道中、ヂークをバカにする言葉を考えるのに忙しかったお陰か。軽い休憩を2回ほど挟むだけですみ、翌日の午前中にはパレンシア市に着くことができた。
市の関所が視界に入ると、俺たちは町の外壁を伝うように迂回した。
「なンジゃ、町ニは入らんノか?」
足の生えたドラム缶は、期待していた餌を取り上げられた仔犬ような顔で俺を見上げた。
「何のために前の町で装備を整えたと思ってんだよ。」
コルボ市でもそうだったが、どうにもヂークの疑似人格は人間の子どもを模したかのように異常に好奇心が強い。
知らない物を目にする度に「アレはなんだ」だとか、「これが欲しい」だとか…。
いちいちそれを諦めさせなきゃならない俺は保護者丸出しにならなきゃならない。仕事でもガキの子守りは断ってきたってのに…。
ククルからは、村人を救出する依頼も兼ねて当面の資金を借りている。
村に貯えがないことくらい分かってたが、仕方なかったんだ。
現状、俺は不法入国に当たるし、賞金稼ぎ組合にはたんまり金を預けてはいるものの、組合自体がガルアーノの創った組織なだけに迂闊に顔を見せる訳にもいかない。
スメリア国に当てにできるような知り合いもいない。っつーか、スメリア国に来たこと自体初めてだ。
そういうことで、少なくともバスコフが復帰できる状態になるまで俺自身は一文無しってことになる。
「どレどレ、懐が寒いナらワシが温めテヤロウか?」
「いらねえよ。…それにしても、」
懐事情を反省しながらも、視線を上げれば常に俺たちを見下ろしてるそれを見て、俺は感嘆の声を漏らさずにはいられなかった。
「派手にやったもんだな。」
町の外壁や森の木々に視界を遮られながらも、その上半分は常に、凍結した歴史的瞬間が占めていた。
町よりも一段高い台地の上に築かれたスメリア国の繁栄の象徴、パレンシア城。
それも今や歴史を語るしか能のない「遺跡」って名の、失墜の象徴と化しちまってる。
「内側から爆破せんことにはあそこまで木端微塵には壊れんぞ。」
ヂークの推測を証明するかのように、城の破片はかなり離れた所にまで飛び散っていた。
「…内側から、ねえ。」
幾多の戦火にも耐え凌いできた堅固な城壁は、現代アートみたく奇抜な形の瓦礫の山を造り、辺り一帯には引き千切られたドレスのように価値を失くした破片が散りばめられている。
かつて精霊より頂いた栄光と名誉の入り口であった城門を潜る者も今はなく、大地を横切る風に空しく撫でられるばかり。
辛うじて原型を留めているものと言えば、城門へと伸びる、長く厳かな階段、橋梁ぐらいだ。
ようやく着いた城跡には警備の一人もおらず、完全な「荒れ地」として放置されていた。
「金の生らない木にゃ関心もねえってか?スメリアも随分とドライな人間が多いんだな。」
「というよりも、大臣にそう命令されとるんじゃろ?」
「まあ、そうなんだろうけどよ…。」
スルトにも聞いたけど、「スメリア国王暗殺事件」以降、大臣の方針で城周辺に近付くことを禁じられているらしい。
それはそれとして……、
「あのよ…、」
加齢臭は自分じゃ気付かないって言うし、コイツも自分が出してる「違和感」に無頓着なんだろうな。
もともと気になってはいたけれど、石畳の橋を歩いているとその音はいよいよ耳に付いて仕方なくなっていた。
「…まあ、無理を承知で言うんだけどよ。」
「ナんじゃ?」
ヂークは無垢な中年よろしくバカ面で首を…、体を傾げた。
「その騒々しい足音はなんとかならねえの?」
ブリキ人形のヂークが足を運べばガシャガシャと行進曲のように賑やかな騒音が容赦なく辺り一帯に撒き散るんだ。
それが気になって仕方がなかったんだけれど…、その一言が余程気に入らなかったのか。ヂークは頭頂部の小さな煙突…を模した冷却装置――元がボイラーなんだから「煙突」でも間違ってはいないんだけど――からプシュッ、プシュッと蒸気を吹きながら怒り散らした。
…いったい今の遣り取りのどこにそんな熱量がいるんだよ。
「バかもン!この重厚感ノアる足音がカっコいインじゃロうが!」
まあ確かに、戦場であれば「ロボットの足音」ってのは敵の「恐怖」を煽れたりするかもしれねえけどよ…。
「誰もいねえところでイキってどうすんだよ。無駄に敵に居場所を教えるだけなんだっての。」
「敵」なんて言ったけど、俺たちの視界の中には人っ子一人いない。憲兵もいなければ観光客もいない。
…いないけれど、別の厄介な『気配』は常時、俺たちの周りに付き纏ってやがるんだ。
その『気配』のせいで野生動物たちも、この格好の棲みかに寄り付けないでいる。
まあ、そんな訳だから目立たないに越したことはないんだよな。
俺自身、ロボットを同行させる経験なんてなかったもんだから、そんなところまで気を回してなかったんだ。
まあこの場合、「保護者」の俺が悪いんだろうな…。
……!?
「止まれっ。」
「もがっ!」
…「芸が細かい」と評価してやるべきかどうかはさて置き、ハッキリとした気配に気付いた俺はヂークの口――と思われるところ――を塞ぎ、物陰に隠れた。
声を潜め、今にも暴れ出しそうなポンコツに「不審な気配」を告げた。
「…本当じャ。ナニかおるゾ。」
ったく、コイツにゃ、索敵機能ってもんがねえのかよ?
それにしても、何者だ?
……素人か?随分と物音立てやがる。…まあ、こっちにもバーゲンセールみたいに「気配」をばら撒きやがるドラム缶がいるんだけどな。
…そのドラム缶の気配にすら気付いちゃいねえ。それに、どうやら一人っぽいな。
つい先日、ロマリア国の戦艦が襲撃されたとかでロマリア軍が警戒のためにスメリア国内を彷徨いてるって話をコルボ市で聞いたけど…。
新兵じゃあるまいし。さすがにこんな無防備なロマリア軍もいないだろ。
ポンコツを待機させ、槍を構えながら物陰伝いに「気配」に近付いた。
そして、標的を視野に入れる直前―――っ!?
「うわぁぁぁ!!」
ソレは唐突に、悲鳴を上げながら瓦礫の向こう側から飛び出してきた。
咄嗟に飛び退り、改めて物陰からソイツの出方を窺う。
…飛び出てきたソイツが無防備過ぎて、不気味だった。罠の臭いがプンプンと漂い、素直に攻撃に転じられなかった。
周囲の変化を探るけれど、例の『気配』が騒ついてること以外は特に気に留めるものもなかった。
飛び出したソイツは派手に転がり瓦礫にぶつかると、体を丸めて震え始めた。
「……」
…遠目だけれど、本気で悶絶しているように見える。
「おイ、あれ、大丈夫カ?」
「…どうだろうな。」
罠がどうとかいう前に、激しく間抜けなヤツだってことはハッキリした。
「痛ててて……」
ぶつかる勢いと音からヘビー級ボクサーのストレートを顔面に受けるくらいの衝撃があったはずなのに、相当に打たれ強いのか。その間抜けはすぐに立ち上がり、申し訳程度に辺りを見渡す余裕をみせた。
…そのまま眠っててくれた方が、俺の幻想をブチ壊さなかっただろうに……
「…おい、おいおいおいおい……。あれって、まさか……、」
俺はソイツの顔に見覚えがあった。
「ドウシた?」
見覚えがあって当たり前だ。仕事上、知ってなきゃオカシイし、なんだったら新聞を読まねえホームレスだって知ってるかもしれない。アレは、それだけの有名人だった。
「まったくもう、嫌になっちゃうなあ。」
…そんな間抜けな声も聞きたくなかった。
「…お前、ポコ・ア・メルヴィルか?」
俺は姿を現し、思い当たる名前を口にしてみた。
「え!?…って、なんだぁ。人かー。まったく、驚かさないでよ。」
俺の声に反応してヒョッコリと顔を覗かせたのは、冴えない面構えの軍楽隊だった。
「…マジか……。」
反応して欲しくなかった。
虚脱感で肩が抜け落ちていくようだった。
「ナんジャ、知っトるヤツか?」
「アイツは…、」
駆け寄ってくる緑黄色のロングコートにボロボロのシャコー帽を被ったこの小太りの間抜けは…、
「…アークの仲間だよ。」
ポコ・ア・メルヴィル。「アーク一味」の構成員の一人だけど、スメリア軍に所属していたということ以外、特記事項のない不気味な奴だった。
実際に会ってみると…、ただただギルドの鑑識眼に疑問を覚えるばかりだ。
この野郎、ほんの数m駆け寄ってきただけで息切れしてやがる。
「君、なんで僕の名前を知ってるの?」
プックリとした輪郭にボサボサの髪。女みたいにナヨナヨした表情。まさか、アーク一味の中にこんな恍けた奴がいるなんて思ってもみなかった。
もちろん、こいつにだって1000万相当の賞金が懸けられてる。…こんな奴にも、だ。
いくら手配書が何割増しか写真映えするように作られてるっつったってよ…。
つい先日、格の違う女を目の当たりにして「アーク一味」への評価を上げてしまっただけに、この落差は俺にとって「希望」の一つを奪われたような気分にさえさせられた。
「俺は、エルク。…賞金稼ぎだ。」
別にそう名乗るつもりはなかった。ただ、コイツの雰囲気に釣られて、気が抜けちまったんだ。
「えっ!?じゃ、じゃあ、僕を捕まえに来たの!?」
などと言いつつ、ポコは半身になって俺たちから逃げ出そうとしていた。
「ああ、悪ぃ悪ぃ。別に、そういうんじゃねえよ。」
正直、指名手配は何かの間違いだと思ったし、足手纏いになるとさえ思った。…でも、こんな奴でもククルたちに村人の救出を任されてるんだよな。
そりゃあ、あの式典で見た『雷』が実はコイツが放ったものでしたなんて言われたら、俺も考えを改めるけどよ…。
「…そうだな。」
俺は考えるのも面倒になって、取り敢えず彼女の名前さえ出せばいいくらいの気持ちになっていた。
「ククルに言われて来たっていやぁ良いのか?」
「え!?君、僕たちの仲間なの!?」
「いや、それもちょっと違うんだけどよ。」
「ヨく驚く奴ダ。」
…初めて意見が合ったな。
ってかよ、曲がりなりにもここ、敵の縄張りだろ?そんなにデカい声出して…、警戒心ってもんがねえのかよ。
「良かったぁ。僕、ちょっとここの地下に用があるんだけど、一人じゃちょっと心細くって…。」
単独作戦が怖い?
弱音吐きながら女みたくハニカミんで頭を掻いてんじゃねえよ…。そのご立派な軍服が泣いてるぜ?
「でも、三人なら安心だね!」
「あ、ああ。…あ?」
「何ガ?」
そう、それ。「何が?」だよ。
「ってか、勝手に話をまとめんなよ。」
徽章を複数持ってるくらいだから、元々いくらか場慣れした兵士だったんだろ?
それなのに見ため童顔だし、言動もガキっぽいし、…俺より若いんじゃねえか?
でもまあ、アークの仲間だし、プライベートでも軍服着てる奴はコンプレックスの塊だって聞くしな……。
「さ、出発しよう!」
「……」
ポコは、いわゆる人の話を聞かないタイプの人間らしい。
俺たちの異議を、当然のように無視をかまし、張り切って号令をかけると、今さら行進よろしく元気一杯に手足を振って一人、ズンズンと進み始めた。
「ドウスるんジゃ?マだ引キ返せるぞ?」
「…まあ、いいんじゃねえの?」
何とも言えない気分のまま、俺たちは「世界の敵」の連れになろうとしていた。
ってか、本気で俺のことを信じてんのか?「ククル」の名前を出しただけだぜ?
不用心にも程があるだろ。
コイツ、本当に「アーク」の仲間か?
「おっと、おっとっと…、」
「おいおい、大丈夫かよ。」
威勢良く進んでいたのは初めだけで、奥へ進むにつれ、ポコは瓦礫の角にコートを引っ掛けたり、足を取られたりしていた。
「危ないから気を付けてね。」
「ソリゃ、お前じャ。」
「え?そうなの?」
「まズ、そのムダな内蔵脂肪ヲ1ミリでモ削ギ落トしてカら物ヲ言え。」
「ヒドいこと言うなあ…。」
もはや、俺専用の拡声器みたく代弁するポンコツに、不覚にも「愛着」のようなものを感じ始めていた。
そうこうしながらも俺たちは何事もなく城の奥に進むことができた。
「ところでアンタは何を探してるんだ?」
「通路だよ。」
「通路?」
「物」じゃなくて「道」…。しかも、わざわざ敵の陣地に飛び込んでまで探してんだ。
敵の本拠地にでも繋がってんのか?
「パレンシアタワーってわかる?実はあそこの地下に繋がってるんだ。」
「パレンシアタワーか…、っておい。お前、一人で攻め込むつもりだったのかよ?」
「別に戦いに行く訳じゃないよ。捕まったトウヴィルの人たちを助けに行くだけ。」
あ、あぁ、そういやそんな話だったな。
「それに、ボク一人じゃあ返り討ちにされちゃうよ。」
だろうな。
「タワーの見取り図は?どこに収監されてるか分かってんのか?」
「大丈夫、牢屋は地下2階にあるはずだよ。」
「…なんだよ、“あるはず”って。」
「だってボクたちお尋ね者なんだよ?これだけの情報を集めるのにも相当苦労したんだから。」
…なんだか、「アーク一味」の力量がどんなものなのかよく分からなくなってきたな。
「そンナンで大丈夫か?」
「そりゃあ、ちょっと心配だよ。でも、急がないと数日中に皆が処刑されるらしいんだよ。」
「いつなのかハッキリと分かってねえの?」
ポコは力なく頷いた。
おそらく、こっちの不安を煽るためにわざと曖昧な情報を流したんだろう。
そうして焦った子豚を鼻歌混じりに仕留めるつもりなんだ。
…もしそうだとしたら、城にだってそれらしい監視がいてもいいハズなんだけどな。
「仕方ねえな。取り敢えず行けるところまでは行った方がいいだろうな。」
「え、ホント?ホントに一緒に来てくれるの?」
…どうやら、さっきまでの能天気な言動も俺の言葉を無視したのも、不安で強がっていただけらしい。
子豚は目をキラキラと輝かせながら俺を見上げた。
「ただ、下手に深入りはしない方がいい。人質の命が最優先だからな。」
「うん、そうだね!」
「……」
「いイのか?」
「…ああ。」
気乗りはしねえけど、俺がシッカリと注意を払ってれば、そうそうデカいミスはしねえはずだ。
「しっかし何でこうも見事に荒れたままにしてるんだろうな。」
陽の光が真上から注がれる城内、更地にするでもなく放ったらかしにされている。
鳥の糞やら風で飛んできた枯葉なんかが舞い込み、かつての威厳もまた、完全に枯れ果てていた。
ただ、物取りが入ったのか。金目の物は何処にもない。
「王様が亡くなった後、アンデルがパレンシアタワー建設を言い出したんだ。そのために人手も王様の残した財産も全部そっちに回されてるんだよ。」
パレンシアタワーってのは、崩壊したパレンシア城の代わりとして造られてる行政機関の拠点だ。
どういう理由か知らないが、前スメリア王以外に王族の血筋の者はおらず、王家に全ての権力が集中していたスメリア国は今――その経緯も定かじゃないが――、それら全てを現大臣が引き継いでいる。
だから、こんな好き放題ができるらしい。
「…ふーん。」
それで金目の物だけは回収されたってことか。
「それでもお金が足りないって言って、国民からもお金を集めてるんだよ!?」
「……」
「許せないよね!」
…まあ、言いたいことはよく分かる。ごくごく真っ当なことだ。
いいや。だからこそ、なんだろうな。コイツの一般人臭さは。どうにも、「こっち側の人間」って感じがしない。
「僕が”アーク一味”のポコです」ってのも実はウソなんじゃねえか?
ここまでのコイツの動きを見ていて、連中と戦闘ができるほど戦場慣れしているとは到底思えない。
戦場に紛れ込んだだけの「子豚です」って言われた方が何倍も納得できる。
「それはあまりにも失礼じゃろ。」
「は?俺、声に出してたか?」
「いや、そんな顔をしとるなと思っただけじゃ。」
「……」
先頭を歩く子豚はこっちの遣り取りに全く気付かない。
「こっから地下にいけるはずだよ。」
瓦礫の積もる階段を指してポコはそう言った。
元々、ここがコイツの職場だったからか。原型のない城内でも迷うこともなく目的のものを見つけ出した。
「…これ、進めるのかよ。」
「大丈夫、大丈夫。ホラ、人が通れるくらいの隙間があるでしょ?」
「いや、あるにはあるけどよ。崩れるんじゃねえの?」
俺が指さした天井部分は風もないのにパラパラと亀裂から砂礫と埃を降らせていた。
唯一の出入り口だし、地下に潜ろうって俺たちにとっては十分に注意を払わなきゃいけねえことだろ。
だってのに……。
「クスクス、エルクって意外と怖がりなんだね。」
「……」
「おい、言われとるぞ?」
「ウルセエな。行きゃあ良いんだろ?行きゃあよ。」
…ダメだ、全く当てにならねえ。
ククルの頼みは聞いてやる。でも、コイツには何も期待しねえ。
俺はそう誓いながら、慎重に階段を下りていった。
階段はすぐに途切れ、うまいこと傾斜になってる瓦礫を滑り降りることになった。
ところが、滑り降りている最中、薄く付き纏っていた『気配』が途端に意識を持って俺たちに襲い掛かってきた。
「う、うわわぁ!」
「な、なんじゃコイツら!」
「チッ!」
薄い間は見逃してやろうと思ってたのによ。
俺は全快した『炎』で『気配』を的確に握り潰していった。
数はそんなに多くないし、大した敵でもない。少しばっかりイタズラができる程度の地縛霊みたいなもんだ。
「アークの仲間なんだろ?お前もなんかしろよな!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。」
「敵がいちいちテメエの都合に合わせてくれると思ってんじゃねえよ!」
ポコはもぞもぞと懐に手を突っ込んで何かを探していた。
「ちょっと待ってってば!」
なんだ?銃か?そんなもんが『地縛霊』たちに効くと思ってんのか?
それがコイツの『力』を引き出す引き金なんだとしても、いや、だとしたら尚更、すぐに抜けるようにホルダーに入れとくもんだろ、普通。
とことん呆れた奴だ。なんだったらウチの粗大ゴミよりも使い物にならねえんじゃねえか?
なんでだ?なんでこんな奴がアークの仲間をやってられるんだ?
なんでククルはこんな奴を信用してるんだ?
―――だがこの後、俺はその認識を180度、改めなきゃなくなる。
「アーク一味」って集団の底知れない『力』を。
俺はまだ、「アーク一味」のことを何も知らないんだってことを。嫌という程…。
小太りの男が懐から取り出したのは、銃でもなければ刀剣の類でもなかった。
それは、一本の金管楽器だった。