Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち? 作:黒猫ノ月
やってやりました。連日投稿です!
御楽しみいただければと思います!
今回少し納得できない方もおられるかもしれません。
では、投稿です。
第1話
春の暖かな日差しを浴びながら、この一年で歩き慣れた通学路を歩く。
一ヶ月前の振り分け試験を風邪で休み、みんなにも心配を掛けてしまったけど、その数日後には風邪も治り、春休みはいつものみんなで賑やかに過ごした。
中でも印象に残っているのは、いつか雄二が言った「俺と明久で何か奢る」というのが実施され、みんなで焼肉を食べにいった時のことだ。焼肉自体は食べ放題で、榊や真宵なんかは遠慮など一切なく食べていたけど、みんなで騒がしくも楽しい時間だった。……そこまではよかった。
それからもみんな(特に男連中)でゲームなんかしてほぼ毎日遊んでいたのだが、……明久が日に日にやつれていったのだ。5日も経つ頃には、顔はげっそりと痩けて身体はフラフラと不安定に揺れていた。さすがにおかしいととみんなで問い詰めると、本当に水と調味料で過ごしていたらしい。そういうことで急遽俺と榊主催の鍋パーティーを決行し、つみきたちも呼んで明久に食べさせたわけだ。……明久は滝のような涙を流してたよ。
そんなこんなで騒がしくも楽しく過ごした春休みも明けて、高校2年目の進学を迎えた。今日がその第一日目だ。
そうして賑やかだった過去に想い馳せていると、俺の視線の先にバス停の側で佇むつみきの姿が見えた。つみきも気付いたみたいで、少しおどおどしながらも小さく手を振ってくれた。そんな人見知りな子猫みたいな姿に少しほっこりしながらも俺は手を振り返し、小走りでつみきの元に向かった。
「おはよう、つみき」
「お、おはよう。伊(ぽふっ)御っ!?」
俺は朝の挨拶を交わすついでに、ほっこりした気持ちをそのままにつみきの頭を優しく撫でる。その拍子に、つみきの頭からぴこんっとネコミミが出てくる。
「い、伊御っ///// こ、これは……?」
「ん? 嫌だったかい?」
「べっ、別にっ。す、好きにすればいいわ/////」(ぴこぴこっ
「そっか」
「…………んにぃ〜/////」(ぴこぴこぴこっ
「……ふふっ」
つみきが気持ちよさそうに鳴くなか、俺はつみきが満足するまで撫でてあげた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから少しして、恥ずかしさから俺の手に齧り付いたつみきを連れて学校に向かった。今は途中で合流した榊や真宵、姫の5人で、桜の花びらが舞う文月学園の坂を歩いていた。
「さてはて、皆様の振り分け試験の結果はどうなんたんじゃろう〜ねぇ」
「そ、そうですね。今からすごく緊張しますぅ」
「姫ならDかCは固いから、そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
「は、はひぃ」
「榊、お前はワザとFクラスにいけるようにしたんだったか?」
「おうっ! 伊御もいるし、中途半端なEクラスってのもなんだしな」
「榊の頭ならそんなことしなくても自動的にFクラスでしょう」
「フッ。俺様の神の如き頭脳に不可能はないぜっ!」
「そうじゃねぇ。“紙”の如き頭脳じゃねっ☆」
「ペラペラだな」
「かみ違いっ!?」
そんなことを話しながら、文月学園の校門を潜る。校門から玄関までの道のりにも桜が咲き誇り、新入生や在学生の新しい一年を祝っている。そうして玄関前に着くと、生徒のみんなから鉄人と恐れられる西村先生がみんなに紙を配っていた。
「おっ、あれが振り分け試験の結果か?」
「そうみたいだな、配られた紙を見て回りが一喜一憂してる」
「どうします? 並びますか?」
「んー、少し待って落ち着いてからみんなでもらおうぜ」
「その方がよさそうね」
「んじゃあしばらくか待機じゃ!」
そうして待つことしばらく、周りの人も少なくなり、俺たちも西村先生から紙をもらうために玄関前に歩き出した。
「うん? ……ああ、お前たちか。おはよう」
「「おはようございますっ。にっしむっらセッンセー!」」
「「「おはようございます」」」
「うむ。さて、早速お前たちのクラスが書かれた紙を渡そう。まずは……音無」
「はい」
俺は西村先生から紙を受け取るが、その際に西村先生は顔をしかめて俺に言葉をかけてくれた。
「音無、今回は残念だったな。お前ならばAクラスにも行けただろう」
「いえ、体調管理をきちんとしなかった俺のせいですから。それにFクラスもわるくないかな、と」
「むうぅ、そうか。お前が気にしてないのならいいんだがな。……今年のFクラスは問題児だらけだ」(ボソッ
「? 何か言いましたか?」
「いいや、何も。次からは体調管理もしっかりするように、それもまた大事なことだからな」
「はい、ありがとうございます」
そう言って俺はもらった紙を開くと、そこには『F』の文字が。俺はそれに苦笑しながらもポケットに紙をしまった。
「次は……戌井、お前だ」
「ういっすっ!」
呼ばれた榊が紙をもらい、意気揚々と紙を開くと……なぜか震え出した。そして次の瞬間、榊の絶叫が辺りに響いた。
「なぜだぁぁぁーーーーーっっ!!?」
「うおっ。どうした榊?」
「どうしましたっ、榊くん?」
俺と姫の心配を受け、続けて榊は叫んだ。
「な、なんで……。なんで“E”クラスなんだよおおーー!?」
そう叫んだ榊は膝から崩れ落ちた。そんな榊に西村先生は呆れたようにため息をついた。
「貴様はなぜがっかりしているんだ。“ギリギリ”Fクラスではなかったのだから喜ぶべきだろうに」
「……ギリギリ?」
西村先生の言葉に疑問を持ったつみきが先生に尋ねた。
「ああ。戌井はあと少し点数が足りなかったら、Fクラスの最高成績者となっていただろう。つまりはEクラスでは最低成績者だな」
「それはまた……」
「ことごとく期待を裏切らないんじゃよ」
それを聞いた俺たちは、榊の“いつもの”が発動したことになんとなく生暖かい視線を崩れ落ちる榊に送った。
「ちなみにじゃが先生。Fクラスの最高成績者は誰なんじゃ?」
「……はぁ。坂本だ」
「あれま〜」
「……う、ぅぅ。何故だ雄二っ、何故なんだっ!?」
別に雄二のせいで榊がFクラスに行けなかったわけではないのだが、まあ、そういう言い方をされれば雄二のせいに思えなくもないのが不思議だ。
それにしても、まさかの身内がFクラスの最高成績者だった。というかあいつならEクラスは余裕だろうに、何してるんだ?
西村先生はそんな榊を無視して、渡す紙を探して次の人を呼んだ。
「片瀬」
「ういうい」
真宵も紙をもらって、気兼ねなく紙を開く。
「むーん、やっぱりFクラスじゃったかぁ」
「なんの面白みもないわね」
「面白さもFクラスか」
「それなら榊はまだマシね」
「勉強ができないことより傷つくんじゃよっ!?」
真宵をつみきと2人でいじり、西村先生が次の人を呼ぶのを待つ。
次に呼ばれたのは姫だった。
「……春野、次はお前なんだが……」
「はっ、はひっ!」
「? どうしたんですか、西村先生?」
何故か歯切れの悪い西村先生に俺が尋ねると、先生はゆっくりとため息をつきながら口を開いた。
「……お前は試験どうこうのまえに、落ち着くことが大事だぞ」
「ほえ?」
不思議そうな顔をして紙を受け取った姫は、そのまま流れで紙を開く。するとそこには『F』の文字が!
「「「「え、Fーーーーっ!!?」」」」
「ふえええぇぇぇぇっ!!?」
ようやく立ち直った榊も合わせた5人の声が玄関前に響いた。この驚愕の事実に真宵と榊が西村先生に詰め寄る。
「に、西村先生っ!? これはどういことじゃよっ!?」
「姫がFってなんかの間違いだろっ!?」
2人ほどではないが、俺も驚いている。何かしらのミスがなければ姫ならDかCは固いはずだ。……ん? ミス?
「お前たちの疑問はもっともだが落ち着け。これは間違いでもなんでもなく事実だ。……春野、お前が何故Fクラスかというと……」
「「「「「ゴクリ」」」」」
俺たちは先生の言葉を固唾を飲んで待つ。そして聞かされた真実は……。
「……ほとんどのテストにおいて、回答がひとつづつズレていたため……数学以外の点数が一桁であったこと。これが原因だ」
「「っだーーっ!」」(ずこーーっ!
「「姫……」」
「あうぅぅ。やってしまいましたぁ……」
西村先生の言葉に榊と真宵はづっこけ、俺とつみきは土壇場に弱い気弱な姫に憐憫の視線を送った。
そうか、数学は他の科目と違って問題と空欄の大きさが各問題で違うから間違いようがないのか。それ以外の科目でも問題によって違うのだろうけど、数学ほどじゃない。天然な姫は不思議に思えどそのまま書いてしまったのだろう。……可哀想すぎる。
「姫、泣かないで」(なでなで
「そうじゃよ姫っち! ……これでワタシたちはみんな一緒じゃし」(ボソッ
「ぐすっ、ひぐっ……ありがとうございまずっ、お二人とも」(ぐしゅぐしゅ
「……春野、確認したが、解答欄がズレていなければお前はCクラスだった。勉強も大事だが、落ち着くことはどんな時でも大事だぞ。緊張するなとは言わんが、出来るだけ慣れるようにな」
「は、はひぃ……ぐすっ」
先生もいたたまれなくなったのか、他のみんなと違い幾らか優しい声で姫に声をかけ、また紙を探し始めた。
「にしてもビックリしたな伊御」
「あ、ああ。けど、姫らしいといえば姫らしい」
「ナハハ、確かに。けど、お前はもっと驚くと思うぞ?」
「? それはどういうことだ?」
「まっ、それはお楽しみにってことで」
「?」
榊の言葉に疑問が残るが、答える気は無いらしい。なら、言葉通り楽しみにするとしよう。
つみきと真宵のおかげでだいぶ落ち着いた頃、先生が最後の1人を呼んだ。
「最後は御庭だな。……はぁぁ、全く。お前たちときたら本当に……」
「…………」
先生がそういうということは、つみきも悪かったのだろうか? 俺は気になって、つみきのそばに立って一緒に見ることにした。そしてつみきが開いた紙に書かれていたクラスは…………『F』。
「えっ?」
「…………」(ネコミミぴこぴこ
「「うっしっしっ」」
「あっ、えっとぉ……あのっ! ど、ドンマイですっつみきさん!」
「ええ、残念だわ」(ネコミミぴっこぴこ
俺は驚きで言葉が出なかった。だけどそんな俺をよそに、他のみんなはそれぞれつみきに声をかけるが、俺ほど驚いてるようには見えなかった。俺も驚きから立ち直り、つみきに声をかける。
「えっと……つみき? どうして?」
「さあ、なんでかしら? 西村先生、どうして私はFクラスなのかしら?」
「…………今回のテストで各科目一つづつ、“無記名”のものが存在した。全テストを確認すると……御庭、お前のテストだけ存在しなかった。よって、この無記名は御庭のものと判断し、テストの点数はすべて0点。御庭はFクラスとなった」
「そんな……」
西村先生の言葉に、納得したくない自分がいた。理由を聞けば姫と同じ勉強以外のうっかりミス。けれど、俺はつみきがどれだけ頑張っていたか知っている。そんな俺からすれば、本当に悔しくてたまらない。
俺がつみきの結果にがっかりしていると、俺の袖を引く感覚があった。そちらを見ると、俺を見上げるつみきがいた。
「……伊御、気にしないで」
「けどつみき、つみきはあんなに頑張っていたのに……」
「いいの」
「だけど……」
「…………から」
「……?」
「…….い、伊御が一緒だから……いいのっ/////」(プイッ
「つみき……」
つみきの言葉に、本当に気にしていないこと。それと俺と一緒にいれることが嬉しいということが伝わってきた。それは、俺の胸を暖かいもので満たしてくれていた。
俺は今も恥ずかしがってこっちを見てくれないつみきの頭に手を置き、優しく撫でてあげる。
「……俺も、同じクラスになれて嬉しいよ。つみき」(にっこりなでなで
「…………っ/////」(ぴこぴこてれてれ
「「ニヤニヤ」」(ニヨニヨ
「つ、つみきさぁぁんっ/////」(鼻血たらたら
そうして、一瞬にして甘々空間と化した玄関前。西村先生は深いため息をつき、周りにいた他の人たちは一様に生暖かい視線を浮かべニヨニヨしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「御庭、少し話があるから残れ」
「……? はい」
あれからしばらくして、恥ずかしかなったつみきが周りを威嚇し散らした後、俺たちはそれぞれの教室(ほとんどFクラス)に行こうとした時、西村先生がつみきに声をかけた。
「つみき、靴箱で待ってるよ」
「ん」
つみきに一声かけて、玄関を潜った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「御庭。俺は一教師である以前に1人の大人として、生徒たちが将来立派になれるように勉学や礼儀など、厳しく指導することにしている」
「……はい」
「だから今回の件、俺はお前を厳しく叱り、しっかりと罰を与えなければならんだろう。……なぜかは、お前が一番よく分かっているな?」
「……っ」
「…………しかし」
「……?」
「俺は勉学や礼儀などと同様に、学校での普段の生活……所謂『青春』と呼ばれるものも大事にしなければならないと考えている」
「…………」
「人生でわずか数年しかない時期だ。その間に様々経験を重ね、時には喧嘩をし、時には力を合わせ、そして引かれ合い、そして離れ合う。楽しいことも、苦しいことも、嬉しいことも、悲しいこともあるだろう。しかしそれらはすべて無駄ではない。それらを学校で学び、感じることで人はまた成長するのだ」
「…………」
「むっ、いかんな。話が長くなってしまった。……んんっ。つまり俺がいいたいことはだ……恋愛も大事だが、それを理由に他をないがしろにはするな、ということだ」
「っ!!?///// にゃっ、わ、私は違っ!!?/////」
「俺からはそれだけだ。では、行ってよし」
「〜〜〜〜〜っっ/////!! うにゃーーーーーーっ!!!」
ダダダダダダダッ
「……はあ。全く、若いな」
【おまけ】
「ん? ああつみき、どうだった、っとと!」
「〜〜〜〜〜っ/////!!」(ぐりぐりぐりっ
「ど、どしたんじゃつみきさん!? いきなり伊御さんの胸板に顔をぐりぐりとっ!?」
「は、はうぅっ! つみきさん可愛いですぅ/////」
「……あー。鉄人って名前に似合わず聡いところあるから、バレちったかなぁ」
「あー。なーる」
「よしよし。つみき、大丈夫だぞ〜」(なでなでぎゅっ
「ぅぅぅぅぅっ///// フッカーーーーーッ!!」(がぶがぶっ
「うおぉっ! あっ、こらつみき。痛い痛い」
如何でしたか?
結局、原作と同じクラス采配にしました。
これについて意見のある方ぜひ感想をいただければと思います。
では、これからも応援よろしくお願いします!