紫髪の修道女の凛と伸びる背中は、まるで祈る相手がそこにいるかのような錯覚をみせた。
「……」
何に祈ってるのかわからない。そもそも、祈ってるのかどうかもわからない。
俺はそっちの方面には詳しくないけれど、それでも彼女が『ソレ』に非常な労力を割いていることがその後ろ姿からヒシヒシと伝わってきた。
祈る相手は七本の石碑の奥で口も利かずひっそりと佇んでいる。
利く必要がないのか。もしくは利いてはいけないのか。
風化によってか、石碑は一本折れている。その隙間からソイツのただならない気配だけが感じられる。
そして、漏れ出た気配を押し隠すためにこの部屋を満たしている空気は間違いなく、俺たちが毎日せっせせっせと肺に出し入れしているものとは別次元のものだ。
なんとなく思った。
彼女がこの異質な空気を神殿に閉じ込めることで世界は辛うじて正常に機能してるんじゃないか?
彼女がいなきゃ、世界はとっくに滅んでるんじゃないか?
そういうものを必然的に感じさせる異様な『力』が、その空間にはあった。
「目が覚めたのね。」
俺たちの気配を察した彼女は、風のない下流の川面のようにゆっくりと振り返った。
「ア?あ、あぁ…。」
その動きは気品に溢れていて、戦闘技術の面でもかなり洗練されていた。髪の毛一本舞うことなく、手足に一片の死角もつくらない。
真似をしてみろと言われてできる動きじゃない。
プロディアスでの女神像の式典を襲った天災のような『雷』ではわからなかった、「アーク一味」のレベルの高さを初めて肌で感じさせられた。
一方で、彼女を見ていると俺は無意識にあのオッカナイ歌姫を思い浮かべていた。
…目付き、かな。淑やかな出で立ちとは裏腹に、マフィア相手でも怯まない気の強そうな目をしてやがるんだ。
「気分はどう?」
「…大丈夫だ。問題ねえよ。」
別にあの青髪が嫌いとかじゃねえ。…いや、もちろん好きでもねえけど。
だけど、俺はアイツにとって仇のようなものだから…。
似てると思うと、無意識に彼女にも気後れしてしまう自分がいる。
ククル・リル・ワイト。
アーク一味の癒し手で、女だてらに化け物を素手で打ち負かす武術も心得ている。
なんでも、武術の最高峰とも言われている「ラマダ拳法」の使い手も打ち負かしたことがあるらしい。いわゆる天才だ。
スメリアの修道女、”巫女”特有の『聖なる力』は世界で五本の指に入るとも言われている。
この「神殿」という装置も、彼女がいて初めて『力』を最大限に発揮しているんだろう。
今、もしも、この場で戦り合うことになったら…、俺は勝てるのか?
『聖なる力』がどんなもんかも分からないし、この『神殿』が侵入者に対してどう働くのかも分からない。
けれど、もしもここで『炎』を完全に封じられたなら、それこそ素手でライオンに挑みかかるようなものだ。
「記憶はどう?気絶する前のことはどれくらい憶えているのかしら?」
「その前に一つ聞いときたいんだけどよ、」
…多分、ビビっちまったんだと思う。彼女の質問に素直に答えることができなかった。
答えを考えるよりも先に、少しでも俺が優位に立てる情報を引き出すために、頭にあった疑問が口を突いて出てた。
「どうしてシュウたち…、俺の仲間はここにいないんだ?」
おおよその予想はついてるし、コイツらが噂通りの悪党じゃないってんなら外れてもないと思う。
そして、その通りの答えが彼女の口から返ってきた。
「じゃあ、別の質問だ。」
気付けば、俺はまるで尋問をしているような言葉遣いになっていた。
引っ込みがつかなくなっていたんだ。今は、勢いに身を任せていたかったんだ。
対して彼女は、終始「修道女」然とした慎み深い姿勢で俺の言葉に耳を傾けてる。
…今は。
「アンタらはどうして俺を治してくれたんだ?」
人を見る目に絶対の自信がある訳じゃないけれど、俺にはククルが世界を転覆させようって大悪党の仲間には見えなかった。
俺の目には、ちょっとばかし『力』に恵まれた「修道女」にしか映らなかったんだ。
何か、理由があるんだ。「アークの仲間」になり、甘んじて「悪人」のレッテルを受け入れる理由が。
「アナタは私たちをどう思ってるか知らないけれど、私たちはただ、精霊の導きに従ってるだけよ。」
…ウソだ。
コイツらの動きから感じた俺の勝手な印象だけど、コイツらが誰かの命令で動いてるようには思えない。
あくまでコイツらのリーダーは「アーク」ただ一人だ。
精霊でもなければ、神でも魔王でもない。
「質問が増えたぜ。なんでウソを吐くんだ?」
「…どうして嘘だと思うの?」
「別に、なんとなくだよ。」
本当に、これといった根拠は思い浮かばない。
病み上がりで頭が働かなかったから。彼女の目力に当てられたってのもある。
それを別にしても、どうしてだか彼女をそれ以上追い詰める言葉が思いつかなかった。
「だけどウソ、なんだろ?」
単純に、そう言えば応えてくれる気がした。
ククルは溜め息を一つ吐くと、声色をそのままに、あからさまに不機嫌な顔付きになった。
「完全に“嘘”ということはないわ。私たちの始まりは確かに精霊の導きからだった。」
…だった?
そう口にするククルの目にはまるで嫌な過去を…、俺で言えば、あの森を独りで走る『悪夢』を思い返すかのような嫌悪感が現れていた。
「でも今は皆、それぞれの意志を持って行動してる。皆が、自分の意思でアークに付いていってる。」
精霊は、コイツらの味方だった。だけど、今は違う。
アークが精霊の怒りを買ったのか。それとも、単に精霊がアークたちを裏切ったのか。
どちらにしろ、今はガルアーノ達と精霊、もしくは他にも敵対してる勢力があったりすんのか?
だとしたら、どんだけ分の悪い闘いをしてやがるんだ。
「そのアークが言ったのよ。アナタを治してくれって。理由は聞いてないわ。アナタに特別なものを感じたのかもしれないし、ただただアナタの恋人を不憫に思ったのかもしれない。」
「……」
「だけど、これだけはハッキリと言えるわ。あの人は護れる人を見捨てて前に進めるほど賢くない。」
「……」
それは俺に「正義」を主張してるつもりなのか?
俺に、犯罪者に共感しろって?馬鹿げてるぜ。
「さあ、私は答えたわ。今度は私の番。記憶はどう?なにか思い出せずに引っ掛かってることはない?」
そう感じてしまったからなのかもしれない。
ククルの言い方はどこか、俺から何か情報を引き出そうとしているように聞こえた。
「記憶」?体調を気遣う相手にそんな聞き方をするか?
でも、答えることにした。それが「見返り」だって言うんなら払うべきだろ。
それに、隠し事をするほどの秘密を持ってる訳でもない。
「俺たちはガルアーノの施設を、”白い家”を襲ったんだ。そこで…、奴の造った化け物と戦って、俺はデカい爆発に飲み込まれた。…目が覚めたらここにいた。それくらいだ。」
俺は返事をする代わりに憶えていることを並べた。
そして、一言、付け足す。
「見たものは憶えてるし、見てないものは何にも憶えちゃいねえ。そんで、俺は憶えてねえことに興味は持たねえ主義なんだよ。」
すると、ククルは訝しむ目で俺を見た。
「アナタも嘘を吐くじゃない。」
「……」
吐きたくて吐いたんじゃない。口が、勝手に動いてたんだ。
「……」
「別に、言いたくないなら言わなくてもいいわ。整理がついてないってこともあるだろうし。」
関心がない、というよりも、もしかすると俺は忘れたいのかもしれない。
もしもそれが許されるのなら。
「ただ一つ、アナタに助言があるわ。」
「助言?」
そういう意味深な言葉に俺が警戒しない訳がない。それを知った上で、ククルはその言葉をチョイスしたに違いない。
俺がより深く、その言葉に注目するように。
裏側に隠したものに目がいかないように。
「パレンシア城。そこにアナタの道標になるものがあるわ。」
パレンシア城、1年前にコイツらが暗殺したスメリア王の城のことだ。
一見、小細工をした割には単純な罠に見える。…それでも念のため、カマをかけてみた。
「悪ぃけど、俺は見た目ほどバカじゃないんだぜ?そんな取って付けたような言葉で俺が指名手配犯に転職するとでも思ってんのか?」
コイツらが襲撃して以降、城は修復される様子もなく荒れ地になっている。
そこに、コイツらが取り零した何かがあって、それを俺に「治療費」と銘打って取ってこさせようとしているんだと思った。
あわよくば、成り行きで俺を騒動に巻き込むつもりなんだと。
けれど、それは俺の勘違いだった。
「そうね。できればそこに向かった私の仲間の手助けをしてくれたらとも思ってるわ。でも、」
彼女の目はシャンテのように挑発的だけれど、俺を貶めるような気配は少しも感じられない。
「私たちのことに関わらず、アナタはそこに行くべきだわ。」
「どういう意味だ?」
あくまで「修道女」然とした公平な目で、俺を見ていた。
「アナタは永い永い『悪夢』から目覚めた。それでもまだ、”生きる”ことに迷ってる。この先、待ち構える未来に、同じ影を見てしまうようで。だからアナタは忘れようとしてる。でも忘れられない。忘れたくない。それがアナタの嘘。」
「…それで?そんなどっかの自己啓発本で見たようなセリフで俺の全部を見透かしたつもりかよ?」
「だったら、これからも過去を悪夢と呼び続けるつもり?」
「テメエの知ったことかよ。」
鬱陶しかった。
いちいち俺のことを根掘り葉掘り言い当ててしまうコイツらの目敏さが。
殺気を込めて彼女を睨め付けてみた。
戦うつもりはない。けれど、隙あらば床に転がしてやるぐらいのつもりでいた。
それなのに彼女は少しも身構えない。
見抜いてるんだ。俺にそんなつもりがないことくらい。
…表面上の、一触即発の空気が俺たちの間に漂った。
そこへ、ここぞとばかりに喋る産業廃棄物が土足で踏み込んできやがった。
「こレダカらガキのお守リハ手間ガかかルんじャ。」
「あんだと?」
「生キルこトを迷う必要がアルノカ?”命アるモの”ノ言葉とは思エンぞ。」
この鉄クズが。機神だか木仏だか知らねえが、調子に乗りやがって。
壊したい衝動が込み上げる。
アッという間だ。こんな奴、俺の『炎』で跡形もなく消し飛ばせる。
けれど、例の指輪に触れれば荒れ狂う激情はみるみる間に鎮火していく。
「……」
冷静になれよ。
そんなことをして何になる。精々俺の気が済むだけだろ?
そんなことのために、リアを巻き込んぢまったヴィルマーのおっさんの決意も、ただひたすらコイツの復活のために耐えてきたオールドマンの努力も踏み躙っちまうつもりかよ?
形こそ違うけど、アイツらの『過去』だって同じなんだ。ミリルやジーンと。
歯痒いけど、このガラクタにはアイツらの期待が詰まってるんだ。
そうして俺がどうにかこうにかポンコツへの怒りを収めていると、思わぬところから助け舟が現れた。
「ヂークベック、だったかしら?」
ククルは俺を見る時と同じ目で、口を利くゴミを見詰めた。
「アナタの言うように、心臓は彼を”生かす”ために動いてる。心臓は未来を疑わない。彼に、生きるべき世界があると説得し続ける。それはとても大切なこと。唯一無二の友人と言ってもいいわ。だからアナタが命ある者にそういう疑問を抱くのは当然のことなのかもしれない。けれどね、」
ソイツが人間であるかのように扱った。
「心臓は”夢を見ないの”。彼が広い世界を目にして胸に抱いた”理想の彼”を知らない。心折れた時も、傷つき倒れた時も、ただただ”生きろ”と叫び続けるだけ。」
まるでソイツに俺を理解する頭があるかのように、告解室にやってきた迷える教徒を説くように、クソ真面目に答えていた。
「想像できる?『理想』のない世界に生き続ける、心臓尽きるまで悲鳴を上げ続けなきゃならない苦しみを。」
見せつける。
「同じ心臓を宿していたって、アナタの目には美しく見える世界も、彼の目には血と焼野原が映ることだってある。私たちは全ての世界を見ることなんてできない。ただただ”生きていること”で、誰かの世界を脅かすことだってあるの。」
努力すれば、俺もソイツを理解することができるんだと。丁寧に。
「だから自分以外の誰かを想う人は”生きること”にさえ悩んでしまうの。その人が大切であるほど強く、強く思い悩んでしまうの。」
これが、「ククル」という修道女のやり方だった。
すると、まんまと術中に嵌まったポンコツの声色が、表情を浮かべるかのように沈んだ。
「むウ…、リアもエルクと同ジコとヲ言っトッタ。だカらワシは同じことヲ言っテヤッたんジゃ。」
俯いて、ボディに描かれた粗末な落書きを切なげに撫でた。
「…モしカスると、ワシはアの子を傷つケテシマったノカ?」
「彼女はなんて言ってたの?」
「あノ子ハ、ワシを”強イな”ト誉めたンじャ。じャカら、ワシのヨうニナルように頑張れト励まシた。」
「そう…。」
…リアは、もうそんな気遣いができるようになっちまったんだ。
買い物一つに無邪気な笑顔を浮かべていたあの子じゃなくなったんだ。
「ナア、ワシはあノ子を傷つケタノか?もし、ソウダったナらワシは今すグにデも謝りニ戻らナきャナラんぞ?」
「……」
「そうね、その子は傷ついたかもしれないわ。でもね、謝ったところでアナタの言葉をなかったことにはできない。」
「リアは、ワシを許しテくレんとイウコとか?」
「傷つくことは、許す許さないという問題じゃないわ。」
「ナら、どウスレばいイ?どうスればワシはリアを護レるんジャ?」
少なくとも、俺はこのポンコツに良い印象は持ってない。
だからこそ、コイツが「帰る」と口走った時、俺は不謹慎にも「ラッキー」だと思ってしまった。
その「ラッキー」の意味も考えずに…。
「何も言わず、その子の傍にいてやればいいわ。誓い合った夫婦のように、助け合い、支え合えばいつかきっと傷は癒えてアナタが理想に思う”ヒトの大人”に育つでしょうね。」
見方を変えれば、ククルは俺に「助言」したようにポンコツを良いように誘導しているようにも見える。
今はまだ外堀を埋めているだけで、これからその本心が明らかに―――、
「…ワシ、帰ラン。」
「あら、どうして?」
「今のワシ、マだ”最強”じゃアナい。リアの隣にオるなラ”最強のワシ”じゃナキゃカッコ悪かロう?」
「アナタがそうやって”最強”になろうとしている間にもリアは化け物たちに襲われるかもしれないわよ?」
…聞いている内に、彼女はやっぱり初めの印象通りの人なんじゃないかと思い直していた。
彼女の言葉はどうも”アークの一味”というよりも、”修道女”に寄っていたから。”アークの一味”なら|今頃、宥《なだ》めすかして言い包めて。文字通り「操り人形」にしていたと思う。
「…ソレは、心配じゃ。デも…、」
「でも?」
「……」
ポンコツは考え込んだ。人間のように。
「アナタの言う”最強”は何なの?化け物を倒す『力』?それともアナタの言う生きることを躊躇わない『力』?」
「力は力じゃ。リアを傷つケるヤツはワシが許さン。デモ、今のワシはリアを傷ツケル。”最強”ジゃなイカら。ジゃから”最強のワシ”にナってリアを護ルンじゃ。」
答えてるのかどうかも怪しい、もどかしい返事にも、彼女は真摯でい続けた。
「後悔はない?」
「不安ダ。でも…、でモ…、」
「ヂークベック、その葛藤が”生きることに悩む姿”よ。」
「……ワシ、お前ニ酷いコト言ったカもシレん。スまん。」
錆びた鉄の塊が、俺に頭を下げた。
…その時、俺は初めて気が付いた。
「…謝んな。気持ち悪ぃ。」
その後頭部…というか、背中に、拙い文字でこう刻んであったことに。
―――ロボットの救世主様に感謝を込めて
リリア・ヴィルト・コルトフスキー―――
「ヂークベック、アナタにも一つ助言をしてあげるわ。」
「オお、ナんだ?」
ポンコツは下げていた頭を上げると、期待の眼差しを彼女に向けた。
「命は育つのよ。アナタが傍に居ない今も。リアも、その周りの人たちも。傷つくばかりじゃない。彼らもまた、アナタを護るために強くなっていくのよ。」
「ワシを?」
「そうよ。嫌?」
「いイヤ、嫌ジゃナい。」
…そして、彼女の問いに、ポンコツはどことなく夢を見るような目付きで呟いた。
「…そレハ、いいな。」
「ちなみに手助けって、具体的には何なんだよ?」
なんだか、二人の遣り取りを見ている内にどうでも良くなっていた。アークが世界の敵であろうとなかろうと。
「この村の住人が大臣に捕えられたの。仲間が助けに向かってるけど…。もちろん仲間のことは信頼してるわ。でも、もしも大臣が直々に出張ってきたらあの子一人じゃ対処できなくなる。」
「アークは?アンタらの総大将は今どこで何してるんだよ。」
ククルは目を伏せた。まるでアークがもう「過去の人」にでもなってしまったかのように。
「彼は、今、敵の渦中にいるわ。一人で。」
「一人で?本気か?」
その「敵」ってのが誰のことを指してるのか分からねえけど、彼女が胸を痛めるほどの危険な場所にいるってのはよく伝わった。
「…なあ、アンタらはいったい何がしたいんだ?」
そうして顔を上げた彼女の瞳に宿っていたのは、偽善でも私欲でもない。
「私たちは、このくだらない戦争を終わらせたいの。」
戦争を正面から受け止める、家族を護る人間の覚悟だった。
「……アンタは何も聞かねえんだな。俺たちのこと。」
「聞いて欲しいの?」
「そういうことを言ってんじゃねえよ!」
腹立たしかった。そんなに年が離れてる訳でもねえのに…。あまりに違い過ぎる人の器が。
「……」
声を荒げる俺を、彼女は静かに見詰めた。あの瞳で。まるで俺が「仲間」であるかのように…。
カッコいいと思った。
俺が今まで会ってきた人間の中でも群を抜いて。
…アークも、彼女と同じ目をしているんだろうか。
俺は、悩んだ。
どうして彼女は見ず知らずの俺に仲間の命を預けようとするのか。
どうしてアークは恩を仇で返すかもしれない俺を助けたのか。
俺は、戦争を終わらせたいと言った彼女の言葉を信じてもいいのか?
「ワしモ、ツイてくゾ。」
「…勝手にしろ。」
耳障りだったはずのラジオの音が気にならなくなっていた。
彼女との、短い会話の間に俺は何か得られたんだ。
「村を出る時は一度、私に声を掛けて。『結界』を潜れるようにしてあげるわ。」
それが何かはまだ分からない。
だけど、これを、繰り返していかなきゃいけないんだ。俺が殺した皆のためにも……。