牙を
リザベラはエナートに手を引かれて歩いていた。
「……リーザ、大丈夫か?」
虎と向かい合うリーザは
……などと考えている自分が憎らしかった。本来なら俺がそうあるべきなのに。俺は
「エルク……、私……、全部、私の
そのせいで、『
リーザは、女の「他人の心を分かっちゃいない」という言葉を
「リーザ、そんなこと言ってたら俺たち『能力者』は全員身動きとれなくなるぜ。」
今さら『
結局、俺は自分の本音をどう伝えればよいものか、分からない。この『想い』を
すると
「……そうなのかも、しれない。でも……。」
俺は、『力』のせいで自分を悪夢へと追い込んでしまうリーザを変えてやりたいんだ。
「どうやら俺と
リーザは
「だから……、泣くなよ。」
俺は彼女を抱きしめた。
震えてなんかいない。しっかりと二本の足で立っている。でも、今の『野鹿』には支えが必要だ。それは俺自身が
「……ありがとう」そう返してきた声に『英雄』の
今はこんなことしかできない。
―――、もっと、もっと強くならなきゃならない。
「ごめんね。時間がある訳でもないのに。」
そうだった。結局のところ、こちらからシュウと接触する方法がないままなのだ。
「まぁ、シュウの方は俺たちの動きを把握してるみたいだし、必要な時は向こうから出てきてくれるだろうよ。」
つまり、『この場』は俺一人でなんとか乗り切るべきだと彼は言っているのだ。
……あくまであの女の言葉を信じるのならの話だが、
「とりあえず、今度は退路の確保だな。」
一般的な、確かな根拠はないが、こっちからアプローチして接触できないことの方が不自然過ぎた。シュウに限って、何の
これだけあれば、
2日間、町の様子を見て回った限りでは、
すると、その規模は市民の100分の1を越える確率が高い。……約3万人。
そうなると、俺たちが
ただでさえ相手の手の内にある
飛行船や
『木を隠すなら森の中』なんて甘っちょろい手段も二流の連中にしか通じない。今回は、
もしもあの女のような、周囲の変化に
気づかずに誘導されて人混みがきれたところで狙撃されて終わりだろう。
だからこそ、組織を相手にする時は確実な『逃げ道』というのは不可欠になる。……それが
「
リーザは素直に驚いていた。
「失敗したら簡単に死んじまうような仕事だからな。」
「でもね、エルク。何か一つ忘れてない?」
「何か?」
リーザの
飯は……済ませた。この後必要になりそうなものも、用意し終えた。……何だ?今日、何か買い物の約束でもしたっけか?
「……パンディット。どうする?先に帰っててもらう?」
「あぁ……。」
リーザに
パンディットは、「指示を出すまで人目に付かないように俺たちの後を付いて来い」の命令通り、
「……すまねえ。そうだったな。悪いけど、先に帰っててもらえるか?イイ肉買って帰るからよ。」
あの女の気配は感じられないし、『関係者』たちも女を追いかけるように姿を消した。
それに、勝手知ったる土地と住民。
「じゃあ、そう伝えておくわ。」
リーザはクスクスと笑うばかりで、何かサインらしいサインを出す訳でもない。それでも、アイツにはシッカリと伝わっているらしく、周囲の目を盗んでさっさと帰っていった。
『まったく、頼りになる奴だ』などと感心していると、隣で同じように見送っていたリーザの顔がニヤケていた。
言葉で馬鹿にしてくる奴は沢山いたし、慣れていた。でも、
「まったく、リーザも
「そう?本当は好きなのに素直になれないエルクの方が私は
いいや、そういう意味じゃないんだけどな。
結局、残り半日をかけて行き着いた答えは、式典会場に
リーザやパンディットを連れて監視の目から
今から現場に行って、退路を確保するとなるとかなりの危険を
広場は
こうなった
忍び込むにしても身を隠すものが少なく、俺やパンディットじゃあ像まで辿り着けるかどうかも怪しい。
「野生かどうか、見分けがつくの?」
「スライムは基本、町の下水に住み着くけどよ、原因もなしにあの数は『意図的』だと思って間違いないねぇよ。」
スライムは基本的に無色透明で
駆け出しの時にギルドから押し付けられただけだが、下水掃除の達人としての経験は、結構色んな場面で役に立つものだ。
そういう意味で言えば、『
だから俺個人的には、シュウに頼んで女神像に爆弾でも仕掛けてもらえればベストだと思っているのだが、俺が持ってる情報をシュウが持っていない
本当に女神像が危険なものなら、俺がわざわざ頼まなくてもシュウがとっくに
それでも、『もしも』という時は、『プロディアス』さえも見捨てなきゃならなくなるかもしれない。それくらいの覚悟が必要なのだと思っていた。
でも……、そんな
頼りになるのかならないのかハッキリしない、自称『
だったら俺は、『リーザを護る』という本来の目的さえ忘れなければ、まず足を引っ張ることはない。そのための『
「皆、明日を楽しみにしてるのね。」
ホテルの窓から見下ろすと、町は
コイツらは何も知らないんだ。祭りの主役が
「どうだかな。ただ騒ぐのが好きな連中だからよ。その
「『助ける』より『助け合う』。もしも本気で奴らと渡り合うつもりなら、『足手まとい』か『仲間』か。早目に気持ちを切り替えておくんだな。」
一度、
うるさく聞いてくる
「テメエはどうなんだよ。俺の『足手まとい』か?それとも、『仲間』なのか?」
割り切れない俺は苦し
でも、――事情を全部把握した上で、――安い
「
また……、俺の後ろでリーザがもらい泣きをしていた。
「悪いな、茶太郎。また暫くはあのむさいオッサンの世話で我慢してくれよな。」
無邪気な愛犬はいつでも、愛らしい目と尻尾を最大限に使って俺に甘えようとする。でも、聞き分けの良い賢い子でもあった。
「じゃあ、行ってくるからな。留守番を頼んだぜ。」
玄関で行儀良く見送る茶太郎は、気づかない内に大きくなっている気がした。
アークの世界での各国の人口が分からなかったので、世界の総人口を『1億5000万人』くらいに設定させてもらいました。
その中でアルディコ連邦ことアルディアは2000万人くらい。プロディアスだけで1000万人という感じでよろしくお願いいたします。その他の国々も必要であれば