牙狼 〈GARO〉 -戦国ノ希望-   作:鳳凰白蓮

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戦国恋姫の原作ならここらで久遠と結菜にキスをしますが流牙はしません(笑)

闇を照らす者で莉杏のキスを止めていましたし。

流牙を攻略しようとするヒロイン達の受難はまだまだ続きますね。


『狩 〜Hunting〜』

小谷城や三田村での鬼との戦いから早数日。

 

流牙達は眞琴が越前に放った草の持ってくる情報を静かに待っている。

 

うららかな日差しに包まれた部屋で、真剣な眼差しで書物台に向かっている久遠。

 

エーリカで庭で剣を抜いて、精神を集中しており、流牙はそれを眺めていた。

 

すると、その身に青白い光を放って剣の型の練習をしていた。

 

「エーリカ、その光はなんだ?」

 

「これは、天より降り注ぐ神の御力を、私という媒体を通して剣に流し込んでいるだけの物です。鬼には絶大な効果を発揮しますが、もっとも先日の鬼との戦いでは見せられませんでしたが」

 

「神の御力ね......神様っているんだね」

 

見たことない神の存在を頭の片隅に置きながらふと久遠にあることを尋ねた。

 

「なぁ、久遠。エーリカのは神の御力ってやつらしいけど、他のみんなが使ってるお家流は、何なんだ?あれってみんなが修行して会得したものなのか?」

 

「ふむ。お家流にはいくつか種類があってな。一子相伝のものもあれば、修行をすれば誰でも会得できるものもある。それに、その氏族しか使えない秘術というものもある。……人それぞれだな」

 

「なるほど、やっぱり魔戒騎士の鎧や魔戒法師の法術に似ているな」

 

「そうだな。そう言えば魔戒騎士の鎧は一子相伝のものだったな。鎧は祖父から受け継いだのか?」

 

父親の存在を知らないと言っていたので祖父からガロの鎧を受け継いだのかと尋ねるが、流牙は首を傾げた。

 

「……さあ?」

 

「さあって、お前の先代から受け継いだのではないのか?」

 

「俺さ、黄金騎士の系譜の一族じゃなくて、『ジンケイ』って言う魔戒法師の一族の末裔なんだよ。ちなみに莉杏と符礼法師も同じ一族で、今じゃ生き残りは俺と莉杏だけだよ」

 

「どういうことだ……?」

 

「俺が生まれるよりも前の話だけど、先代の黄金騎士は大きな戦いでホラーから人々を守るために黄金の輝きを解き放って、鎧は漆黒になったんだ。そこで一旦黄金騎士の系譜が途絶えて、少なくとも母さんたちが子供の頃から俺が継承するまで長い間ガロの継承者は現れなかったんだ」

 

「つまり……本来なら黄金騎士の系譜を持つ者が継承するはずだったガロの鎧を、全く関係のない流牙が受け継いだということか!?」

 

実際、黄金騎士ガロが復活したことは対峙したホラーにとっても衝撃的で伝説だと目を疑うほどだった。

 

「そう言うことだね。今まで誰にも抜けなかった牙狼剣を俺が抜いて鎧を纏った時、符礼法師は興奮したって言ってたぐらいだし」

 

「血筋というのはとても大切で束縛されるものがある。だがお前は血筋や系譜の概念を打ち破り、その不屈の精神でガロの鎧を継承したのだな……」

 

「でも、本当の意味で牙狼剣が認めてくれたのは一度この目を失ってから、絶望から這い上がって、諦めずに走り続けたからだけどね。それに母さんのお陰で鎧の輝きを取り戻したから、俺と母さんの二人でガロを蘇らせたんだ」

 

「親子でガロの鎧を復活させた……お二人の絆は素晴らしいです」

 

ガロの小話が終わったちょうどその時に小走りで市がやって来た。

 

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!越前に放っていた間者が戻ってきたよ!」

 

「来たか……!うむ、眞琴と共に聞く。報せ、苦労」

 

「行くか……」

 

評定の間では既に眞琴や武将達が集まっていた。

 

小谷を発した五十の足軽達は、越前の国境を超え、各所に分散して情報を収集していた。

 

しかし戻ったのは、たった三名のみ。

 

そのうちの一人が越前一乗谷まで侵入し、重大な報せを持ち帰った。

 

それは……一条谷が満ち溢れ、地獄と化していることだった。

 

鬼は一乗谷の城を中心に巣くっている様子で、まるで誰かに統率されているようだった。

 

エーリカが言うには鬼には幾つかの階級があり、本能のままに動く下級の鬼、その下級を統率する中級の鬼、そしてその上にいるのが……全てを統率する上級の鬼。

 

今まで流牙達が相手をしてきたのは殆どが下級の鬼で、手強かったのは中級の鬼らしい。

 

更に鬼は素材の質によって、その能力が大きく変わり、運動能力が優れた者が鬼となれば、鬼もまた運動能力の高い鬼になる。

 

知力についても同じで、もし武士が……それも仕官級の武士が鬼となれば、鬼も軍隊として機能し始める。

 

「ますます魔導ホラーに似ているな……」

 

実際に魔導ホラーにされた熟練の魔戒騎士だった尊士はホラーと騎士……両方の力を備えていたので、並の魔界騎士ではまともに相手に出来ないほどとても強力な敵だった。

 

そして、眞琴は尊敬する姉である義景が鬼になったことを信じられず酷く落ち込んだ。

 

しかし、落ち込んでいる余裕は無かった、この国を守るために越前からの鬼の侵略を抑える決意を新たにした。

 

小谷で報告を受けたあと、流牙達はすぐに旅支度を整えて美濃へ出発した。

 

幾つものの山を越え、見慣れた風景が見えてきてようやく美濃へ到着した。

 

「帰ってきたな」

 

「結菜に帰ってきた事を伝えに行こう」

 

評定を開く前に流牙達は結菜の待つ久遠の屋敷に向かった。

 

「「ただいま!」」

 

「あら、お帰……異人さん!?」

 

出迎えた結菜は流牙と久遠を笑顔で迎えるが、エーリカの存在に驚いていた。

 

「お初にお目にかかります。我が名はルイス・エーリカ・フロイス。日の本の名は明智十兵衛と申します。母の名は槇」

 

「はぁ、って!?槇おばさん?」

 

「母を知っているのですか?」

 

「槇おばさんのお姉さま……明智光安どのと、私の母である斎藤利政は親友だったもの。私とは遠い親戚になるはね、よろしくエーリカ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

結菜とエーリカが遠い親戚だと知り、喜び合う二人だった。

 

「話は終わったか?」

 

「終わったわよ。……二人ともお帰りなさいませ」

 

「ただいま」

 

「うむ。積もる話もあるが、すぐに軍議に出る。夕食の用意を頼むぞ」

 

「はいはい。久遠が食べたいのは分かるからいいけど。流牙は食べたいものはある?」

 

「そうだな、ご飯と味噌汁があればいいよ!」

 

「そんなので?まぁ、楽だからいいけど」

 

「よろしくな」

 

「はいはい。じゃぁ軍議を終えたらぐらいにご飯にありつけるようにしとくから。がんばってらっしゃい」

 

「行ってくるよ」

 

急いで評定の間に向かうと、そこには懐かしの三若の和奏、雛、犬子に麦穂と壬月の姿があった。

 

ちなみに壬月から凄い睨みを利かせた目で流牙を見ていたが、流牙は知らん顔をしていた。

 

そして、軍議が始まり、エーリカの話と流牙が聞いた小谷の話……現在、この日の本で起きている異変を伝えた。

 

鬼の話を聞き、一同は表情を曇らせる。

 

「だが、我の方針は変わらん。天下布武である!!」

 

堂々と言い放った久遠は勢いよく立ち上がりながら壬月達に指示を出す。

 

「此度の戦は織田・松平勢の総力を挙げ、疾く疾く中山道を駆け下り、六角、松永、三好を破り、公方と共に小谷で浅井と落ち合う流れとなる。全てにおいて疾きことを要求される、難しい戦となろうが皆の奮戦を期待している!皆のもの戦支度に取りかかれい!」

 

「「「はっ!」」」

 

久遠の言葉に応えたみんなが戦の準備に掛かるため、我先にと駆け出していく。

 

「いよいよだな、久遠」

 

「……………………」

 

流牙の言葉に久遠は応えず、誰もいなくなった上段の間の天井を、まるでにらみつけるように見つめていた。

 

「久遠、今考えてる事当ててやるよ。未知の敵との戦うという不安、戦への恐怖、後々のことを考えて臆病になっている……どうだ?」

 

「…………ふんっ」

 

認めたくないようにそっぽを向き、その顔を両手で優しく掴んで無理やり目線を向けさせる。

 

「素直になれよ久遠。俺達が支えてやる、お前を支えてやりたい奴らがいるんだ。だからだ、仲間を、自分を、俺を信じろよ」

 

「…………そんなこと、できるはずが」

 

「やれやれ……当主と言ってもやっぱり年頃の女の子だよな」

 

「なっ!?我を愚弄するつもりか!?」

 

「そんなつもりはないよ。今から久遠に希望を見せるよ」

 

「希望……だと?」

 

流牙は久遠から少し離れると魔法衣から牙狼剣を取り出して抜き、頭上に円を描いて光の陣を浮かび上がらせる。

 

「流牙、何を……?」

 

普段ならこのままガロの鎧を纏うところだが、流牙は牙狼剣を手放して一歩後ろに下がる。

 

牙狼剣は宙に浮きながら大剣の姿となり、陣が魔界を開く扉となって中からガロの鎧が召喚されて久遠の前に現れた。

 

大剣を構えるガロの鎧が飾られるように現れ、何度見ても飽きないその金色の輝きに久遠は思わず手を伸ばしそうになった。

 

「触っちゃダメだ。ソウルメタルに触ったら皮膚が裂かれるよ」

 

「そ、そうだったな……」

 

久遠は慌てて手を引っ込め、流牙はガロの鎧に触りながら話を始める。

 

「ガロと言う名前は旧魔戒語で『希望』を意味するんだ」

 

「ガロが希望……?」

 

「ああ。古の時代からガロはホラーに狙われる人々と共に戦う魔戒騎士と魔戒法師の希望なんだ。そして、ガロは数々の奇跡を起こしてきた……」

 

黄金騎士ガロ……その名の通り、生きとし生ける人々の希望であり、ホラーにとっては最大の脅威である唯一無二の存在。

 

それはこの世界でも変わらぬ希望の存在となりつつある。

 

「久遠、恐怖や不安は俺にもある。かつて俺は敵の罠に落ちて、絶望を与えられて闇の中に落ちかけた……だけど、莉杏の言葉で俺は光を見つけることができた」

 

「光、か……」

 

「久遠、君は一人じゃない。俺や結菜、流牙隊のみんなにエーリカ、壬月に麦穂さんに三若、小夜叉に桐琴さん、眞琴に市ちゃん、そして京にいる一葉に双葉に幽……みんなの心は久遠と共にある」

 

「流牙……」

 

久遠は流牙の言葉で少しずつ勇気が湧いてきて、流牙は飾られた牙狼剣を抜き、そのまま鎧を纏うと牙狼剣を久遠に向けて掲げる。

 

「黄金騎士ガロの称号を受け継ぐ者として、久遠の希望の光になる。必ず、鬼を全て討滅してこの日の本を平和にし、みんなが幸せに暮らせる天下布武を掲げよう!!」

 

そして、久遠は流牙の言葉に応えるために置いてある刀を手に取り、鞘から抜いて牙狼剣と刃を交差させる。

 

「流牙……我の希望の光、お前に託した!お前が絶望に消えぬ限り、我の希望も消えない!!この国を平和にし、我の夢を現実にするため、最後まで共に戦おう!!!」

 

二人の固い絆が結ばれると共に一つの誓いが交わされた。

 

それはこの国を鬼から守り、人々が平和に暮らせる世を作るため。

 

しかしそれは二人に困難な道が待ち受けるのであるが、その事をまだ知る由も無かった。

 

 

美濃に戻ってから早数日、織田家では上洛の準備が進められていた。

 

しかし、勝手がわからない流牙は特にやることがないので……。

 

「おーい、流牙ぁー!早く行くぞー!」

 

「ああ、行こうか」

 

森一家の桐琴と小夜叉と共に鬼狩りに向かっている。

 

小谷での依頼をしてから桐琴と小夜叉は積極的に鬼の巣を探し、それを流牙と共に狩りに出かけている。

 

ちなみに流牙との決闘の件はすぐに行われるかと思ったが楽しみは後に取っておくと言うことでしばらく後に行うらしい。

 

そして、鬼狩りをしていくうちに凶悪な鬼と遭遇した。

 

その鬼は鬼に犯された女が産んでしまった鬼と人のハーフ、鬼の子。

 

成長はとても早く、知恵もあって強く、流牙はすぐさまガロの鎧を召喚し、烈火炎装などを使った全力で何とか倒すことができた。

 

国産の鬼はとても強く、鬼の子を発生させないためにも地道に鬼の巣を狩っているのだ。

 

流牙達は馬に乗り、桐琴と小夜叉と共に東の方へ向かう。

 

「そう言えば森家には有名な馬があるって聞いたことあるけど、小夜叉が乗ってるのがそれ?」

 

「これは普通の奴だぜ。百段はここにいるぜ」

 

小夜叉は腰につけている瓢箪を指差す。

 

「え?その中に?」

 

「百段は普通の馬ではないからな。瓢箪にでも封印しとかんと、誰でもかれでも喰らって手がつけられん」

 

「何それ!?もしかして魔導馬!?」

 

「魔導馬?何だそれ?」

 

「名前からして、お前達魔戒騎士関連のものか?」

 

「ああ。魔導馬は通算で百体のホラーを討滅した魔戒騎士が自らの内なる世界で課せられた試練を乗り越えることで得られる大いなる力なんだ。主人に忠実で止まることのない強靭な足で戦場を疾駆し、その蹄音で魔戒剣やわ変質させる力を持つんだ」

 

魔導馬を召喚出来る魔戒騎士は他の魔戒騎士とは一線を越える強さを持つ事と同じ意味を持つのだ。

 

「たった百体か?それならすぐに手に入れられるんじゃねの?」

 

既に何百体の鬼を殺している小夜叉はそう言うが、ホラーに関してはそうもいかない。

 

「そう言っても、そもそも魔戒騎士はホラーの発生を抑える仕事もあるから熟練の騎士でも百体単位のホラーと戦い続けるのは極稀なんだよ」

 

「流牙は最強と呼ばれている黄金騎士なんだろ?百体ぐらいもう倒してるんじゃねえの?」

 

小夜叉は流牙と一緒に何度も鬼狩りに出かけていて、間近でその実力を目の当たりにした。

 

その狂気じみた強さ故にあまり他人を認めない小夜叉だが、流牙の事はすぐに認めた。

 

「うーん……確かに百体は倒していると思うんだけど、まだ試練が来てないんだよね。何でだろ?」

 

流浪の旅で向かった各地とボルシティとラインシティなど色々な地でホラーを狩り続けてきたので既に魔導馬を継承する試練が来てもおかしくないが、今の所ガロや流牙自身に何の変化はない。

 

「単純に小僧がぶち殺す数が足りてないか、その魔導馬に何か原因があるのかもしれんな」

 

「まあ、魔導馬が無くても一応それに代わる力があるからいいけど」

 

それは流牙が手に入れたガロのもう一つの姿にする力でこの世界に来てからはまだ使用していない。

 

「ほう、それは興味があるな。おい、この後の鬼狩りでそれを見せろ」

 

「いやいや、切り札は最後まで取っておくからお預けですよ」

 

「はっはっは!なかなか言うな、小僧!ん?あれは……」

 

すると桐琴は目を細めて何かを見つけた。

 

「何やら向こうに砂埃が見えてな。……馬が何頭か駆けてくるな。それに、あそこには流牙隊の確か詩乃と言う小娘が見える」

 

「詩乃が!?三河に使いに行ってたはずだけど……」

 

「まさかウチのモンに手出しを!?どうなるか思い知らせてやるぜ!」

 

「ちょっ、小夜叉!?」

 

「ワシも行くぞ!!」

 

「桐琴さぁん!!?」

 

敵か味方か分からずに二人して馬を走らせて突撃していく。

 

「ああもう!この戦闘狂親子がぁっ!!」

 

流牙は頭を抱えてすぐに馬を走らせて二人の後を追う。

 

 

 




人の数だけ思いと心は異なる。

平和、夢、欲、主、国。

それぞれの強き思いが交錯する。

次回『交 〜Cross〜』

そして彼は歩き続ける、使命と約束の為に。



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