――――ハルシオン大陸南方、軍事国家ミルマーナの最南端
「モフリー、もう少し右の方を頼むよ。」
緑の海面すらすり抜ける赤道の
「チチチ」
幼さの残る少年の呼び掛けに
その
「コリャー、ヘモジー!何をサボっとるんじゃ!しかっと働かんか!」
「……へもー?」
飛ばされる
「ダメだよ、チョンガラ。ヘモジー、さっきまでたくさん鉄板を伸ばしてくれてたんだから少しは休ませてあげなきゃ。」
「アホかい。そんなんじゃからそこいらの同族に
「…そんな、ボクシングじゃないんだから。」
「………へもー」
桃色の小人は
そうして始まった猿と猿のケンカを、
「ハハハ、まぁイイじゃないですか。それだけ船長はヘモジーへの愛情が強いんですよ。」
「そうかなぁ。……そうかもしれないけど、なんだか落ち着かないよ。」
「ポコさんは人が良いですからね。」
「……チョピン、もしかしてボクのこと、からかってるの?」
口を開けば
「まさか。素直に
「……やっぱりからかってるよね。チョピンまでそんなになっちゃうなんて。…やっぱりチョンガラたちの影響なんだろうなぁ。」
少年は、小人と同じようにボサボサの頭を掻き、同じように溜め息を吐いた。
「ポコさん。こうやって皮肉を言ったり言われたすることも愛情表現の一つですよ。」
「……そう言われると悪い気分はしないけど。」
少年の、
この
男たちが
「次の作戦が決まった。会議室に来られよ。」
僧は、伝言を終えると少しの寄り道も許さずに
袈裟から
しかしその肉体には、おおよそ法を
しかし、彼の歩みはその一切を感じさせない。
その一歩、一歩が痛みに
「
まるで、傷を負った身体もまた彼の
脱ぐことを許されない
彼の身に付けた教えの中に、
彼の法は常に
「……もぅ行かなきゃいけないんだね。」
甘い
「もうしばらくの
「戦争」と「勝利」から逃げてきた少年は、それがどんなものか想像がつかない。
「まずは私たちがそう信じなければなりません。」
信じることも
けれども――――、
「私たちはアーク・エダ・リコルヌの折れない
信じられる未来はなくとも、信じられる友人がいた。
「……うん、そうだね。」
誰一人として見捨てることのない
「ありがとう、チョピン。」
彼にも
彼にも唯一、
――――
「俺たちの
オオルリ色の
「ほう、そりゃまた何で。ワシらは今までずっとアンデルの足取りを追っておったんじゃないのか?」
青年の言葉に、いの一番に喰いついたのは
安全の
「レジスタンスからの情報で、奴らの“兵力増強”を担当しているのがガルアーノだと分かったんだ。」
「例の“
キメラ。人の体に『化け物』を
「そうだ。そこを
「一種の
その
激化した戦争の最前線に配置し、
まるで、「殺すために産んだ」と言わんばかりに。
産んでは殺し、産んでは殺し……。それはまるで何かの
「それもあるが、奴らの放ったキメラが世界
産まれたキメラたちには、彼らの『囁き』を聞く耳が植え付けられている。キメラたちは彼らの『囁き』に
「人の姿をしていた」という
「上の人間は動かない」、「自分たちでなんとかするしかない」。
身近に
そうなってしまえば『善』も『悪』も関係ない。そうなってしまえば『人』も『化け物』も関係ない。
彼らの上に立った人間の言葉が世界の全てになる。
白鯨に身を隠す彼らを世界が「悪」と決めたように。
それでもオオルリの青年は
世界の嘘に捕まり、羽をもがれてしまわないように。
彼女と重ねた温もりにこそ、剣を
「
青年は「
「犠牲者」は、被害から
それは、
二人の間には
けれども、だからこそ彼の法への理解を
国や命がそうであるように、法や
だからこそ、
だからこそ、彼は口にする言葉に
「
「トッシュの言うように、今後の的を
「で、その施設とやらは
「分かっているものでアルディア、フォーレス、ロマリアの3つだ。」
並んだ名前の中に
「フォーレス……となると、『魔女伝説』が狙いかの?」
「なんだチョンガラ、知ってるのか?」
経済大国アルディコ連邦、世界最大の軍事国家ロマリア。この二か国には施設を
「
「…魔女って、何か特別な人なの?」
人一倍
「そうじゃのう。……言われてみれば確かに恐ろしい女じゃな。」
「
「まあ、ワシも
楽士の性格をよく知る元商人は、たわわなアゴ
――――今から百年、あるいは千年も昔の話、まだフォーレスという国が生まれるよりも前の話。
雪山に囲まれたホルンという村に
娘は村の畑に豊作をもたらし、村人や家畜に
彼女を
じゃが、彼女の
その後も、神の力と言ってもいい
そうなると次に起こる
町の人間は
理由?そんなものありはせん。ただ、恐ろしいからそうするのよ。
お前さんも、体の
……そうして
その時の、彼女を取り巻いた光景こそ、『ホルンの魔女』を『伝説』足らしめた
空を埋め尽くすは竜と
大地を埋め尽くすは
彼女はその中心に立っておった。
白き
しかして我に返った彼女が辺りを見渡してみれば、そこは
……当時、娘は春もろくに知らぬ
初めて目にする「死」は天へと差し伸べられた無数の手足、舌と歯を引き抜かれた無数の生首。
そこに、生き残った町の人間など一人としておらん。だのに彼女の耳には聞こえたそうじゃ。
「
町の人間の声が。
「――――恐ろしくなった彼女は深い、深い
会議室に響く自分の声に満足げな商人がいる一方で、まんまと彼の
お決まりの茶番に付き合った青年は「十分だろう」とばかりに、彼の話から浮かんだ疑問点を問いただした。
「それは、お前の使う
一年前、彼がまだ
「ぜーんぜん
「な、なんだい……」
昔話の
「その魔女は死んだ村人や町の人間までも『魔物』に変えてしもうたらしいわい。文字通り、魔法のようにな。」
「人を魔物に?本当か?」
楽士の悲鳴ではなく青年の
「じゃから“伝説”じゃと言うとるじゃろうが。じゃが――――、」
「火の無いところに煙は立たない、か。」
「そういうことじゃな。……ただ、伝説だ、迷信だと言われとるが、
「……そうだといいなあ。」
楽士の表情が面白いように食い付いてくる様に商人はまたアゴ髭をガシガシと掻いてはクツクツと
その後、その地を
『ホルンの魔女』
その名は彼らにとって
年に一度行われる「魔女狩り
それが、フォーレスという国だった。
※節足(せっそく)
正しくは関節肢(かんせつし)。クチクラという硬い物質で覆われた足、複数の節(関節、つぎ目)が連結することで構成された足のこと。
要は昆虫の足のことです。
「節足動物」という言葉の由来になっていますが、「節足」単独での用語は正式にはありません。
※茅葺き(かやぶき)
茅(かや)は、イネ科植物のススキやチガヤの総称。葺く(ふく)とは、瓦などで屋根を覆うこと。
よく「茅葺き屋根」という言葉を耳にすると思います。それです。
※清廉(せいれん)
私利私欲がなく、心が澄んでいる様子。「清廉潔白(せいれんけっぱく)」とか言いますよね。
※オオルリ
瑠璃色の羽を持つスズメ目の鳥です。
高木の上で
※キメラ
臓器移植などのよそから持ってきて、ただくっつけたものとはまた別物。
(斉藤さんの細胞の中に、斉藤さんになるための情報を持った遺伝子と高橋さんになるための情報を持つ遺伝子が混じってる状態。)
※受胎告知(じゅたいこくち)
天使ガブリエルが処女マリアにキリストを身ごもったことを知らせるお告げのことです。
※土地々々(とちとち)
本来なら、「土地土地」もしくは「土地とち」と書くべきなのかもしれませんが……、何となくです(笑)
※鍬(くわ)
ピッチフォーク(熊手)もまた農具の一つです。
ピッチフォークは、そのまんま大きな「フォーク状」の農具です。
刈り取った麦や干し草を掻き集めたり投げたりします。また古くヨーロッパでは、剣や銃など高価な武器を買うことができない一般市民の数少ない武器の一つだったそうです。
※霊峰(れいほう)
信仰の対象となるような神聖視される山。神仏などが
※チョンガラの召喚獣
原作をプレイされた方ならご存知かもしれませんが、「シルバーノア」の船長こと「チョンガラ」は元々手持ちのモンスターを使って戦う「召喚術師?」のようなキャラクターでした。
そこで登場する召喚獣が
ケラック、モフリー、ヘモジー、オドン、ライジン、フウジン
です。原作では上記の名前は「種族名」のような扱いになっていますが、このお話では「固有名詞」にしたいと思います。さらに彼ら以外のケラックやモフリーは今まで通り「3匹の悪戯妖精」、「白いサソリ」のような名前で呼びたいと思います。
・種族名で呼んでる姿にアークたちとの一体感を感じない。
・他の同族(特にヘモジー)と区別つけにくい。
なんかの理由が主です。初めは、それぞれに恒例のモブ臭のする名前をつけようかと思ったんですが、それだと読み手側に違和感がある気がして没にしました。
ただ、ケラックに関してだけは3匹一個体という特殊な設定なので、やむなくそれぞれに名前を付けたいと思います。
(ケラックは小さな妖精が3匹集まった状態で一つのキャラクターとして扱われているんです。)
ちなみに名付け親はもちろんチョンガラですので、雰囲気を出してアラビア語でくくってあります。(ちょっと悔しいので、それ以外も載せています。使いませんが)
ケラックA:アギフ(宝石)
ケラックB:アクラム(高貴)
ケラックC:アシュラフ(気高い)
モフリー:マフディ(導き手)
ヘモジー:サラーム(平和)
オドン:タフル(粘土)
ライジン:シャムス(太陽)
フウジン:カマル(月)
どうっすか?親近感、湧かないっしょ?(笑)
それでもカッコいいと思ってしまうのは病気なので許してくださいm(__)m
※シルバーノアを修理中の召喚獣たち
モフリーはカブトガニに白い
そんな子が船の上を(トゲトゲの足で)歩けば逆に傷付けるように思いますが、そこは彼最大の特徴である特殊能力「床造り」を足先に発生させることでこれを回避しています。
また、ヘモジーのことを「小人」と書いていますが、それは妖精のような小人ではなく、ドワーフ程度(身長150㎝辺り)の小人だと思ってください。
※ホルンの魔女、マザークレア(ちょいネタバレ)
原作のフォーレスMAPの「マザークレアの洞窟」という所にはマザークレアというおばあさんが住んでいます。
彼女をこの魔女伝説のヒロインにしたいと思います。
ネット上でようやく見つけた彼女の設定らしきものでは、彼女は「元々ホルン民ではない」というような記述がありました。
ですが、この話ではホルンの民にしたいと思います。
ちなみに、「村人や町の人間を魔物に変えた」という