「用が済んだのならサッサと失せろ。」
赤の獣は、裁判長が
しかし、獣に挑発された
「まあ待て。お前にはまだ聞いておきたいことがある。」
返事を聞いた獣はウンザリという顔を隠さなかった。
「いい
スメリアの王、マローヌ・デ・スメリアという人物の
それは、アルド大陸の
そして「王の暗殺」という形で
であるにも
「
「……欲しければくれてやる。」
獣は
「ただし、
「
貴人は
「もっとも、誰よりも近くに
畜生に負けず
「……それは忠告のつもりか?だとしたなら遅かったな。既に、アレはワシの周りに何重にも毒を
獣は愚者の続く言葉を予測し、先手を打つ。しかし、それでも彼の
「バカを言うな。儂が貴様に助言をくれてやる訳がないだろう。…だがしかし……、そうだな。」
貴人は
「貴様の下と
彼らは、巨大な組織における
そんな中で、№2という立場は「組織」から一歩身を引いた視点から物を見ることができる。また、振る舞いによっては下の者にもそういう印象を与えることができる。
それを利用すれば、
つまり、腹心という存在こそが「組織」の真の導き手であり、彼らの行動原理こそが主人の生き死にを左右していると言ってもいい。
「賭け?」
唐突に持ち掛けられた娯楽から獣は、キナ臭さばかりを感じていた。
「火遊びはキサマの趣味ではないだろう。」
貴人は
そんな人物から出たそんな言葉は、
「
その様を望んでいた貴人は、あからさまに顔に表し、
「違いない。ならば、儂らのこの
「……勝手にしろ。」
しかし、
「だがな、遊びとて
目の前の天敵ならいざ知らず、「たかが一つの『命』ごときが
「当然だ。そうでなければ
すると、獣はその
「『気に病む』?キサマ、いつからそんな
羆の
「儂も
「それでも、命一つ持たぬ肉の塊にしては上出来という話よ。」
それは
「……いいだろう。しかしその賭け、どう成立させるつもりだ。」
「何、特別なことをする必要はない。奴が儂と貴様、どちらを先に殺すかだ。」
畜生に合わせるように、貴人の口から光を寄せ付けない
「『
「つまり、『脅威』こそ最大の『師』ということか。」
黒と赤が混ざると、そこはまさに地獄の鬼たちが
「……キサマの提案にしては珍しく中々の興を
無限ともいえる生死で手を染めた二匹は立ち上がり、成立の握手を
そして、それが離れると同時に貴人は
「……そうだ。」
ところが扉を
「危うくもう一つの本題を忘れるところだった。」
「なんだ。
「ヤグンはもうじき死ぬ。」
前置きもなく触れた本題に獣は赤を持つ手をピクリと震わせ、ジロリと紫黒を見上げた。しかし、その先を
ここに至るまでに愚者が
「なにせ奴は頭が弱い。死体の
四将軍の一人を、死に神はそう言い捨てた。
「アレはアレで扱いやすい『
彼が「
ならば
「ああいう手合いは必要な時にあればそれで構わん。なければ造るまでよ。そのための貴様の任務ではないか。違うか?」
死に神の、
彼が
そこまで聞き届けると
「賭けが
彼らはあくまで、秘書の手で消されなければならない。彼以外の手で消されてはならない。
そして、一発勝負での
「安心しろ。儂の見立てではおそらく、猿の次は貴様だ。」
「……フン、勇者を使った前座か。儂も
置手紙を読み終えると、今度こそ大臣は市長の視界から消えていった。
そうして一人残った彼は、笑っていた。
彼の中で蠢く血が、飲み干された濃紅を浴びて上げる新たな
彼が『勇者』や『炎』に持ちかけた
複雑になっていく『運命』に筋道を立て、完璧な
※木槌(ガベル)=裁判長が判定を告げた後に叩くハンマーのことです。このハンマーが鳴らない限り、裁判長の宣告は効果を発揮しないらしいです。ちなみに、ガベルの受け台は「サウンディングブロック」と言うらしいでよ。
※リビドー(libido)=ラテン語で「強い欲望」を意味します。精神分析用語で「先天的に備わる全ての衝動のエネルギー源」みたいな意味を持ちます。性的衝動ともとられたりしますが、その辺の難しい話は割愛します。
※マローヌ・デ・スメリア
スメリアの前王。「マローヌ」の部分だけ公式設定です。
※ちねる=北海道の方言で「つねる」の意味のようです。テレビの影響が強いんでしょうが、行ったこともない他県の方言が無意識に出てしまうのはなんか笑えました(笑)
※反旗(はんき)=主君に対して、反逆の意を示す旗のこと。通常、「反旗を翻(ひるがえ)す」という慣用句で使われることが多いですね。
※遊興(ゆうきょう)=面白おかしく遊ぶこと。多くの場合、得るもののない、手元に何も残らない遊び。特に、酒や色物(エッチ)を指す。
※抱腹絶倒=大爆笑。お腹を抱えて笑うこと。
※濃紅(こきくれない)=赤の一種です。「こいくれない」とも「こきべに」とも言います。
また、濃紅銀鉱(のうこうぎんこう)という銀を含む硫化鉱物もあるようです。「ルビーシルバー」などとも呼ばれており、深い赤の発色の表面に金属光沢があり、とてもキレイです。
※御首級(みしるし)=戦国時代において、相手武将の首を検証した後に恩賞を与えられたそうです。その時、その首をもって、どこの誰であるかを
※産神(うぶがみ)=産婦さんと新生児を守護する神さま。
言葉と本人のイメージがズレてると自覚してますが、「死に神」の対義語的なものがこれしか思いつかなかったので取り敢えずで使いました。
※爛(ただ)れる=炎症などのために皮膚や肉が破れ、崩れること。また、物事に
※hide and seek(ハイド アンド シーク)=「かくれんぼ」のことです。
※「人間」という言葉の使いどころ
今までもそうだったんですが、ガルアーノたちの地の文を書く上で、全てに「貴人」や「獣」を使うと違和感のある文章になってしまうので、
「それが彼という人間だった」など、「人間」である方が自然に読めそうな所には敢えて「人間」を使っています。
意図的に「人間」を使っている場面では
ちなみに、今回の話でガルアーノとアンデルに使っている比喩、代名詞の法則ですが、
ガルアーノが主語(ガルアーノ発信の言動)になる場合、ガルアーノを「獣」、アンデルを「愚者」に。
アンデルが主語になる場合、アンデルを「貴人」、ガルアーノを「畜生」と表記している
その他は気分と話の雰囲気で何となく使ってます(^_^;)
※「言い訳」
思い付いたことがあればなるべく試そうと思っているので、多少読みにくいかもしれませんが、「少しずつ成長してるんだな」と温かい目で見守ってやってくださいm(__)m
ひとまず、たった二人にいくつ代名詞使ってんだってね(笑)……だって同じの使ってると書いてて飽きるんです。
m(__)mm(__)mm(__)m