「この先に大きな
差した方から嫌な気配を感じるのが少し気掛かりではあるものの、
「オい。」
「…なんだよ。」
思いっきり「相手をしたくない」
「ココヲ左に進めバ、ワシらが城から入ッテキた入り口ニ行ケるぞ?」
「まじか?」
「マヂだ。ワシがたダグウたらと
さすがにこの
それでも、信じられないという顔のポコがさらに聞き返した。
「
「あレはマア、ソういう
「どうやって。」
「
…その返事自体に不自然さはなかった。けれど俺は、本来そうあってもオカシクないもう一つの可能性を思い出した。
「わかった。だけど、先に人質の方に行くぜ。」
「そうだね、皆が心配だもんね。」
「……」
何より、こんなにも人質に近いところまで来てるってのに、やけに
そのせいもあってか。今さら階段の一段一段にあのクソ大臣の『
複数の人の
「…ポコ、トウヴィルの人間で間違いないか?」
無事に目的の牢屋を見つけ、俺たちは中の人間に気付かれないように中を
「うん、大丈夫だよ。皆、村の人たちだよ。」
11人の顔をじっくりと確かめたポコは確信をもって答えた。
「知らねえ奴は
「うん、皆知ってる人たちだよ。」
…まあ、ここで何を
むざむざ「
それにかなりの
ここでモタモタして何もできずに
「…誰?」
「…まあ、俺の名前を言ったって分からねえだろうし。今はアンタらを助けに来た頭のオカシな奴だって思ってくれればいいよ。」
「た、助けに?俺たちを?」
「
「……」
確かに、俺がどこの誰なのかをハッキリ言わなかったのが悪い。なるべく
だけど俺は何も誘導してない。なのに、こんなに簡単にゲロを
「アンタら、連中にアークの情報を教えちゃいねえだろうな?」
だから今度はしょうもない言い訳をさせないために声を低くして聞いた。
すると、
「申し訳ない。奴らの
まあ、そりゃそうだ。拷問はママゴトじゃねえ。
連中が、こんな一般人相手に何も聞き出せないようなポンコツなら俺がここまで
「しかし、
…本当にそうか?
拷問ってのは、必要な情報を口にしない奴には知っていようがいまいが
もしも「アーク」がポコやククルの言うような
それとも……、
「村にかけられた
「…儂らは前村長に連れていかれただけで、儂ら自身は何も知らんのだ。」
…どうやらこのジイさん、思った以上に信頼できる人物らしい。
「まあ、いいや。
アークたちが補給する物資があの村だけで
つまりこのジイさんは「俺」の登場もまた、あのクソ大臣の仕込んだ「拷問」の一つじゃねえかって疑ってるんだ。
その
というか、前村長が裏切った時点で
だから俺の質問もナンセンスっちゃあナンセンスなんだよな。
「これからアンタらをここから出すけど、あんまデカい声は出すなよ。アンタらを護りながらここを脱出するのはなかなか
「わかりました。…
前村長に裏切られたばかりだってのによほど信用されてるのか。ジイさんの
「お、俺たち、助かるのか?」
年は俺よりも一つ二つ上に見える男が無駄に希望を見ているような顔で俺に聞いてきた。だから俺は注意
「”厳しい”っ
「そんな…、ぬか喜びさせんなよ!」
「…あ?」
「ウグッ…、」
いくつもの戦場を焼きつけてきた少年の目つきに、
「ったくよ、助けに来ただけでもありがたく思えよな。」
「皆、怖がらないで。僕たちが必ず村まで連れ帰るから。」
「ポコ!?」
一応、「罠」かどうかの
「だから、デカい声出すなって言ったろ?」
「す、すまない…。」
まあ、コイツらにとっちゃあ今、精神的に
「これで全員か?」
「はい。」
牢屋の
「リシェーナ、リシェーナ。ポコよ。ポコが助けに来てくれたわよ。」
「ごめん…、私、気分悪いから、ご飯いらない。」
「なにバカなこと言ってんのよ。ポコが来てるって言ってんのよ!」
「……え?!」
「…おい。」
「ご、ごめんなさい。」
着てる
なんだ?ポコの知り合いか?
「遊びじゃねえんだから。マジで真剣に逃げてくれよな?」
「は、はい。」
ポコの
「じゃあね、リシェーナ。先に行ってるわよ。」
「ま、待ってよ…!」
「もしかしたら私たち、ここで死んじゃうかもしれないんだよ?だったらせめて
「せっかく神様がくれたチャンスなんだから。
「私、怖い……、」
「何も知ってもらえないまま殺されてもいいの?」
「い、嫌っ!」
「だったら言いなさいよ。」
「どうせ死ぬなら好きな人の心に残っていたいでしょ?」
「…大丈夫、ポコが良い人だってのは私たちもよく知ってるわ。そうでしょ?」
「……」
「ドジで
「……」
「大丈夫、少し
「知ってもらえるだけでも幸せに
「勇気を出しなさい、リシェーナ。打たれ強さだけがアンタの
「私たち、
「…みんな……、」
……俺は聞こえないフリをした。
「お姉ちゃん、私も先に行くよ?」
一人、また一人牢屋を後にする中、リシェーナは
「おい、皆行っちまったぜ?」
「あ、はい!」
…もしかしたら俺はとんでもなく
これじゃあまるで、俺自身の手で見たくないものを作り上げているみたいじゃねえか。
「キャッ!」
「おっと、」
長いこと眠っていたのかもしれない。ベッドから
「落ち着けよ。」
「は、はい。」
「…歩けるか?」
「は、はい。ごめんなさい、大丈夫です。」
「……」
俺には彼女を
「…おい、」
「え?な、何か?」
「…余計なお世話かもしれねえけどさ、俺たちは誰かのオモチャじゃねえんだ。最後まで
「…そう、ですよね。ありがとうございます。」
笑いながら礼を言うけれど、彼女の顔には少しも
…それでも、俺が勇気を出して言った一言は無駄じゃない。そう、思いたかった。
気付けば俺は左
「ホントだ、ここ僕たちが捕まった場所だよ。」
「だカらそウ言っトるじャロガ。」
ピーッ、ピーッ、
「な、何?!何の音?!」
「デカい声ヲ出すな。ジュニアがビビッてしまウだろが。」
「…ジュ、ジュニア?」
「これが、ヂークの言ってた情報の
どうやら、アンデルと
手の平に収まるサイズに
「なんだか可愛いね。」
ポコも、そういう意味を込めて言葉にしたが、ネジの
「ほぅ、オ前もヨウやくワシの良サがわカッテきたか!」
「どこが。街に落ちてる空き缶かと思ったぜ。」
俺は、ワンテンポ遅れてまた何もないところで
「リシェーナ、大丈夫?」
「え!?あ、う、うん!……大丈夫。」
「そう?なら良かった。」
リシェーナは俺の腕の中でモジモジと答え、ポコの笑顔を見るなり
「コイツ、大丈夫か?」
「リシェーナは生まれつき
「…ふーん。」
ポコはまるで
「出口、
村の男たちと協力して、来る時にはなかったコンテナを
「オい、エルク。」
「あ?」
「ワシに何カ言うコとはなイカ?」
「ねえよ。」
「あ~ア、ワシなラコんなペラペラの板、簡単ニ開けられルんダがな―――」
ガリガリガリガリ……
「す、すごい……。」
エルクの手の平が、打ちたての鉄のように燃え、扉の溶接部分に指先が
『炎』の力は
「これがアーク一味……。」
その
それはいつだって無条件に「善と悪」を
「……」
口にこそしないが、その場にいた村人たちは少年を見て誰もがそれを想像した。
そして、エルク自身もそれを黙って受け入れていた。
「ったく、
こじ開けてはみたものの、扉の向こうにはさらに
「…フッフっフ、今度こそワシノ――――、」
バコンッ!
「……」
ボイラーの
「これなら行けるぞ!」
「村に帰れるのね!」
「…だからさ、まだ敵陣の中なんだって。あんまり気を抜くんじゃねえよ。」
村人が喜びに騒めく間、エルクとポコが扉の先の安全を確認し、再び脱出を
「ワシノ出番……」
…”最強伝説”はまだまだ遠い。
…いったい、俺の体はどうなってんだ?
少年は自分の『力』に
ここまで
これもククルの『
少年は、分かりきった答えにわざと
少年が
まあ、今さら俺がどんな化け物だろうとやることは変わらねえし、リーザはそんなこと気にしないでいてくれるはずだ。
そんなことよりも、この『力』を今の状況にどれだけ
俺はこの「異常な体力の正体」にも、この「
「待てッ」
すると、
十…四、五人ってところか。このくらいなら余裕だな。むしろ、
目に
だけど、このまま
「ポコ、村人を連れて先に行け。」
弾が村人に当たらないよう『炎』で
「え?エルクは?」
「村の奴らを連れて追っかけっこしてる方がキツいだろ?俺が足止めしとくから、その間にできるだけ遠くに行け。」
「だったら僕も――、」
「よく考えろ!人の命が掛かってんだろ!」
そんな
「俺、今、絶好調なんだよ。それに見ろよ。アイツらとさっきの化け物、どっちが
言いながら、自分が甘っちょろいことを言ってると気付いていた。
そんな訳ねえだろ。
放っておきゃ勝手に出ていく奴らを追い出すために、わざわざこんな
むしろ余計に
俺と村人を
「…死なないでね。」
「当たり前だろ。俺にはまだやり残したことが山ほどあるんだからな。」
「ワシのとコろに化ケテ出ルなよ。」
「ハハ、戻ったら真っ先にテメエを解体してやるぜ。」
色々と
「ウワァァッ!!」
村人を逃がし、
「おっと!」
俺の振り下ろした剣に合わせて、
「チッ!」
急いで引き抜いて血抜きをするけれど、どうやらその必要はなかったらしい。
「…テメエら、ナメてんのか?」
毒を
あそこでわざわざ俺の『炎』をズラしてきたからこそ、それを
俺なら間違いなくそうする。だからこそ、連中の
「何をそんなに
黒い
数時間前に味わった
「自らを
「悪いな。俺は”犠牲”なんてツマらねえものになるつもりはさらさらないぜ。」
なぜだか分からないけど、俺はコイツの『息』に
「それはククルの
「さあな。」
「…
その中年の
「なんで村人をわざと逃がした?」
「なんのことかな。」
「俺が気付かねえとでも思ったかよ?」
「ハッキリと言いたまえ。キサマは私に何の言いがかりをつけているのかな。」
まるでヤツの
「クズ野郎がッ!」
けれども例のごとく何らかの魔法が働いているらしく、物は吹き飛ばせても、そこに
そしてヤツはまた、あの薄ら笑いを浮かべやがる。
「まるで、あの時の小娘の
「…なんだって?」
聞き返しながら、また全身がザワつき始めた。
「”白い家”、私もあそこにいたのだよ。アイツは”M”と呼んで
――――体が、熱いっ!!
「…なるほど、確かに
死に神が、
矢の
『
「これが奴の言う
死に神は、
※溝(へだたり)
本来「へだたり」は「隔たり」、「溝」は「みぞ」と読みますが、意味合いと口に出した時のニュアンスがどちらか片方では感じにくかったので思い切って合せました。
※リシェーナ
原作でちょっとした
原作では何度もスッ転んで、生身の人間ならとても無事でいられないような派手なSE(環境音)で演出する鋼の肉体を持つ女の子です。
本編ではさすがに凄腕のエルクが見て見ぬフリをする訳にもいかないので補助に入りましたが、彼女の転ぶシーンはなぜかとても感慨深くww忘れられません。
ちなみに、彼女のお友だち(同じグラフィックのキャラ)4人にはそれぞれ名前があるらしく、
ミラルダ、ジーナ、リリー、マーリンというそうです。
……ここで一つ気付いたんですが、シュウの専用装備の一つに「マーリンの書」という「大盗賊マーリンが残した書物(ドロップアイテム発生率上昇)」なるものがあるんですが…、さすがにこの子とは関係ないですよね?
もしもそうなんだとしたら、盗賊家業から足を洗い、トウヴィルで細々と生きる彼女の娘だったりするんでしょうかね?
娘が聖職者なのは母親の罪を償うためとか。
※破城槌(はじょうつい)
「攻城槌(こうじょうつい)」「衝角(しょうかく)」ともいう。
籠城する城の門や壁を破壊して突破するための兵器。丸太状のものを垂直にぶつけて使う。