Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?   作:黒猫ノ月

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どうもです。

Bクラス中盤戦!

では、投稿です。


第11話

『静かにしなさい! この薄汚い豚どもっ!』

 

『な、何よアンタ!』

 

『そっちから話しかけないで! 豚臭いわ!』

 

『な、なんですってぇ!』

 

Cクラスの中から罵詈雑言の嵐と、ヒステリックにそれに対抗する声が聞こえる。……秀吉、すごいなぁ。色んな意味で。

 

僕達は今、雄二が昨日言っていた策を実行している。それはCクラスを挑発して、Aクラスに攻めさせるというものだ。挑発するのはAクラスに在籍している秀吉のお姉さんに扮した秀吉だけど。スカート姿の秀吉は大変可愛かったです。

 

これでBクラスとの共闘によるFクラスへの介入は無くなるはずだ。今もすっごい当てつけのような言葉で秀吉が挑発して、Cクラス代表を確実に怒らせている。しかし、ここで疑問が残る。それは……。

 

「ねぇ雄二? なんで伊御を待たなかったの?」

 

「…………」

 

そう。ここには伊御以外の男連中はいるんだ。女子を呼ばなかったり待たなかったのはこんなもの見せられたものじゃないからわかるけど、ならなんで伊御が登校するまで待たなかったんだろう?

 

「……伊御は木下 優子と仲がいい」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「…………」(コクコク

 

いつまでも僕から顔を背けて話さない雄二の代わりに、ムッツリーニが話してくれた。へー、いつの間に仲良くなったんだろう? 僕と伊御はクラスは違ったけど、去年はかなりの時間一緒にいたからいつ仲良くなったのか余計気になる……あれ?

 

「…………ねぇ雄二?」

 

「……なんだ?」

 

「“これ”、ヤバくない?」

 

「…………」

 

僕の疑問にまた顔を背けて無言になる雄二。ねぇちょっと! これが伊御にバレたら流石に伊御も怒るよ!? 伊御が怒ったら怖いの知ってるでしょ!?

 

伊御は怒ると、笑うんだ。けど、それはいつもの微笑むのとはわけが違う。そして何よりも怖いのは雰囲気が荒々しくなることだよ! 怒った伊御の背景からゴゴゴッて音してたものっ! 笑った伊御とその雰囲気が組み合わさると、鉄人なんて目じゃない。

 

僕が雄二を問い詰めようとした時、今まで黙っていた雄二が突然僕の方に振り向き、肩をガシッと掴んだ。

 

「……いいか明久。ここまでくれば俺達は共犯だ。伊御にバレないよう全力で協力しろ。いいな?」

 

「ふざけるなバカ雄二! 僕は伊御に怒られるのはゴメンだよっ! 今から雄二がしでかしたことを伊御に話してきてやるっ!」

 

掴まれた肩を乱暴に引き剥がし、雄二から距離を取る。僕は本当にここにくるまで何をするか知らなかったんだ! 伊御にそれも含めて話せばわかってくれるはずだ!

 

「させるかっ! ムッツリーニ!」

 

「……我ら一連托生」(ガシッ

 

「なっ! 離せぇ!」

 

「っらぁっ!!」

 

「グぼぉっ!!?」

 

背後を取られ、動きを封じられたぼくのボディに雄二の渾身の一撃が入る。……く、そ。

 

廊下に倒れ臥す僕を見下ろす雄二が言葉を放つ。

 

「これもAクラスに勝つため。悪く思うなよ、共犯者」

 

「……おぼ、え……て……」(ガクッ

 

そして……僕が次に意識を取り戻した時は、Bクラスとの戦いが始まる寸前だった。僕は雄二の思惑通り共犯者となってしまったのだった。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

Bクラス戦が始まってしばらく。俺とつみきは昨日消費した科目を出来るだけ早く終わらせ、今はBクラスに向かっている。それと、俺が登校してきた時には既にCクラスへの対策は済んだいたらしく、CクラスにAクラスへと戦争を仕掛けるよう仕向けたそうだ。……何をしたか頑なに話してくれなかったんだが、一体何をしたんだ。雄二。

 

まあ、それは今は置いておくとして。俺達の今日の役割は、出来る限り敵を他の皆が減らした後、姫路さんと協力して敵を圧倒し、注意を俺達にひきつけることだ。Bクラスの室外機も、Dクラスに壊すよう指示を出してるみたいだし……窓は全開かな?

 

そしてようやくBクラス前に到着し、戦線の確認をしようと思って周りを見渡すと……ん?

 

「……Fクラスの皆の動きがぎこちない?」

 

「指示がうまく伝わってないみたいね」

 

「ドアと壁をうまく使うんじゃ! 伊御と御庭がせっかく押し込んだのじゃ。戦線を拡大させるな!」

 

「……秀吉?」

 

違和感を感じた俺の耳に届いてきたのは、激しく指示を飛ばす秀吉の声だった。……おかしい。ここの指揮官は姫路さんだったはずだ。なんで姫路さんじゃなくて副指揮官の秀吉が指示を出してるんだ?

 

「伊御。ひとまず木下のところに行こ?」

 

「……そうだね。ここで考えても仕方ない、か」

 

俺はつみきに連れられ、先程秀吉の声が聞こえた方へと向かう。するとそこには秀吉だけでなく指揮官であるはずの姫路さんとサポート役の明久がいた。……よかった。姫路さんに何かあったわけじゃないんだ。

 

「皆、おまたせ」

 

「伊御! 御庭さんも! 補充試験が終わったんだね!」

 

「ああ。……それで、戦況はどうなってるんだ?」

 

「それが……」

 

明久が声を潜めて俺に話してくれた。明久の話によると、どうやら姫路さんの様子がおかしいらしい。一向に指示を出す気配もなく、また参戦する様子もない。明久が何かあったかと尋ねてみても、何でもないの一点張りだそうだ。

 

「…………ふむ」

 

「伊御、どう思う。やっぱり姫路さんの体調が悪いんじゃ……」

 

「木下! 古典が展開してる左の出入り口が突破されそうだ!」

 

「いかんっ! 姫路、ここは……」

 

「つみき、お願い」

 

「伊御っ!?」

 

「ん、了解」

 

俺は秀吉の言葉を遮り、つみきに救援に行ってもらった。本当なら点数の高い姫路さんに行ってもらいたいところだけど、今はそうも言ってられない。

 

「悪い秀吉、副指揮官の指示に背いて」

 

「いや、それは構わんのじゃが。……良いのか? お主と御庭は今2人で姫路の点数を少し超えているぐらいのはずであろう? 後々の作戦に響くのではないかのう」

 

「確かにそうだけど、今は仕方がないよ」

 

俺とつみきは今回、早く前線に戻れるようテストを早めに切り上げている。だから点数が少しいつもより少ないんだ。それも考慮して、本当ならば2つある出入り口をそれぞれ、俺とつみきで片方、そしてもう片方を姫路さんで突破する予定だったのだが、このままでは俺とつみきで1つずつになりそうだな。

 

俺は明久と少し後ろで控えている姫路さんの元に向かい、声をかけた。

 

「あっ、吉井君、音無君。さっきはそのっ」

 

「姫路さん。何かあったなら話してくれないかな? 僕達に気を使ってるんだったら気にしなくていいよ。それよりも姫路さんの方が大事なんだから」

 

「明久の言う通りだよ。もし話したくないなら、とりあえずはFクラスで休んでおくといいよ。ここは俺達で何とかするから」

 

「だ、大丈夫です! 本当に何でもないんです!」

 

俺達の言葉にも強く否定する姫路さん。だけど……ならどうして君は泣きそうなんだい?

 

「右側出入り口、教科が現国に変更されました!」

 

「数学教師はどうしたのじゃ!」

 

「Bクラス内に拉致された模様!」

 

「くっ!」

 

右側もBクラスが得意な文系科目に変わったか。これはそろそろ俺も入るかな。

 

「私が行きます!」

 

しかし俺が行こうとした時、姫路さんが戦線に加わろうと駆け出した。でも……。

 

「あっ……」

 

急に駆け出した足を止め、その場に俯いてきゅっとスカートの裾を掴んだ。……何だ? 今、何かを見て足を止めたようだけど……。

 

明久も俺と同じように気付いたみたいで、俺達は姫路さんが見ていた方を目で追ってみた。するとその先には、窓際で腕を組んでこちらを見下ろす……確か、あれが根本だったはずだ。あまり好ましくない顔でこちらを見ている。そして……。

 

そして俺は。俺達は。どうして姫路さんが動かない……いや、動けなかったかを、理解した。

 

少し遠くに見える根本の手には、手紙のようなものがあった。俺も、それだけなら別に何とも思わないだろう。だけど……俺は気付いてしまった。

 

根本が姫路さんに見せつけるように揺らめかせる手紙。そう、手紙なんだ。……俺はつい最近、手紙関連の話を相談された。そう。あの手紙は……。

 

 

 

BさんがA君に渡すために用意したもの。心に秘めた想いが込められた……何物にも変えがたい、大切なラブレターだ。

 

 

 

そう気付いた時には、何かが切り替わった音がした。

 

「……明久」

 

「……うん」

 

明久はすぐに頷いて姫路さんに声をかけた。

 

「姫路さん」

 

「は、はい……」

 

「具合が悪そうだからあまり戦線には加わらないように。試召戦争はこれで終わりじゃないんだから、体調管理には気を付けてもらわないと」

 

「……はい」

 

「伊御、代わりに指揮官やってくれるかい?」

 

「ああ、任せろ」

 

「じゃ、僕は用があるから行くね」

 

「あ……!」

 

姫路さんは明久に何か言いたげだったけど、気にせずこちらに向かって歩き出した。そして、俺と明久はすれ違いざまに……。

 

「伊御」

 

「明久」

 

「「あのクソ野郎を、ブチ殺す」」

 

絶対の覚悟を持って、手を合わせあった。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

僕はFクラスに向かって駆け出していた。雄二に作戦変更をお願いするために。その最中に思う。バレたのが伊御でよかったって。あんなに姫路さんのことを想って怒ってくれた伊御に嬉しくなったんだ。……覚悟しろよ根本 恭二。お前は多分この学校で1番怒らせちゃいけないやつを怒らせたんだ!

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「伝令、左に姫を向かわせてつみきを回収してきて。その時姫に突撃させて、その隙に古典教諭をこちらに引っ張り出せ」

 

「は、はい!」

 

「康太、生物教諭を連れて左の出入り口に展開させて。暗記ものだからFクラスでもましな方だし、Bクラスの不得意科目の1つのはずだ。その後は……例の配置につくように」

 

「…………ッ!」(コクコクコクッ!

 

「須川、右の現国教諭はそのまま。2人1組で戦線を保て。絶対に教室から出すな」

 

「り、了解であります!」

 

「秀吉、真宵からの連絡はまだか?」

 

「ま、まだじゃ。……の、のう伊御よ。一体、片瀬に何を命令したんじゃ?」

 

「知る必要のないことだよ」

 

「し、しし承知した! いらんことを聞いてすまんかった!」

 

「いや、気にしてないよ」(ニコッ……ゴゴゴゴゴッ!

 

(((((こ、こっえーーーっ!!)))))

 

(の、のうムッツリーニよ。もしやこれはバレてしまったのではないかのう)

 

(……それなら俺達に怒りが向けられるはず。原因はおそらく別にある)

 

あれ、おかしいな? 俺は笑ったはずなのに、何で皆そんなに怯えてるんだろう? 確かに根本に対しては怒りはあるけど、俺はそれを誰かにぶつけるようなことはしないよ?

 

「き、来た! 御庭さ……御庭様が来たぞぉー!」

 

「み、御庭様! どうか、どうかお願いします!」

 

「仏の怒りを鎮めてください!」

 

「…………」

 

ん? どうやらつみきが帰って来たみたいだね。……だけど皆。何でつみきのことを様付けで呼ぶんだい?

 

「伝令、姫に生物教諭が来たら待機するように伝えて」

 

「は、はいぃっ!」

 

姫への伝令を走らせた。これで少しの間戦線は保たれるかな。

 

「……伊御」(くいくいっ

 

「ん? どうしたんだい、つみき」(ニコッ

 

「……っ。……あ、あにょね」(へんにゃり

 

「うん」

 

あれ? つみきのネコミミがへんにゃりしてしまってる。どうしたんだろう? ……また何か仕出かしたのか、根本。

 

「っ!? い、伊御!?」

 

「大丈夫だよつみき。根本は必ず潰すから」(ニコッ……ゴゴゴゴゴッ!

 

(((((あいつかーっ!!)))))

 

「ち、違うわっ! 別に何かされたとかではなくて、その……あにょっ!」

 

「…………」

 

……どうやら、俺がつみきを怖がらせてるみたいだな。知らぬ間に怒りが漏れてたみたいだ。反省しないとな。

 

「……ごめんつみき。怖がらせるつもりはなかったんだけど……」

 

「うぅん、それはいいの。でもにぇ、伊御……」

 

「うん?」(ニコッ

 

「…………そんなふうに、笑わないで」

 

「っ!?」

 

「伊御は、優しく笑ってる方が……いいの」

 

「…………」

 

…………。…………そっか。

 

「……うん。わかったよつみき。心配させてごめん」(ぽふっ

 

「べ、別に心配にゃんかしてにゃいわ……/////」(ぴこぴこ

 

俺は自分を諌めてくれたつみきに感謝も込めて優しく撫でてあげる。俺は普通に笑ってるつもりだったんだけど、つみきにはそうは見えなかったのかな。

 

「皆、ごめん。少し冷静じゃなかったみたいだ」

 

「う、うむ。よいよい。たまにはそういう時もある」

 

「そうだな。おいお前達! 仏を怒らせたのはBクラス代表根本 恭二だ! 奴の首を取り、仏に献上するんだっ!!」

 

「「「「「うおおおぉぉぉーーっ!!」」」」」

 

「なっ!? こ、こいつら急に勢いづいてっ!」

 

……よかった。戦場の雰囲気も悪くない。なら、次に進もうか。

 

「秀吉、指揮を頼む。時が来たら俺とつみきでBクラスへ猛攻を仕掛けるから、その時まで前線で待機してるよ」

 

「心得た。頼むぞ、伊御」

 

「ああ。つみき、これから俺と一緒に無茶をしてもらいたいんだ。戦死する可能性も高いけど、やってくれるかい?」

 

「うん、やる」

 

「ありがとう、つみき」(ぽふっ

 

「〜〜〜〜♪」(ぴこぴこ♪

 

そして俺とつみきはそれぞれの出入り口付近で待機した。後はその時を待つだけだ。

 

つみきや皆のおかげで、頭はだいぶ冷えた。……今は怒りを抑えるんだ。それに今回の主役は俺じゃない。明久だ。今俺がやるべきことは、Fクラスを勝利に導き、さらに明久がやりやすいように場を整えること。後は……この戦いが“終わった後”からが、俺の仕事だ。

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

□Bクラス戦前日□

 

「伊御がキレたらどうなるんだ?」

 

「うーん。……雄二は伊御が怒ったところは見たことあるんだよな?」

 

「ああ。あれは確か……モノを隠して楽しんでる奴らを見た時だったか? いつもの微笑みが消えて、笑ってやがったんだよ。纏う雰囲気もまるっきり変わってよ」

 

「あれだろ? ゴゴゴゴゴッ!って感じのやつ」

 

「それだ。まあ、モノを隠すなんて陰湿なことをする奴らだ。泣きべそかいて逃げ出してたぜ」

 

「あれは怖いよな〜。俺達のおふざけに怒ってるのとはまた違うんだよな〜」

 

「そうだな。道徳に反したことに対して怒ってる感じか?」

 

「それなら雄二と明久はいつか伊御を怒らせそうだなっ」

 

「……やめろ。俺もそんな気がしてんだから」

 

「ひひひっ。っとぉ話が逸れたな。まあ、伊御は怒るとそうなるわけだが……」

 

「…………」

 

「伊御がキレると……伊御の周りが凍る」

 

「……何?」

 

「空気が凍るんだよ。んで無言になって、表情が伺えなくなる」

 

「…………」

 

「まあ、滅多になるようなことじゃないんだがな。流石に根本でもそこまでクズじゃないとは思うけどなぁ」

 

「……伊御がキレるその一線ってのは?」

 

「一概には言えないんだよな。俺もみいこ姉もキレた伊御を見たのは片手で数えられる程度だ」

 

「なら、最後にキレた時は?」

 

「……中3の頃。…………大切にしてた猫が、遊び半分で殺された時だよ」




如何でしたか?

伊御、キレずに怒る回でした!
次回でBクラス戦を終わらせたい!

では!
感想やご意見、評価を心よりお待ちしております!
これからも応援よろしくお願いします!!

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