リアッ!
おぉ、リアッ、リアッ!!
目を覚ました老兵は、
「エルク、リーザ
ヴィルマー家の
「言っとくけど俺は何もしてねえからな」その言葉を切り口に、オッサンと
けれど、オッサンは
「後でお医者様に
リアに付いた汚れはリーザが
「明日中にその
「何から何まで、ありがとう。」
「まあ、ここまで
「ついでに遺跡の正体も
「――――お前たち。」
ところが、
その声と目はとても、俺たちに「礼がしたい」というような色ではなかった。
これはまだまだ
「……どうしたよ、オッサン。感謝の言葉なら、もう腹一杯だぜ?」
おそらくオッサンは俺たちと無関係ではない。もしかしたら、あの金髪の女の子に大きく関わっているのかもしれない。
それでも俺は、オッサンにはできれば
だからこそ、何とか
「大陸に帰りたいんだろう?一体、
「は?オッサンが俺たちを送ってくれるってのか?」
「そう、聞こえんかったか?」
リアに泣き付く姿を見るまでは、もっと
「けど、イイのかよ。オッサン、リアを置いて島を離れられんのかよ。」
「そんなことは今、お前の気にすることじゃないだろう。帰りたいのか?帰りたくないのか?どっちなんだ。」
どうにか逸らかそうとする俺にオッサンは次第に
俺もオッサンの真意が分からないほど、
「もちろん帰れるもんなら、今すぐにでも帰りてえよ。ただよ――――、」
チラリと視線を送ると、彼女は何も言わず
「ただ、なんだ。」
今この瞬間にも、恩人を危険な目に
だけど俺にだって、我を通したい、
「何つーか、賞金稼ぎとしてっつーか……、とにかく意地みたいなもんがあんだよ。」
「……何が言いたいのか知らんが、
口ではそう言うが、それでもなんとなく俺の言いたいことを
でも、どんなに
「言ってるだろ?これは俺の
オッサンは顔中の皺を
「いい加減にしろ。ワシはそんなに
「だったらイイよ。後は俺たちでなんとかするさ。世話んなったな、オッサン。……あ、この本とマスクだけはまだ借りてるぜ。」
「……勝手にしろ。」
大男にも礼を言い、リーザを連れてヴィルマー家を後にする。オッサンはリアの傍から一歩も離れなかった。俺はそれでイイと思った。
「……ハカセ、エルク、行ってしまいましたよ。」
「分かっとる。」
――――最愛の孫だけが、この世に残った唯一
ところが今、安らかに眠るこの子を見ていても、ワシの胸に掛かった
「賞金稼ぎだかなんだか知らんが、子ども二人の力で本気でこの島を無事に出られると思っとるのか?」
肺に
数分前まではこの子の
今は、そうでない。
「ハカセ、まだ、間に合いますよ。」
大男の言葉が胸をチクリと
「結果」のない問題に答えを出すことができない自分の
「お前はいつからそんな余計なことをいうような男になったんだ。」
自分を想う身内に八つ当たりをすることでしか、この煩わしさを
今、こうしてこの子を見下ろすワシは、果たして戦っているのだろうか。それとも、逃げ回っているのだろうか。
単純明快なはずの難解な問題が、ワシの身体をそこに
「少し、
村の入り口に差し掛かったところで、彼女は
「……まあな。」
彼女の言う通りだ。
「リアと
けれどそれはやっぱり俺のワガママだ。それというのも、目の前の彼女があまりに
でも、俺には彼女だけで十分だ。オッサンがリアの傍を
「しょうがねえんじゃねえの?あのオッサンも色々苦労してんだろうよ。わざわざ傷口を広げるようなこともできねえだろ?」
「……私はまだ、
「なんでそんな楽しそうなんだよ。変な奴だな。」
「そう見える?」
「ああ。まるで他人の色恋にオモシロ半分な悪友みたいだぜ。」
森に入ると、
「……フフフ。そうかもね。」
身体を押し付けて甘えてくる狼を
「……まあ、いいけどよ。」
狼の毛皮に付いていた森の葉っぱや土汚れがキレイに落ちていた。
村での話を聞いた時にはもう少し苦戦させられる相手かとも思ったが、実際に戦った二人の様子を見ている限り、「どうにかなるレベル」という印象に変わった。
するとつい、リーザがどうやって
「もう少しだけ待ってくれる?」
そんな、自分の『力』に
「大丈夫、私も戦うから。」
俺も彼女も
今朝の彼女の顔を思い浮かべる。その彼女が俺に掛けてくれた言葉も。
「俺の好きなようにしてイイんだろ?だったら、その通りにさせてくれよ。」
「……足手まといにはならないから。」
「そうだな。俺も、
「……うん、そうする。」
中の環境にもよるが、おそらく遺跡の中で俺の『炎』は危なくて使える
さすがに「死に神」や「幽霊」なんかが出てきたらお手上げだが、それ以外だったら俺たちだけで何とか対応できなくもない。
もう一つ、気になることがあった。
「ところでよ、なんでリーザは遺跡に向かってたんだ?」
「え?」
また顔色が沈んでいたから、おそらくは俺の心を読んで自分の『力』をどう説明すれば俺に怖がられないかとかしょうもないことで悩んでたんだ。
「なんでそんなことを言うの?」とでも言いたげな顔をするが、無視して質問を続けた。
「いや、だから、どうして一人で遺跡にいこうなんて無茶をしたんだって聞いてんだよ。」
「え?えーっと。
確かにそんな素振りは見せた。でも、それはほんの些細な違和感……というか、直感というか。そんな
「本当に、それだけか?」
「え?そうだけど。……どうしたの?」
具体的に、何を聞き出そうか考えてなかった。でも、彼女を遺跡に惹き付ける「何か」が気になったんだ。俺の覚えた違和感の答えがそこにあるように思えたから。
「多分、エルクが感じてるようなことは私には無かったわ。私はただ単に役に立てればと思っただけなの。」
「……そっか。ならイイんだけどよ。」
そうこうしている内に「気配」は俺たちの侵入に、俺たちはその「気配」が殺気立っていることに気付けるまでの距離に
「……もうそんなに近くまで来てたんだな。」
土と木々ばかりが埋め尽くしていた視界に、加工された
やがて、森に
ところが、その階段の先からやってくる無数の
その
「昔々におっ
すると、俺が冗談を言う隣で、彼女は
「エルク……、何かすごい速さで近付いてくる。」
それは警告と同時。
ソイツはまさに、全くの無音で真っ直ぐに俺目掛けて突っ込んできた。
森の影を上手く利用してきたソレの姿をハッキリと目で
突っ込んできたスピード上乗せした俺の一撃はソレを地面に叩き付け、
「一体なんだったの?」
金髪の野鹿が困惑する中、俺は無言でソイツに近付いた。
「コレは――――、」
ソレが何かを確認しようとしたその瞬間、またも目の届かない場所から間接的な攻撃が俺を襲う。
平衡感覚の
重なる奇声は頭痛と
だが、俺の心は少しも乱れない。
高い金と引き換えに受けてきた仕事と比べりゃ――――野鹿が俺の前に現れたあの夜に比べれば――――、こんなのはまだまだ序の口の方だ。
飛び掛かってきた無数の
「……エルクって、本当にスゴイ人なのね。」
襲われる
「『炎』の異名は
ちょっとした
「吸血コウモリか。まあ、それも予想はしてたけどな。」
通称、「吸血鬼」。その名の通り、生き物の血をエサにするコウモリだ。以前、雷野郎が
さらに、即効性の毒を使ってくるので、
「コイツは本命じゃねえな。」
吸血鬼は遺跡の「何か」とは無関係だ。なぜなら、吸血鬼を
それは
「それにしても――――、」
遺跡を間近にして、ふと背後を見遣る。そこには金物の音を響かせる煙がモクモクと上がっていた。
「ザルじゃんかよ。」
定期的に
となるとやっぱり「関所」は単なる名目だな。確信……というか、当然の答えに妙な
「それで、どうするの?このまま進んじゃう?」
石段の
さらに見上げると、太陽は既に頂点を通り過ぎ、大洋に
「ここで何か起こしても太陽が沈んじゃ
少し早過ぎる
俺の
「死臭が強過ぎて奥に何がいるかまでは分からないけれど、少なくともあの死体は20人以上いるみたい。」
「……だろうな。」
オッサンの日誌には地下1階までの記録しかないみたいだが、この臭いはもっと深い、それこそ肺が
すると、引き返そうとする俺たちを
おそらく、リアもこうやって奴らに狙われたに違いない。そうなると、帰るまでにでも
けど、
「それが、エルクの気になってる『何か』と関係するの?」
「……そう、なのかもな。」
日はまだまだ高い。それなのに、追ってくる腐臭のせいなのか。森の中には誰のものでもない
※墓守=ゲーム中の「マミィ」のことです。
※無音の狩人=ゲーム中の「ジャイアントバット」のことです。
※死に神=文字通り「死に神」でーす。
※幽霊=「レイス」や「スペクター」なんかのファントム系です。
※吸血コウモリ=ゲーム中の「ヴァンパイアバット」のことです。
本文中でもあるように「ジャイアントバット」との決定的な違いは、大きさです。「ジャイアント」が2mを超える巨体であるのに対して、「ヴァンパイア」は6㎝程度と小型です。(ゾウとネズミぐらいの違いだと思ってもらえれば分かりやすいと思います)
ちなみに、世の中にはオオコウモリなる2m超えの巨大なコウモリがいるそうですが、あれは翼を広げた状態。右翼から左翼までの大きさの話です。「ジャ」は頭の天辺から足の先までの話です。「ジャ」の翼長ともなると、4mは超えると思います。なんたって巨大(ジャイアント)ですから!
※下男(げなん)=「しもおとこ」とも読みます。雇われて雑用をする男性。下働きをする男性。
この言葉自体に差別的な意味合いはありませんが、時と場合によっては差別用語ととられることもあるので気を付けてください。
※内向的=内気なさま。自分本位なさま。興味関心などの欲求が自分に向いているさま。……要は他人のために何かしようと中々思えない性格のことです。
※突っけんどん=態度や言葉遣いが刺々しい、乱暴なさま。愛想のないさま。
※得心(とくしん)=納得すること。
※悶着(ひともんちゃく)=もめ事。問題事。好ましくない出来事。
※お風呂
ゲーム内のヤゴス島では村に一件しか入浴施設がありませんでしたが(しかもその風呂にはボウフラとか浮いてたりする(笑))、さすがに都会出身の博士宅に風呂がないというのもオカシイと思うので、本作品では博士宅にも風呂がある設定でいこうと思います。
ちなみに、風呂持ちの家主は独身です。僕も風呂はありますが独り身ですyeah!!
(●ノ∀`●)σHAAAHAッHAッHAッHAッHAA!!
※喚起の悪い空間での火気は危険
「火」は酸素を使って燃えますから、まず「窒息」の可能性があります。その他にも「一酸化炭素中毒」がありますし、可燃性のガスが充満しているような場所であれば「大爆発」してしまう危険もあります。
「火」は開けた空間で。風向きを考え、注意して使いましょう!!