テイルズオブメンティーフ〜君の嘘を暴くRPG〜   作:紫桜

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新しい章です。新キャラ二人出す予定です。


黒騎士
足元にはご注意ください


 

リリネルの村から出発してはや4日。アンフェールが少し呆れた声で言い放った

 

「ジルー、そんなに怒らなくてもいいんですよー」

「逆にどうしてアンフェールは怒らないの!?あの人たち間違ってるわ!!」

「んー…間違ってはないと思いますが…」

 

腕を組みながら本気で考えだすアンフェールに、ジルがまた何やら言っている。

そんな様子を見て、トアは今日何度目かわからないため息をついた。

 

時は少しさかのぼる。

 

 

大蜘蛛との大乱闘が終わり、一息つけるかと思ったのも一瞬。騒ぎが収まったので安全と判断した村人達が駆けつけてきた。

彼らはその惨状を見るや否や口々に言った。

 

「グドン村長の家が…じゃあ村長は…っ!!」

「あぁ、なんて事…」

「やっぱり、余所者なんて村に入れるべきじゃなかったんだ!!」

 

誰が言ったのかもわからないその言葉を初めとして、3人に対しての非難の声はどんどん上がっていった。

 

「お前達が村長を殺したんだ!」

「待って!私達そんなことしてないわ!!!!」

「うるせぇ!この余所者め!」

 

罵倒の声は止むことを知らず、続く。ジルはそんな彼らに狂気のようなものを感じ、無意識に足を引いた。

その行動を彼らの言い分に対しての肯定ととったのだろう。怒声と罵倒の声は、さらに早くなる。

すると、そこまでただ静かに傍観していたトアがアンフェールに何かを言った。それに躊躇うことなく頷いた青年に、トアはゆっくりとその左手を上げて、酷く堂々と、引き金を引いた。

静まり返る村人達に構うことなく、トアはジルの手を引いて歩き出す。アンフェールもそれに続いたが不意に足を止め振り返りもせずに一言。

 

「『余所者』の俺を長い間、この村にいさせてくれて…本当にありがとうございました」

 

感情のこもらない言葉は、村人達に何を与えたのか…彼らは至高の才を持った青年を引き止めることなく見送った。

 

 

 

そんな事があってから約4日。新しくアンフェールを迎え、トアとジルは旅を再開した。

見晴らしのいい緑の丘を3人はとても楽しげに歩く…わけではなく。なんとも形容しがたい微妙な空気感の中、道を進む。

 

「…で、ほんとに帝都に行くわけ?」

「帝都の方が情報も多いでしょうし、ここら一番近い場所ですからね」

 

ふと、今日何度目かわからない問にアンフェールのハッキリとした肯定の言葉を返す。トアは肩を落とした。

それを見たジルは心配そうに眉根を寄せ、さり気なく歩く速度を落とす。それに気づいたアンフェールはジルに歩幅を合わせた。

 

「…帝都に行くって方針が決まってから、何だかトア、元気ない…よね?」

「そうですね…」

 

そうして付かず離れずの距離をトアととると、ジルが口を開く。アンフェールは言葉では素っ気ないような態度だが、その瞳が少年を心配していることを雄弁に語っている。

しかしどれだけ心配しようとも、トアは何も語らないだろう。実際にそれとなく聞いてみたがそれすらも見透かされたような瞳で「何でもない」と言われただけだから。

 

「トアは、何も言ってくれないから…」

「そのようですね。口数が少ないわけではないのに、大事なとこは必ずはぐらかす」

「うん…それに、」

「?、どうしたんですか」

「ううん!…きっと、私の気のせいだから」

 

不意に飲み込まれた言葉と酷く悲しげな瞳。

ジルのから視線を外したアンフェールは、自分たちの会話に気づいているであろう紅色の少年を見て「そうですか」と小さくこぼした。

 

 

 

後ろの2人の会話が否応なしに聞こえてくる。トアは悟られないようにため息をはいた。

別にこれからの方針に不満がある訳では無い。情報が欲しいのならば、人が集まる場所に行くのは当然なことだからだ。

2人の判断は、正しい。正しいのだけれども…それでもあの場所には行きたくなかった。

ふと、風になびかれる美しい青が見えた。幻だとわかっていても胸が苦しくなる。無意識に瞳を閉じて冷静になろうとした。

 

その時。

 

「トアッ!!止まって!!」

 

焦りを多く含んだ鋭い声にハッと我に返るよりも早く、体が後ろに飛びのこうとした時。ガシッと何かが足をがっちりと掴んだ。

反射的に掴まれていない方の足で『それ』を蹴り飛ばそうとしたトアは、

 

「…あ、」

 

瞬き一つの間の後に、まるで石のようにかたまり動かなくなった。

 

「トアっ!?何してるんですか!早くこっちに来てくださいッ」

 

しかし、アンフェールの怒りを含んだ声でさえもトアを動かすことは出来ない。不審に思ったジルがそっとトアに近づく。

そして、小さな、そしてどこか喜びを含んだ声を聞いた。

 

「…ニコ?」

 

トアの足を掴んでいた『それ』…いや、女の子が弾かれたように顔を上げて瞳を輝かせながら言った。

 

「お久しぶりでございます、トア様っ!!」

 

呼吸3個分の間の後、ジルとアンフェールの絶叫が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コツコツと、軽快な靴音を鳴らしながらその人影は大きな窓に近づきそして外を見た。

一つ瞬きをして、顔つきを険しくし、その人は告げた。

 

「…必ず、見つけ出す」

 

「私の…蒼い君」




長々沈黙続けてすみません…生きてます。


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