聖櫃に抱かれた子どもたち   作:佐伯寿和2

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拳に刻まれた歴史 その二

「ねぇ、エルク。あれなんだろう。」

素性の知れない占い師の下を去った後、俺たちは情報の収集もかねて取り急ぎ必要な物資を集めるために街を練り歩いた。そうした矢先のことだ。

ペイサス市の観光名所の一つ「叡智(えいち)の寺」とも呼ばれ世界一の蔵書を誇る大図書館の前にいかにも事件の臭いを漂わせる人集りができていた。

「…確かに気になるけど今はスルーするぜ。妙な面倒事を抱えて俺たちが足を引っ張るわけにもいかねえだろ?」

それは作戦を行う上で至極真っ当な、正しい選択だった。しかしこの時、少年は賞金稼ぎに不可欠な「第六感」を無視してしまっていた。

そして、そんな彼の小さなミスを指摘するように「勇者たちの絆」が二人を呼び止めた。

 

「おぉ、そこなへっぽこ楽隊さん。こんな所で会うとは奇遇じゃのう。」

…チッ、ついてないな。

エルクは不審な老人に呼び止められると同時に、腰に手を伸ばした。

「……」

しかし、どうやらそれは盗賊が示し合わせた「合図」ではなかったらしい。

老人は警戒するエルクを無視してポコに話しかけ続けた。そうしている内にポコは何かに気付いたらしくまさに「鳩が豆鉄砲を食ったような顔」をしてみせた。

「……もしかして、ゴーゲンなの?!」

「…ハ?マジか?」

腰まで伸びる清潔感のないザンバラな白髪に、卵の殻全面にヒビを入れたような皺の多い手。杖が無ければそのまま前にコロリと転がってしまいそうな丸まった背中。

それだけなら俺もそこまでは警戒しなかったのに、このジジイは悪フザケのつもりなのか。グレイシーヌ国のマフィアが好んで付ける小さな丸レンズのサングラスをかけ、全ての歯を金歯に変える無駄に芸の細かいところを見せつけた。

「これこれ、せっかくワシが気を利かせて伏せたというのに、なぜ名前で呼ぶ。」

人のことを言えた義理かよ。ヘモジーに頼らなくたってテメエなら周りに溶け込めるような変装くらいできるだろうに。なんでわざわざそんな目立つ格好をしやがるんだ?

ポコの天然っぷりはさておき、コイツは自分が指名手配犯だってことを楽しんでる。

「それで、ジイさんはこんな所で何やってんだ?」

そんな怪しい奴に話しかける俺たちの身にもなってみろよ。目立ってしかたねえだろ。そう心の中でボヤいた。

「いやいや、実はのう、」

コイツはそれも踏まえてわざとやってやがるんだ。そんな笑みをこぼした。

 

ジジイいわく、イーガは祖国の危機を救うため、ラマダの粋を極めた書物。対人のみならず、怪物にすら応じたありとあらゆる兵法を書き記したという経典を取りに、この大図書館にやって来ていた。

ところが一歩遅く、厳重に管理されていた経典は何者かによって奪われてしまっていたらしい。

「まぁ、そういう訳じゃ。」

「それってのは、こんな大騒ぎするくらいヤベぇことなのか?」

「問題はそこなんじゃよ。」

経典には彼らの編み出した秘術、グレイシーヌという国の発祥や信仰の弱点など様々な機密性の高い情報が書かれている。

さらには、過去に僧兵が拳を交えた怪物たちの詳細な記録も。

それらを宿した『ラマダ』という拳は怪物たちにとって銃にも勝る脅威になるらしい。

「誰の仕出かしたことかまではわからんが、十中八九、敵さんの手の者じゃろうな。」

それがグレイシーヌ国の権威を誇張するためのホラなのかどうかなんて俺にはわからねえけど、そこまで言われれば当然の疑問が浮かんでくる。

「そんなにヤバい代物だって言うんなら、なんで今になって敵は行動を起こしてんだ?これまでも充分やる機会はあっただろうが。」

「もちろん動いておったさ。もっと遠回しなやり方でな。」

一年前、ラマダ寺を治める大僧正が聖域であるラマダ山へと向かう一行を追い払おうとして失敗した。

その際、不逞(ふてい)な巫女が僧兵たちの目の前で大僧正の化けの皮を剥いだ。

化け物たちは天敵の頭をすげ替え、意のままに操ろうとしていたのだ。もしくはそのまま彼ら全員をキメラの材料にでもするつもりだったのかもしれない。

なんにしても、結果的に「脅威(ラマダ)」は再び野放しにされてしまった。かといって二番煎じが通用する相手でもない。

だからこそ対抗する(すべ)は限られていた。

 

「じゃあジイさんたちは今、その経典の行方を追ってる訳か?」

「ホッホッホッ。そうとも言えるし、そうでないとも言えるのう。」

「…んだテメエ、状況がわかってんのか?遊んでる場合かよ。」うざってえジジイだ。アークや赤猿のオッサンが嫌煙するわけだ。

「まぁ、そうカッカしなさんな。()にも(かく)にも、経典を取り返さねば話が進まんことには変わらん。」

ポコが必死に(なだ)めてくれなかったら、この死にぞこないを炭クズに変えてたところだ。

「…で、当の師範代さんはどこにいるんだよ。」

「今、門弟を使って犯人を探しておるよ。」

「アンタは?」

「…はて、それはどういう意味かのう?」

わかりきった質問に老魔導士はさらに(とぼ)けてみせた。…コイツ、マジで燃やしてやろうか?

「アンタなら犯人の追跡なんか簡単にできちまうんじゃねえのかって聞いてんだよ。()()()()()()()。」

コイツは本当にアークの仲間か?なんだったらさっきの占い師とグルだったりするんじゃねえか?そう思わせるくらい非協力的に思えた。

「ホッホッホッ…、坊主、努力することを忘れた人間にどれだけの価値があると思う?」

「…テメエはいったい誰の味方なんだよ。」

「おお、おお、味方か。そうだな、ワシはいつだって努力する若者の見守り続けたいと思っておるよ。」

「……チッ、話になんねえな。」

賞金稼ぎになりたての頃、同じような言葉で散々ギルドの連中にからかわれてきた。だけど一年も経てばそれも「挨拶」の一つとして耳に馴染んでいた。

だけどこのジジイはなんか違う。言葉はハッキリさせねえし、立場も曖昧なんだ。結局、何がしたいのかまるでわからねえ。

そのくせ「誰も自分を殺すことなんてできない」って自信をツラ一面に張り付けてやがる。

何様のつもりか知らねえけど、このジジイは自分以下の人間を遥か高みから見下ろして嘲笑うタイプの人間だ。

ポコ(コイツ)に免じて見逃してやるけどよ。二度と俺の前にその汚ねえツラ見せんじゃねえぞ。」

そうして回れ右をして立ち去るつもりでいた。

 

だけど、そんなジジイとは対照的な「義理堅い」って名前の粘土で形作ったような男が俺の前に立ち塞がった。

「落ち着け、少年。」

藤の編み笠で顔を隠してるけど、その体格と声には覚えがある。「老師もだ。時に貴方のそれは悪趣味にもなるということをいい加減、覚えて頂きたい。」

「ホッホッホッ、そう言わんでくれ。老い先短い人間は自分に正直でないと損しか残らんでな。」

あの研究所でもコイツは、俺と赤猿のオッサンが殺り合おうってタイミングで現れたんだ。

「イーガ、大丈夫な―――、アイテッ!」

性懲りもなく、白昼堂々指名手配犯(にんきもの)の名前を口にするバカの頭を(はた)きながら、俺はグルガ並みにデカい僧兵を睨みつけた。

僧兵はそれでも俺の前から動かず、前回と同様に淡々と話を進めた。

「老師は犯人の顔を特定した。それを元に今、僧兵たちが町で情報を集めている。老師は現れるだろうお前たちをここで待っていたのだ。」

「それってのは、情報を持ってたってのに俺たちをからかって遊んでたってことだろ?やっぱり(たち)がワリぃじゃねえか。」

「エルク、お、落ち着いてよ。ゴ…、このおじいさんも悪気はなかったんだから。」

「いや、悪気しかねえだろ。っつーかテメエらはなんでそれを許すんだよ。切羽詰まった今の状況を理解してねえとしか思えねえな。」

「ホッホッホッ。ほんに、坊主はあの猿にそっくりじゃのう。」

「老師。」

俺がクソジジイに噛みつくよりも早く、僧兵が割って入ってきた。

 

「…その犯人がまだ町にいるって保証はあんのかよ?」

八方塞がりを受け入れた少年はなんとか僧兵だけを視野に入れて話しを続けた。

「図書館が襲撃されたのがつい数時間前だ。検問にもそれらしい人物は引っかかっていない。可能性は十分にある。」

「そんなあからさまな出口なんか使わなくたって抜け道くらいあるだろ。」

「無論、そこにも僧を配備している。」

「そうかよ。手を貸したいところだけど一応、俺らにも役割があるからな。ってか、アンタは寺に戻った方がいいんじゃねえか?ボスがアンタのことを探してると思うぜ?」

「それはおそらくあの方を説得しようという話だろう。」

さすが師範代だけあって、追い詰められていても最低限の視野はキープしている。俺は頷いた。

「であれば問題ない。この件が済み次第、早急に戻ると寺の者に言い残してある。」

「いや、だったら逆にここは俺たちが引き受けるからよ。アンタはもう戻れよ。」

どう考えても王様の説得が最優先だろ。

アークはジジイさえいれば問題ないなんて言ってやがったけど、俺たちだけでグレイシーヌの国境全てを見張るなんてやっぱり無理がある。

俺の判断は正しいはずだ。それなのにこのオッサンは、「アーク一味」はそれを理解しようとはしなかった。

 

「悪いがそれはできん。」

「は?」

「あの書物の奪還は我々だけの問題ではない。この国の礎となるものだ。これは何よりも優先されることだ。」

相変わらず顔は笠で見えねえけど、その声色から「義理堅さ」が「分からず屋」の間違いだってことに俺は気付き始めた。

やっぱりこのオッサンも冷静なようで冷静じゃないんだ。

もともと国を守る立場の人間だからか。立て続けに敵に先手を取られて相当苛立ってんだろうな。

俺の考える理屈なんかに聞く耳を持つわけがねえってことだ。

「わかったよ。俺たちも手伝うから。今どこまでわかってるか教えてくれよ。」

俺たちはジジイが魔法で紙に書き起こした人相書きを手に入れ、ジジイはそれに補足した。

「キメラでもなんでもない。ただの一般人じゃよ。」

「…()()()、ね。」

意図せず、()()()()()()()に関わる度にその基準が少しずつ引き上げられていく。

いつの日か、これまで相手にしてきた化け物たちを指しても同じような呼び方をする時がくるかもしれねえな。

 

イーガとゴーゲンは一度、僧兵の情報をまとめるために駐在所へ向かった。

俺とポコは現場を見に行くことにした。賞金稼ぎ(おれ)にしか見つけられない何かがあるかもしれねえからだ。

「今さらなんだけど一つ聞いてもいい?」

「なんだよ。」

「なんでそんなに大事なものを図書館に置いてたのかな?」

「ホントに今さらだな。俺がそんなこと知る訳ねえだろ。」

とは言え、だいたいの予想はできた。

「叡智の寺」なんて呼び名があるように、お巡りの代わりに僧兵がここの()()を管理してる。

そしてその僧兵は素手で銃を持った兵士を倒しちまうような猛者揃いだ。

つまり、ここはこの国で王室に匹敵するくらいに厳重な場所ってことなんだ。

そういう内容を掻い摘んで話すと、ポコは素直に感心していた。

「へぇ、エルクってやっぱりスゴイね!」

「……」

俺は、その素直な褒め言葉に気が緩みそうになるのをなんとか踏み止めなきゃならなかった。

 

「お前たちは?」

「…アンタこそなんだよ。」

現場に向かう途中、スキンヘッドの同業者に呼び止められた。

「どうやら君も賞金稼ぎらしいからわかっているとは思うが、私は経典を盗んだ犯人を追っている。何か情報があれば教えて欲しい。」

見たところ、コイツは同業者の中でもベテランの部類のようだった。だけど、そんな奴を事件発生から数時間で配置できるか?

偶然、手が空いていた。グレイシーヌ国にとってそれだけ重要な案件だから。なんて言われればそれまでだけど、俺の中ではこの瞬間に関係者の「自作自演」の線が浮かび上がってきた。

「悪いけど、俺たちはさっき知り合いにこのことを聞いたばっかりだから何も知らねえぜ?」

「…知り合いか。まぁいい、一つ忠告しておこう。これは一般的な賞金稼ぎの仕事とはレベルが違う。あまり関わらないことを勧める。」

ベテランのオッサンは明らかに警戒心を高め、俺たちを追い払おうとしているのがわかった。だが、そうはいかねえ。

「なぁオッサン、俺らも手伝ってやるよ。」

「…必要ない。」

「そう言うなよ。ここだけの話、知り合いは寺の関係者なんだ。ソイツに直接頼まれてな。だから報酬はいらねえし、情報も出し惜しみしねえ。」

「…腕は立つのか?」

オッサンはベテランである理由を語るような目付きで改めて俺の全身を見定めた。

「そうは見えねえかもしれねえけど、これでもアルディアではそこそこ名が売れてるんだぜ?」

「連邦の人間か。…いいだろう。だがその前にその“知り合い”の名前を言え。それが条件だ。」

意外にあっさりいったな。そこにも何か裏がありそうじゃねえか。

「イーガ・ラマダギア、()()()()()()()()()。」 

俺は後半を強調して言った。

隣で見習いが顔色を変えて俺の腕を掴んだが、俺は気にしなかった。

オッサンも何も聞き返してこなかった。相手に聞くよりも自分の目を信じるタイプの人間らしい。

そういう意味ではポコのそういったストレートな行動はオッサンを信じさせるには都合が良かった。

「……ふん。では早速、情報交換といこう。」

時間が惜しいのはお互い様。ヘドリーという名の賞金稼ぎはすぐに決断し、行動に移った。

 

ヘドリーは5年間、この国を拠点に活動しているらしく、国内で幅を利かせているだいたいの勢力図を把握していた。

そして、自身もとある犯罪組織の構成員だという。

自分の安全のために情報を仕入れやすい場所に身を置くってのは賞金稼ぎにはよくあることだ。もちろんギルドはこれを承知している。

代わりに彼らからも情報をもらうことで見逃しているんだ。

そして、これが俺たち「アーク一味」を見逃した理由でもあるんだろうと納得できた。

 

さらにヘドリーは予想外なことを言い出した。

「結論から言おう。これは私の同僚の犯行で間違いない。」

僧兵を一瞬にして気絶させた薬、保管庫の開け方、痕跡の消し方、全部がコイツの組織のやり方と符号しているらしい。

「私は仲間に連絡して協力を仰ぐつもりだ。」

それはそうだろう。これが未解決に終わればコイツらは間違いないなくギルドとの関係が切れる。

そして賞金稼ぎ組合(ギルド)()()()()()()()()()()()()

関係を持った「敵」の末路は考えるまでもない。オッサンは焦ってるんだ。

「ここまであからさまな行動に出たからには高飛びするつもりに違いない。おそらくペイサスにはもういないだろう。」

それでも犯罪者が国外逃亡するならそれなりに手間暇がかかる。

時期が時期なだけに検問所の取締りも厳しく、()便()()()()()()()取引相手の手引きがあったとしても最低半日以上は必要だろうな。

 

ヘドリーは自分たちにとって機密情報とも言える、よく使う取り引き場所を教えてくれた。

「どう判断するかはお前に任せる。」

「了解。ところで、アンタらとはどうやって連絡を取ればいいんだ?」

「ここから南にある川を越えたところに連絡用の仲間がいる。お前たちのことも伝えておこう。」

用件を伝え終わると、ヘドリーはさっさと現場を去っていった。

 

俺は現場に残り、職員に許可をもらって館内を適当に見て回った。

「エルクは行かないの?」

「他人から貰った情報をホイホイ信じるようなバカは賞金稼ぎにゃ向いてねぇってことだよ。」

オッサンの話は筋が通ってる。俺も納得してる。だけど、まだ自作自演の線が消えた訳じゃねえ。

緊急とはいえ、可能性があるなら調べておくべきだ。

「何かわかった?」

「いいや、なんもわかんねえな。」

十分ほど見回ってはみたけど、盗った獲物が獲物なだけにその腕は確かで…もしくは、ヘドリーが痕跡を消したか、だな。

 

「ねぇ、あの占い師さんに聞いてみるってのはどう?」

「……」

それは考えになかった。

「後で」と忠告したアイツの言葉を信じるのなら、なるべく妙な動きはしないようにするつもりだったけど、これは表向きは別件で、しかも純粋に「占い師」としての仕事を頼むだけだ。

しょうもない屁理屈だけど、アイツのことを少しでも警戒しておくという点に関しては悪くない手だった。

「たまには気の利いた事も言えるじゃねえか。」

俺が機嫌良く褒めるとポコは、あのポンコツみたくだらしなく笑った。

 

「…いないね。」

予想の範囲内というか。あの正体不明女は自分の仕事場を放棄して行方をくらましていた。

「あぁ、あの気味の悪い占い師だろ?知らねえな。」

軽く聞き込みをしても案の定、大した情報は得られなかった。逆に、俺たちへの警告の方が多かったくらいだ。

「占いはよく当たるけど、欲に目がくらんで手を出した男たちは皆、あの女に消されちまうって話しだよ。神隠しみたいに跡形もなくね。」

「独り言ばっか言ってやがるし、気を遣ってこっちから話し掛けても仕事以外じゃ誰とも関わろうとしねえんだよ。」

多少は危ねえ奴だってわかってたし、俺たちだって今、余計なことに関わりたくはない。

だけど俺たちの場合、向こうから仕掛けてきてるから全部受け身でいる訳にもいかねえんだよな。

「じゃあ、どうするの?」

「今ある情報を一つずつ潰していくしかねえな。」

結局、ひとまずはヘドリーたちの取り引き場所を当たることからだな。

 

とは言ったものの、総当たりするとかなりの時間ロスになる。せめて的を絞らねえとな。

「ここはどう?」

そう言ってポコが指差したのは小川に面していて、あろうことか背後にラマダ寺のある湿地帯だった。

「…なんでそう思うんだ?」

「そんな、なんとなくだよ。川や森があるし、沼地だから足を取られやすいでしょ?捕まえる方からしたら不便かなって思ったんだけど。」

加えて周囲に村はなく、目と鼻の先にラマダ寺があることが「灯台下暗し」の利点を活かしてる。

確かに、今回みたく盗賊仲間(みうち)も敵に回す悪条件の中、全てを素早く処理したいなら、身を隠す場所を確保するより機動力に差をつけた方が逃げ切る可能性は高まる。

だけど、俺よりも先にそれに気付いたのがポコってのが解せねえ。

「…お前、本当にポコか?」

「え!?」

まぁ、それは冗談として。

 

 

そして、ポコの予想は見事に的中した。

けれどもその答え合わせは意外…というか、いつも通りといえばいつも通りの形で俺たちの前に現れた。

「…俺は一生アンタに恩を返せない気がするよ。」

そこに、一本の巻物を手にした銀髪の黒装束が立っていた。

「無条件降伏は王の意思でラマダの総意ではないだろうからな。連中は僧兵たちが決起する前に弱体化させたかったということだ。」

シュウは事が起きるよりも早くペイサス市に入っていたらしい。

そこで、市内に注がれる化け物たちの視線に気付いた。その視線の先に例の盗賊がいたんだ。

「盗賊の方は?」

「殺されたよ。」

犯人はすれ違いざまにシュウにスられていたことに気付かず、化け物の怒りを買ったらしい。

スった後も敵の目的と黒幕を特定するために犯人を尾行し、一網打尽にした。

「取引相手はヤグンの直属の部下だったよ。」

シュウは事もなげに言うけど、相手の切り札を奪取する仕事をザコがするはずもない。間違いなく敵にとっての精鋭(きりふだ)の一枚だったはずだ。それなのにシュウの体には多少泥が跳ねてるくらいで、かすり傷の一つもない。

しかも病み上がりだぜ?

「安心しろ。薬は使っていない。」

「…別にそこは疑っちゃいねえよ。」

まったく、何もかも底が知れねえ人だ。




※「スキンヘッドの同業者」と「経典を盗んだ犯人」
原作では両者の間に関係性はないのですが、キャラクターグラフィックが同じで、犯人を探す際に賞金稼ぎを疑う遣り取りがあったのでなんとなく仲間ってことにしてみました。

※連邦の人間か
アルディアの正式名称はアルディコ連邦です。(公式設定です)

※大切な大切な読者様へ
今回、話を書くモチベーションを上げるために感想を読み返していたところ、一部読者様の感想に返信していないことに気付きました。
名もない私の書くお話を読んでくださってなおかつ感想まで書いてくださっているのに、恩を仇で返すような真似をしてしまって本当にすみまませんでした。
返信を書くことは義務ではありませんが、私にとって感想をいただけることはお仕事に対するお給料よりも嬉しいことなので本当に申し分なく思っています。
しつこいかもしれませんが、重ね重ねお詫び申し上げます。

できることなら今後とも変わらないお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
m(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)m

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