――――それは、ギロチンのように真っ直ぐに俺の首を目掛けて振り下ろされた。
俺が男に冷や汗をかかされたのは、その一振りだけだ。
男はユラユラと
「テメエの助けなんざ、もう必要ない。」
俺は振り下ろされる
言葉を添えられたそれが、俺の「有罪」を不動にしている気がしたからだ。たとえ受けたとしても、
事実、ホームレスの右腕が振り下ろされると同時に、俺が
リーザやパンディットは当然のように男の一撃を
おそらく『知っている』んだ。あの女が俺たちの邪魔をしていた理由を。
だからこそ迷っているんだ。この戦いに参加すべきかどうか。
ホームレスは俺よりも
一目見て、彼女を
「なかなか、
分からない。思い出せない。それでも俺は、男の言葉に
「ミリル、ミリルとうるせえ奴だぜ。そういうテメエも、その子を助けられなかった
「……!?」
そうして
すると俺の読み通り、今度は
そうして様子を見た結果、どうやら男の『力』にそれ以上のレパートリーはないらしい。
「逃げ回るしか
言わずもがな、最後の『ソレ』が男の切り札に違いない。
それは右腕を使わない分、
そうなれば次の右腕に喰われるのは
考えている間にも、数億
『力』の影響なのか。鈍い
さらに、一撃一撃の『力』は一定時間
「なかなか熱いじゃねえか。だけどその程度じゃあ俺は燃やせねえぜ。」
何度か『炎』を使って応戦してはみたものの、男の『力』が邪魔をしているのか、上手く狙いをつけられない。威力も落ちて
決定的な一撃を与えることもできず、防戦一方の時間が続いた。
「……テメエ、何を今さら
『力』の内容はともかく、コイツ自身の『力』は大したことない。男の言う通り、ゴリ押しすれば押しきることはできた。
「これじゃあ町で女を
でも、何かが違う。
「……知ってるか?死ぬ直前に見せる女のグチャグチャに
……それでも、この見え見えの挑発が男の罠を
「バラバラになっていく女の血と肉。あの
耳につく
一人、二人、三人……。
無防備な彼女たちが男の右手で
そして、ホームレスはその
「金髪は特にイイ。見てるだけで金持ちになった気分になる。一度ヤッたら
「黙ってろ!」
分かってる。
ただの挑発だってことは。
俺がそうしたように、コイツも彼女をダシにして俺を
分かっていても胸が
「何なら俺が手伝ってやろうか?」
「!?」
――――どうしようもなく俺を
「殺してやる!!」
「ヤッてみろ!!」
燭台が
『見えない刃』がこれを打ち払い、炎の少年に飛び掛かる。
ところが、少年の研ぎ澄まされた感覚は難なく致命傷を
振り下ろした右腕に重心を取られたホームレスは
少年はホームレスを壁に
少年はその勢いを利用してホームレスの顔を
体勢を崩したホームレスに
少年が自分の間合いから出たことを確認すると、ホームレスは
「ゲハハハッ!これだ、これを待ってたんだよ。こうなる瞬間をな!夢にまで!」
「夢なら地獄で見な!このシャブ中野郎が!」
槍を失った少年は左手に片手剣、右手に投げナイフを持ち、ホームレスの『右腕』を躱しながら確実に間合いを
しかし、あと一歩、というところまで詰め寄ると、落下するシャンデリアが少年を襲った。
「……バッドエンドだ、エルク。」
少年は振り下ろされる右腕を剣と『炎』でいなし、
「グハッ!ゲホッ……クククッ……。」
内臓が傷つき
「どうだ、オモシレェだろ?気持ちイイだろ?……そうだ、そうなんだよ。そうでなきゃ困るんだよ。」
男に
一方、ホームレスの右肩は『力』を
それでも男の右腕は
「いいぜ……、いいぜ。俺もテメエを殺してやるよ。」
………殺してどうなる?
男と同じ気持ちに
この男はここで殺しておかなきゃまた、無関係の人間を殺すだろう。だけど、殺せばイイのか?それで解決することなのか?
問題の
「どこ見てやがる。テメエの相手はこっちだろうがよ!!」
だがそれはもう、遅過ぎた気付き。男の傷は深く、遅かれ早かれ男は死ぬ。少年が手を
「……クソッ。」
男の『右腕』はその威力を
――――ここでアンタは死ぬんだよ
今なら歌姫の言葉を理解することができた。
この男では少年を殺すことなどできない。初めから。その
「どうした、殺せ。殺せよ!俺はテメエの金髪をバラバラにするぜ?あの女に『俺』という化け物を植え付けてやる!」
「……クソッ!」
「エルクゥゥゥッ!!」
彼女は完全に不意を突かれていた。乱れた『心』が飼い犬を呼び戻せなかった。
「リーザッ!」
ギロチンが、少年と少女の『運命』を
――――しかし、『炎』がそれを許さなかった。
例え、男がこの世にたった一人しかいない何かであったとしても、彼女の笑顔には遠く
全ては一瞬。
「……チ、クショウ」
スラムの
自分の弱さと、
ゴミのように――――
※素早っこい(すばしっこい)=当て字です。正式な漢字表記はないみたいです。