Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?   作:黒猫ノ月

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知っている方はこんにちは!
初めましての方は初めまして!黒猫ノ月です!!

長い話は置いといて、楽しんで頂けたらと思います。




プロローグ

───僕はバカだ───

 

 

───勉強は底辺で

      追試・補修は当たり前だった───

 

 

───僕はバカだ───

 

 

───いつも先生に怒られて

      いつも誰かにバカにされてきた───

 

 

───僕はバカだ───

 

 

───時には思いきり暴れて

     時には誰かを泣かせたりもした───

 

 

───僕の高校生活なんてこんなものだ───

 

 

───…………だけど───

 

 

───僕はその中で手に入れたんだ───

 

 

───何物にも変えられない、大切な……───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───大切な、友人を───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎全体が解放感に包まれる放課後。

 

ある者は部活動に専念するためにそれぞれの部室に向かい。

 

ある者は友人たちとこれからの予定を話し合いながら下駄箱へと向かい。

 

またあるものは次の"特別なテスト"に向けて自習室へと足を運ぶ。

 

そして、ある者たちは……。

 

 

 

「待てぇ、貴様らあぁぁぁ!!」

 

「「チクショオぉぉぉぉぉ!!!」」

 

 

 

学校内を、鬼神相手に全速力で爆走していた。

 

「どうしてくれるんだよ雄二! 雄二があのとき躓いたりするから鉄人にバレちゃったじゃないかぁ!」

 

「それはこっちの台詞だ明久! そもそも何でテメェは塩の瓶なんてものポケットに入れてるんだ!? 躓いたのもそのせいだろうが!!」

 

「雄二も知ってるでしょ!? 塩は僕の命を繋ぐものなんだよ! 万能食材なんだよ!!」

 

「知ったことか! 俺はそれを何でわざわざポケットに入れていたのかをっ……!!」

 

「待たんかぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「クソォォォォォォォォ!!!!」」

 

鬼神に追われながらもこうなった原因を言い争う彼ら……吉井明久と坂本雄二。しかし鬼神……てつじ……西村先生は着々とそんな彼らとの差を詰めていく。

 

「チィっ! 今は言い争ってる場合じゃねぇ! 携帯も無いから助けも呼べん! このままだと捕まるぞっ!!」

 

隠密行動中だった明久と雄二は携帯を持っておらず、いつもの仲間たちに連絡が取れずにいた。

 

「どうするのさ雄二っ!? このあとはみんなと今度のテストの対策するんでしょっ!? もし捕まったら地獄は確定だよっ! 僕はまだ死にたくないっ!!」

 

「だったらその口閉じて黙って走りやがれバカ野郎! 今それを考えて……あれはっ!」

 

「伊御と御庭さんだ!」

 

後がない状態でも言い争いを止めない二人。しかしそんな彼らが廊下の角を曲がった時、遠くの下駄箱の前を歩く"よく知る"男女が見えた。この一年で仲良くなった音無 伊御と御庭 つみきだ。

 

雄二はその二人を見た瞬間、かつて神童と謳われていた頭脳をフル回転させる。勉学に対しては錆びていようとも、ことそれ以外の事に関しては、その冴えは全く衰えてはいない。そして雄二は今を打開する策を導き出す。その間僅か数秒。

 

「…………よしっ、あれならっ!」

 

「雄二! プランはっ!?」

 

「Cだっ! バカなお前でも覚えているなっ!?」

 

「当たり前だろ! 生死に関わってるんだから僕だって覚えるよっ!!」

 

「ならいいっ! おい伊御、御庭っ!!」

 

「……? あれは明久と雄二か?」

 

「……後ろに西村先生を連れてるわね」

 

その声に振り向く二人。しかしそのときには目の前を通りすぎようとする悪友たちがいた。雄二は去り際に叫ぶ。

 

「伊御っ! プランCで頼むっ!!」

 

「……プラン?」

 

雄二の言葉に疑問を浮かべるつみきを他所に、「頼んだぞおぉぉ……」とエコーをかけながら雄二は明久と走り去り、2階へと鉄人と共に消えていった。

 

 

 

 

 

「……はぁ、全く」

 

「また何かやらかしたようね」

 

「みたいだな。あの様子だと、このあとの勉強会には顔を出すんだろうけど……」

 

「……伊御、プランCって?」

 

「ん? ああ、後で教えてあげるよつみき。今はとりあえず……」

 

伊御はポケットから携帯を取り出し、そして……。

 

「ミッション・スタートだ」

 

幼馴染みの番号を画面に表示させた。

 

□1階廊下□

 

あれから一進一退の攻防(2階から跳んだり、窓から校舎に入ったり、掃除用具をばら蒔いたり)を繰り返しながら、鉄人との距離をなんとか離した明久と雄二。しかし、鉄人はまだ二人を視界に捉えていた。

 

「雄二、鉄人まだ僕らを追ってくるよっ!」

 

「やっぱあれぐらいで撒けるほど甘くはないか。……走れ明久! 伊御がやってくれたならこの辺りで……っ!」

 

「おーい、お二人さーーん!」

 

「こっちじゃよー!」

 

「やったっ! 伊御がやってくれたみたいだよ!!」

 

「よしっ!」

 

廊下を爆走する二人の前に現れたのは、先程の二人と同様、そこそこの付き合いになる戌井 榊と片瀬 真宵だった。

 

「"あの人"なら保健室辺りだ! さっき怪我した奴を連れてってたぜ! こっから右に行きゃあ"近道"出来る!!」

 

「ああん!? そっちは確か……っ! なるほど、分かった!!」

 

「ヘイGuys! 受けとるにゃぁ!」

 

明久たちが二人の前を走り抜く瞬間に、真宵が雄二に小袋を投げ渡す。

 

「どうしても捕まりそうになったら、中のものを先生の足元に叩き付けるんじゃよー!」

 

雄二は少し困惑しながらも、ポケットへ仕舞う。そして雄二と明久はT字路を右へ走っていった。

 

「お前たちっ! 何を企んでおるかぁ!!」

 

目の前でのやり取りが何を意味するのかは知らないが、明らかに追っている二人に有利になりそうなことをしている榊と真宵を少し遠くから声をあげて怒鳴る。

 

「そんな先生、俺たち何も企んでなんていませんよ♪」

 

「そうじゃよん。ただの通りすがりじゃよっ♪」

 

「「ねー♪♪」」

 

「……くっ!」

 

絶対に何かあるのだが、二人は別に何か悪さをしたわけではない。そのため、鉄人は見逃さざるを得なかった。それに、早くしないと戦犯の者たちを見失ってしまう。そして鉄人も榊と真宵を置いて、T字路を右に曲がった。…………口角をつり上げながら。

 

「……ふん、バカめ。そちらは"行き止まり"だ!」

 

 

 

 

 

「───とか思ってるんだろーなぁ、鉄人は」

 

「ふぇっふぇっふぇ。甘いんじゃよ」

 

廊下で取り残された二人は、悪い悪い顔をしていた。

 

□1階倉庫前□

 

さて、この場所のことを話しておこう。この場所は倉庫へと続く扉があり、その倉庫は校舎と校舎の間に位置している。そのため、突っ切ることができれば、今いる場所から明久たちは最短で次の校舎にある目的地へとたどり着けるのだ。

 

倉庫の扉が両方とも開いていたら、だが。

 

その倉庫は貴重品等もあり、生徒がイタズラをしないよう、職員室で鍵を保管してある。そのため、そこは普段は通り抜けることが出来ない。

 

……そう、"普段なら"。

 

 

 

 

 

「あれっ!? 雄二、こっちって確か」

 

「いいから走れっ!!」

 

「ふははは! バカどもめ、袋のネズミだっ!!」

 

追いかけっこが続くなか、鉄人はこちらの勝利を半ば確信していた。

あとは奴等をとっちめた後、ここまで手こずらせたことを含めて、どのように料理してやろうかと思いを馳せる。

 

そうして、三人は行き止まりである倉庫へと差し掛かる。鉄人は少し速度を緩め、絶対に逃がさぬようにと体勢を整えようとして……。

 

 

 

…ガラガラガラ

 

「んしょっと。これでいいんでしょうか?」

 

 

 

「っ!? なにぃーーーーっ!!!?」

 

普段なら開かない倉庫の扉が、内側から開け放たれた。……一人の女生徒によって。その女生徒の名前は春野 姫。これまたこれまた明久たちの友人の一人である。

 

「ナイスだ! 春野っ!!」

 

「ありがとう、春野さん!!」

 

「え? …ふええぇぇぇぇぇっ!?」

 

扉を開けた瞬間に、"何故か"感謝の言葉を述べられながら自分目掛けて走ってくる知人たち。それに驚いた姫は、驚きの声をあげながら二人に道を反射的に譲り、さらに腰が抜けそうになった。

 

その二人は"開け放たれている"向こう側の扉からそのまま駆け抜けていった。呆然としながら二人を見送った姫。だが、そんな姫に追い討ちがかかる。

 

「まぁぁぁてぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

「ふええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!」

 

それは、尋常ではない速さと形相で自分の目の前を風と共に走り抜ける鉄人であった。

その出来事に、今度こそ姫は腰を抜かしてへたりこんだのだった。

 

 

 

 

 

かなり差を広げられてしまったため、全速力で走る鉄人。彼は、春野姫を責めることをしなかった。何故なら、彼は春野姫という人物の人柄を少なからず知っているためだ。……そう、鉄人は悟っていた。

 

春野姫は、なにも知らずに利用されただけなのだと。

 

 

 

 

 

「あうぅぅ…。い、一体何だったのでしょうかぁ?」

 

未だにぺたんと床にお尻をつけている姫。そこに榊と真宵がやって来た。

 

「おー姫、大丈夫……って大丈夫じゃ無さそうだな」

 

「姫っちぃ? 大丈夫かにゃ?」

 

「は、はひぃ。な、なんとか……」

 

「立てるか、姫?」

 

へたりこんでいる姫に手を貸す榊。姫はそれを借りてなんとか立ち上がった。

 

「んんんっとぉ。あ、ありがとうございます、榊君」

 

「んーいや、悪いの完全にこっちだし、礼はいいよ」

 

「ふえ? なんのことです?」

 

「えっと、それはじゃねぇ……」

 

□1階保健室前□

 

姫のアシストにより鉄人を巻いた悪童たちは、現在保健室前で鉄人を待ち構えていた。明久は少し屈み、ノックの姿勢で待機。雄二は保健室の周りが静かなのを利用し、耳を済ませてタイミングを計る。それからすぐに……。

 

……どどどドドドっ

 

ターゲットはやって来た。雄二は明久に視線をやり、それに明久は頷いき、扉をノックした。

 

「すみません! 1年の吉井です。坂本くんが足を怪我したんですが、誰か居ませんか!」

 

『あら、吉井くん? 坂本くんが怪我したんですの? 少し待ってくださるかしら』

 

中から聞こえる声に明久と雄二は頷き、先程からこちらに向かってくるダッシュ音と怒声とは反対方向へと静かに走り去った。

 

ドドドドドドドドドッ!!

 

…ガラガラガラ

 

 

 

そして、策は成る。

 

 

 

「こちらかぁっ!!」

 

「きゃあああああっ!!?」

 

「なっ!? 桜川先生っ!!?」

 

保健室から出てきたのはこの学園に勤める女教師……桜川キクヱであった。とても優しく温厚な女性で、怒っても、逆に怒られている側が和んでしまうほどである。しかし、この人……。

 

「び、ビックリしましたの……。……西村先生っ! 教師である貴方が、保健室の周りを声を荒げながら走り回るとは何事ですのっ!」

 

「い、いや…それは……」

 

鉄人に対しては、究極兵器と化す。

 

「私は、吉井と坂本がまた悪さをしていたので、奴らを捕まえようと……」

 

「そんなことはここを走っていい理由にはなりませんの! ……西村先生がいつも生徒のために頑張られているのは知っています。しかし、だからといって他のことを蔑ろにしていいというわけではありませんのっ!」

 

「む、むう。お、仰る通りですな」

 

「そもそも! 追いかけることが可笑しいではないですか! 例え生徒が何かイタズラをして逃げたとしても、追いかけるのではなく、呼び出しなどをして叱ることは出来ますの!」

 

「……仰る、通りで」

 

「私たちは生徒の模範となるべき教師ですの! そのあなたが! 率先して大声で校内を走るのはどうなのですか!?」

 

「…………誠に、申し訳なく」

 

「全く! 西村先生は前々から……っ!」

 

「………………」

 

……それからしばらく、保健室前では鉄人が大きい体を縮こませて、自身よりも遥かに小さいキクヱ先生に叱られ続けていた。

 

□下駄箱前□

 

鬼の追っ手を逃れた明久と雄二は、教室で鞄を取りに戻ったあと、少し駆け足で帰宅しようとしていた。

 

「まったく、お前のせいで無駄に疲れちまったじゃねぇか。このバカの代名詞が」

 

「それはこっちの台詞だよ。この歩くワイセツ物が」

 

「「…………ッ!」」(メンチの切りあい)

 

「……ほんと、あいも変わらずだにゃーお二人さんは」

 

「ナッハッハ。ケンカをするほどなんとやらってやつですな」

 

「お、お二人ともっ。ケンカはダメですよぉ」

 

今にも殴り合いになりそうな二人の前に、先程逃亡をサポートした三人が同じく鞄を持ってやって来た。

 

「あっ、みんな! さっきはありがとう。お陰で捕まらずにすんだよ」

 

「ああ、助かった」

 

「なんのなんの。こっちはこっちで楽しかったしな」

 

「その通りじゃよ」

 

「わ、私は楽しくなんてなかったですぅ。榊さんも真宵さんもヒドイですよぉ」

 

「「メンゴメンゴ~♪」」

 

「も~…」

 

姫は榊と真宵にうまく利用されたことに、頬を可愛らしく膨らませている。

 

榊と真宵はまず、机の替えを探すために鍵を借りてきてほしいと姫に頼む。そのとき、扉を両方開けといてほしいとも頼まれて、よくわからないが姫は何も疑うことなく承諾した。姫の人柄は教師陣もよく知っており、職員室へ倉庫の鍵を借りに来た姫に快く貸してくれたという訳だ。

 

「……あ、やっと来た」

 

「みんな遅いわよ」

 

「ゴメンね御庭さん。伊御もありがとう。……僕らを見捨てないでくれて」

 

「まあ、電話するだけだったからな」

 

雄二が伊御に頼んだプランとは、『鉄人をキクヱ先生と鉢合わせるために動け』という内容である。

 

それはAからFまであり、それはそれぞれ集めた情報を提供してくれる場所を示している。Cは1階廊下だったということだ。あとは仲間たちの無駄なハイスペックさで各々サポートしてくれ、というわけだ。

 

……これ以上プランに内容を加えると、約1名頭がオーバーヒートを起こすため、内容は単純にしている。因みに、このプランを共有しているのは明久と雄二、伊御、榊、真宵、あとはここにいない腐れ縁の二人である。

 

「……それで? 今回は何をしたんだ?」

 

「……没収物の回収を」

 

「…………助けなきゃよかったかな」

 

「こ、今度何か奢るから次も何卒ぉぉ」

 

「いや、俺はそこまで鬼ではないよ」

 

明久の食事事情を知っている伊御は断ろうとするが、それに助けてもらったもう一人である雄二が賛同する。

 

「いいじゃねぇか。今度俺と明久で飯を奢らせてくれよ。もちろんお前らもな」

 

「やりぃっ!」

 

「ヤッタにゃあっ!」

 

「え、えと……。いいんでしょうか?」

 

「ああ。遠慮するな」

 

「「ごちになりまーすっ!」」

 

「じゃあ、頼もうかな」

 

「ん」

 

「ありがとうございます、お二人とも」

 

「う、うんっ! 任せてよっ!! …………だ、大丈夫。朝と昼を水で過ごせば…」

 

「……それは大丈夫ではないわよ」

 

本当に死にそうな顔でブツブツと呟く明久に、聞こえていたつみきが突っ込んだ。そんな風にガヤガヤと賑やかに一同は靴を履きかえて玄関を出る。このあとは次のテストのため、榊の姉が経営する『ハチポチ』で勉強会を行う予定である。

 

そうして一同が校門に差し掛かったとき、雄二がふと思い出し、ポケットにしまっていたものを取り出した。

 

「なあ、そういえば片瀬。"これ"、なんなんだよ?」

 

「にゃ? ……おおっ! それはじゃねぇ…」

 

それは真宵が投げ渡した小袋であった。真宵はそれを見て、雄二に説明をしようとしたとき。

 

…ぉぉどどドドドドドドっ!!

 

「きぃぃさぁぁまぁぁらぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

「「……なん、だとっ!?」」

 

キクヱ先生に捕まっていた鉄人が不死鳥のごとく復活し、正面玄関からこちらに向けて爆走していた。その顔は神をも殺さんとするかのような形相であった。

 

「ど、どどどどどうするのさ雄二っ!!?」

 

「くそっ、予定よりも解放されるのが10分早ぇっ! 逃げるぞ、お前らっ!!」

 

「ノンノン♪ ちょうどいいんじゃよ!」

 

追ってくる鉄人見て、逃げようとする二人を呼び止める真宵、それに雄二が怒鳴る。

 

「おい片瀬っ! 今はふざけてるときじゃっ!」

 

「いいからいいから、その袋の中身を先生の足元に投げるんじゃよっ!」

 

「……ああっ?」

 

「早く早く♪」

 

「……ちっ!」

 

明久と雄二の前に立ち、投げるように急かす真宵。真宵はこんなでも女の子であるため、あまり強くは出れない雄二は、本当に…本当に仕方なく言う通りにすることにした。雄二は袋の中身を取り出し、こちらにあと10メートルまで近づいてきた鉄人の足元目掛けてぶん投げた。

 

「おっらぁっ!」

 

…ビュンッ!

 

投げられた物体は一直線に鉄人の足元に向かい、そして……。

 

 

 

…べっちゃあぁっ

 

「ぬおあぁっ!!?」

 

 

 

「「「「「…………えっ?」」」」」

 

「ニョホホホホッ! 成功じゃよっ♪」

 

驚き、絶句する一同とその中でより響く奇っ怪な笑い声。鉄人の足元に着弾した物体は一瞬で弾け、地面と鉄人の足を中心に何かの液体が広がった。……それは、ただの液体ではなかった。

 

「くっ!? な、なんだこ……っ!!? う、動かんっ!」

 

鉄人はそれを無視して足を動かそうとしたとき、自身の足がまったくとして動かないことに気付く。いや……動いてはいるのだが、動かした反動で足が元に戻ってしまう。その原因であろう液体は、すぐに粘着性の高いものとなっていたのだ。結果、鉄人はその場から離れられなくなってしまったのだった。

 

「……おい、片瀬」

 

「おほんっ。あれは私が開発したネバネバ君6号じゃよっ!」

 

「何てもの作ってるのよ、あなた」

 

「イヤーここまで来るのに苦労したんじゃよ」

 

正気に戻った雄二が尋ねると、嬉々として話す真宵。呆れた声はつみきだ。

 

「……っ雄二! 今だよっ!」

 

「……なんか釈然としないが、まあいい。行くぞ、お前ら!」

 

「あ、おい待て貴様らっ!? く、そ…っ! このぉっ!!」

 

雄二の声に、笑い声とため息、戸惑いをそれぞれ浮かべながら校門をくぐっていく。それを黙って見過ごすわけにはいかず、何とかして抜け出そうと鉄人はもがくも、足はいっこうに抜ける気配がなかった。

そんな鉄人に、最後尾にいた真宵が声をかけた。

 

「あ、先生っ! それは30分で固まって脆くなるから、それまで頑張ってにゃん♪」

 

「ま、待てっ!! 片瀬ぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 

 

 

 

それから30分後、無事抜け出せた鉄人……西村先生。その夜は、普段飲まない酒を飲んでいたと言う。

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

「…ふぅっ、笑った笑った!」

 

「真宵さん、いいんですか? あんなことして?」

 

「私はあれを作っただけじゃよ。使ったのは雄二さんじゃ!」

 

「おいテメェっ! だからわざわざ俺に投げさせたのかっ!?」

 

「ふぇっふぇっふぇ」

 

「はっ、バカだね雄二は! かつての神童が聞いて呆れるよ!」

 

「なんだとっ!?」

 

「もう! ケンカはダメですぅぅっ」

 

校門を出た後、伊御とつみきを先頭に騒がしく歩いていく。

 

「煩いわね」

 

「でも、悪くないだろ。つみき?」

 

「……ぷい」

 

「……クス」

 

…なでこなでこ

 

「……(てれり////)」

 

「「「「「ニヤニヤニヨニヨ」」」」」

 

「…………っ!!?」

 

伊御に頭を撫でられてほにゃんっとなっている間に、いつの間にか騒ぎをやめて顔をニヤニヤニヨニヨさせている仲間たち。

 

「……フッカァァァァーーっ!!////」

 

「「「わーーっ!」」」

 

つみきは猫のように伊御以外の全員を小さい体を使って威嚇したのだった。

 

 

こうして、この物語の幕は上がった。




如何でしたか?

とうとう始めてしまった第2作目。また1作目の投稿が遅れてしまうっ!?
しかし、こちらもあちらも連載してみせましょう!

では(^-^)/
感想や意見など、心よりお待ちしております。
これから応援よろしくお願いします!!!

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