アパートでの用事を済ませ、改めて外に出ると、町の
仕事のあるもの、ないもの関係なく、大きな祭りの熱気に当てられてあっちをウロウロ、こっちをウロウロしている。
一歩引いて見下ろしたその光景は、
「よう、エルク。オメエは見に行かねえのか?」
これに
「俺が一度でも美術館や博物館なんかに行ったことがあるかよ。」
「
「おいおい、
「ハハハッ。そりゃ
チラホラとロマリア軍の姿が見える。プロディアスには『警察機構』という組織がある代わりに、表立った『軍事組織』はない。だから余計に奴らの姿が目立つ。
「それに、俺はこれから仕事なんだよ。」
「
「まぁ、そんなところさ。」
「テメエも大変だな。帰ったら一杯付き合えよ。」
「割り勘ならな。」
その後も何度か知り合いと挨拶を交わした。2日前に帰ってきたのが嘘のようだった。
「ゴメンね。パンディット、もう少しだけ
リーザは俺の
プロディアスは眠らない。人通りのある所にはほとんど
本人はやる気満々だったが、
「安全にこの町を出るまでの辛抱」そんな理由でパンディットは袋詰めにされていた。……まったく、化け物には住み
「エルクは今日、シャンテさんと会った時のこと、憶えてる?」
「……何が言いてぇんだ?」
できることなら思い出したくもないことだが、どうやら今回の件を無事に乗り切るためにはそうも言ってられないらしい。
「シャンテさん、コップを割って手を怪我したよね?」
「?……あぁ。」
怒りに任せ、女自身が握り潰したグラスは確かに女の手を深く切った。だが、それだけだ。女が襲い掛かってきた訳でもなければ、『関係者』が口封じへと行動を移した訳でもない。
店を出た後、店員の間でざわついていたくらいで、
「気づいた?」
女が去った後、リーザが俺に
「あの短時間で回復……いいや。」
話は『
『
『
混乱の
なのに、あの場で周囲に
そもそも、女が魔法を使ったことにすら気づかなかった。
「私も最後まで気づけなかったの。だから……、もしかしたらあの人、もう人間じゃないのかもしれない。」
おそらくリーザは『
奴らは頭を撃たれても、胸を切り裂かれても、たちどころに『再生』してしまう。
それは『力』や『魔法』の類いではなく、一種の『呪い』のようなもので、自発的に発動する。契約の際に交わした特定の条件を満たさなければ、もしくは術者の『
だがこれも、傷口を
そもそも、死体や
『不死者』を生み出す魔法も、必ず一度は対象を死に至らしめてしまう。命ある者は『不死』にはなれない。成功した話なんて風の
それに、『奴ら』に見られるもう一つの共通点は『思考の停止』。奴らは
その点で言えば、あの女は確実にシロだ。
伝説では、
けれども、そういった『存在』でないと断定もできない。
それはあの女に『力』で
俺はあの女よりも
あれは、『不死』という『最強の盾』があったからじゃないのか?もともと、そちら側の『存在』だったからなんじゃないか?
……いいや、待て。これもまたあの女お得意の
すると、すぐにリーザはそれを否定した。
「ごめんなさい、エルク。私の早とちりだわ。だって、あの人は生きてるし、私たちを
……そうか。死者に『声』は
アイツは二度と俺たちの前に現れないと言っていたが、どこまで信用できるかも分からない。
それに、敵はあの女一人じゃない。もしもここぞという場面でまた、あの女が立ち塞がったら?あの女相手にどこまで足止めできる?
まず何が通じるんだ?……グラスで手が切れた。だが、女の顔に苦痛の色はなかった。あの様子だと急所を攻める手も大した効果は期待できない。
……ダメだ。足止めを考えるより、俺たちの足を速くする方が確実だ。となると、やはり問題は『退路』に戻る訳か。
「そういえばリーザ。あの女の『声』、聞こえるようになったのか?」
リーザは首を横に振った。
「ごめんなさい。本当にボンヤリとしか分からないの。でも、間違いなく『声』は聞こえたわ。」
リーザは間違っていない。リーザの『力』はあの女も認めていたし、
考えれば考える程にあの女の『正体』が分からなくなっちまう。だが、『敵』という事実がある以上、見極めない訳にもいかない。頭の中では疑問が疑問を生み、他に回すべき
それこそがあの女の
「……エルクは眠らないの?」
パンディットがいれば奴らの気配を見逃すことはまずないだろう。だが、こんな日に限って『悪夢』に捕まらないとも限らない。
肝心な時に目覚めることができなくて奇襲を許してしまったら、『傍観』に行動を制限した意味がなくなる。
それに、今はもう俺たちの捜索も打ち切られているようだが、
何より、俺自身が色んなことにビビっていた。
「大丈夫。
窓に小粒の雨が幾筋も走っていた。
それでも眠らない町の活気は
すみません。『日』よりも『陽』の方が「太陽っぽい」という理由で、今のいままで誤用していたようです。
太陽そのものは『日』で、日の光が差すところを『陽』と書くそうです。今後、気をつけます。……でも、やっぱり『陽』の方が……f(^ー^;