そして導いていく奇跡の竜人。

 

その名は『護法天竜・牙狼』。

 

流牙の……牙狼の新たな奇跡の力である。

 

 

 

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竜の光が闇を討ち払う。

竜の放つ黄金の輝きが人々に希望の光を灯す。

そこに邪悪なる影が忍び寄る。

次回『対 〜Confronting〜』

物語の主役と悪役が遂に相見える。



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