……どうやら、俺の耳は完全にイカれちまったらしい。
……そう、
それはまるでバイオリンのように
それはまるでグランドピアノのように空を
なのに、それはクラリネットのようでもあり、スネアドラムのようでもあり、トロンボーンのようでもあり、アルプホルンのようでもあるんだ。
だけど、俺の目にはたった一本のトランペットしか映らない。
俺が
酒を飲んだ訳でもないのに、感覚は
たった一人の、お
「…どうなってんだよ……」
経験のない世界に放り込まれ、混乱している間にもう一つの信じられない出来事が起こっていた。
殺意だけで息をしていた『気配』たちが、
その表情は、「幸せ」とまではいかないものの、
「…こコハ、ドこダ?」
いよいよポンコツが
「…ダメだよ、エルク。戦いだからって何でもかんでも
一仕事終えたポコは深呼吸すると、なぜか俺に
「何でだよ。」
いや、そんなことよりも、
「何なんだ今の?お前、何やったんだ?」
「あれはね、城の爆発に
「それをどうやって
そのポンコツは
「そんなに
だけど…、
「ただ、僕は皆に幸せになって欲しいって思ってるだけだよ。」
「……」
確かにコイツのかもし出す空気には、
だけど、だけどよ!こんな殺し合いの
…いいや、そうだよ。こんなの、もう「殺し合い」でもねえ。
これじゃあまるで、「
これが、「アーク一味」のやり方なのか?ククルといい、コイツといい…。
誰も傷つけないとか、そんな、
「多分ね、皆できることなんだよ。だって、誰にだって一度くらいは”幸せ”を感じたことがあるはずでしょ?」
だったらなんだってんだ。「気持ち」で人の命が
そんなクソみたいな
だいたい、だったらその
「…お前、もしかして誰も殺したことがねえとか言うんじゃねえだろうな。」
そんなことはない。そう信じたかった。
そうでないと、俺は本格的にコイツらを信じられなくなる。
そして「
ポコは
「…ううん、そんなことはないよ。むしろ、今みたいに戦わないですむことの方が少ないんだ。」
「それでも僕はできるだけ戦わない方法を探したいんだ。そうじゃなきゃ、いくらアークだっていつかは
「そりゃあ、お前がアークを護ってるって言いたいのかよ?」
「あ、もしかして、僕じゃ役に立たないとか思ってない?」
「ああ、そうだな。」
だけど「死」は絶対だ。
だからコイツの言う『気持ち』なんかより、一発の「銃弾」の方がよっぽど役に立つに決まってる。
それが当たり前だろ?
もし今戦ってたのが、ガルアーノの
……そんな
「まあ、見ててよ。僕だって役に立つんだから。」
臆病で
でも、多分、コイツの言ってることは本当なんだと思う。何度も言うけど、コイツも
それがどんな方法であれ、「俺たちにできないようなこと」が当然のようにできちまうんだ。
それを
「アンた、誰?」
ド
「…お前もいい
ポコは…、ポコ・ア・メルヴィルは、元スメリア軍でアークと
当然、「スメリア王暗殺の犯人」として
それってのは今でも殺された王への「
それで「正義」が
どうにかしてコイツを
もしくは、その反対か…。
「
「……」
「おイ、わシもいっショにイクぞ。」
内部から爆破したというヂークの言葉通り、奥に進むほど城の
床は一面に
そう思った
「危ねえっ!」
三人の体重に
俺の
「あーあ、
「壊れちゃった、ってなぁ…。」
穴の
「お前、帰りのことはちゃんと考えてあるんだろうな?」
ここまで一本道だったし、横穴を
「しょうがないよ。帰りのことは帰りに考えよう。」
「言っとくけど、俺たちはテメエの
「大丈夫、これでもこのお城に
…そうだったな。
間の抜けた言動が多いせいか。どうしてもコイツが「兵隊」だったって情報が板につかねえ。
なんか、俺の方がマヌケみたいでムカつくぜ。
小太りの楽隊は言葉の通り、少しも迷うことなく進んでいく。
「ありゃりゃ…、」
「どうしたよ。」
ポコは
「前はここにエレベーターがあったんだよ。」
「いや、こんだけボロボロになってんだ。そりゃあ、エレベーターだって落ちるだろ。」
「そレに、エレベーターなんカナくテも普通に
ヂークの言うように、かつてエレベーターがあったらしい穴には、さらに上の階から
ただ、その一段目に
「まあ、そうなんだけどね。でも、その方が楽ちんだなって思っただけだよ。それに、ちょっとだけ、高いじゃない?」
と言いつつも、ポコは
「痛たたた。足、
「……」
こんなヤツが「国際指名手配犯」でよく
今はもう、何を見ても同じ疑問しか浮かんでこない。
だったら今はククルの
瓦礫を
「…おい、ちょっとそこでジッとしてろ。」
「え、もしかして一人で戦うつもりなの?」
「わかんのか?」
「僕、耳は良いからね。」
「オい、何の話ヲしトるンじャ?」
耳が良いってのはだいたい予想がついてたけど、俺と同じタイミングで気付くくらいの集中力があることに少し
「…どうすんだ?またご
「うーん、そうだね。僕にはこれしかできることはないしね。」
ポコはあっさりと言ってのけた。まるで俺の方が「
…本人にその気は少しもないんだってのは分かっちゃあいるけど……、
「じゃあ
「え、もしかして僕一人でやるの?」
その
けれどそれが
「できねえの?」
だからこそ、今の内に
そうじゃねえと無駄に
「…エルクって
「これから
「コラ、ワシも話ニ混ゼンカ!」
「敵カ?敵ナノカ?」
…
「もし危なくなったら助けてよね?」
「ああ、いいぜ。」
「…さびシい……」
「おいおい、そうイジけんなよ。お前、強いんだろ?だったらお前の出番はまだまだ後になるってだけの話だよ。」
「当然ジゃ、ワシは最強ノ
…でも、そうだな、
「そんじゃあよ、そんな世界最強にしかできない仕事があるんだけどよ…。」
「オ、わカッてキたじゃなイか!なんジゃ。何デモ言ってミろ。」
俺はこの
「任セロリ!」
「……」
ポコの相手は、大型犬ほどの大きさで、岩くらいの
サイズこそ小型犬にも
ダンゴ虫の
吸血コウモリの牙は肉も骨も紙のように
このコンボを決めてしまえば、あとは
お互いの
だけど一目見ただけで俺は気付いた。「動き」も「力」も野生とはレベルが
「うっひゃあっ!?」
ラッパの
「……」
「アイツ、かッこ悪イ戦い方をスるな。」
ブッパッ!
さっきまでの
「ふ~、危ない危ない。」
そのままもう一匹のダンゴ虫を潰せば一気に
あろうことか
「ひえぇぇ〜!」
そこまでして攻撃しねえ理由って何だ?まさか、さっきみたく
…連発できねえのか?もしくは、実力を隠すための
パンッ!
それでも、
それはボウガンのように、
そして、
一音一殺。ポコの『音』は
間違いなく「兵器」に
なのに、
そこにアイツの『力』の
それにしても、あのコウモリたち相手によく逃げ回る。
呆れ半分、
数分後、どうにかこうにか全部
「ハァハァ、どうだった?」
見た限り、演技をしている風には見えなかった。
「悪くはねえよ。ただ、一つ聞いときたいんだけど、アンタのその『力』、音を出さずに使えねえの?」
「え、なんで?」
ここまでそうしなてこなかったから何となく予想はついてるんだけど…。
「なんでって、無駄に敵に居場所を教えちまうじゃねえか。」
「…そういえば、そうだね。」
「お前、本気で人質を助ける気があんのかよ。」
でも、これもアークたちの
「その腰の剣は飾りか?」
「…一応、アークに言われて持ってるだけなんだよ。僕、あんまり剣術は得意じゃないから。」
「使えねえならここで捨てろよ。」
「ええ、なんで?」
コイツは本気で言っていた。本気で、俺の言い合う必要すらないアドバイスに疑問を覚えていた。
「いい
「…そうだけど…、そうだけど、これは持っておきたいんだよ。」
そのナヨナヨした表情だけはどうにも
「…勝手にしな。それでミスっても俺はテメエのケツなんか
「うん、僕、頑張るよ!」
「……」
「タフじゃナ。」
「足手
まるで
たとえ、そのタフさがコイツの長所だったとしても、それがあの
…まあ、いいや。人質を救出するまでには答えを出してやるよ。
俺が、「
※石のダンゴ虫→原作のストーンフライのことです。
※吸血コウモリ→原作のヴァンパイアバットのことです。
※まるでバイオリン~アルプホルンのようでさえあった。
実際の楽器には、それぞれに限界音域(その楽器で出せる音程の幅)がおおよそ決まっています。
なので、トランペットにピアノの音域全てを出すことはできませんし、トロンボーンの音域全てを出すことはできません。
そもそも、それぞれの楽器に特有の「
そして、この注釈で何が言いたかったかというと、
ポコの『力(技術)』はこの不可能を可能にしてしまうということです。
ポコの吹くトランペットからはピアノの音色が鳴り、スネアドラムの拍子を感じさせることができるのです。
スゲえぜ!
※ポコの装備
原作でのポコの装備可能な武器は「シンバル」と「フレイル」です。
ですが、私都合で楽器以外にも「剣」を装備していることにします。
また、ポコの特殊能力には「
基本的に「トランペット」と「剣」ってことにしようと思ってます。
ちなみに激しい衝撃で壊れてしまわないようにトランペットは「ハードケース(強化プラスチックなどで作られたケース)」に入れてることにします。
ただ、基本的にトランペットを懐に入れて持ち歩く人はいません(笑)
普通は背負うものですね。
※「低く鈍い一音」と「高く鋭い一音」
それぞれ、ポコの特殊能力「へろへろラッパ」と「気合いラッパ」のつもりです。