とりあえず
これで何度目になるだろう。同じようなことがある
それに、来月渡す
……そう。
ここに
5年間付き合ってきて、一度だってそれを演技だと見破った試しがない。グウの音まで
「ダマされた」と気付いた時にはもう後の祭りで、その時はそういう「
もしも、「とことんやれって言ったのはビビガの方じゃねえか」などと
今回は思わぬ助け舟があった分、
もしかすると、身内相手に
それは、シュウとは違った意味で俺の独立に役立っているんだろう……多分。
「やっと落ち着いて話ができそうだな。」
「……ああ、みっともないとこ見せちまったな。」
「気にすることじゃない。どこの家も似たような
言われても、俺にはヴィルマーのオッサンとリアが
「さて、本題だが――――」
立ち上がりポンコツに近付くと、オッサンはポンコツの頭を
「さっきも言ったが、コレがお前の大ケガと引き換えに復活した古代兵器、ヂークベックだ。」
何度言われても信じられないものがこの世にはあるんだと俺は初めて知った。
「っつってもよ、遺跡にあったヤツはもっとタッパがあっただろ?」
俺の記憶が確かなら、掘り出した時、その兵器は俺よりも頭一つ二つデカかった。でも、目の前のドラム缶は逆に頭一つ二つは小さい。
「いくらオッサンに
「ワしノどコニ問題ガあるトいうノだ?」
そのマヌケな
問題だらけだ。
「お前の言いたいことはよく分かるが、それはワシに言われても困る。」
「は?」
「
苦労に見合わない「結果」に不満を
「お前が”心臓”と言っとった赤いガラス玉。アレを調べとったら突然動きだしおってな。後はコイツの言われるままに動いただけよ。」
そういうや遺跡からコイツを運び出そうとした時も同じようなことがあったな。
「だが、お前の不満ももっともと言えばもっともだ。」
「当たり前だろ?だってよ、まず原型がねえじゃねえか。
「当然と言えば当然。仕方がないと言えば仕方のない話だがな。」
老いぼれ、とりわけ
「回りくどいのは無しにしろよ。結局、出来損ないなんだろ?コイツ。」
「コりゃ、誰ニ向かっテソンな口ヲ
オンボロな見た目に反して、ピョンピョンと
商品だったら即日返品してクレームを入れるレベルだ。
「エルク、それはちょっと言い過ぎなんじゃない?」
「ソウじャそウジャ。」
……そもそも「機械」に
ポンコツの
「いやいや、リーザ。
「だから、どういうことなんだよ。いい
そもそも俺たちにとっちゃあ、これは本題でもなんでもない。むしろ、どうだってイイ話だ。
それなのに、チンタラ話しをされた日にはイライラして仕方がねえ。
「コりゃ、ワシを無視するな!わシは……ワしは……………誰ジゃ?」
そこまでイっちまったら「返品」を通り越して「
だってのに、
「……この通りだ。どうやらデータの記憶部分に
なんて言ってるけど、今、コイツ、その名前すら出てこなかったんじゃないか?
「自身の設計データも曖昧でな。つまり、
”心臓”から、装備していた火器、ボディ
どうしてそれだけのシステムが2m
「だからってコレはないだぜ。子どもの工作じゃあるまいし。」
分からないものを
「ワシもそれは言ったさ。だが、それだけ急ぐ必要があるのだと本人が言うのだ。オールドマンに発注した部品が届くのも待たずに作業せざる
よく見るとポンコツの腹の部分には「ロマリア再生品協会」とかいう所で造られたらしい
「さっきも言った通り、元々装備していた火器は使ってない。今はこの
「そんなんで兵器として役に立つのかよ?」
「当然に決マッとるじゃろウが!」
ガシャガシャと動かしまくる木の枝みたいな手足なんか、俺だったらものの数秒で解体できる。
「本人はそう言っとるよ。さらに言えば、その”心臓”とやらもどうやら不完全な状態らしい。」
「…は?」
嫌な予感がする。
「完全な状態にするには”心臓の
「……いや、いやいや、何言ってんだよ。これ以上の面倒事はゴメンだぜ。こっちだって人形遊びをしてるほど暇じゃないって分かってんだろ?」
当然の
「それこそオールドマンたちに任せればいいだろ?元々そういう役どころなんだからよ。」
レジデント・オールドマン。どっかの国の―――おそらくはロマリアの―――
強大な兵力を保有するロマリアに対抗する手段として、古代兵器の復活を任された男。
そして、ヴィルマー・ヴィルト・コルトフスキーに家族を
「あの二人は……、ヂークの部品を届けた後、姿を消しおった。」
「消えた?」
あんなに兵器の復活をオッサンに
「殺されてはおらんと思うが、少なくともあの島での用は済んだということだろう。」
起動しさえすれば「目的」は達成されるって確信しての組織の判断か?……それとも、お
「それで、俺かよ。」
何で俺なんだよ。
「これはヂークベック本人の希望でもあり、リアの願いでもある。ワシらの恩人なら父や母の
「……憶えてんのか?」
あの晩、黒服に撃たれた後、てっきり気を
「ああ。ただ、気持ちの整理ができてなかっただけのようだ。
……何のために、俺は
全部、忘れてて欲しかったんだ。
それでも、「大人」になっちまったお前は――――
「あの
オッサンの悲鳴や俺の軽はずみな行動が、リアの命を危険に
「それでも
呪ってるんだ。自分の存在が俺やオッサンにとって「
「……
その、逃げ場を
あの晩、リアに銃を突き付けた暗殺者のように。
「お前にも
俺だってオッサンやリアの助けになるならそうしてやりてぇよ。
だけど、「できないこと」は引き受けられねぇよ。
第一、元が兵器だっつっても、こんなポンコツじゃあどんなに頑張ったって黒服一人道連れにするのも無理だろ?
それとも何か?”心臓”が
バカげてるぜ。
「オッサン、
「……いや、そうだな。確かに、何もかもお前の言う通りだ。」
オッサンのしかめっ
「ククク、冷静に考えれば分かりそうなものを。どうしてだかワシも、コイツならできると思い違いをしてしまっていたらしい。……無理を言って悪かったな。」
気まずい
こんな時こそ
「……どうしてダメなの?」
ポンコツと
「なんでって、見りゃあ分かんだろ?そんなの足手まといだろ。」
「見た目が気になるの?」
……ああ、なんだかこっちも嫌な予感がしてきた。
「
「そんなの、私たちだって同じじゃない。」
「あ?どこがよ。」
そこまで言われればもう、だいたい彼女の言いたいことが理解できた。
それでも
「エルクは初めて私を見た時、怪物と戦えると思った?今なら、自分のこと全部理解してると思う?」
それは
「……リーザはできると思ってんのかよ。ソイツに。」
「もちろん。…それに、何も殺し合うだけが戦いじゃない。そうでしょ、シュウ?」
呼び掛けられた彼は目を
だけど運悪く彼女に『聞かれてしまっていた』。
「お前、何ができる。」
「あホカ。ワシにでキんことなンカあるか。ワシは最強じゃかラナ。」
「……」
……だからどうか頼む。考え直してくれ。
「おそらくだが、高度なハッキングが可能なはずだ。」
諦めたはずのオッサンがここぞとばかりに余計な横槍を入れ始めた。
「全てを調べたわけじゃないが、コイツはヒエンの
オッサンの断定的な意見が彼の
「なら迷うこともないだろう。」
「シュウ、本気かよ。」
「修復の件はさておき、それだけの能力があるなら運転手やヒエンの番には
「いや、でもよ……」
「エルク、俺たちは
言ってることは分かる。確かにそうかもしれねえけど。
俺にはコイツが色んな所から
「本当のことを言えば、俺はお前とリーザにその役をやらせようと思っていた。
これから俺たちがしようとしていることの内容が内容なだけに、彼の意見はいつになく厳しい。
「だが、これはお前の案件だ。判断はお前に任せる。」
そうして彼はまた俺たちから少し距離をとり、目を瞑った。
「……」
「そんなに嫌?」
段々、意固地になってる自分が自分でも嫌になってきた。
シュウやリーザが言うことはもっともだし、俺がコイツを全て理解しているかと言えばそうじゃない。
加えて「ロボット」だ。命の心配をしなくていい分、他の誰かを
分かってるはずなのに。
なんか、嫌なんだ。嫌な予感がするんだ。
「……エルク、大丈夫。きっと何もかも
「
……多分、「楽をさせてやる」と言いたいんだろうけど……。
いいや、そんなんだから嫌なんだ。だけど――――、
「分かったよ。」
「……よかった。」
そう言って笑ってくれる彼女の笑顔は、ここまで答えを渋った俺の
「心配するな。すぐにワシのありがたみが分かるじゃろ。」
この一言さえなけりゃ、本当に何もかも上手くいくと信じ切れるのに……。
「一応聞いておくけどよ、その"心臓の欠片"ってのは
「残念だが、そういうものが存在するということ以外は何も分かっとらん。
……一個じゃねえのか。
「フザケテるな。」
仮に、その”欠片”が遺跡で見つけたガラス玉以下の大きさだったらもう絶望的だな。世界中の川で砂金
「なンじャナンじゃ、お
……この先ずっとコイツの相手をしなきゃいけないと思うと……。
「そんなお前の
「……でもよ、部品交換なんか諸々の経費はこっち持ちなんだろ?」
「……まあ、そういうことだな。」
「オッサン、そりゃあ完全に赤字だぜ。」
「そういうな。なんたらとハサミは使いよういうだろう。」
とうとうオッサンまで認めちまいやがった。俺の周りにはどうしてこう厄介な「
オッサンがそう言うともう、案山子以外の何ものでもないように思えてきた。
「そん時は俺も農家に転職しなきゃいけねえな。」
「おい小僧、なんじゃさっきから。ワシの何が気に入らんのだ?!」
「……全部。」
※戯けた(ふざけた)
当て字です。
※ベンダー(vendor)
売り手。納入元。販売会社。etc.
※完全修理(オーバーホール)
機械製品を部品単位にまで分解し、清掃等の点検作業を行った後、再度組み立て、新品の状態に近づける作業のこと。
※愚痴いた(ぼやいた)
当て字です。
※呪いの解けたカエル
グリム童話「カエルの王子様」のことです。王女様のキスで人間に戻った王子様は喜びのあまり、その場でカエルのようにピョンピョンと跳ね回ったそうです。
※ヂークベックの登場シーン
今回、地味に初登場の彼ですが、実はもう一つカッコいい登場シーンを考えていました。
モンスターに苦戦しているエルクたちの前にヒエンに乗ったヂークが
でも、彼のキャラクター的に「頼りになる存在」よりも「押し付けられたガラクタ」みたいな感じが大切だなと思い、今回のような形にしました。
ただの裏話ですが(笑)
※機神?「ヂークベック」
やってしまいましたね。ええ、ワタクシ、やってしまいましたとも。
動画や資料を読み返していたところ、「機神」という言葉は「神のように高性能なロボット」というようなニュアンスではありませんでした。
単に、ヂークの生まれた時代に製造された戦闘ロボットたちの総称らしいです。
……でも、それはそれ。私は私(笑)。
この物語において「機神」は超超超ハイパーテクノロジーを備えた高性能ロボットを指す言葉ということにします。m(__)m
※ヂークおまけ
ネットで公開されていたアークザラッドのファンクラブ会報によると、
ヂークの腹部にあるプレートは「ヴィルマー博士がヂークの新しい身体を作るために使ったボイラーの品質保証表示のプレートがそのまんま付いてるだけ」。
足にある謎の文字は「ヴィルマー博士が部品の左右を間違えないように描いたマーク」らしいです。
原作でのヴィルマーさんはなんとも
僕もファンクラブに入りたかった↓↓