Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?   作:黒猫ノ月

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どうもです。

今回はひと味違った味わいです。

では、投稿です。


第7話

Dクラス代表 平賀 源二 討死

 

その報はFクラスで待機していた俺達の元にも届き、次の瞬間には教室が歓喜に沸いた。よかった、間に合ったんだね姫路さん。

 

「……よし、とりあえずは第1段階が終わったのかな? ここから雄二はどうするんだろう?」(ぽふっ

 

「さあ? 今日か明日にでも話すのではないかしら?」(ぴこっ

 

「そうだね。とりあえず、今は喜ぼうか」(なでなで

 

「……うん」(ぴっこぴこ

 

それからしばらく。つみきと2人で待っていると、明久達がいつものように騒がしく帰ってきた。

 

「おかえり、みんな」

 

「「「「「ただいまー!」」」」」

 

みんなを出迎えてから、そこに雄二と姫路さんがいないことに気付く。

 

「あれ? 雄二と姫路さんは?」

 

「ふ、2人なら廊下で話しているよっ」

 

「……なんでそんなに慌ててるんだ?」

 

「えっ!? べ、別に慌ててなんかないよっ! 決して僕が姫路さんの眼中にないんならスカート捲り放題とか考えてないよっ!?」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「……あっ」

 

「…………吉井?」(ニコッ

 

「ヒイッ!」

 

そして下される女性代表の島田さんからの鉄拳制裁。卓袱台を巻き込んで吹っ飛ぶ明久を見て俺は嘆息した。俺は明久が飛んで行った所まで行き、しゃがんで小声で話しかける。

 

「明久」

 

「……ひゃ、ひゃひ? ひほ?(何、伊御?)」

 

卓袱台の残骸からのそのそと顔を出す明久。……中々に酷い顔だ。

 

「誤魔化したいのは分かるけど、わざわざ別の本心を言わなくても……」

 

「……隠そうと思ったら、つい」

 

「……ふう。何を隠そうとしたかはわからないけど、深くは聞かないから安心して」

 

「い、伊御っ。うっ……ぐすっ」

 

「……よしよし」(なでなで

 

目元を腕に当てて泣く明久を慰めていると、後ろに皆が集まって来た。

 

「全く。こんな変態に甘くしなくても良いのよ、音無」

 

「伊御君は優しいですから」

 

「しかし考えてることが突拍子も無さ過ぎるのう」

 

「馬鹿だからでしょ?」

 

「……むーっ」(イライラ

 

「つみきさぁ〜ん。そんな明久さんにまで嫉妬しなくてもブハッ!」

 

ドンガラガッシャーン!

 

「ま、真宵さーーんっ!!」

 

「…………♯」

 

「……クスッ」

 

俺の後ろでまたはしゃぐ皆に、俺は笑みが溢れる。本当に騒がしくて……とても楽しいクラスだ。

 

「おいおい。なに馬鹿騒ぎしてんだお前ら?」

 

「よ、吉井君? どうしたんですかっ?」

 

そんなところに、遅れて2人が教室に入って来た。雄二は呆れながら、姫路さんは俺に慰められている明久を心配して駆け寄って来た。

 

「ああ。心配しなくても良いよ姫路さん。少し明久がやんちゃしただけだから」

 

「ぐすっ。……うん、大丈夫だよ」

 

「……ほっ。そうですか」

 

皆も揃ったところで、それぞれが帰る支度をし始める。……さっき明久から聞いたけど、雄二暗殺は失敗したらしい。中々に雄二もしぶといようだ。

 

秀吉や島田さん、姫路さん達と教室で別れ、俺達は帰路につく。俺とつみき達、明久達は帰る方向が一緒だからね。 そういえば教室での別れ際、明久と雄二が姫路さんと何か話していたが……なにを話していたのかな?

 

「それにしてもさ」

 

「あん?」

 

「Dクラスとの勝負って本当に必要だったの? 別にエアコンぐらいなら他の方法でも壊せたと思うけど」

 

「ああ、そのことか。理由は他にもある。前にも言ったが、Fクラス全体の士気の向上や伊御達の十分な補充試験期間、他のクラスにプレッシャーを与えるとかな。あとはFクラスメンバー、特に春野を試召戦争に慣れさせることも理由だ」

 

「ほえ? 私ですか?」

 

「ああ。振り分け試験がいい例だが、春野は緊張すると思わぬことをする時がある」

 

「ウンウン。西村先生にも注意されてたねん」

 

「はうぅ」

 

「また、春野はその性格からも分かるが戦闘に不向きだ。……なら簡単な事だ。攻めさせなければいい。だから試召戦争の雰囲気に慣れてもらうことと、防御主体の戦い方を身につけてもらうために試験を途中で切り上げて防衛戦に参加してもらった」

 

「そういうことね」

 

「す、すみません雄二君っ。お手間を取らせてしまって……!」

 

「いや、気にするな。なんていったって今回の戦争のMVPは間違いなく春野、お前だからな」

 

「ふえぇっ!? 私がですかっ!?」

 

雄二の言葉に驚く姫。と頷く俺達。

 

「今回の第一目標である前線の維持への貢献。Fクラス幹部の島田の救援。Dクラスの注意を引く囮役。それによるFクラスメンバーの負担の軽減とDクラス代表の油断を誘い、姫路をより近づけさせやすくするなどだ。……どうだ皆、異議はあるか?」

 

「「「「異議なし!」」」」

 

「というわけだ。だから気にするな春野。今回は本当に助かった、礼を言う」

 

「い、いえいえ! こちらこそありがとうございますっ」

 

雄二に褒められ、さらにお礼まで言われてタジタジな姫。……うむ、可愛い。

 

「馬鹿なっ!? あの雄二が礼を言うだとっ!?」

 

「こら明久、引っ掻き回すな」

 

「うっ! ごめん」

 

まあ、明久の気持ちは分からなくもないけどね。雄二は基本、素直じゃないから。

 

「そして今回の功績を称え、これより春野をFクラス防衛隊長に任命する。頼むぞ、『戦場の天使』」

 

「はえ? ……ふえぇぇぇっ!?」

 

雄二の言葉に一瞬呆然とし、次には驚愕の声を辺りに響かせた。

 

「うむっ。納得の地位と配役じゃね! これからはワタシ達のことも守ってねんっ、『戦場の天使』様☆」

 

「よかったわね。『戦場の天使』」

 

「これからよろしくね! 『戦場の天使』!」

 

「頑張ってAクラスを目指そう。『戦場の天使』」

 

「メチャクチャ恥ずかしいのでこれ以上はやめてくださいぃぃっ/////!!」

 

俺達は姫の渾名を連呼して、恥ずかしがる姫を愛でる。……うむ、可愛い。

 

「あ、話が逸れちゃったね。なら雄二、Dクラスの設備を手に入れなかったのは?」

 

「目的はAクラスだろ? Dクラスの設備を手に入れてしまうと、一部の奴はこれからの戦争に反対し始めるかもしれないだろう? それの防止と、不満によるモチベーションの維持が理由だ」

 

姫のことといい、本当によく考える。こういう時、雄二が昔神童っていわれていたのが納得できるといつも思う。

 

「Aクラスに勝てるかな?」

 

「無論だ。俺に任せておけ」

 

「……ありがとう。僕の我儘の為に」(ボソッ

 

「別にそんなわけじゃない。試召戦争は俺がこの学校に来た目的そのものだからな」

 

そう言って夕暮れの春空を見上げる雄二。雄二は時々、こういうふうに遠くを見る時がある。勉強の話や神童の話をした時などにそれは顕著だ。……雄二の過去に何があったかは詳しくは知らない。けど、雄二がその時考えている事はなんとなくだけど分かる。それは多分、勉強や学力なんかよりも大切なものがあるんだって事じゃないかと思う。……俺も、そう思うよ。雄二。

 

「目的の為にも、明久にだってきっちり協力してもらうからな」

 

「了解だよ」

 

「なら、勉強しなくちゃじゃねぇ」

 

「……ぐうぅ」

 

「真宵、あなたもよ」

 

「……ぐうぅ」

 

やれやれ。本当に勉強が嫌いだね、2人とも。

 

「ゲームばっかりしてないで、少しは勉強するんだよ。明久」

 

「うぅ。伊御もゲームしてるのに、なんでそんなに頭良いの!? 理不尽だっ!」

 

「ちゃんと考えてやってるからだよ」

 

俺もゲームは好きだけど、夜通しとか一日中とかしない。要はメリハリだよ。時間を決めてゲームと勉強を交互にするとかね。

 

「くっ! それであんなに凄技を繰り出す伊御はやっぱり理不尽だと思うんだ!」

 

「いいから帰って勉強しろ」

 

「……はいはい。教科書くらいは読んで……ん?」

 

明久はカバンを確認して、「僕、やっちゃった!」て顔をした。どうやらカバン中に教科書の類がないらしい。……どれだけ勉強に興味がないんだ、明久は。

 

「はぁ。皆、先に帰っていいよ」

 

「んじゃな」

 

「うん。じゃあお疲れ。明久」

 

「お疲れ様じゃよっ!」

 

「明久君、また明日です」

 

「またね」

 

俺達は学校へとんぼ返りする明久を見送って、それぞれの帰路についた。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

その日の夜。家で数学を解いていると、携帯に着信があった。どれどれ……明久からか。しかも電話。……何かあったのかな?

 

「もしもし。明久か?」

 

『あっ、伊御? 今ちょっといい?』

 

「ああ。数学もキリのいいところで終わったし」

 

『うっ! 伊御、勉強してたんだ』

 

「……学校にまで教科書を取りに帰って、明久は勉強してないのか」

 

『い、いやっ! しようとしてたんだよっ!? けど、全然手につかなくて……』

 

「ん? やっぱり何かあったのか?」

 

『…………えっと』

 

電話越しに言いづらそうな気配を感じた。……ふむ。

 

「明久。学校でも言ったけど、無理に話さなくてもいいよ。……そうだね、少し何か話そうか。そうすれば少しは気が紛れると思うから」

 

『伊御……。うんっ、ほんとにいつもありがとう』

 

「気にしないで」

 

明久は確かに普通の人より馬鹿かもしれない。だけど、明久だって人間だ。悩みだってあるだろう。俺で少しでも役に立てばいいけど。

 

『……うん。伊御、僕の友達の話なんだけど』

 

「ああ」

 

『うーんと。僕の友達のA君がね、自分の好きな子……Bさんと放課後にA君の教室で出くわしたんだけど、Bさんの手にはら、ららラブレターがあったんだって』

 

「うんうん」

 

ほうほう、恋の悩みかな?

 

『でね。A君はBさんの好きな人を知っていて、それはA君の友達のC君なんだよ』

 

「ほうほう」

 

ふむふむ、三角関係かな?

 

『A君は最初は信じたくなくて、C君へのラブレターを不幸の手紙だと頑なに思おうとしたんだけど……Bさんにこれはラブレターですって断言されちゃって……くっ』

 

「ふむふむ」

 

……あれ? なんで今明久は悔しがったんだ?

 

『で、一応確認の為にそのラブレターは誰宛なの?って聞いたらこのクラスの人ですってBさんは言うんだ。C君がいるこのクラスの!』

 

「……うんうん」

 

なんで明久はそんなに力強く話すんだい?

 

『Bさんの好きな人がC君であると確信したA君は、Bさんにその人のどこが好きなのって聞いたら……外見も好きだけど、何よりも中身が好きだってっ! そんな馬鹿なことがあるはずがないんだよっ!! 奴のっ……C君に良いところなんてカケラもないはずなんだ!」

 

「…………へー」

 

それから明久はC君がどれだけ酷くて、狡猾で、薄情で、残忍な奴であるかを朗々と語った。その話はいかにも体験したような、その場で見ていたような臨場感溢れる内容だった。……というか、C君が行ってきた悪事の大半を俺は知っていた。

 

『Bさんにも言ったんだ。脳外科医に行った方がいいって! けどBさんは頭がおかしくなったわけじゃないって言って、自分がどれだけC君を好きなのかをぼっ……A君に話すんだ』

 

「…………」

 

それからも明久の話を聞いてたんだけど……どうしよう。全く隠す気が無くなってきた明久のせいかもしれないけど、気付いちゃダメなことに気付いちゃった気がする。

 

要は……

一、今日の放課後、明久が教科書を取りに行ったら自分の好きな人である姫路さんがラブレターを持っていた。

二、それが雄二宛であると“思い込んだ”明久が必死に説得しようとするけど、姫路さんは逆に明久に自分の好きな人の良いところを挙げていった。

三、姫路の想いについに折れた明久が、そこまで好きなら応援しなくちゃとその場では「良い返事が貰えると良いね」と姫路さんに言ったが、1人になって振られたという現実に打ちひしがれて俺に電話してきた。

 

ってことらしい。……どうしよう、多分合ってるぞこれ。明久は姫路さんの好きな人を隠す為にA、B、Cを使って話したんだと思うけど、本人がヒートアップしすぎて俺にそれぞれが誰であるのかバレてしまったぞ。

 

というか、明久は勘違いしてると思うんだ。だっておそらく、姫路さんの好きな人は……明久だと思うから。

 

姫路さんが話したっていう自分の好きな人の良いところっていうのが、雄二より明久に当てはまると思う。そして何より、今日の姫路さんの視線は明久にいつも向いていたし、仕草や動作だっていつも明久を気に掛けていた。

 

今日のお昼だってそうだ。他の人より断然優しい姫でさえ、今まで明久にお弁当を作りましょうか?なんて言わなかった(おかずはあげてた)のに、同じクラスになって初めての昼食で姫路さんは明久にお弁当を作ってくると言ったんだ。それぐらい、明久を意識してる。

 

でも、このことは言わない方がいいんだろな。これは2人の問題だし、そもそも恋愛なんてしたことない俺の予想や直感が外れてることの方が大いにありうる。

 

だから俺は見守ろう。そうであっても、そうでなくても。これから少なくても1年は一緒なんだから、流れが2人を引き合わせるまで、ね。

 

『……伊御ー?』

 

「ん? どうしたんだい、明久?」

 

『いや、返事がなかったから寝ちゃったのかなって』

 

「流石に寝るには早いよ。でもごめん、明久の話を俺なりに整理してたんだ」

 

『そっか。で、どう思う?』

 

「んー。そうだなぁ」

 

……けど。

 

「本当にBさんはC君ことが好きなのかな?」

 

『えっ!? いやだって……』

 

友人のためを思って考えた予想や、感じた直感を少しは信じてもいいんじゃないかなって。

 

「BさんがC君を好きだって言ってたのを聞いたのかい?」

 

「えっ? いや、聞いてないけど……でもっ! 見てればわかるよっ!」

 

流れを少し誘導するくらいはいいんじゃないかなって、そう思ったんだ。

 

「じゃあ、明久の話を又聞きで聞くことしか出来なかった俺に免じて、友人A君に話してくれないかな? もう一度、落ち着いて、ちゃんと確認してみてごらんって」

 

『…………うん。分かった! そうしてみるよ!』

 

「ああ」

 

『伊御。長々と電話してごめんね』

 

「気にしてないよ。少しでも力になれたらよかったよ」

 

『少しなんてものじゃないよ! 伊御のおかげでだいぶスッキリしたし!』

 

「それはよかった。じゃあ明久、“頑張ってね”。おやすみ」

 

『おやすみ、伊御!』

 

俺は電話を切って、窓際に近づき窓を開けた。夜空を見上げれば、星が様々な色をたたえている。俺は夜に輝く星々を眺め、友人へエールを送った。

 

「頑張れ、明久。……頑張れ」

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

「ふーっ。……伊御に電話してよかったなぁ。伊御は自分のことに関してはニブニブだけど、他人のことに関してはすごく聡いからね」

 

「そんな伊御が、僕が勘違いしてるかもしれないって言うんだ。今度機会があれば姫路さんにちゃんと聞いてみよう。誰かは話してくれないとは思うけど、ヒントくらいならね」

 

「うんっ。なんかモヤモヤがスッキリした気がするよ! さて、せっかくだし暗記ものぐらいしようかな」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……あれ? なんで伊御はA君の話をしてたのに、僕に頑張ってなんて言ったんだろ?…………あれ? ……あれっ!?」




如何でしたか?

2つの作品の主人公をガッツリ絡ませてみました。
違和感などありましたら、ご意見くださればと思います。

では!
感想やご意見、評価を心よりお待ちしております。
これからも応援よろしくお願いします!!

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