ユドは、思った以上に歴史の浅い村のようだった。
村人たちは、村から少し離れた
村長でさえ、いつ頃からそこにあって、何のために守っているのかも分からないのだと言う。
「
それは、一個の生きた『集落』としては逆に
それに、遺跡には化け物が
実際に、「遺跡、危険。近付いたら良くないこと、起きる。」という
島を出入りする方法をほとんどの人間が把握していないのも、よくよく考えればオカシナことだ。
村にはナイフや窓ガラスがあっても、その資源を
そう
外への関心はあるのに、何年も、何十年も、その道を確立しようとしない。それには何か理由があるのか?
もしかしたら、これこそがこの村の
だが、今の俺たちにはまだ、そのキナ臭い部分に立ち入るための取っ掛かりがない。
それでも、用心ぐらいはしておいた方がイイだろう。
リアの
「リアもよく分からない。」
外から来た
「ここにはどうやって来たんだ?」
「……リアがここに来た時はまだ小さかったから、あんまり
進んでこの
愛らしい
「気にすんなよ。いざとなったら、俺は泳いででも帰れるからよ。」
「……お姉ちゃんも?」
「あ……」
振り返ると、リーザは
「えーっとだな。……姉ちゃんは俺が
「本当?」
「バカにすんなよ。そんなの、俺にかかればお茶の子さいさいだぜ?」
すると、嘘と気付いているのかいないのか分からないが、リアはパッと顔を明るくさせた。
「それに、今日はありがとな。たくさん島のこと教えてくれてよ。」
「ううん。リアはお兄ちゃんたちの役に立てたらそれでイイの。」
こういう無駄に
そんな光景が、ふと頭を
だが、今日一日、発言が
「大丈夫。それはないみたい。」
「……何か、分かったのか?」
「それは――――、」
すると彼女はまた、黙った。
「どうしたの?」
確かに、少女の笑顔は自然だ。村人との接し方にも不自然なところはなかった。
それなのに俺は、島の脱出方法を考える
「いいや、なんでもねえよ。早く帰って飯にしようぜ。俺はもう、腹ペコなんだぜ?」
「うん、早く帰ろう!」
女の子の笑顔は
「勝手に
家に帰り着くなり、初老の男が俺たちに向かって
「おじいちゃん、違うの。リアがお兄ちゃんたちと遊ぼうって言ったの。」
「リア……、それがコイツらの手口だ。あんまり、外の連中を簡単に信用してはいかん。」
この初老の姿を見て、俺は思い出したくもない男を思い出した。
もちろん、ソイツとコイツとの間には決定的に違う部分があることにも、俺は気付けていた。
だからこそ、俺は
「おい、オッサン。」
気付けば俺は、自分から
「オッサンの事情は知らねえし、知りたくもねえけどよ。ちょっと自分のこと棚に上げ過ぎなんじゃねえか?」
「なんだと?」
「連れ回されたくなきゃ、子どもの
俺は、言いたいことは
リアを思えば
だがオッサンは俺たちを
「命の恩人に向かって礼の一言もない
「そ、それはそれだろうがよ!」
俺の反論を聞く
「そこにあるものは好きに食って
それ以上は、話が
オッサンの言う通り。
確かに俺も、
「……どうするの、エルク?」
「どうすっかな。」
俺は、しっかりと
「おじいさんに、
「……」
どうしてだか、そうしなきゃならないことを無意識に頭の外に追い出していた。きっとまだ、俺の帰りを待ってるかもしれない
けれど、何をするにしても、恩人にケジメくらいはつけておかないと、後で
リーザはそれに気付かせてくれた。
「それもそうだよな。」
食べかけのリンゴを丸ごと口の中に放り込み、俺は階下にあるらしい二人の部屋へと向かった。
しかし、と言うよりも当然と言うべきか。
階下に広がるダンスホール大の部屋には、使い道の分からない機材や
そして、この部屋の
「なんじゃ、お前ら。誘拐の次は不法侵入か?近頃の
変わらずのケンカ腰だ。リーザが
「そんなんじゃねえよ。ただ――――、」
見渡せば、部屋の奥ではリアがすでに眠っている。
俺は思わず、それから目を
「ただ、なんじゃ。
「だからっ!」
「エルクっ。」
……また、傷口を
「――――助けてくれた礼が言いたかっただけだよ。」
オッサンは俺を
「…………じゃあ、それだけだからよ。」
言いたいことは言ったんだ。ぶり返す苛立ちをなんとか
すると、本のページを
「……じゃが、儂も若い頃はそんなんじゃったよ。」
振り返るとオッサンは、眠っている孫の顔を
「明日もリアと遊んでやってくれ。泊まっていくのなら、それくらいは当然じゃろう。」
「……ああ。」
オッサンが何の研究をしているか分からない。
だが、あの機材と棚に並んだ本のタイトルを見る限り、村の活性化なんて
そして、研究熱心なソイツが、本当にリアを愛していることも。
「……エルク、どうするの?」
「……さあ、どうすっかな。」
窓から
※整地=畑仕事や建設のために地ならしをすること。
お話の中のユドは、道が無駄に入り組んでいたり、岩や木の根が延び放題になっていたりと、『村』の活用に不適切な状態なんだという意味合いの認識でお願いします。
※お茶の子さいさい=「お茶の子」はお茶に添えられた茶菓子、お茶請けを指すそうです。
「さいさい」は
※口火を切る=周囲に先がかけて物事の切っ掛けをつくること。
※「かたわら」と「そば」=今はほぼ、「傍」の字を
調べてはいますが、あまり納得のいくようなものがなく、感覚で使っています。
なので間違いがあるかもしれませんが、勘弁してください。m(__)m