今回から流牙と久遠のいちゃつき度が順調に上がっていきますwww
次回はMAKAISENKIのオマージュな話を書く予定です。
京で一葉と双葉と幽と出会い、色々な事があった。
久遠と一葉が京の町のゴロツキ共と乱闘して流牙が止めに入ったり、幽とエーリカと共に京の神社や寺を見物したり、二条館の外を知らない双葉の為に流牙が町の外へデートに向かったりと充実した日々を送った。
仲良くなった一葉達と別れるのは名残惜しかったが、これからやることがたくさんあるので流牙と久遠達は京を後にした。
「流牙、そういえば堺に向かうときに浅井の事を気になっていたな」
「そりゃあ久遠の妹夫婦だからな」
「ふむ……それなら寄り道をして二人のいる小谷城に向かおうと思ったのだが、よいか?」
「え?本当?やった!久遠の夫として妹夫婦に挨拶したいしな」
「そ、そうか」
「ところで久遠、市って子はどんな子なんだ?」
「市は活発な娘でな、小さいころは壬月を相手に暴れておったのだ」
「壬月相手に!?でも流石に手加減していたよな?」
「いや、ガチだぞ?」
「......どんな子か想像出来ないんたけど」
久遠の妹がどんな子なのか全く想像出来ないまま流牙達は小谷城を見渡せる場所へ来た。
久遠はひよ子と転子を先触れに向かわせ、流牙達はゆっくり馬を進める。
詩乃とエーリカは城の素晴らしさに話を弾ませると、流牙にとっての城を思い出した。
「城といえば……」
「流牙様も何か城に思い出が?」
「思い出というか、この世界に来る少し前に巨大な城のホラーを破壊したんだよ」
「……は!?」
「し、城のホラー!?何ですかそのスケールは!?」
「ラダンって言って、あの小谷城よりも少し大きなホラーで巨人のような姿に変形して動いていたな」
「ど、どうやって倒したのですか!?」
「あの時はラダンが吸収していた人々と自然の命の光をガロの鎧が取り込んで巨大なガロの幻影を作り出して、ラダンを粉砕したんだ」
あの時はガロの鎧が思いに応えて上手くいったと思いながら流牙は懐かしむように言うと詩乃とエーリカは頭を抱えた。
「え、えっと……理解を超えてしまって全く想像出来ません」
「私もどういう戦いなのか……もはや神と神の戦いでは……?」
もはや人知の戦いを超えた魔戒騎士とホラーの戦いに二人は考えるのをやめた。
そして、ようやく小谷城に到着すると二人の少女が出迎えた。
「お姉様!」
「お姉ちゃ〜ん!」
「うむ。二人とも出迎え苦労」
「あれ?可愛い子……」
「こちらがお兄様ですよね!」
「お、お兄様?」
赤い髪に少し男性風の着物を着た女の子に人生で初めて『お兄様』と呼ばれ、困惑する流牙。
確かに姉夫婦の夫なのだから兄なのは間違い無いが、流牙にとっては呼び慣れてないものだ。
「うわー!お姉ちゃんの手紙に書いていた通りの人だ!すごーい!」
「久遠、なんて書いたんだ?」
「見た感じから胡散臭そうな男だ、と書いたが、何か間違っていたか?」
「ほう……夫をそんな風に思っていたなんて。酷い奥さんだ、せっかく久遠の為に練習していたギターのお披露目やめようかな〜?」
魔法衣からギターをチラ見させながら流牙は意地悪く言った。
「何ぃ!?そ、そんな!酷いではないか流牙よ!」
「ふははっ、冗談だよ。可愛い奥さんをちょっとからかいたくなっただけだよ」
「こ、この!根切りにしてくれりゅわ!!」
「おおっと!ここは外だから刀でかわすまでもなく逃げられるよ〜?」
「お、おのれぇ……もう知らん!」
いつでもダッシュして逃げられる体勢の流牙は爽やかな笑顔を浮かべ、対する久遠は悔しそうな表情を浮かべた。
「あははっ!お姉ちゃんと仲良くやれてるんだね、流牙お兄ちゃんは!」
「久しいな、市。元気そうだな」
「うん♪お姉ちゃんも元気そうでなによりだよ!」
「うむ。お陰様でな」
「お頭ー!」
「いらっしゃいませー!」
先に来ていたひよ子と転子が出迎えた。
「二人ともお疲れ様」
「へへー♪」
「えらいごきげんだな」
「はい!お先にお市さまとお話できましたから」
「そっか」
「流牙!こちらに来てくれ。正式に紹介しよう」
「道外流牙。我の夫である。二人とも見知りおけ」
「ざっくりした説明だな」
「長々と喋るのは好かん」
「そうか。紹介された通り、俺が道外流牙。二人ともよろしく」
「うん!市は市だよ!お姉ちゃんの妹で浅井家当主、長政さまの奥さんなの!」
「あ、僕がその……長政です。兄様、よろしくお願いします……」
「はいまこっちゃん、もっと元気出してー!大きな声で挨拶だよー!」
「ぼ、僕、長政って言います!通称は眞琴!兄様、どうぞよろしくお願いします!」
「よーさはよしよし!元気一杯に出来たね〜、まこっちゃん♪」
「う、うん!僕、頑張れたよ、市!」
「うん!さっすが市のまこっちゃんだよぉ♪」
「二人とも仲良しだな」
「うん!」
「はいっ!」
「それでは、改めまして。ようこそ、浅井が誇る堅城、小谷城へ!」
流牙達は小谷城へと招待され、宴を用意してくれるらしいのでそれが始まるまで楽しい話で盛り上がるが、その時に鬼の話も出てきた。
エーリカに鬼の事を話してもらい、浅井家も久遠達に協力して共に戦うことを約束した。
その後、流牙と久遠は同じ部屋に案内され、旅の疲れを癒すために風呂を勧めたが……。
「織田家の模擬戦以来だけど、どうしてこうなった……?」
流牙は小谷城の風呂場で何故か久遠と一緒に風呂に入ることになった。
それはかれこれ十分前、部屋で休んでいると突然市が現れて流牙と久遠は夫婦だから一緒に風呂に入るようにと強制的に運ばれてしまった。
「ぜ、絶対にこちらを見るなよ!絶対だぞ!」
「善処するよ……」
久遠は初めて男と風呂に入るので当然緊張して体を腕で隠す。
雪のような綺麗な素肌に流牙は見惚れそうになったが騎士としての不屈の精神で己を制していた。
「はぁ……市ちゃん、押しが強すぎるね。まさかこんなところで久遠と一緒に風呂に入ることになるとは」
流牙は溜息を吐きながら体の汗を流し、できるだけ久遠の体を見ないように目を閉じている。
すると、久遠は後ろから流牙の背中に触れた。
「……傷だらけだな」
流牙の体は切り傷やすり傷の痕が身体中に痛々しく残っていた。
「ほとんどは修行の時のだけどね。ホラーとの戦いは魔法衣や鎧があるから大体の攻撃は防げるけど」
「幼い頃からこれだけの傷を負って、やっとの思いでガロの鎧に認められたのか?」
「ああ……と言っても、初めて鎧を身に付けた時は……友を斬る時だったけどな」
「と、友を!?」
「魔戒獣って言う見た目は金属の獣みたいな存在だけど、ちゃんと意思はあるんだ。名前は羅号……俺と十年間、無人島で共に修行してきた大切な友なんだ」
「何故その羅号を斬らなければならなかったんだ……?」
「無人島で十年間の修行を終えてガロの鎧と契約を交わす直前に符礼法師が最後の試練に術で羅号を操って俺を殺すようにしたんだ。『たとえ親しいものであっても斬らなければならない時には斬る』……魔戒騎士としての覚悟を試すために」
「そんな……人じゃないにしても流牙にとって大切な友を斬らせようとするなんて……」
「魔戒騎士はホラーから人を守り、人を斬ってはならない掟はあるけど、時には人を斬らなければならない時があるんだ。母さんの時もあるけど、それとは別にホラーの血を浴びた者……『血に染まりし者』はホラーにとって最高のご馳走で常にホラーから狙われる。そして、血を浴びてから100日後には気絶することも許されない激痛の中で悪臭を放ちながら溶け崩れていくんだ。だから、最後の慈悲として斬るんだ……」
「……符礼法師はわざと流牙の憎まれ役を?」
久遠は波奏を斬ったことを思い出し、流牙のこれからを考えて憎まれ役を引き受けたと察した。
「ああ……羅号に殺されかけて、俺は覚悟を決めるしかなかった。そして、今まで誰も抜けなかった台座に刺さった牙狼剣を引き抜き、飾られたガロの鎧を纏って……羅号を斬った……」
苦楽を共にした大切な友を斬る事は心の優しい流牙にとって人生で初めての大きな辛い出来事だ。
「俺は符礼法師を憎んだまま、ホラーを狩る旅に出た。ある時、番犬所から指令が来てボルシティに訪れた。だけどその指令は符礼法師が送ったものだった……俺は最初、符礼法師の言うことを全く聞いてなかったけど、母さんと再会した時に全てを打ち明けてくれた。符礼法師はずっと母さんと莉杏のお父さんと叔母さん、そしてホラーにされた尊士を助けられず、一人で生き残ったことにずっと苦しんでいたんだ」
「確かに一人だけ生き残ることはこの上辛いことないな……」
「符礼法師はゼドムに向かう前に最後こう言い残したんだ。『絶望の中から俺を救ってくれた』ってね」
「絶望か……なるほど、法師にとってお前は最後の希望だったんだな」
「あと莉杏もだよ。莉杏にとって符礼法師は育ての親であると同時に法術の師匠でもあったから」
「そうか……法師の想いと希望は流牙と莉杏に託されたと言うことか」
「そうだな。魔戒騎士には『親から子へ受け継がれる想いこそが真の永遠』って信条があって、父親のいない俺にとって符礼法師は父親みたいな存在だったな……」
今思えば父親のいない流牙にとって自分に厳しく接し、導いてきた符礼が父親代わりだったと強く感じる。
「受け継がれる想い、か……私も母や結菜の母から沢山の想いを受け継いできた。いつの日か、自分の子にもこの想いを受け継いでもらいたいな……」
うつけと呼ばれてきた久遠の幼き日の理解者は親友の結菜と二人の母だけだった。
だからこそ魔戒騎士の受け継がれる想いにはとても共感できた。
「……な、なぁ、流牙」
「何?」
「前に、結菜が言ったことを覚えているか?」
「前にって、どの事?」
「そ、それはだな……私とお前で、織田の後継者……」
「おねーちゃーん!お布団の準備が出来たよー!」
「「うわぁあああああっ!?」」
久遠が何かを言いかけたその時、市が風呂場にやってきて二人は瞬時に離れた。
「……二人ともどうしたの?」
「な、なんでもないぞ!」
「も、もうすぐ上がるからねー!」
「そう?なら別に良いけど。それじゃ宴が始まるまで、ゆっくり休んでねー!」
そう言うと市は忙しそうに風呂場から出て行った。
「……久遠、さっき何を言おうとしたんだ?」
「き、気にするな!その……そういう雰囲気になったら言うから……」
「そ、そう?じゃあ久遠、先上がって」
「わ、分かった……」
久遠は先に風呂を上がり、着替えが終わるまで流牙はのんびりと湯船に浸かった。
風呂を上がり、しばらくゆっくり過ごして夜になると宴の準備が整い、大広間へ向かった。
大広間で眞琴の号令で宴会が始まり、近江の名物が並ぶ料理を食べる。
「お姉ちゃーん!どう?近江も名物尽くしの料理の味は?」
「うむ。美味であるぞ」
「へへー、お姉ちゃんの好きそうなの、たくさん用意したから、たくさん食べてね♪」
「ああ、ありがとう、市」
微笑みを浮かべながら、姉妹団欒で寛ぐ久遠。
今となっては同じ血を引く織田の家族は二人だけとあって家族の絆を大切に思う流牙はそっと席を外して詩乃達の元へ向かった。
宴が終わり、少し経つと……。
「おにいーちゃん!」
「ん?市ちゃん、どうしたの?」
「市と遊ぼうよ!おにーちゃん!」
「いいよ、何する?」
「もちろん果たし合いだよ!」
「えっ!?は、果し合い!?」
流牙の頭の中にある遊ぶという定義が突然崩れて驚愕する。
「闘ぼう!お兄ちゃん!」
ワクワクとした顔つきで流牙の腕を取る市の力と、その手の感触に、流牙はただならぬものを感じた。
これは本気だ……と、そう感じた流牙は頷いた。
「分かった。闘ぼう。俺も市ちゃんの力が知りたいから。久遠、いい?」
「好きにせい」
「ありがとう、眞琴もいい?」
「僕は構いませんけど。……お兄様、大丈夫なんですか?市はこう見えて、かなり強いですよ?」
「大丈夫。負ける気はないよ」
「分かりました。市、お兄様に怪我なんかさせちゃ駄目だよ?」
「えー。そうは言っても手抜きはしたくないもん」
「怪我は心配しなくていいよ、全力で頼む」
「うん!」
場所を庭へと移動し、流牙と市の果たし合いが始まろうとする。
「お兄ちゃん。得物は何にする?確かお兄ちゃんは剣の達人なんでしょ?」
「達人ってほどじゃないけど、剣は要らないよ。無手でいく」
「え?無理しなくていいよ」
「心配いらないよ、俺は剣以外でも強くなるよう鍛えてきたから」
「分かった」
久遠、流牙隊、エーリカ、眞琴は濡れ縁まで来て果し合いを見学している。
「おっと、その前に……久遠、ザルバを預かっててくれ」
拳で戦うとなったら左手のザルバで市を傷つけるかもしれないと思い、ザルバを久遠に渡した。
「分かった。ふむ……」
流牙からザルバを預かると、ふと思った久遠はそのまま自分の左手の中指にはめてカバーを外した。
『……おいおい、お嬢ちゃん。俺様を指にはめるとはなかなか度胸があるな』
「わっ!?指輪が喋った!?」
「心配するな、眞琴。こやつは鬼ではない、流牙の相棒のザルバだ」
『まさかお嬢ちゃんの指にはめられるとは思わなかったぞ』
「ふふん。夫のものは妻のものであるからな、つまりザルバは我の物でもあるのだ」
『いやいや、黄金騎士である流牙以外がつけても何の意味がないぞ』
「それでも構わぬ。我はザルバのその姿を気に入っておるからの」
『俺様を?ふはは!男ならともかく、女で俺様の姿を気に入るとは本当に面白いお嬢ちゃんだな』
「お主もな、ザルバ」
いつの間にか仲良くなっている久遠とザルバに驚く流牙に市はあることを尋ねる。
「ところでお姉ちゃん、お兄ちゃんってどれくらい強いの?」
「ふむ?和奏と雛、犬子、それと麦穂、壬月は全員こやつにやられ、桐琴とも対等に戦えるかもしれない力を持つ。特に鬼相手に無双を発揮するほどだ」
「へー、なかなかやるねぇ、お兄ちゃん!」
「ありがとう。よし、やるか!」
市はひよ子が京で買った闘具を構えてファイティグポーズを構えると、流牙は度々久遠達にも見せている左右の手を交差し、右の拳を後ろに引いて左掌を前に出すファイティングポーズを取る。
「変わった構えだね。それにお兄ちゃん、良い闘気を持ってる」
「これは俺がかつて戦った強敵の敬意を評して模倣しているんだ」
「強敵の構えを模倣か……面白いね、お兄ちゃん!」
果し合いが始まり、まずはどちらも動かずに相手の出方を待っていた。
流牙は深呼吸をしながら待っており、いつでも来ていいように心を鎮めていた。
「ちょわー!」
対して市は我慢出来ずに可愛らしい気合の声と共に地面を蹴って一気に距離を詰めてきた。
「……速い!」
「せいや!せいせいせいせいせいやー!」
「ふっ!はっ!」
次々と繰り出される市の怒涛の攻撃を流牙は見極めてかわして行く。
「さぁ!お兄ちゃん!どんどん行くよ!」
そう言って更に素早い攻撃を繰り出してきた。
流牙も拳で攻撃すると、市の繰り出してきた右の闘具と流牙の右拳がぶつかる。
派手な音が鳴り、市はしまったと思ったが流牙は涼しい顔をしている。
「お兄ちゃん、痛くないの!?」
「この程度で痛がったら魔戒騎士なんてやってないよ!」
「あはは!そうこなくっちゃ!せいや!」
すぐさま左の闘具で殴るが今度ははたき落して
その女の子のものとは思えない力にまともに喰らえば流牙でもただじゃすまない。
織田の模擬戦と同じく下手に傷つけるわけにもいかないので流牙はしばらくは守りに徹する。
しかし、それでは市に悪いので守りながら時折本気で攻める。
初めて見るであろうアクロバットな動きから繰り出される鋭く、そして重い拳と蹴りは市を驚かせると同時に凄いと興奮の笑みを浮かべた。
ふと久遠達の話で市が日頃から鍛錬と称して鬼退治をしていると耳にした。
やりたいことをとことんやる織田の血に流牙は苦笑を浮かべた。
しばらく拳と蹴りの応酬が続き、流牙は魔戒騎士としての無尽蔵の体力で軽い準備運動程度のものだったが、市に関しては顔に汗が垂れて軽く息切れをしていた。
市は幼いながらも武の才能に恵まれた少女だが、その反面まだ体の作りが成長途中で体力も年相応に少ない……最初から全力で戦っていたら体力が無くなるのも時間の問題だった。
だんだん闘具で放つスピードとパワーが落ちてきたのを瞬時に見極めた流牙は一気に勝負を決める。
「ふっ!はっ!」
両手の闘具をほぼ同時に拳と蹴りで叩き落とし、大きな隙ができた市に向けて流牙は数々の敵に痛手を与えてきた得意の正拳突きをする。
「はあっ!!」
「ひやっ!?」
避けられない正拳突きが顔に目掛けて放たれ、市は目をぎゅっと閉じてその痛みを待った。
しかし……。
「痛っ!?」
流牙は拳を顔の前で止めてデコピンで市の額を弾いた。
「これで俺の勝ちだね」
「あう〜、負けたぁ〜」
あのまま正拳突きを受けていたら確実に負けており、市は素直に負けを認めたが意外にデコピンが痛かったので額を押さえながら涙目になっていた。
「でも、市ちゃんは本当に強かったよ。あとは成長に合わせて体力を作っていって、あとはペース配分……えっと、体力の使いどころを考えないとね。ずっと全力でやってるとすぐに体力が無くなるからね」
市はまだまだ幼いのでこれから伸びしろがある、そう判断した流牙は分かりやすく問題点を説明した。
「体力と使いどころか……うん、分かった!またしようね!今度は負けないよ!」
「望むところだ」
市の手を掴んで立ち上がらせ、二人は久遠たちの元に戻る。
「戦いの後に相手に問題点を指摘するとはな。流牙よ、指導者としてもやれるんじゃないか?」
「よしてくれよ、俺は導師には向いてないんだから」
「導師?何故仏門を導く者を?」
「違うよ、導師は魔戒騎士の先生の位なんだ。将来魔戒騎士を目指す子供達に戦い方や騎士としての心得を教えるんだ」
「ん……?流牙はその導師から教わって……」
「俺は教わってないよ。ほとんどの魔戒騎士を目指す子供は幼い頃に修練場で導師から訓練を受けるけど、俺の場合は伝説だったガロの鎧を受け継ぐから特殊だったんだ」
「ほう……聞けば聞くほど魔戒騎士は面白いな」
「長い歴史があるからね。魔戒騎士と魔戒法師の存在は一枚岩じゃないってことさ」
流牙と久遠は魔戒騎士の話をしていると……。
「あ、あの、流牙さん。私とも果し合いをしてくれませんか?騎士様である流牙さんの力を拝見したいのですが……」
流牙の力を見たエーリカが果たし合いを申し込んできた。
「エーリカも?分かった、やろうか」
「は、はい!分かりました!準備してきます」
エーリカはすぐに剣を準備し、流牙は詩乃から受け取った手拭いで汗を拭き、水を飲んで喉の渇きを潤した。
「ふぅ、よし!」
流牙は再び気合を入れてエーリカを待った。
数分後には剣を携えたエーリカがやって来て、その表情は優しい司祭から武人のものとなっていた。
エーリカは剣を、流牙は魔法衣から牙狼刀を抜いて構える。
エーリカの体からお家流なのか不明だが青白いオーラを体から湧き上がっていた。
本日の第二戦目、流牙とエーリカの果し合いが始まる……その時。
『流牙!強い邪気だ!鬼が近づいてる!!』
「何!?」
久遠の左手にあるザルバからの声に一同は驚愕した。
すると、牙狼刀から詩乃と結菜達を鬼から助けた時と同じ淡い光が溢れ出した。
「ぐるるるる……」
そして、どこからともなく小谷城の庭に鬼が出現した。
鬼の侵略が少しずつ日の本に広がっていくのだった……。
.
二人で見る朝焼けの空。
互いの想いを告げ、一時の安らぎを得る。
そして、その瞳に奇跡の光が映る。
次回『思 〜Memories〜』
その光は永遠に刻まれる。
.