……目を
無数の、細く
聞いたことのない
「エルク、おい、エルク!」
旋律に手を引かれ、目を開けると、そこに
俺は彼をよく知っている。
頭が良くて
だけど、シャイな性格が
俺と彼女を
彼は
「チェッ、これでもお前のためを思って言ってやってんだぜ?」
わかってた。
彼は優しい奴だって。でも、俺は
いくら親友に手を
結果、俺は彼への八つ当たりで
そこに、彼女がやってくる。
「エルク、ジーン、おはよう。今日は何してるの?」
耳が、こそばゆくなるんだ。
「おはよう、ミリル。ちょうどミリルの話してたんだよ。」
「え、私の?なあに?」
俺はバカだから、
「ど、どうしたの、エルク?怒ってるの?」
彼女を
だけど、慌てふためく俺の様子は彼女の目をますます丸くさせるだけだった。
それなのに、
「……プッフフ、変な二人。」
出身地も好みの遊びも違う仲間たちの中で、俺たちは
落ち着きがなく、
…俺は、この二人が
そんな大切な記憶なのに、どうしてもハッキリと思い出すことができない。
幸せだったのに。
目の前に現れたかと思えば次の
消えないように何度も
それでも、揶揄うように
「…エルク、知ってたか?なにも、記憶を
「エルクは、違うの?もう、私がいなくでも平気?エルクは、傍にいてくれる?」
まるであの時、俺が二人を見捨てたように……。
「笑える話だよな。テメエは俺たちのことを何とも思っちゃいなかったってのによ。」
……
「エルクが、殺したの?」
……
かつての幸福な情景の中にいてさえ、俺は二人が
消えていく二人を目の前にして、手を
「ゲハハハッ!これだ、これを待ってたんだよ。こうなる瞬間をな!夢にまで!」
「…バッドエンドだ、エルク。」
「いいぜ…、いいぜ。俺もテメエを殺してやるよ。」
「どこ見てやがる。テメエの相手はこっちだろうがよ!!」
「……チ、クショウ」
銀髪の少年を
…それでも俺は笑ってる。ヘラヘラ、ヘラヘラと。
「嘘つき…、嘘つき、嘘つき……」
「エルク、分かる?分かるよね?私はね、もう
「だから、殺し合いましょう?」
「近寄らないで!」
「エルク、許して……」
「もう…、ミリルは、い、ない、の。」
「アアァァアアアァアァァァッ!!」
小さな両手一杯に、
「エルク、私、自由に、なりたかった……」
「……イヤだ…、イヤだ、イヤだイヤだイヤだイヤだっ!!!」
目が
その光がどんなに熱く、痛くても、
これで、ようやく――――、
――――ここは?
そこに、俺の終わりを
薄暗く、何もない一本道だけが目の前に
俺は
俺の意思とは関係なく、
まるで、彼女との最後の時間がなかったことのように。
歩いている内に
けれどそこに、出口はない。
何もない。何も聞こえない。誰も、いない。
どうしてこんな所にいるのか。どうしてこんな所に来たのか。何も分からない。
引き返そうと
すると、
「
「!?」
振り返ると、
「
女の人の背後から、ぼんやりと男の人が
顔も名前も分からない。けれど、心が二人に向かって何かを
そして、二人の着ている
「おいで。
男の人は精霊と
……そうだ。俺は…、この人たちを、知ってる?
「…父さん、母さん……?」
そう呼ぶと二人は優しく
そうだ。…そうなんだ!この人たちは俺の本当の家族なんだ。
ようやく…、ようやく会えたんだ!
本当の
俺はもう何にも
昔みたいに、小さな火を
「現実は時に
ダメだよ、父さん。それ以上奴らを呼ばないで!
「どんなに大きな声で
ここでも俺は何もしない。
ただただ
「エルク、俺たちは
「俺たち、まだ14、5のガキなんだぜ?」
「それを、無理やり
「ジーン…。」
コイツをこんな真っ暗な『
俺がコイツの人生を
それなのに、コイツはまだ俺を
「エルク……」
そして、その今にも
「あッ…、あ…、ミ、ミ……、」
名前は知ってる。でも、もう口にできない。
だって、俺は彼女を
「そんなに
彼女は
「私は、それで十分。」
綺麗な
そんな
それなのに―――、
「アナタがここに居てくれれば…。それだけで……。」
…でも、彼女がそれを許してくれるなら。
ここで、
「エルク、アナタは私たちに
「エルク、お前は私たちの
「父さん…、母さん…、」
皆が笑ってる。
俺が見捨ててきた皆が。
「エルク、私たちと一緒に―――、」
彼女の手が俺に
―――私、信じてる。
ここにいない人の声が頭の中に
「化け物にとって安全な場所ってどこ?」
「私だって、アナタのための『化け物』なのよ。」
…そうだ、思い出した。
誰かがこんな、
「私…、エルクが好きだもの。」
だから俺は初めて二人で見た海でその人にこう言ったんだ。
あの
―――俺は、リーザが好きだ。
「…皆、ゴメン。俺はまだ、そっちには行けねえよ。」
「何を言ってるの?エルク、ここまで来ておいて…、また私たちを見捨てるの?」
「いつか、いつか必ず皆の所に帰ってくるよ。でも、今はまだダメなんだ。」
「そう言って、またアナタが傷ついていく
許してくれなんて言えねえ。約束だってできねえ。
父さんが、行き当たりばったりで皆を見殺しにしてきた俺を
「エルク、よく聞きなさい。今、戻ったところで何も止められない。彼らの
でも、
俺は…、彼女のための『化け物』になるって
あそこに、彼女のところに、帰らなきゃいけないんだ!
俺は皆を振り切るように来た道を
だけど、
「逃がさない。」
背後にいたはずの彼女が、闇を利用して目の前に現れた。
「皆、アナタを信じてたのよ?だけど、皆、アナタのために死んだ。」
俺の腕を
「だったら、アナタも私たちのために死んでよ。」
「私たちも、愛してよっ!」
「逃げれば何もかも
「少しくらいは俺たちに
右腕の人斬り
そして…、
「また、別の誰かを
「!?」
その左手には
「誰が死ぬか。決めるのはお前だ、エルク。」
父さんと母さんはこちらを
「イヤだよ、父さん。俺は……、」
「私たちはアナタを
「母さん……、」
全身の肉が
「運命に
「全て、お前が決めたことだ。」
言うや
…
二人はあっという
「…クソッ!」
俺は振り下ろされる
「掴むこと」以外を忘れてしまったかのように、あまりに
「…ッツ!」
二人に背中を
むしろ、裂かれた痛みを乗せるように鷹の爪をより深く俺の腕に食い込ませた。
さらには掴んだ
…痛かった。
夢の中と
背中を裂かれても
そして、彼女の体で殴られた二人は地面に
「よう、教えてくれよ。愛されながら
左手に例の首をぶら下げたまま、
「こんなつもりじゃなかったんだ。俺は…、」
「ハッ、まさにガキの言い訳だな。できなかったことを
『霜』と『呪い』が俺の動きを
「だったら、そうならねえようにここでテメエを斬り殺すのは親友の優しさってもんだよな!」
親友の叫びに
「うわっ!!」
「…これからは、ずっと一緒よ。」
身の毛がよだつ。人間と化け物が
「
殺人鬼は俺たちを見下し、振りかぶった右腕を
…悪いのは俺だから……、
俺は、変わり
すまねえ、リーザ……、
ところが、
「なっ!?」
人斬り包丁が、俺の
ところが
「ゲハハハッ、そうだよな!テメエはそうじゃなくっちゃいけねえ!」
「ジーンっ?!」
殺人鬼は『炎』に
「ミリルっ!?」
彼女の胸を一本の
「ミリルっ!!」
ソレは熱さに
言わずもがな、一瞬にして『炎』が彼女の全身を包み込む。
俺は
「ミリル?!」
彼女は
「どうして…」
あの時の閃光のように
そして、みるみる間に彼女は黒く染まり、洞窟の闇に溶けて消えた。
「……」
何が起きたのかも、皆の行動も理解できないまま、俺は
俺は…、俺の運命は、いったいどうなってんだ。
どうして、何もかも燃やしちまうんだ。
それで、どうして俺だけが生き残るんだ。
……どうして!どうしてなんだよ!?
「エルク、顔を上げて。」
闇に帰っていったかと思っていたミリルが、目の前に立っていた。俺を見て笑っていた。
気付かなかっただけで墨色の彼女はまだ、俺の腕を掴んでいた。
そして、こんなになってまで放さなかった手を
「私たちに
指先で頬を
「アナタの世界にはまだ
そんなこと…、言うなよ。
「”愛”と呼ぶには少しおこがましいのかもしれないけれど、それでも私たちは私たちなりに十分に想い合ったわ。こうしてアナタを
俺は、ミリルたちも助けたかったんだ。
「もう、私たちはアナタの住む世界にはいないの。」
ミリルを、幸せにしたかったんだ。
「それでも、もしも、私たちの我がままを聞いてくれるのなら、アナタの
崩れゆく
「…生きて、エルク。…お願い……」
「……」
今度こそ、彼女は俺の世界からいなくなった。
たった一つの約束を残して――――
※おもはゆい
「面映ゆい」と書きます。
顔を合わせると照れくさい気分になる。決まりが悪い。という意味です。
※泥濘み(ぬかるみ)
本来の表記は「泥濘」で、読みは「でいねい」もしくは「ぬかるむ」です。
※二体の髑髏(エルクの両親)
原作の「エルクの夢」のシーンでは父親が「ブラックスカル(紺色のスケルトン)」、母親が「レッドスケルトン(真紅のスケルトン)」に変身します。
あ、ちなみに、原作では普通に盾と剣を持っていますが、この話に関しては素手ということにしておきます。(急に武器を持つというのもなんだか違和感があるので)
※髑髏の『呪い』
主に、ブラックスカルの特殊能力「テンダリーショック(防御力低下)」「ウィークネス(弱点の変更)」、「マインドバスター(MP削り)」、「ホールドエネミー(麻痺)」。
あとはレッドスケルトンの「ポイズンウィンド(毒)」ですね。
※「俺は、リーザが好きだ。」
82話『孤島に眠る従者 その十七』でエルクとリーザが海辺で語り合っていたシーンのことですね。
本編ではエルクがリーザに問いかけ、返答を待つ形で話の区切りを付けました。今回のこのセリフはその後にエルクがリーザに伝えた言葉です。
エルクの性格上、「好き」という言葉は解釈違いかなとも思いました。「お前を護ってやる」みたいな言葉の方が良いのかなとも考えましたが、中々言葉にできないことを口にしたということが大切だよねと思い、この言葉を選びました。
※炎の剣
原作をプレイされた方ならご存知でしょう。
「炎の剣」という高難易度のドロップアイテムがあることを。
このアイテムはストーリー上のこの二体のスケルトンしかドロップせず、しかもセーブポイントが絶妙に離れているため、普通にプレイしているだけでは中々手に入りません。
アークシリーズのモンスターゲームでは景品としてゲットできるようですが、私はあまりモンスターゲームをやりこんでないので…。
今回は全く違う形ですが、エルクの両親の骨を使って「炎の剣」
”彼女の胸を一本の刃が貫いていた。紅と蒼に染まった『
結果的に、この物語では「炎の剣」は入手できずという形になっています。
(私もできなかったんでね(笑))
※ちょっとした考察(ちょっとネタバレも入ってます)
原作では最後の描写になる『エルクの悪夢』ですが、私的にはなんだかアーク1の最後の戦闘になった「聖櫃の試練」(アークたちの闇が形になったものとの闘い)に似たものを感じました。
ククルの神殿を通してか、アークとの接触を通してか分かりませんが、エルクも彼らと同じように夢の中で「聖櫃」と言葉を交わしていた(試されてた)んじゃないかなって思いました。
今回の話では、直接エルクの手で『悪夢』を退けてはいませんが、死んでいった者でさえ彼を護ろうとする彼と彼らとの間にある「愛」が、「聖櫃」的に合格点だった…という解釈で書いています(^_^;)