テイルズオブメンティーフ〜君の嘘を暴くRPG〜   作:紫桜

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紅茶色の密会?

「ここが…村長の家?」

「らしいな」

 

赤く染まる空を感じながら、村長の家である大木の根本まで来た二人だったが、

 

「…おっきいね…」

「大豪邸、というわけじゃないが…ここではかなりでかいだろうな」

 

その外観になんとなく気後れしてしまい、その建物をボンヤリと見つめていた。

しかし、二人の背後からわざとらしく足音をたてながら近づく影があった。トアがそれに先に気づき何気なく振り返りながらも、そっと腰にあるガンブレードに手をそえる。

しかし、そこに佇んでいたのは

 

「こんなにお若い方たちが…こんな老いぼれの家に何用かな?」

「。。。」

 

警戒を吹き飛ばすような呑気な声音。

トアは珍しく困惑したようにその声を発した老人を見つめている。それにほんの少しだけ視線を向けた後、ジルは思い出したかのようにその老人に向き直り言葉を発した。

 

「あ、貴方が村長さんですかっ!?」

 

と、無駄に大きな声で質問した。

ジルは、自身の声の大きさに顔を赤く染める。それを冷静になったトアが冷たい瞳で見返した。

瞬間

 

「はははっ!」

 

若々しい声で村長と思われる老人は朗らかに笑い、聞くものを安心させるような声音で二人に語りかけた。

 

「いかにも…わしがこの村の村長のグトンじゃ…よろしくの、元気な若人たち」

 

柔らかく安心させるような声音でその老人は二人に答えた。

 

 

 

その後二人はグトン村長の家でこれまでのことを話した。時折何かを堪えるように顔を歪ませるジルに、グトン村長はゆっくりとひとつ頷くだけで何も聞いてこなかった。ジルにはその気遣いが何よりもありがたかった。

 

「…と、いうことなんです」

「そうだったのか…まさか、あの村が…」

 

そして話を聞き終えたグトン村長は心を落ち着かせるように自身で入れた紅茶を少しだけ飲み、そしてジルに優しく言った。

 

「辛いことを話してくれてありがとう…わしも、なにか手伝えることがあったら何でもしよう」

「…っ!ありがとう…ございます」

 

その温かい言葉は、ジルが抱えていた冷たい何かを解きほぐすような力を持っていた。ジルは安心したように微笑んだ。

不意に、そんな優しい空気の中にカシャンと小さな音が響く。ジルの隣に腰掛けていたトアがティーカップをソーサーに戻した時にたった音だろうが、その音だけでトアはその場の空気を変えた。

 

「手伝えることがあったら何でもする、ね…ではグトン村長さん。あんたにいくつか聞きたいことがある」

 

その声の主は言わずもがなトアだが、言い放った言葉はどこか刺々しくいつもより荒い。抗議しようとジルがトアに声をかける前にグトン村長が「何かね?」とやはり優しく問いかけた。

 

「1つはこの村のすぐ近くのリーンの泉の晶破現象…それの第一発見者はアンフェール…それは間違いないな?」

「あぁ。あの子はリーンの泉で一日の半分を過ごすことが日課のようなものだったからなぁ…あの日もいつものように行っておったよ」

「日課?」

 

グトン村長が口にした気にかかる単語。トアは疑問を隠すことなく言葉にする。

 

「そうじゃ…あの子は毎日リーンの泉に行き誰かに合っていたそうなんじゃよ。」

「それは?」

「すまんが、わからんのだ。アンフェール自身、それが誰なのか教えてくれることはなかったからのぉ…」

「村長さんにその人のことを言ってないってことは…他の皆さんにも言ってないってことだよね」

 

ジルが確認のようにグトン村長に声をかける。彼は小さく、しかしはっきりと頷いた。

 

「わかった。じゃあ2つ目だ…さっきの話が本当だとするならば、アンフェールは第一発見者だが晶破現象、クリスティアに巻き込まれたはずだ。なのになぜあいつは無事なんだ?」

「それは…すまんが、わしにはわからんのじゃ。知っての通り、晶破現象に巻き込まれたら最後、体が水晶のような鉱石となってしまう」

「そうだ、そして…今のところ、その現象の対処法は、ない」

「その通り、なのだが彼は生きていた…あぁ、そういえば…」

 

真剣な顔で話をしていたグトン村長は、ふと何かを思い出したかのように左手を顎に当てた。親指には青い宝石がつけられた指輪をしている。

 

「!、何か思い出されたんですか!?」

 

ジルはその素振りを見逃さず、身を乗り出す勢いでグトン村長の次の言葉を待った。グトン村長は「あまり関係があるとは思えんが…」と前置きした後顎に当てていた手を外し目の前に置かれたティーカップを持ち中に注がれた赤色にも見える液体を見ながらささやくように言った。

 

「アンフェールはの、気絶しながらもうわ言のように何度も何度もつぶやいておった…それこそ、悲鳴のような声で…」

 

「『シルヴィア』と、」

 

目を見開くジルの隣で、トアは静かにティーカップに残った紅茶を飲み干した。


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