小さな泊地と提督の物語   作:村上浩助

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絶望と悲しみのレクイエム


次々艦娘が沈んでいきます。
それが嫌な人はこのエピソードを見ないことをお勧めします。

そして、希望へつながる願い


Requiem~高梨海来~
requiem:絶望と悲しみの果てに


『艦娘大戦』と呼ばれる戦争より、16年。

 

()()()の艦娘ハーフとなった高梨海来(ミライ)は、()()()()()()()()()として、第13泊地に着任した。

艦娘大戦と呼ばれる、21世紀最大の内戦により、日本の国力は大きく下がり、

世界での発言権は失われ、艦娘本部は()()()()、軍艦組が主導権を握っていた。

各地の鎮守府は廃止され、再び『自衛隊』に戻った。

三笠が絶望し、艦娘同士が殺し合った戦いは、()()に終わったのだ。

 

軍縮に次ぐ軍縮と、市民達の艦娘への偏見や差別。

その中で、辺境に追いやられた艦娘達は、絶望に呑まれ自沈する者、

それでも希望を棄てない者、人間を憎み深海棲艦へと化す者。

それぞれだった。

 

()()()()()として、知られてしまった海来は、()()()()()()()()()()()は、何処にもなかった。

辺境の泊地(第13泊地)、それ以外に……

彼女がこの地にやってくるのは、必然だった。

 

「お久しぶりです、お母様、電母さん」

「……久しぶり……ですね」

「海来、貴女の着任を歓迎するのです」

 

大垣湊は、司令室に併設された部屋で、沢山の点滴に繋がれ、生き永らえている。

たっつん……たっつん……命()()をつなぐ薬。

()へと、ゆっくりゆっくり、歩き続けて行く。

一時期安定した容態は、少しずつ悪化していた。

彼女は、東京への移動を拒んだ。夫である守が、何度も説得に来たが、

「私は、この島で死にたい。私達が間違えた報い、として見届けたい」

そう言って拒んだのだ。

 

 

この島に残っている艦娘も、もう少ない。

あの第13泊地の戦いで、殆どが死んでしまった。

残ったのは……

瑞鶴、暁、そして北上と天龍。

電の艤装は、無理が祟り完全破壊。第二世代艦娘艤装は、原子力潜水艦「みなと」だけとなった。

 

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

夕張の死に、絶望した明石が、艦娘システムの根幹、ベースシステムを破壊。

そして、自沈したのだ。

 

人類は、()()()()()()、歩き始めていた……

たっつん……たっつん……

 

ある日、電が死んだ。

電もまた、自ら船に乗り込んで指揮をしていたが、

深海棲艦の奇襲に遭い、船が沈み、艦娘達の必死の救助も間に合わず、

天龍の腕の中で、息を引き取った。

こうして、第13泊地の指揮は、()()()()()()()()()()の海来に委ねられた。

 

海来は、今までの戦史を調べ上げていた。

歴史の生き字引である湊に教えを請い、第13泊地の湊の蔵書を隈無く調べ上げ、

そして、深海棲艦の分布を調べた。

 

全ての戦闘記録を洗い出し、それを地図に纏める。

迎撃は、全て天龍に任せた。完全丸投げだ。

 

次第に悪化していく戦況。

北海道は、深海棲艦の手に落ちた。

九州、沖縄も……

 

関東は、横須賀の艦娘残党を率いる吹雪が、必死に侵攻を食い止めている。

でも、時間の問題だ。

 

この世界は、湊の命()()、死に向かって行くだろう。

たっつん……たっつん……

 

吹雪達が、前線で血を流しながら作った半年間。

ついに吹雪も沈んだ……

最後の通信は「また会おうね、どこかで」だった。

 

ハワイで、深海棲艦が()()()に増えた原因……

深海棲艦化という()()()()()()で、あんな急激に深海棲艦化するのは、()()()()

 

「そうか……やはり、深海棲艦は、真珠湾奇襲(パールハーバー・アタック)から始まった存在……」

 

それに気づいた時、()()()()に気づいた。

体が深海棲艦化して行く。そして自分も……

「お母様、私は最後の『願い』を叶えに行って来ます」

「……行ってらっしゃい」

その、母の言葉を最後に、海来は()()()()()()()

 

自らも、深海棲艦レ級と化しながら、意識を強く保っていた。

遺された、母の艤装を抱いて……

 

「行きましょう!」

残った最後の艦娘を従え、ハワイへと向かう。

 

最初に天龍が沈んだ。

「悪いな……俺はここまでだ」

 

 

そして、瑞鶴が沈んだ。

「次があるなら、湊ちゃんみたいな、()()()()()()()()()()()()、もっとマシなクソ提督の元で戦いたいわ」

 

そして、暁が沈んだ。

「次は、()()()()()()レディになりたいわ」

 

最後に、北上が沈んだ。()()()()()が、彼女だった。

「……じゃあね、楽しかったよ。海来っち」

 

 

そしてたった一人、ハワイに辿り着いた。

ハワイには、()()()()()()()が佇んでいた。

「キタワネ……」

「はい、終わらせましょう。()()()()()()私達は―――」

 

―――必要なかったんです。

 

 

レ級と化した海来は、『()()()()()()』に抱かれながら、消えて行った……

 

その日を境に、()()()()()()()()()は、消えてなくなった。

 

海来の願いと共に……

「もしも、生まれ変わるなら――――」

 

 

もっと青くて白い、海と空がいいな……

 

 

 

End

 

 

 


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