牙狼 〈GARO〉 -戦国ノ希望-   作:鳳凰白蓮

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今回は一葉ちゃんの大暴れと流牙の新技を披露します。
それから原作ではあまり活躍してない結菜ちゃんが頑張ってます。



『刀 〜Soul〜』

鬼と化した三好衆との戦い、二条館攻防戦……その要は鉄砲と弓矢である。

 

強力な鉄砲とそれを補う弓矢で近づいてくる鬼を撃退している。

 

ひよ子と転子と梅の命令の元、的確な指示を出して戦況は五分五分となっている。

 

城門に取り付いた鬼は千……残りの二千は何処かに潜んでいるはず。

 

このままでは時期に城門が打ち破られ、そこから鬼が次々と進入してくる。

 

それだけは何としても止めるために流牙達が前に出る。

 

「はあっ!!!」

 

「ふっ!!!」

 

流牙の牙狼剣と一葉の刀が闇を切り裂く光が如く鬼を次々と切り裂いていく。

 

一騎当千、天下無双……正にその言葉が似合うように隙や反撃を与えずに鬼とかした三好の兵を切り伏せる。

 

「雷閃胡蝶!!」

 

「随波斎流!疾風烈風砕雷矢!!」

 

結菜は爆雷を発生させる雷の蝶を呼び出し、鞠は光速で放たれる無数の光弾、それぞれのお家流で鬼を倒していく。

 

流牙は牙狼剣だけでなく牙狼刀を魔法衣から取り出し、二刀流で鬼を切り裂いていくが一つの異変が起きる。

 

「刀が光っている……!?」

 

小谷城の時と同じ、牙狼刀が不思議な光を帯び、鬼が流牙に引き寄せられるように近づいている。

 

「こっちに来ているか……それなら好都合だな!」

 

「阿呆!自分だけで戦おうとするな。流牙、自分を囮にして戦うなど阿呆のする事だ。お主はこの日の本の最後の切り札となる男だ」

 

「だけど、鬼を引き寄せられるならそれを利用しない手はない!」

 

「ならば……余がお主を守る刃となり、盾となろう。余の思い人を守るために、余は全力を持って鬼を討つ。……見ていろ主様。お主の妻が真の力を」

 

「何をするつもりだ?」

 

「一葉様?」

 

すると鞠が流牙と結菜の手を引き、一葉の後ろに下がらせた。

 

「下がってないと危ないの。一葉ちゃんは今から、足利のお家流を使おうとしているんだよ」

 

「足利のお家流……?」

 

「うん。足利家お家流、三千世界なの!」

 

「三千世界……?」

 

きょとんとする流牙と結菜の言葉に反応するかのように一葉は静かに語り始める。

 

「そう。須弥山の周りに四大州。その周りに九山八海。その上は色界、下は風輪までを一世界として、千で小千世界、その千で中千世界、更に千で大千世界」

 

一葉の周囲の空気が変わり、そこだけが別世界のような不思議な雰囲気を出していた。

 

「全てを称して三千代世界、通称・三千世界という。三千世界は果てもなく、この世にあるとも、しかしながら、ないとも言える。現であり、幻である。そんな三千世界より、足利の名を慕う力を集める。それが足利家お家流……見るも醜き鬼どもよ。足利将軍である余の力、存分に味あわせてやろう!」

 

不敵な笑みを浮かべた一葉がまるで舞のように宙に手を滑らせる。

 

「な、何だ……!?」

 

そこに空間を突き破って突如現れたのは、本物なのかそれとも幻なのか……数十、数百にも見える数多の刀だった。

 

『おいおい、冗談だろ……?こいつは凄いな……』

 

ザルバのカバーを開けてその光景を見せると、ザルバは目をパチクリとさせて思わず感心してしまった。

 

「相手が相手だ。余のまだ知らぬ時より馳せ参じた、安綱、国綱とやら。両刀で存分に暴れてみせぃ」

 

そんな一葉の言葉を聞いて、宙に浮かぶ刀の中から特に二本がまるで意志を持つかのように一葉に懐き、嬉しそうに瞬く。

 

「足利の。流牙の敵を殲滅せよ。……いけ」

 

短く発した一葉の命令を受け、安綱、国綱と呼ばれた刀が先陣を切り、その後に続けとばかりに、数多の刀が宙より鬼に襲いかかった。

 

先ほどよりも更に増え、七十匹はいようかという鬼たちに襲いかかった刀たちが、一瞬にして鬼をナマス斬りにしてしまった。

 

「……ふむ。久しぶりに使ったが、少々腕が鈍ったか」

 

「あれで鈍ったの!?」

 

「顕現する刀の数が少なかったからな。……余の力が鈍った以外には考えられん」

 

『一葉のお嬢ちゃん。今の技、魔戒騎士が魔界から鎧を召喚する時と同じ、異世界と繋いで刀を召喚したな?一体どういう仕組みだ?』

 

「知らん。足利の棟梁にしか使えんお家流で、訓練したこともないのだからな」

 

「足利のお家を継ぐ時にね、魂に契約の呪が刻み込まれるんだって。そうすることで、三千世界と繋がれるって泰能が言ってたの!」

 

「泰能さんって本当に何者……?」

 

「我の知らぬ、見たことも聞いたことも、どこにあるかも分からぬ三千大千世界。そんなものと交信せんといかんのだ。この力を使うとかなり疲れる。身体が疲れるのではなく、頭というか……魂が疲れるのだ。だかはこのお家流は一日に一度か二度が限度だな」

 

『三千大千世界か……俺様でも知らないそんなとんでもない世界があるとはな。ところでお嬢ちゃん、そのお家流で魔戒剣を召喚出来るのか?』

 

「魔戒剣……流牙の牙狼剣と同じホラーを切る剣だったな。試したことはないから分からないな。だが、多分出来ると思うぞ?召喚する武器は実在や空想を問わないからな」

 

「え……?本当に……?」

 

『マジか……本来なら女が使えない魔戒剣を召喚して操るとか規格外すぎるぞ……』

 

「本当に凄い……私もあまり他家のお家流には詳しくないけど、ここまで凄いのは初めて見たわ……」

 

結菜の雷閃胡蝶も充分凄い力を持っているが、流石は将軍家のお家流……三千世界は人知を超えるほどの力を持っていた。

 

三千世界で鬼の数は減ったが、まだまだ鬼がぞろぞろと現れる中、流牙は一葉の三千世界にちょっとした対抗心が芽生えた。

 

「一葉に負けてられないな……結菜!連携技、やるぞ!」

 

「その言葉、待っていたわ!」

 

流牙は牙狼刀を地面に突き刺し、牙狼剣で円を描いてガロの鎧を召喚し、その身に纏うと結菜は雷閃胡蝶を流牙の周囲に展開した。

 

雷閃胡蝶は結菜が敵と判断したものに近づくと爆発するので味方である流牙の近くにいても爆発しない。

 

流牙は牙狼剣を構えると、精神を集中させて気合いを入れる声を発する。

 

「はぁあああっ……!!」

 

すると、ガロの金色が点滅するように輝きが徐々に増すと、雷の蝶がガロの鎧の中に入っていく。

 

「はぁあああ……はあっ!!!」

 

そして、ガロが膨大な雷をその身に纏い、闇夜を裂く雷光となった。

 

「鎧が雷を纏った!?」

 

「ピカピカで綺麗なの!」

 

「これが私と流牙の連携技。ガロの鎧に私の雷閃胡蝶を取り込ませ、膨大な雷を宿す……その名は『閃迅雷装』!!」

 

魔導火を纏う烈火炎装からヒントを得て結菜が自分の雷閃胡蝶を纏う事は出来ないかと流牙に提案した。

 

烈火炎装の要領でなんとかなるかもしれないと思った流牙は観音寺城の近くの人のいない山で試したところ、何回かの失敗を重ねて完成することができた。

 

攻撃力と防御力を大幅に増す烈火炎装とは違い、閃迅雷装は雷の特性が反映される。

 

流牙は地を蹴り、走った後に光の軌跡を残しながら一瞬で鬼の間合いに入り、目にも留まらぬスピードで牙狼剣を振るう。

 

鬼を切り裂き、雷が爆ぜて熱と電撃の爆発を起こす。

 

目にも留まらぬ速力と敵を仕留める爆発力……それが閃迅雷装のもたらす効果である。

 

「結菜!牙狼剣に雷閃胡蝶を!」

 

「ええ!!」

 

今度は雷閃胡蝶を牙狼剣に宿し、白と黒の刃が雷光の輝きである金色へと彩る。

 

「うぉおおおおおっ!!!」

 

「決めなさい!『天雷狼牙』!!」

 

「はあっ!!!」

 

振り下ろした牙狼剣の刃から雷の力が解き放たれ、大きな狼の姿を模した雷の斬撃が放たれる。

 

地を駆ける狼の雷撃は鬼の大軍の体を焼き切ると同時に爆発して灰や肉片も残さずに消滅させた。

 

「灰も残さずに焼き切るとは凄まじい威力じゃな……」

 

「凄いの!流牙と結菜の連携技!」

 

「私の雷閃胡蝶だけじゃここまでの威力にはならない。人々の想いを力に変えるガロの鎧と牙狼剣があるからこそ実現出来たのよ」

 

流牙はガロの鎧を解除し、一息いれる間も無く牙狼剣を構え直す。

 

一葉の三千世界と結菜との連携技である閃迅雷装でかなりの数を減らしたが、それでもまだまだ鬼の襲来は終わらない。

 

「ご主人様!」

 

「小波、どうした!?」

 

(北門に鬼の姿を発見しました。数、五百です)

 

(分かった、引き続き警戒を!)

 

(承知!)

 

「詩乃!」

 

(はっ!聞こえておりました。長柄上手を二十人、弓を十人、北門に移動させます。そちらにも何人か派遣しましょう)

 

(ありがとう!)

 

(いえ、これだけしか割けず、申し訳ない限り。北門を頼みます。そして……どうかご無事で……!)

 

(心配するな、俺は死なないからさ!)

 

小波と詩乃と話を終えると一葉たちに視線を向ける。

 

「みんな、北門に行くよ!結菜、恥ずかしいかもしれないけど我慢してね!鞠、俺の背中に乗って!」

 

流牙は結菜をお姫様抱っこで持ち上げ、鞠は流牙の背中に乗る。

 

「え、えっと……重くないかな?」

 

「むしろ軽い方だよ!一葉、行こう!」

 

「行こうなの!」

 

流牙は前に結菜、後ろに雛がいるにも関わらず相変わらず風よりも早く走って北門へと急いだ。

 

「……二人分の女子を持って背負って、よくもまぁ、あんなに早く走れるものだな。流牙の体の造りはどうなっとるのだ?」

 

幼い鞠ならともかく、結菜を抱っこして早く走れるのは成人男性でもキツイ。

 

それなのに一葉が走ってようやく追いつけるぐらいのスピードで走れる流牙の体の造りに疑問を持つのは当然だった。

 

「それにしても……結菜と鞠め、流牙にあんなにも密着するとは……この戦いが終わったら今度は余の番だからな」

 

流牙に惹かれつつある一葉の心には嫉妬心が芽生えていた。

 

少しでも流牙に近づきたいという乙女心が一葉を年相応の可愛らしい女の子にしていくのだった。

 

 

 




闇は問う、何故人を守るのか?

その問いの答えは彼は既に持っている。

それは、人の心に守るに値する光があるから。

次回『闇 〜Dark〜』

その力は光と共に人々を守る彼だけの輝き。



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